宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

生まれたばかりの月に水が存在していた?

2013年04月08日 | 宇宙 space
アポロ計画で採取した月の高地の石から、微量の水が発見されました。

月の形成に関して有力視されているのは、誕生したばかりのころの地球に火星サイズの天体が衝突し、その残骸が集まってできたという巨大衝突説です。

その衝突のとき、大量の水が蒸発して宇宙空間へ逃げ出し、
その結果、誕生時の月はほとんど水のない乾燥した環境だったと考えられています。

今回、アメリカのノートルダム大学の研究チームが発表したのは、そうした月形成理論を覆す研究成果で、
1970年代にアポロミッションで持ち帰られた石を分析し、鉱物の結晶構造中に微量の水を見つけています。








分析対象となった石の1つ
“ジェネシスロック”






分析対象となったのは、月の高地(月面の明るい部分)から採取された斜長石。

生まれたての月の地殻が固まる前、まだどろどろに溶けたマグマの海が広がっていた頃に結晶化して表面に浮いたものと考えられています。
つまり、当時の記憶を残している石なんですねー

そこに水が含まれるということは、形成当時の月に水が存在していたことになります。
ひょっとすると、従来説のプロセスよりももっと長い時間をかけて、マグマの海が固まっていったのかもしれません。

白色矮性を目印にすれば、生命がいる惑星が見つかるかも

2013年04月07日 | 地球外生命っているの? 第2の地球は?
太陽以外の恒星系に、生命が住みやすい環境の惑星があるのか?

これまで惑星が発見されたことのない、白色矮性と呼ばれる星の残骸。
実はこの場所が、生命の兆候を探すのに最適であるという研究成果が発表されました。







白色矮性(白い点)と
その惑星(手前)
(イメージ図)





太陽以外の星を公転する系外惑星は、これまでに800個以上見つかっています。
でも、その中に生命のいる世界があるかどうかは、まだ分かっていません。

ある惑星の環境が生命に適しているかどうかは、
ガス惑星なのか岩石惑星なのかというタイプや、恒星からの距離、大気、そこで起こる化学反応などが考慮されます。
特に、大量の酸素は生命が存在する可能性を示す根拠になるんですねー

こうした惑星を見つけるには、どのような星の周囲を探せばいいのか?
今回の研究によると、太陽のような星よりも白色矮性の方が、生命に適した大気を持つかどうかを調べやすいようです。

白色矮性とは、太陽と同じくらいの重さの星が、内部のエネルギー源を使い切って外層を放出したあとに、小さな高温の中心核だけが残ったものです。

白色矮性はとてもゆっくりと冷えて暗くなっていくのですが、
数十億年間もあたたかいままなんですねー
太陽に比べるとひじょうに暗く、太陽系の惑星よりももっと恒星に近い方がちょうどよい温度環境になります。
その距離はおよそ160万キロ、公転周期は10時間程度です。

白色矮性の大きさは地球程度しかないので、
その手前近くを惑星が通った場合に、見かけの明るさが減少する割合も大きくなります。
なので、その変化から惑星の存在が見つけやすくなるんですねー

そして、この方法なら、惑星の大気を通過してきた白色矮性の光を調べることにより、水蒸気や酸素のような生命環境の兆候があるかを探ることもできます。

ただ、星が白色矮性になる前に膨張して赤色巨星になり、近くの惑星を飲み込んでしまう段階があります。

っと言うことで、惑星が白色矮性の周りには存在するには、赤色巨星から白色矮性になっていく時に、
「遠い軌道の惑星が近くまで移動してくる」か「近くで新しい惑星が作られる」というプロセスが必要になるんですねー

白色矮性はとても暗いので、まだ惑星は見つかっていないのですが、
今後予定されている最新観測機器だと見つかるかもしれませんね。

天の川銀河で初めて見つかった極超新星の痕跡

2013年04月04日 | 宇宙 space
通常の超新星爆発の100倍も高エネルギーの“極超新星爆発”は、
これまで天の川銀河以外の銀河で8つ、爆発の痕跡は2つ観測されています。

もちろん、こうした爆発により作られる高温ガスのバブルは、
天の川銀河内でも存在すると考えられていたのですが、まだ見つかっていませんでした。




“MAXI”の観測による
X線全天画像



これは、距離が近く見かけのサイズが大きすぎるため、観測できなかったからなんでが、
今回、国際宇宙ステーション(ISS)のX線監視装置“MAXI”による全天観測で、はくちょう座の方向にある高温ガスの巨大な構造を詳しく調べたんですねー

5500光年かなたの
スーパーバブル(白い囲み)と
X線源(a~d) 左図
はくちょう座の
北十字を重ねた図
半径約1000光年に広がった
バブルの大きさがわかる 右図

すると、およそ200~300万年前に太陽数十個分もの星が、“極超新星爆発”を起こして作られたものということが分かりました。
高温ガスの温度は約300万度にも達するようです。

