雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

秋の貴婦人 ・ 心の花園 ( 64 )

2014-10-09 08:00:22 | 心の花園
          心の花園 ( 64 )
               『 秋の貴婦人 』

季節それぞれに、その訪れを伝えてくれる木や花があります。
「キンモクセイ」も、季節を教えてくれる代表的な樹木といえましょう。
心の花園にも、あちらこちらに植えられていて、普段は気にもかけない花木なのですが、九月も中旬を過ぎる頃になると、あの甘くかぐわしい香りを漂わせてくれます。
その香りに誘われて見てみますと、黄金色の小さな花をびっしりと付けているのに気が付きます。実に控え目な花といえましょう。

「キンモクセイ」は、中国南部を原産地としているそうで、わが国には江戸時代に渡来したようです。比較的新しい花木といえます。
そのため、残念ながら大宮人や平安王朝文学などには登場してきませんが、今日では、庭木や公園などの樹木として大変人気が高く、よく見かけることがあります。
「キンモクセイ」は雌雄異株で、わが国の物はすべて雄株だそうで、まず実を付けることはないそうです。

「キンモクセイ」の花言葉としては「謙遜」「気高い人」などが紹介されています。
「謙遜」は、その控え目な花からきており、「気高い人」というのは、その姿は何の主張をすることもなく、それでいて多くの人々に気高い香りを届けてくれることからきているようです。
それともう一つ、小さな花を枝にびっしりと付けていますが、花の終わりの頃になると、雨や風に打たれると何の未練もないかのように散ってしまいます。春の桜がその散り際の見事さを称えられることが多いですが、桜が豪華絢爛に散っていくのに比べ、「キンモクセイ」は実に密やかに、静かに身を隠すのです。

秋のまん真ん中で、密やかであっても気高くかぐわしい香りと、つつましやかで、それでいて潔い花を咲かせてくれる「キンモクセイ」をぜひ、お楽しみください。

     ☆   ☆   ☆

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