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ヴェルソワ便り

スイスはジュネーヴのはずれヴェルソワ発、みんみん一家のつづる手紙。

刺身にジュネーブ・ワイン Clos des Pins

2010-05-09 01:35:52 | ワイン(M氏より)
妻のしろみがどこからかマグロの刺身を買ってきた。


その日は仕事で夕食を食べなくてはならなかったが、軽くで済んだので、せっかくだから新鮮なうちにと、帰ってから残り物の刺身をいただくことにする。


ちょっとお酒が飲みたいな、ということで開けたのが、フランスでは食用葡萄だがジュネーブでは最もメジャーなワイン用の葡萄シャスラchasselaのワイン。

ラベルには昔の収穫時の写真を使用

日本の甲州ワインも刺身に合うのが特徴だが、そのシャスラも驚くほど刺身と相性がいい。

チーズフォンデュ屋でフォンデュと相性がいいとよく勧められるワインがこのシャスラなので、ちょっとイメージと違うかなとは思ったが、実際に刺身と合わせてみて驚いた。


この造り手は、ジュネーブの中心から30分程度のフランス国境にあるDardagnyという村のClos des Pinsというところ。

Clos des Pinsの入り口の飾り

ジュネーブで唯一ミシュラン・ガイドで2つ星に輝くレストランDomaine de Chateauvieuxのワインリストにその名を連ねる数少ないジュネーブ近郊の造り手である。

こういうと大そう高価なワインなのだろうと思うかもしれないが、造り手から直接購入すれば日本円にして700円程度のワインなのだ。


先日、造り手を訪問して試飲させてもらったが、この造り手の特徴は、葡萄毎の特徴を面白いくらいに、また拍子抜けするくらいにそのまんま表現しているところだ。特定のワイン以外には樽熟成を行わず、ステンレス桶で発酵させて収穫から7ヶ月くらいで瓶詰めする。5月の時点で昨年のワインが飲めることが逆に新鮮だ。

とりわけ、ここのガメイGamayは、そんじょそこらのボージョレワインも太刀打ちできない出来で、昨年のスイスのワイン品評会のガメイ部門で見事第一位に輝いている。


ジュネーブ近辺のワインの造り手は、この20数年間、ワイン産業を活性化するために、世界中の葡萄品種を片っ端から植えてワインに多様性を持たせる試みをしているという。

その結果、一つの造り手が、白ならシャスラ、アリゴテ、ソービニョンブラン、シャルドネ、ヴィオニエ、ピノブラン、ピノグリ、赤ならガメイ、ピノノワール、カベルネソービニョン、カベルネフラン、シラー、メルロー、ガマレ等々、いろんな葡萄で作ったワインを生産しているのだ。

ワインの色もなかなか美しい


正直、それぞれの葡萄のオリジナルとなる産地のワインと比べるとちょっと物足りないと思うことがほとんどなのだが、ここのソービニョンブランとガメイは秀逸で、その葡萄本来の特徴を素直に出しているという観点からすれば、ロワールの白やボージョレの赤と比べて全く遜色がない。


そんな造り手が造るレマン湖周辺ワインの主要葡萄種シャスラなのだから、美味しくないはずがない。


ということで、スイスワイン、ジュネーブ・ワインもなかなかイケるのではないかと思えるようになった今日この頃である。(M)
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ジュネーブ近郊でもワイン市

2010-04-12 21:42:49 | ワイン(M氏より)
独立生産者vignerons independentsのワイン市・通称”樽担ぎ”ワイン市は、ジュネーブ近郊のフランスの街アンヌマスAnnemasseでも行われる。

なぜこんなマイナーな街にワイン市があることを知ったかというと、ジュネーブに着いてまもなくヨーロッパのワイン市開催日程をまとめたサイト(ここ)を見ていてたまたま発見したのだ。

ただ、会場が狭いせいか、ブルゴーニュとジュラ地方のワイン限定である。

無料チケットが造り手から送られてきたので、昨年に続いてまた覗きに行ってみた。

受付でもらったグラスにも「ブルゴーニュとジュラ限定」と明記(クリックで拡大可能。)。もしかしてレア物?