天の川銀河内では、通常の超新星爆発は50年に1度、“極超新星爆発”は10~100万年に1度しか起こらないと推測されています。

なので今回の結果は、ひじょうに珍しい現象の痕跡を、世界で初めて近傍でとらえたことになるんですねー
この爆発の瞬間は、地球から見ると満月程度に輝いたようです。

観測史上もっとも小さい惑星を発見

2013年04月03日 | 宇宙 space
NASAの系外惑星探査衛星“ケプラー”の観測により、観測史上もっとも小さい惑星が、こと座の方向約210光年彼方にある恒星“ケプラー37”で見つかりました。

その中で最も小さかったのが“ケプラー37b”。
地球の3分の1程度で、太陽系で最小の水星よりも小さく、月より少し大きい程度なんですねー
“ケプラー37”の惑星と太陽系惑星の大きさ比較
“ケプラー37”の惑星と太陽系惑星の大きさ比較
主星の“ケプラー37”は太陽と同じ分類の星で、太陽よりもやや小さく温度が低い恒星です。
そこに見つかった3つの惑星は、どれも太陽から水星までの距離よりも主星に近い軌道を回っているので、生命に適した表面温度ではありません。

公転周期13日の“ケプラー37b”は、岩石でできた地球型惑星なんですが大気は存在せず。
表面温度は摂氏400度以上で、亜鉛が溶けてしまうほど高温なんですねー
すくなくとも、私たちが知っているような生命は存在できない環境だと考えられています。
最小の惑星“ケプラー37b”(イメージ図)
最小の惑星“ケプラー37b”(イメージ図)
“ケプラー37b”の外側を回る“ケプラー37c”の公転周期は21日、サイズは地球の4分の3程度で金星よりも少し小さ目。
さらに外側の“ケプラー37d”の公転周期は40日、地球の2倍程度の大きさになります。

今回、太陽系のどの惑星よりも小さい系外惑星を発見したことは、今まで巨大惑星が多く見つかってきた主星のすぐそばの領域にも、小さな惑星が存在しうることを示しているんですねー

“ケプラー”は惑星の探査にトランジット法を使います。
これは、主星の光が手前を通過する惑星にさえぎられ、わずかに暗くなる現象(光の揺らぎ)から惑星の存在を検出する方法です。

でも、この方法だと惑星の大きさを知るために、主星の大きさも測定する必要があります。
主星の減光加減から、惑星の相対的な大きさを測定するからなんですねー

“ケプラー37”のサイズ測定には、星内部の対流運動によって発生する音波の伝わりから、内部構造を調べる方法が使われました。

地震学で地震波を使って地球の内部を調べるのに似ていて、天文学では“星震学”と呼ばれています。

この方法は、これまで太陽の2倍以上の大きさの星に適していたのですが、
“ケプラー”の高精度装置により、今回のような小さい星でも使えるようになったようですよ。

太陽の双子に、太陽のような低温大気層を発見

2013年04月01日 | 宇宙 space
3つの恒星からなるリギルケンタウルスの連星系は、太陽からもっとも近い恒星系です。

この中でもっとも近いのは、4.24光年先にある暗い赤色矮星“プロキシマケンタウリ”で、それよりわずかに遠い4.37光年の距離に“リギルケンタウルス”のAとBがあります。
この2つは、天体望遠鏡で見ると1等星同士の二重星として見えるんですねー

“リギルケンタウルスB”は、そのまわりに地球と同質量の惑星が発見されて昨年ニュースになったのですが、“リギルケンタウルスA”も同じくらい注目に値するんですねー

それは、太陽の双子といえるほど質量や温度、組成や年齢が似ているので、恒星の他の特徴を比較するのにうってつけの観測対象になるからです。

今回、ヨーロッパ宇宙機関の赤外線天文衛星“ハーシェル”による観測と、恒星大気のシミュレーションモデルの研究から、“リギルケンタウルスA”に低温の大気層が存在することが分かりました。

太陽以外でこのような層が見つかったのは初めてのことで、太陽を知るうえででも大きな手がかりになることが期待されるんですねー

太陽の表面(光球面)の外側には“彩層”が、さらにその周りには“コロナ”が広がっています。








太陽表面の構造






皆既日食のときには、“彩層”は太陽の縁に虹色の環として見え、
“コロナ”は淡く白っぽいプラズマの流れが数百万キロも伸びている様子を見ることができます。







皆既日食の様子
周囲に“コロナ”が広がり、
右下の縁に赤い“彩層”が見える





光球表面の温度は摂氏約6000度で、“コロナ”ははるかに高温の数百万度もあります。
不思議なことに、その間にある“彩層”は摂氏4000度と低くなっているんですねー

なぜ“コロナ”が高温なのか? っという問題だけでなく、
この低温な“彩層”の存在も、太陽科学におけるもっとも興味深い点の1つで、
今回、この層が“リギルケンタウルスA”で見つかったんですねー

これまで恒星の構造に関する研究対象は、太陽に限られてきました。
でも、“リギルケンタウルスA”に太陽の“彩層”と同様の低温層が存在することが分かりました。

さまざまな星について、この種の詳細な観測が行われれば…
“彩層”の起源や、大気全体の加熱問題を解決するヒントが得られるかもしれませんね。