196万PV達成!漫画史研究家・本間正幸監修【少年画報大全】(少年画報社・現在三刷)更新復活

【20世紀冒険活劇の少年世界】メトロポリス漫画総合研究所(since1997)から、昭和の映画、出版美術、音楽を!

少年の日、ビリーパックに憧れて!!【2009年7月3日の記事の再録】

2012-03-18 18:56:07 | 「少年探偵王」(光文社文庫)「ビリーパック」追悼!河島光広先生!!
今日の画像は、(ビリーパック)河島光広先生少年画報社復刻版全4冊。


僕がまだ、小学生の頃の話だ。
藤子不二雄@先生の(まんが道)の巻末広告に紹介されていた探偵漫画の(ビリーパック)。
黒っぽい背表紙で表紙も斬新。
近くの本屋では、大人向けの棚に置いてあった。
買って読んで見ると非常に面白い。
随分昔の作品らしいが、古さをあまり感じなかったし当時探偵物は珍しかった。いっぺんで虜になってしまった僕は、次の日、おこづかいをはたいて残り3冊をいっきに買う。
当時のおこづかいが月500円の時に一冊380円もしたから、おやつの駄菓子は我慢しなければならない。
それからの僕は、(ビリーパック)の作品世界に夢中になってしまい、思わず出版元である少年画報社に連絡を入れて、担当編集者を訪ねていったほどだった。
その時に対応してくれたのが桑村誠二郎氏。
(週刊少年キング)で始まり、石森章太郎先生の代表作となる(サイボーグ009)の初代の編集担当をし、(ヤングコミック)編集長として青年誌で日本一の売り上げを記録した伝説の編集者である。
当時は、(週刊少年キング)の編集長を更迭され、吉田竜夫先生の(忍者部隊月光)を増刊号にまとめるなど、かつての名作を復刊する仕事を担当していた。
僕は、(ビリーパック)のオリジナル単行本を見せてもらい、そのコピーを部下である戸田利吉郎さんにとって貰う。
そう、後に(少年画報大全)を企画した編集担当役員であり、昨年より少年画報社の社長となられたあの戸田さんにだ。
22年後、再び訪れた少年画報社で戸田さんと再会し、本来米沢嘉博氏に依頼され、そのまま手付かずだった企画に新人の僕が代役として大抜擢されることになる訳だから宿命的なものを感じざるをえない。
桑村さんとは、(少年画報大全)発売後に再会を果たす。
当時編集プロダクション・サードハウスとして(ヤングキング)の編集や、(ワイルド7)で知られる望月三起也先生の版権管理の窓口をしていた。
サードハウスで私は、編集の実務や版権管理について半年間学んでいく。
ただ、当時少年画報社の編集局長だった筧悟さんからは、


桑村さんと本間くんとでは、お互い我が強すぎて絶対長くは続かない


と予言されていた。
その予言は的中する。
どうやら、私は、漫画家さんの裏方に徹する編集者というよりも、漫画コレクターであり、出版プロデューサーであり、漫画史研究者である今のライフスタイルの方が向いているようだ。
神奈川県立歴史博物館で行われたFIFA ワールドカップでのサッカー漫画の展示監修を請け負う際、桑村さんと意見が対立し再びフリーとなる。


私は、添乗員のアルバイトをしていた大学生時代にトレンチコートを買うが、それは、(ビリーパック)に憧れてである。
その頃は、冬だけでなく一年中着ようとしたのだが、季節が変わり夏が近付いて汗をかきながら着ていたら旅行会社の皆に笑われた思い出がある。


(少年画報大全)発売後、中野晴行さんからの紹介で、推理作家の芦辺拓先生から会いたいとの申し出がある。
光栄に思いお会いすると、芦辺先生はその時、光文社文庫の企画で(少年探偵王)というアンソロジーの編集長をしており、江戸川乱歩の少年探偵団シリーズの未収録作品や、高木彬光、鮎川哲也といった日本を代表する推理作家の作品と共に、唯一漫画作品として(ビリーパック)の収録を考えていた。
私と同じように(ビリーパック)の復刻版を発売時に見ていた推理作家の芦辺先生は、(ビリーパック)の推理作品としての素晴らしさを評価されていたのだ。

さすがは、漫画史に燦然と光り輝く不朽の名作(ビリーパック)。

さすがは、推理作家芦辺拓先生。

最後に(ビリーパック)オリジナル単行本巻頭にある河島光広先生から読者へのメッセージを紹介してこの項を締め括ろう。


ーこの本をごらんになるみなさんへー


みなさん。
名探偵のビリー・パックは、世の中の正しい人たちが平和なくらしができるように、よわい者をいじめたり、警察の目をぬすんで不正なことばかりしている悪漢どもを、徹底的にこらしめていく勇敢な少年です。
どうかみなさんも、このビリー探偵のように、心の正しい、りっぱな少年になってください。