5つの造り手のワインを試飲させてもらったが、特筆すべきは次の2つの造り手。

1.まずは、Domaine Daniel et Martine BARRAUD。

マコン近くのVergissonという村の造り手。
この村にはマコン・ピエールクロで有名なDomaine Guffens-Heynenもある。
ただ、このバローはマコンよりはプイ・フュッセPouilly-Fuisseの方によい畑を持っている。
代表的なワインには新樽20%を使用して10ヶ月間樽熟成させている。

試飲したのはすべて2008年のワイン。

○Macon Vergisson La Roche 
良質のマコンを飲んだときの蜂蜜の感じがあるが酒質はそれほど厚くなく飲みやすいタイプ。

○Saint Veran 
酸味が強く、ちょっと植物の茎のような青っぽさがあるが、ワインとしては悪くない。

○Pouilly-Fuisse Alliance 
4つの畑の葡萄を混ぜたためにこの名前(同盟、結合)を付けたという。どの畑も一つの名前を付けてだせるほど大きな畑ではないようだ。
ちょっとおとなしい感じのワイン。

○Pouilly-Fuisse La Verchere 
いきなりワインのレベルが上がる。
蜂蜜の香り。酒質が厚くて心地よい酸味。平均樹齢約40年といっていたと記憶。

○Pouilly-Fuisse Les Crays 
この中で一番樽香が感じられるが嫌味のない上品な味。私の好きなタイプの味だ。

○Pouilly-Fuisse En Buland 
香りはまだ閉じているが、一番酒質が厚く感じられる。ちょっと置いておいた方がよさそう。平均樹齢70年以上。



2.次はDomaine Marchard de Gramont。

ここはNuit-Saint-Georges村の造り手で、パリにいるときから樽担ぎワイン市で何回か購入しているところ。
今回無料チケットを送ってくれたのはこの造り手だ。

○Nuit-St-Georges Les Terrasses des Vallerots 2007
葡萄の木が8歳と若いために長熟型ではないが、畑は斜面の一番上のところ。
やはり木が若いと根が十分地中深く張らないためにどうしてもその土地(テロワール)の特徴が出にくいということだ。
とはいっても、たった8歳の木でこんな美味しいワインができるということにむしろ驚いた。

○NSG Les Vallerots 2007 
26年の樹齢。
男っぽいNSGらしさ全開。タンニンの存在感があるがとろける感じ。

○NSG Les Haut-Pruliers 2008 
2008年物は3ヵ月後に瓶詰めを始めるということで、手に入るのはもうしばらく後ということだが、閉じていて濃くて、それでも美味しい。
名前からも想像できるように、畑はものすごく急斜面にあり、畑作業が大変なのだそうだ。
本数もそれほど多くないようで、この味からしても、おじさんの話し振りからしても、おそらくこの造り手の持つ最高の畑だろう。
予約させてもらうがワインを引き取りに行くときにはカーブで試飲させてくれとお願いしておいた。

○Vosne-Romanee 2008 
この村らしい上品なワイン。NSGの造り手が作るとなんとなく強いスタイルになるのかという感じはするが、美味しい。


今回話を聞いた3件のブルゴーニュ赤ワインの造り手のオヤジ達の話を総合すると、2007年は酸の強い年で、こなれて柔らかくなるのを待った方がいい長熟型(逆に、猛暑だった2003年はタンニンがもの凄いが酸が足りないため意外にも長熟型ではないという。)。
2008年は中くらいの平均的な年ということらしい。
いずれの年も偉大な年とはいえないようだ。


ちなみに、このワイン市が開かれるアンヌマスの街は、そこに住むフランス人の話によれば、10数年前までは汚くて治安が悪いところだったという。
しかし、現市長の前任の市長が就任して以来、街を清潔にする努力をし、治安改善にも取り組んで、だいぶ住みやすい街になったのだそうだ。

このワイン市も、そうした街のイメージ改善の一環として誘致した催しなのだろうか。

もしそうだとすると、ジュネーブにいながらにして樽担ぎワイン市が楽しめるのだから、その市長さんに感謝しなくてはいけないだろう。(M)
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アルボワの奇才Domaine Pierre Overnoy

2010-04-02 22:56:21 | ワイン(M氏より)
アルボワのワインの造り手の中で、どうしても一度直接会って話を聞きたいと思っていたところがあった。
それはDomaine Pierre Overnoyという有機農法で有名な造り手である。

