ヴェルソワ便り

スイスはジュネーヴのはずれヴェルソワ発、みんみん一家のつづる手紙。

ダニエル・カンベレ

2008-03-14 22:24:52 | コンゴ(M&S)
ダニエル・カンベレは内戦の続くコンゴ東部の北キヴ州出身の芸術家である。

彼の主題は一貫して“AMANI―平和”だ。



希望の象徴である「太陽」
平和の象徴-鳩が描く、ヒューマニズムを意味する「弧」
平和へと牽引する原動力である「水牛」
和解―regroupement sociale―を象徴する「5つの点」
寛容、対話、共生、人権と和解を求め、死(倒れること)を拒む「立っている人間の影」
力を合わせ並んで立つ、戦争の最大の犠牲者「女性たち」





女性たちの服の部分に腰布の生地を貼り付け、その上から更に油絵で上描きしてある部分が、彼のオリジナリティが最もよく表れていて、美しい。


新聞の記事をキャンバスに貼り付け、その上から、「自由で透明性のある選挙」、「和解」、「協力」といったメッセージを書いたものもある。聞いてみると、反政府武装グループの兵士の武装解除・社会復帰センターでの啓蒙に使用した絵とのこと。
新聞記事のコラージュは、暗殺の危険に直面しながらも、真実を伝え、人々の意識を向上させる重要な役割を果たすジャーナリスト達に対するオマージュである。



彼の絵は、紛争状態の故郷Oichaでの生活体験に基づく、一途に平和を望む祈りそのものだ。


カンベレ氏との出会いはボテンベ氏の紹介によるものだが、ボテンベ氏が、ある種のカリスマ性、スター性を持っているのに対し、彼にはそうしたカリスマ性はない。

小さい声ではあるが、しっかりした口調で諄々と自分の絵について説明する彼の姿からは、彼の生真面目で誠実な人柄と、平和への強い思いに裏打ちされた”揺るぎない自立心”が伝わってくる。



下町にあるこの暗く小さなアトリエで、彼の説明に耳を傾けながら、私と妻は静かに深く感動していた。



私は、服の部分に腰布をコラージュし上から絵の具で上描きした3人の女性の絵(上の2枚目の写真)が気に入ったのだが、大きすぎて自分の家には飾れそうにない。
諦めきれない私は、思わず同じモチーフで一回り小さな絵を描いてもらうよう頼んだ。

彼のように恵まれた才能を持ち、シンプルかつ強烈なメッセージを持つ芸術家は、きちんと紹介されれば日本でも成功するのではないか-。

そんなことを考えながらアトリエを後にした。(M)