河島光廣
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本格推理マガジン少年探偵王

2009-03-26 22:15:46 | 「少年探偵王」(光文社文庫)「ビリーパック」追悼!河島光広先生!!
さて、昨日に引き続き、今日も本の紹介です。
少年画報大全監修後、次に私が選んだ仕事が光文社文庫より2002年4月20日発行の (少年探偵王 本格推理マガジン) です。
メジャーデビュー作となった少年画報大全が、2001年7月の発売に際して、朝日新聞・毎日新聞・読売新聞夕刊・日本経済新聞で記事になるなど出版界でちょっぴり話題を呼んだため、これからは本格的な研究者としての生活が出来ると考えた私は、編集者としての実務と、漫画家さんの著作権管理について学ぶため、サードハウスの桑村さんの所で編集見習いとなりました。
編集プロダクションである有限会社サードハウス代表取締役社長の桑村誠二朗氏とは、いかなる人物であり、私とどういう繋がりがあったのかそれは明日のブログにて。

さて、本題である少年探偵王についてですが、文庫の雑誌/ぼくらの推理冒険物語 として鮎川哲也監修、芦辺 拓編として発行されました。
収録内容

* 江戸川乱歩
まほうやしき
古賀亜十夫・画
ふしぎな人/名たんていと二十めんそう
岩田浩昌・画
かいじん二十めんそう
藤子・F・不二雄/しのだひでお・画

秋山憲司 ( 回想の乱歩・洋一郎・峯太郎)

* 高木彬光
吸血魔

二上洋一(吸血魔)解説

* 鮎川哲也
空気人間 谷俊彦・画
呪いの家 谷俊彦・画
時計塔 谷俊彦・画

山前 譲 鮎川哲也氏の年少者向け推理小説

* 河島光広
ビリーパック 恐怖の狼人間

本間正幸 (ビリーパック)解説

はじめに
解説 僕らも少年探偵団!芦辺拓

はじめにの中にこの本の特色が説明されているので、芦辺さんの文を一部引用させて貰う。

鮎川哲也先生より編集長職を受け継ぎましての本格推理マガジン、前回大好評をいただいた(絢爛たる殺人)に続く第二弾は、ガラリと趣向を変えて幻の"少年もの"傑作選となりました。これまで以上に珍しい作品群をとりそろえ、相当にコアな探偵小説愛好家といえど未開拓に違いない分野だけに、存分にご満悦いただけるのではないかと思います。(中略)
今回は収録作品の性質上、特に各編解説に力を入れまして、いつもご尽力いただいている山前譲さんのほか、少年小説研究の第一人者であられる二上洋一さん、昨年(少年画報大全)で注目された本間正幸さんらに寄稿をお願いしました。中でもポプラ社で江戸川乱歩氏をはじめ、山中峯太郎氏訳のシャーロック・ホームズ、南洋一郎氏訳の怪盗ルパンシリーズを担当された秋山憲司さんの回想は、かつてそれらに熱中されたみなさんにとって、このうえなく興味深い贈り物となることでしょう。(後略)

そして、解説においても

解説者の本間正幸氏は、何とほぼ全ての別冊付録を収集し終えたそうで、ぜひとも今回の収録がきっかけとなって、(ビリーパック)の大々的な復刻が行なわれることを期待しております。
推理作家芦辺拓氏の私に対するイメージがわかる人物評です。

さて、この本の解説のきっかけですが、中野晴行氏からの紹介で芦辺拓先生から直接連絡をいただいた上での依頼によるものでした。
その後、当時まだ関西に活動拠点があった芦辺さんが上京してきた際に初対面となり、一緒に古本屋巡りもしました。
創元社の鮎川哲也賞のパーティの 席上では、有栖川有栖先生や二階堂黎人先生にも御逢いでき、今日まで続く推理作家の先生方との交流は、この本がきっかけとなったのです。
二上洋一先生との付き合いは、出版美術研究会の席上でこの本の話題となり、始まりました。
ビリーパックについては、後日また話しを致します。漫画についての研究者としてのスタンスが、他の人達と違うのはこの頃から既に始まっていたのです。

追伸
現在、この少年探偵王は、品切となっております。
初版発売時から好調な滑り出しだったのですが、まだ増刷はされておりません。出版された部数は確か17000部になります。
この後より現在まで続く江戸川乱歩再ブームのきっかけの一つとなった本として推理作家の間では、高い評価を受けている一冊です。古本屋で見つけたら即買いの逸品です。
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明治・大正・昭和の大衆文化

2009-03-25 20:37:47 | 「少年探偵王」(光文社文庫)「ビリーパック」追悼!河島光広先生!!
先程話した本の画像です。ちなみに、一般の書店でこの本を見つけたことはまだ一度もありません。
この本を買った事があると言う人がいたら、コメント下さい。
昨日は、昼から護国寺のロイヤルホストで成蹊大学文学部教授の浜田雄介先生と、二上洋一先生の追悼文集作成についての打ち合わせをした後、講談社へ向かい、二人で調べものをしました。
その後、所属する旅行会社へ行き、この春以降の予定についての話しあい。
新規事業の立ち上げのため、GWまで当分の間休みを貰うこと了解してもらう。
昨年、添乗員としては後輩にあたる3歳上の営業マンが辞めてしまい、男性添乗員としては、最古参となってしまった。
この間、日本旅行時代同期の友人が仕事で関西から東京に来たので、神保町であったら、課長になっていた。
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成蹊大学文学部学会編の漫画論文