パリにいる頃、ここのワインを何かの機会で飲んだ時に「なんだこのワインは?!」と思った。

白ワインなのに、しかも、まだ熟成しているわけでもないのに、瓶の中で澱が沈殿したり、浮遊したりしているではないか。

開けて飲んでみると、それまでに飲んだどのワインとも異なるスタイルの、凝縮された液体だった。

週末に一泊でアルボワに旅行することになり、迷わずこの造り手に電話したところ、訪問を快諾してくれた。

いよいよこの興味深い造り手を訪問することが出来るのだ。

アルボワのワイン街道の看板

看板にも除草剤や化学薬品は使ってない旨明記

到着すると、すでにフランス人のグループが試飲を始めていた。

迎えてくれたのはピエールさんの娘で、当代のEmmanuel HOUILLON氏の奥さんだ(・・・と思う。明示的には確認しなかった。)。
ちなみに、ドメーヌ名になっているピエール爺さんは既に現役を引退して娘夫婦に代替わりしている。しかし、娘さんによれば、ピエール爺さんは収穫や醸造の時は一緒に見守ってアドバイスしてくれているようだ。

説明を伺っている間に、そのピエール爺さんがひょっこり顔を出して挨拶してくれた。(一緒に写真を撮ってもらえばよかった。後悔・・・。)


ここのレパートリーは、プルサール(Ploussard)という葡萄で造った赤ワインと、シャルドネ、サヴァニャンという葡萄で造った白ワイン2つの、合わせて3種類のArbois Pupillinしかない。

葡萄の木の樹齢は、シャルドネは20年、サヴァニャンは30-40年くらいということで、特段古いわけではない。

アルボワの葡萄畑。


この造り手で特筆すべきは面積当たりのワインの収穫量の少なさである。
1ヘクタール当たり15-20ヘクトリットルだという。ブルゴーニュでは同じ程度の樹齢なら40-55ヘクトリットル位の収量が平均的なのに比べると、3分の1から2分の1という恐ろしいまでの収量の少なさだ。

これも

さらに、これも。残念ながら天気が悪かったが、萌え出た下草の緑に雨にぬれたブドウの木が黒々と映えて、それはそれで美しい。



どのように収量を減らしているか聞いてみると、初夏、葡萄の実がついた頃に多く生り過ぎ実を切り落とす方法(実が緑のうちに切ってしまうので緑の収穫Vendange verteといわれる。)ではなく、初春に行う枝の剪定の段階でつぼみをごく少数しか残さない方法を採用しているという。

この方法は、「緑の収穫」と比べて木に負担をかけなくてすむ(やはりいよいよこれから実が成熟するという段階で実をいくつか切り落とすことは木にとってあまり好ましいことではない。)というメリットはあるが、収量を抑える方法としては極めてリスクが高い。
つまり、春先の開花の時期に雨が降ってしまうと受粉がうまくいかずに、当初の見込みより大幅に収穫量が減ってしまう危険があるのだ。

しかし、あえてこの方法を採用しているところがこの造り手の自然派ワイン醸造家たる所以だと思う。

あのトロトロ感のある液体はこうした方法で実現しているのだ。


発酵させた後の樽熟成の期間が、2007年のシャルドネで3年間、サヴァニャンにいたっては平均4年間という、通常の白ワインの樽熟成期間からはおよそあり得ないくらいの長さであることも、この造り手の特徴として記さねばなるまい。

しかも、黄色ワイン(vin jaune)のように蒸発によって生じる樽中のワインの目減り分をそのまま放置してワインを酸化させるのではなく、酸化を防ぐために毎週1回はワインの注ぎ足し(ouillage)を行っているという(ものすごい手間である)。

試飲させていただいた2003年のサヴァニャンは、開けた瞬間はカレーのような東洋のスパイスの香りがしたが、時間とともにより落ち着いたくるみの香りに変化していった。

前の日に開けた同じ2003年のサバニャンのワインを試飲させてくれたが、よりまろやかになり飲みやすくなってはいたものの、香りがおとなしくなっていた。

娘さん(といっても既にマダムといったほうが適切。)いわく、ワインを開けてから時間を置くと得られるものもあれば失うものもある、自分はワインをあまり事前に開けることは好きではないとのことだ。



