「この日は何か用事ある?無ければ子どもを少しの間、預かってもらいたいんだけど」と、息子から連絡があった。
カレンダーを見るまでもなく、二つ返事で引き受けた。
孫と過ごせるなんて、またとないチャンス。
夫は「大丈夫か?親がいなくて泣かないか?」と心配していたが、泣いたら抱っこすれば何とかなるだろう。抱っこできることさえ嬉しい。
当日は、うちで昼食を食べてから出かけるという息子夫婦の為に、朝から張り切って料理を作った。
孫はまだ六ヶ月なので、残念ながら一緒にご飯は食べられないが、息子夫婦は喜んで食べてくれた。
ところが食べている間、何度も孫はぐずって泣き出し、泣くと即座に息子夫婦は交代で抱っこしてあやしている。
眠たいのに眠れないという状態に陥って、ぐずっているらしい。
予行練習で抱っこを代わってもらったが、いつもと違うとわかるのか、余計に泣かれてしまった、、、
夫には大丈夫と言ったが、本当に大丈夫だろうかという不安がムクムクと沸き起こってくる。
ところで、息子夫婦は親孝行のつもりで孫を預かって欲しいと言ったのだと思う。
息子夫婦は、今年になってお嫁さんの実家近くへ引っ越した。
実家のお母さんに育児を手助けをしてもらう為で、向こうの家も初孫なので、ご両親共に喜んで手伝って下さっているそうだ。
うちと同じで二十数年ぶりの赤ちゃんの世話は、向こうのご両親もきっと大変だと思うが、お嫁さんにとって実の親がそばに居てくれるのは本当に心強い。
いつも手伝ってもらっていると聞いて、やはり実家の近くに住んでよかったと思う。
そんなわけでお嫁さんのご両親に比べて、孫に会う機会が少ない私たちに気をつかってくれたのだろう。
さて少し眠って孫の機嫌が良くなったところで、息子夫婦は私たち夫婦の不安をよそに出かけて行ったのだが、、、
最初はよかった。
最初の10分くらいは、布団の上で機嫌良くしていたのだけど、徐々に雲行きが怪しくなってきた。
ぐずり始めたので、早速抱き上げてやると機嫌が直った。
そこで、そっと布団に下ろすとまたぐずり始める。
慌てて抱っこして、機嫌が直って下ろすと泣く。
抱っこ→泣き止む→下ろす→泣く→抱っこ、、、と無限ループにハマってしまった。
これが自分の子なら、多少泣いてもそのまま寝かせていたと思うが、孫となるとそういう訳にいかず、ついつい泣かせないように抱っこしてしまうので肉体的にも大変だった。(腰が、、、)
向こうのご両親のご苦労がよくわかった。心からありがとうございますと言いたい。
でも抱っこしてあやすと、声を上げて笑ってくれるのが、たまらないかわいさで、夫にも手伝ってもらって交代で抱っこして、大変だったけど楽しい時間だった。
息子夫婦が外出から戻り、三人で帰って行ったあとに夫が言った。
「赤ちゃんの世話って大変だな。親の手も借りずに、よく(私が)三人も育てたよね。表彰してあげたいくらいだ」
この言葉は今更だけど、本当に嬉しかった。
親の助けが無くて、何人もの子育てしている人は世の中にたくさんいるので、それが当たり前だと思っていたが、こうしてあらためて夫に言われると、涙が出るほど嬉しかった。
手伝ってくれる親が居れば、また違った人生になっていたのかもしれないが、子どもと一緒に泣いたり笑ったりしながら、夫と二人で子育てができたことは、私のこれまでの人生の中では、ダントツで輝いている時代だった。
不思議なもので、長い年月と共につらかったことより楽しかったことしか思い出さなくなったので、余計に輝いた時代に思えるのかもしれないけど、、、
さて、息子夫婦はきっとまた気を使って「子ども預かって」と言ってくるかもしれない。
その時は「もちろん!」と答えよう。