先週末、ブルゴーニュにブドウ収穫の手伝いに行くついでに美味しい夕食を食べようとレストランをさがしていたら、面白そうなところを見つけた。
有機農法の食材を使ったレストランで、なにせ、メニューが20,28,30、33ユーロという安さに加えて、ウェブサイトによるとワインリストがものすごく充実している。
"ワインリストが充実したレストランに美味しくない店はない"というのが持論の私は、早速電話で予約してみることにした。
「子供のメニューはないので、子供も20ユーロのメニューをとってくれ」という。この店、ワインショップを兼ねたレストランなので子供を客として想定していないようだ。
また、「ジュネーブから車で行くので、到着は夜の8時か8時半くらい」と言ったら、「どっちか教えてほしい」と言う。着いてみてわかったが、30席足らずのキャパシティの店を客の到着時間をばらつかせながら少人数で店を回している。
結局8時過ぎに着いたが、「申し訳ないが食事のサービスは8時半からになる」との説明があった。
また、注文をとる段になり、大人3人がそれぞれちがう前菜を注文したら、「おっとそれは時間がかかってしまうな」という一言がこぼれた。
いちいち想定外のところで引っかかる店だなと思ったが、もしかしたら、”一皿入魂”の料理が出てくるのかもしれないという期待も逆に高まった。
ワインの方も、パリ以外のフランスやジュネーブでなかなかお目にかかれない、ワイン界の革命児達(Vignerons rebelles)という本にも「ソローニュ地方(ロワール)の巨人」として紹介されているClaude Courtois氏の赤ワインRacines(根っこという意味)がある。いわゆるテーブルワインだが、樹齢が100年を超えるというおばけワインである。
レストランで飲めるだけでなく、ワインショップの価格も表示されていたので、出発する前にメールで持ち帰り用に何本か注文しておいた。

子供用に頼んだコーラもビオ。なんとガス水はシャテルドン!
もちろん、ブルゴーニュに来て、ブルゴーニュ以外のワインをレストランで注文するような非礼をするわけにはいかない。レストランで注文したのはPrieure Rochの Nuit-Saint-Georges 1er cru。
実は、これとHenri GougesのNuit Saint Georges Les Pluliers 2007やGeorges Roumierの Chambole Musigny Les Cras 2006との3つをとりあえずの候補にして、店主にお勧めはどれか聞いたら、後者の2つは伝統的なタイプだしまだ早いから、Rochがいいとの即答だった。
Rochはいわゆるビオワインなので、しろみはあまり好きなタイプではないが、ここは敢えてお勧めにしたがってトライしよう。
このワイン、酸化防止剤の使用を避けて微炭酸を残すことで酸化を防ぐ手法のワイン特有の香りがはじめは強かったが、時間とともに急速に変化し、開いてきた。
この種のビオワインは、その土地本来の特徴(テロワール)を覆い隠してしまう場合が多い気がするが、このワインは時間がたつとそのテロワールの特徴がしっかり出てくるように感じた。
さて、食事だが、前菜は次の3つ。
スライスしたパンの上に緑トマトを煮詰めたジャム、その上にイベリコ豚のチョリソーを乗せて軽く焼いたもの。なんでこんなにうまいのかというくらい素晴らしかった。
•Tartines de Pain Brioché de la Gauloise à la Confiture de Tomates Vertes, Chorizo Ibérico et Osso Irati, Bouquet de Pourpier à l'Huile de Noix de Conques
こだわりの材料を使ったトマト・モッツァレーラという感じ?
•Tomates Marmandes Confites à l'Huile d'Olives du Mas de Gréoux à l'Ache des Montagne et Vanille Bourbon, mozzarella di Bufala Campana
豚の三枚肉とインゲン豆サラダ
•Lard Epais de la Ferme des Buis Confit au Raisiné et Vinaigre de Surard,Salade de Flageolets Frais
次にメイン。
ホロホロ鳥の手羽先にその油を使ってキャラメル化したソース。これも素晴らしい。
•Ailerons de Pintades du Louhanais Caramélisés dans leur Jus, Mousseline de Haricots Verts à l'Huile d'Amandes Douces
この鴨の胸肉を食べたらほかのは食べられなくなる、というくらい美味しかった(一切れしか食べてないけど)。
•Magret de Canard Mulard, Jus aux Senteurs de Cèpes ,Cuisines de Belles Carottes
ちなみに、この本日のグラスワインの黒板を見ると...。
Denis MortetのFixinがなんと9ユーロ。
最後にこれも試したくなったので、デザートの代わりに、「もし既にボトルを開けているのであれば、一杯飲みたい」と伝えると「もちろん開いている」ということなので頼んでみた。
そうして戻ってきたおじさんが、「やっぱり開けていないので、別の作り手のFixinを無料でプレゼントする」と言う。
「もし開いていれば・・・」というこちらの配慮への返礼なのか。恐縮していただいたそのワインもすごく美味しかった。
一言で言うと、”久々の発見”といえるレストラン。
今度、ボーヌに行くときもここで食べることにしようと思う。お勧めである。(M)
Le Comptoir des Tontons
tel: 0380241964
http://www.lecomptoirdestontons.com/