造り手に行けば古い年のワインが購入できるかもしれないという淡い期待を抱いていたが、今売れるのは、2007年のシャルドネと2003年のサヴァニャンしかないという。
赤ワインにいたっては生産本数が少なくて既に売り切れだ。
この造り手が持っている畑は4ヘクタールしかないようだし、その多くは白ワイン用なので、赤は極少数なのであろう。

それにしても、こんなに手間をかけて作ったワインがシャルドネ(750ml)で1本10ユーロ、サバニャン(500ml)で16ユーロというから驚きだ。

きっとフランス中が偉大な年になった2005年は美味しいのではないかと勝手に推測して、「2005年はいつ頃市場に出るのか」と聞くと、来年には売りに出すと思うが、樽の中でまだ炭酸ガスが残っているという。


こういうワインの造り手がいるということ、そして新しい世代が先代の哲学を受け継いでいこうとしていることが素晴らしいと思うし、フランスのワイン文化の奥の深さを物語る一例なのではないか、と私には思えるのだ。(M)
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直球勝負の本格派ワイン - Mas Champart

2010-03-01 23:43:32 | ワイン(M氏より)
南仏ラングドック地方のワインの中には時々びっくりするようなのがある。

サン・シニャン(Saint-Chinian)という地域のマス・シャンパールMas Champartという造り手のワインもその一つだ。

そもそもこのワインを試してみたきっかけは、ジュネーブ近郊のフランスのワイン屋の主人のお勧めがあったから。一年くらい前、私が値段が手頃で美味しい南仏ワインを探していたら、それならばこれを試せと言われたのがきっかけだ。

それ以降、その店に行っては見つける度に買うようにしている。


今回はClos de la Simonetteという畑の2006年。



色はタンニンの粒子が見えるかのように濃い。

香りに華やかさはないが落ち着いた感じ。果実というよりも、コンテなどハードタイプチーズのような香りだ。

味は、若々しいタンニンの収れん性が際立ってはいるが、ワイン全体としてのまとまりが実によい。

その大柄で重厚なスタイルは、頼もしいくらいの本格派だ。

優雅さはないかもしれないが、直球勝負を挑まれたような清々しさ、潔さがある。


この造り手は、Clos de la Simonette(ムルベードルmourvedreという葡萄が主流)のほかに、Causse du Bousquetという名のワイン(こちらはシラーsyrahが主流)も持っており、この2つがこの造り手の二枚看板だ。




媚びるタイプのワインではないので、万人受けはしないかもしれない。

しかし、力強くて、真正面から勝負を挑んでくるようなこのワイン、私は嫌いではない。(M)
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スイスワイン探求 Domaine des Muses

2010-02-02 23:17:02 | ワイン(M氏より)
スイスワインについてこの場で紹介できればと思い、いくつか試してきたが、なかなか”これは!”というものに巡り会うことができなかった。

スイスは避暑地としては素晴らしいが、ワインを作る環境としてはこれがある種のハンディになる。

それでもスイスの葡萄畑の景色は素晴らしい。

10月のラボーの畑

ローザンヌの東に広がるラヴォーLaveauxの葡萄畑はその美しさから世界遺産に指定されているし、ヴァレー地区では、フランスだったらコート・ロティに匹敵するような急な傾斜に葡萄の木が植えられている。

これもラボーの畑。レマン湖や対岸の山も綺麗だ。

スイスでは世界的には無名な葡萄でワインが造られており、フランスワイン等と同じ尺度でワインを語ることは難しい。

それでも、近年のスイスワインの質の向上は目を見張るものがあるようで、シャルドネ、ソーヴィニョン、メルロー、シラー、ピノノワール等のメジャーな葡萄でも世界的なワインコンクールに出品し、それなりの成功を収めているようだ。

パリにはマドレーヌ寺院とオペラ座の間にLAVINIAというパリで最大のワイン屋があるが、ジュネーブにも同じ店がある。パリの店の規模とは比べることは出来ないが、フランスをはじめ世界のワインがそろっており、当然ご当地モノのスイスワインのコレクションもある。

店員に、これまでそれなりに試してはいるが、スイスワインのことは正直あまりよくわからないと伝えた上で、彼のお勧めを聞いてみた。

すると、まず世界的にメジャーな葡萄で造ったワインとスイス特有の葡萄で造ったワインのどちらがいいかと聞かれた。

スイス特有の葡萄で造ったワインはそれはそれで美味いのだが、折角だから、フランスワインの同じ葡萄の品種のワインと比較しやすいようにメジャーな葡萄で造ったワインの中でのお勧めを聞いてみた。

何本か説明してもらったが、値段も手頃なものの中での彼の一押しは、ヴァレー地区の優秀な造り手Domaine des Muses 2007のSyrah。

ヨーロッパでもトップレベルのシラーだという。



色は赤紫。透明感はあるが色が濃い。

香りは、熟した赤い果実、フランボワーズなどを煮詰めたジャム、それに白胡椒のようなスパイスの香りもする。

飲むと、若々しくて果実味があり、酸もタンニンもアルコール分もしっかりとして骨格がある。マルシェで買ってきたハーブを利かせた豚のローストと、にんにくをきかせたトマトソースのパスタともよく合う。



2007年は日照時間が多くてよい年だったそうで、このワインもスイスのコンクールでシラー部門の銀賞を取っただけのことはある。

ただ、途中から時間が経ってもあまり香りや味に変化が見られないのが気にかかり始める。カラフに入れて空気に触れさせてみたが、それほどは効果がない。

まだ若すぎるせいなのか。

ボトルを半分開けようとするところでテースティングをいったん中止して、翌日続けることにした。


翌日もう一度残りを飲んでみると、昨日とは異なるスパイス感がより前面に出た感じで、飲みやすくなっていた。

ヨーロッパのトップのシラーであるフランスのコート・デュ・ローヌ地方のコート・ロティやエルミタージュの秀逸な造り手のワインとは比べるべくもないが、地理的なハンディを負っていることを考慮すれば、なかなか見事なものだ。


とりあえず、スイスワイン紹介の第一号とするには、十分ふさわしいワインといえるだろう。(M)
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世界一?のポルトワイン SANDEMAN 40年

2010-01-13 09:05:26 | ワイン(M氏より)
ポルトガルのポルトに来れば、やはりポルトワインを飲まねばなるまい。

ポルトワインはポルトの街を流れるドウロ川上流地域で収穫した葡萄を使用し、発酵途中に蒸留酒を添加することで葡萄の糖分がアルコールに変化するのを止めて葡萄の甘みを残す手法で作られるちょっとアルコール度の高い(20度程度)ワインである。数年間樽で熟成させるが、その樽熟成を収穫した場所でなくポルトまで持ってきて行うというのが決まりらしい。このため、ポルトの街の川沿いにはポルトワイン用の貯蔵庫が並んでいる。

ドウロ川沿いの葡萄畑を見にドライブに行った。

ポルトワイン街道の標識

葡萄の木が段々畑に植えてあり、なかなかの景色だ。Mesao Frioという小さな町からドウロ川沿いに東に向かった景色が特に美しい。

段々畑


しかし、フランスの葡萄産地と何か雰囲気が異なる気がするのはなぜだろう。ワインを造っている産地の多くは、潤っているせいで町並みは整備されて田舎なのにどことなく垢抜けたところがあるが、この地域の中心の町であるレグア(Peso da Regua)の雰囲気はちょっと寂れた感じだ。

単に、訪問した季節が冬で、かつ年末年始でほとんどの店が閉まっていたのがその理由かもしれない。
でも、もしかしたら、ポルトワインが大規模な会社で経営されていて、所有者はその辺りには住んでおらず、そこに住む多くがその使用人だからかもしれない。また、小規模な造り手があまり多くないか、あってもあまり儲からないというような事情があるのかもしれない。

そんなことを考えたのは、夏であれば観光用に機関車を走らせる最も美しいとされるレグア=ピニャオン(Pinhao)間の川沿いをドライブした時に、普通なら葡萄畑には、葡萄を収穫し、プレスし、発酵させる蔵を持つ造り手の建物が点在するのだが、ここでは時折見かける大規模ワイナリーの建物以外はあまりそうした建物が見当たらないからだ。

もしかしたら、ほとんどの葡萄畑は大規模ワイナリーの所有か、そうでなくても葡萄を育てるだけの農家が所有するもので、その葡萄は収穫されたらすぐにこれらの大規模ワイナリーに売られてしまうのかもしれない。



そんな事を考えながら、美しいピニャオンの町から山に入りSabrosaという街を経由してVila Real経由でポルトに戻った。


ポルトに戻りいろいろと街を回ってみたが、年末年始だったせいもあり、多くのレストランや店が閉まっていた。それでも橋を渡った対岸のポルトワインの倉庫がある界隈では休日でもワイナリーの見学を受け付けており、その近辺のワインバーも開いていた。

対岸から撮ったドン・ルイス1世橋の夜景

その夜は、開いている店のうちのなんとなく美味しそうな雰囲気のバーBEIRA DOUROでつまみのようなもので夕食を済ますことにした。

バーの中

でてきたオリーブ、生ハム、乳のみ豚が入った揚げ物(パステイス・デ・レイタオン)が美味い。

生ハム

干しダラと乳飲み豚のパステイス

メニューに、サンデマン(SANDEMAN)という会社の20年物のポルトワインがグラス1杯8ユーロ(1100円くらい。)とでていたので、折角だから1杯頼んでみた。

ポルトワインは、キンシャサにいるときにたまにレストランで食前酒として飲んでいたが、この20年物はそれとは異なる、甘ったるくない、熟成香のある上品な飲み物だ。
香りがこんなに楽しめるものとは思っていなかった。干したプラム、ラムレーズン、胡桃などの香りがする。飲み干した後もグラスの内側にへばりついた液体の香りだけでしばらくの間楽しむことができた。

ウェイターの若いお兄さんにとても美味しいと伝えると、「これはSANDEMAN社の20年ものだが、同じ会社の40年物は世界一のポルトワインだ。」と教えてくれた。
??・・・というか、ポルトワインはポルト以外では造れないから”ポルト一のポルトワイン”というのが正しいんだよね?と思いながらも、どれくらいの値段か尋ねると1本100ユーロそこそこだという。

これはいい話を聞いた。
リスボンに着くなり本屋に行ってポルトガルワインのガイドブックを購入したが、ポルトガル語で書かれていることと、それなりに記号化されていてどれがいいものかある程度までは理解できるものの、短期滞在の旅行者にしてみればあまり役に立たない代物で、どれが一番お勧めかという取っ掛かりが得られないでいたからだ。

サンデマンの見学用ワイナリー

早速翌朝訪れたSANDEMAN社のワイナリーで40年物を見つけることができた。(”世界一”といわれるポルトがこんなに簡単に手に入ることが少々意外だった。)ワイナリーの係員によれば、ボトルの栓を開けてから約8ヶ月は大丈夫ということだ。私にとっては問題なく賞味期限内に飲み干せられる期間だ。

川沿いを走る路面電車がかわいい

こうした20年や40年樽の中で熟成させたポルトワインのほか、当たり年の単一ブドウ品種だけで2年間樽熟成させてそのあと長期間にわたって瓶熟成させるヴィンテージポルトというのも売られている。この辺を探求し始めるとポルトワインの多様性と奥の深さも味わえるのだろうが、ポルトガル(イギリスも?)以外でそれを探求するのは難しそうだ。


いずれにしても、今回のポルトガル旅行は、私の中でポルトワインを再評価するい
い機会になった。(M)
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黄金の丘

2009-11-13 00:29:07 | ワイン(M氏より)
パリからジュネーブに戻るちょうど中間地点にボーヌの街はある。

かつてパリに住んでいた時代から我が家が最も多く訪れているヨーロッパの街は間違いなくこのボーヌだ。

ボーヌの街で遅めの昼食をカフェで食べた後、日が暮れる前に葡萄畑に行くことにした。
目的は、この時期葡萄の木々が黄や赤に紅葉して黄金色に輝き、文字通りコートドール(Cote d'Or:黄金の丘)となるのを見るためだ。

黄金の丘から見るボーヌの街

ボーヌの1級畑がある丘

これも。

まずはボーヌの街の裏の畑に行き、それからブルゴーニュの白ワインの頂点であるモンラッシェまでドライブすることにした。

ムルソーの村の入り口の看板。この辺りから暗くなり始めた。

途中、気球がムルソーの畑に下りてきているのを見かけた。

葡萄畑ギリギリまで降りてきた気球

この後、再び上昇していった。黄金の丘を気球の上から楽しむ趣向なのか。


グランクリュ(特級)街道の看板

モンラッシェの畑に着くと、同じように畑を見学に来ている家族に会った。
モンラッシェの石版

とっくに葡萄の収穫は終わっているので、積み残しの葡萄があるか見てみたが、きれいに摘み取られていて残っていなかった。
土は意外と茶色い粘土質で大理石の破片のような小石が混じっている。

その小道をはさんだ斜面のすぐ上はシュバリエ・モンラッシェ(Chevalier-Montrachet)の畑だ。

シュバリエ・モンラッシェの畑。石の門がイカしてる。


南からボーヌの街に行く並木道


要はこれだけなんだが...、何度来ても楽しいのだ。(M)
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大人なワイン Domaine Jean Macle Cote du Jura

2009-10-04 22:39:32 | ワイン(M氏より)
(しろみによる更新が滞っているので、つなぎです。)


若いとき、私は鯖の味噌煮が苦手だった。鯖の塩焼きも美味しいと思わなかった。
あのにおいが嫌だった。
わかめときゅうりの酢の物もだめだった。
あの酸っぱさが嫌だった。

でも大人(オヤジ)になり、そのにおいや酸っぱさゆえに大好きになった。

”なんで若い時に嫌いだったものが、今はこんなに美味しく感じるのだろう。”

具体的な食べ物に違いこそあれ、こんなふうに年とともに味覚が変わった覚えのある人は少なくないのではないか。

そんなことをジュラ地方のサバニャン(savagnin)という葡萄で造ったワインを飲むたびに思い出してしまう。
仮に、自分が20代の時にこのワインを飲まされていたら、きっと「苦手な味」と答えたであろう。



いろんな人とワインを飲むことがあるが、ジュラのワインを前にして、その人からワインの感想を聞く時ほど興味深い瞬間はないかもしれない。

「ちょっとこれは苦手です。」という返事を聞くたびに、「うーん。あなたの味覚はまだお子ちゃまですね。」と余計なことを口走りたくなってしまう。

逆に、「これは美味しいワインですね!」という答えを聞くと、「おぬし、なかなかやるな。」とつい心の中で叫ぶのだ。


石灰岩に粘土質が混じったジュラ期の地層を含む土壌から産出されるワインは、きちんと造られればミネラル感が充実したトロトロ感のあるワインになる。ジュラのワイン畑の地層は、ブルゴーニュの黄金の丘(Cote d'Or)とほぼ同じといわれている。このため、この地方でもブルゴーニュで使われるシャルドネという葡萄を使った白ワインがあって確かに優れているのだが、やはりジュラの白ワインの主役はサバニャン種だ。

この地方で造られるvin jaune(直訳すると「黄色いワイン」)も、このサバニャンという葡萄から造られる。黄色いワインは、味と香りがドライシェリーに似ているが、これはシェリーと似た製法をとっているためだ。
サバニャンで作られる普通の白ワインは、黄色いワインでなくてもシェリーっぽい香りがする。これが慣れてくるととてもいい。他に似たタイプのワインを見つけることは難しい。

今日のワインは、Chateau-Chalonという美しい村にあるDomaine Jean MacleのCote du Jura。



サバニャン特有の香りと味。
凝縮したワインの質感。
特有の酸味とその後に感じられる糖分。
開けた瞬間から美味しいが、時間とともに香りも味もどんどん変化していく...。
そう、この変化こそが素晴らしいワインの条件だ。

今回妻と二人で飲んでしまったので、これを好きかどうか聞いて冷やかす相手がいないのが残念だ。
いつもはCote du Juraというと、Arboisという村の造り手のものを飲んでいて、シャトーシャロンの造り手のものを飲んだことがなかったので、今回が初めての試みとなった。Vin Jauneタイプのワインで有名な造り手だが、このドライの白も素晴らしかった。

ジュラはジュネーブから一番近いフランスのワイン産地なので、また近いうちにまた行かなくては...。(M)
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今年も葡萄収穫

2009-09-16 20:11:53 | ワイン(M氏より)
昨年に引き続き、今年もブルゴーニュに葡萄収穫に行ってきた。

日曜早朝の収穫開始に間に合うように前日夜に現地入りし、パリから土曜の収穫に参加した面々と夕食をともにして、翌朝気合を入れて朝7時半に集合場所の造り手のオヤジの家に行くと、マダムに「今出発したところだ」といわれ、いきなり出鼻をくじかれてしまった。・・・もう少し余裕を持って行けばよかった。

30分くらい迎えを待って到着したのはSavigny-les-Beauneの畑。


サビニィの畑

既に葡萄摘みを始めているオヤジさんに家族4人で挨拶をして早速収穫開始。

朝の冷たい空気が心地よい。




今年は頑張る次男

今年は8月の猛暑とその後も引き続き天気が続いたおかげで葡萄はほとんどカビがなく、葡萄がよく熟してパンパンになっている。去年のヴォルネイの畑と場所は異なるので単純な比較はできないが、つまんでみた味からして、葡萄の出来はとてもいい。(ちなみに去年の葡萄の画像はコチラ
葡萄の房の数も昨年よりも多いようだ。開花の時期にも天気が続いたせいなのかな。




パンパンに熟した葡萄


指揮を執るオヤジさん

ジュネーブ当日出発日帰り組の知人が遅れて合流したタイミングで、サヴィニィの畑からBeauneの畑へ移動。
ボーヌの畑の葡萄はサビニィのものに比べると小粒なものが多くて、味もちょっと違う。葡萄の味の比較ではサビニィの方が美味しいか。オヤジにそのことを伝えると、葡萄の味は必ずしもワインの味にそのまま反映されないと言われた。まあ、それはそうなのかもしれない。


オヤジの後継者であるルイさんに切った葡萄のバケツを渡す次男

子供たちはサビニィではそれなりに頑張ったが、ボーヌの畑では適当に切り上げて日帰り組の子供たちと一緒に遊びに夢中だ。

12時になり、午前の収穫はおしまいということで、翌日は仕事だし、今回はここで失礼することにした。
4時間しか摘まなかったが結構疲れた。

そのままジュネーブからの参加者みんなで昼食を食べに行こうということになったが、ワインが購入できるかオヤジに聞くとOKというので、そのままオヤジさんのところに行き、既に売り切れと聞いていた2005年のムルソーを2本だけ売ってもらった。(2005年はこれまで飲んだオヤジのムルソーで一番美味い。)

おかげさまで、今年もブルゴーニュで葡萄収穫を満喫することができた。感謝、感謝(M)。
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一本のワインと向き合う

2009-07-23 22:33:41 | ワイン(M氏より)
久しぶりにいいワインが飲みたくなった。


最近、イタリア旅行のときに仕入れた安ワインを試したり、いいワインでも大人数で飲んだりと、一本のワインにじっくり腰をすえて向かい合う機会がなかったので、久しぶりにこれをというワインを開けてみることにした。

今回選んだのは、ギュッファン・ゼナンのマコン・ピエールクロ・シャビーニュ2004年(Domaine Guffens-Heynen Macon Pierreclos Le Chavigne 2004)。

これです。


ボトルを開けた瞬間から全開。

強烈な甘い香り。
完熟葡萄、ミラベル、黄桃、パッションフルーツ、蜂蜜...。

いや、それらを並べても十分表現しきれない渾然一体となった強烈なこの香りは何なのか。


口に含むと、その芳醇な香りが口の中いっぱいに広がり、その余韻はいつまで続くか見当もつかないくらいだ。
そしてその十分な酸味のために、両頬の内側の唾液を出すところが刺激されっぱなしだ。


この悦びをどう表現したら良いのだろう。
どうして偉大なワインはこれほど人を魅了してやまないのか。

時間が経つにつれて、香りも味も微妙に変化していくが、その全体的な特徴は変わらない。


ボトルを3分の2くらい飲んだところで、いい気持ちになって居眠りしてしまった。

気がつくともう深夜になっていた。
飲みすぎるとよく頭痛がするものだが、まったく問題ない。


翌日、仕事から帰ってから余った3分の1をベランダに出て飲んだ。
力強さと濃厚なワインのスタイルはそのままだが、酸味が若干おとなしくなっている。
でも、相変わらず魅力的なワインだ。

2005年に訪れたピエールクロの畑


”ワインを理解するためには、テーマを決めて何本かを同時に比べ飲みすることが一番”

ワインに関心のある知人にはそう勧めているし、それ自体は間違っていないと確信してもいる。

しかし、このマコンは、”一本のワインを心行くまで堪能することも、ワインの魅力を理解する上ではずしてはいけないことなのだ”と改めて感じさせてくれる、そんなワインだった。(M)
Comments (2)
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