2009-03-25 19:18:57 | 「少年探偵王」(光文社文庫)「ビリーパック」追悼!河島光広先生!!
今日は、成蹊大学文学部学会編として昨年の春に彩流社より出版した
(明治・大正・昭和の大衆文化)
について取り上げてみたい。
帯に(探偵小説、少年漫画、婦人雑誌、演劇、パンク・ロックなど古さと新しさのイメージの落差を過去の大衆文化がいかに巧みに操作しているかを探る)とあり、各分野の研究者6人の共著となっている。
(定価2200円税別)
特に漫画については、
(少年漫画の誕生とその変貌についての一考察ー街頭紙芝居の墓場奇太郎はなぜゲゲゲの鬼太郎へと変貌を遂げたのかー)
と題して、大正6年に発行され、今回新発見となる幻の(少年ポンチ)特集号の紹介から昭和39年の青林堂ガロ誕生の流れまでを、今までの漫画史における定説を根底から覆す新たな視点で追ってみた。
2001年発行の少年画報大全とこの本の二冊さえあれば、あなたも日本の漫画文化の歴史を外国の人達にも簡単に説明できる。
執筆者を紹介しよう。

第一章 帝都騒然探偵実話ピストル強盗を捕縛せよ!
浜田雄介
成蹊大学文学部教授。(新青年)研究会会員。日本近代文学。

第二章 は前述した私の論文。

本間正幸
メトロポリス漫画総合研究所主宰。漫画史研究。社団法人日本漫画家協会、無声映画鑑賞会、日本出版美術研究会所属。

第三章
一九二〇年代日本・都市と女性

バーバラ 佐藤
成蹊大学文学部教授。近代日本史、女性史。

序章
(伝統の再創造)-誰が、なぜ、どのように?

第四章
曽我廼家五郎の実験演劇

日比野 啓
成蹊大学文学部准教授、こまばアゴラ劇場学芸員。演劇史・演劇批評。

第五章
(芸道もの)としての新劇

神山 彰
明治大学文学部教授。近代日本演劇。

第六章
メジャー・レーベルと契約した日本最初のあのパンク・ロック・バンドの一九八〇年のデビュー・アルバムから二〇〇六年の結成二六周年記念ボックス・セットにおよぶ音源・映像・談話・記事を概観し、いまだCD音源化されない最初期音源を手がかりに、輸入文化であるロックないしパンク・ロックがいかに日本人の誠実な自己表現となりえたかをさぐる日本文化論

源中由記
東京芸術大学非常勤講師。アメリカ文学・文化研究およびポピュラー音楽研究。
この本は、成蹊大学文学部学会が(明治・大正・昭和の大衆文化)をテーマに学内の学生がテキストとして使える各分野おそらく最良の研究水準と実績ある研究者の論文を広く大学内外から揃えたものである。
そのため、学内での生徒への販売を優先しているため、一般書店へはあまり配本されていない。
けれども、市販品なのでお近くの書店からの取り寄せや、版元への直接注文も可能である。

私が、いままで寡作なのには理由がある。
少年画報大全監修にあたって、担当役員だった少年画報社の戸田利吉郎さん(昨年夏より社長に就任)から、(これからは、おまえさん仕事をきちんと選べよ。せっかくこれだけのいい本を作ったのにその後に変な事をしちゃあ全てがパアになる。この本は、俺がいるうちは絶版にはしないから。在庫が無くなれば必要な分だけその都度、刷るからな。)
去年3刷をした少年画報大全は、発売してから9年の月日がたっているが、、今でも少年画報社玄関のショーケースの中に飾られている。
漫画研究の入門書や、漫画の戦後史をうたっていても、その本にエロやパロディ、やおいやボーイズラブなど親戚の子供達に自分の仕事として恥ずかしくて見せられないような本には関わりたくない。
エロやパロディを研究することが好きな研究者達は、仲間うちで楽しく過ごせば良いだろう。
特に最近の研究者にはそのような人達が多いような気がする。
私が目指すものは、特殊な人達ヘではなく、普通に漫画を愛する人達に向けた、正しい日本の漫画の歴史を伝えていくことである。
私は、漫画史研究者として、グループのリーダーではなくパイオニアを目指している。
今回のこの本の論文に関しては、日本の漫画史研究の水準を遥かに越えたものであると自負している。
漫画史研究はこの論文により、街頭紙芝居や絵物語を含めた大正末期からの少年漫画誕生の流れを初めて解明できたのである。

追伸
この本に関して、発売時丸山昭さんからは、メールでの賛辞を、同志社大学教授の竹内オサムさん、田河水泡先生のお弟子さんでのらくろの執筆権継承者であり、名探偵カゲマンで知られる漫画家の山根青鬼先生、少女小説研究の第一人者であり、算法少女で知られる児童文学者の遠藤寛子先生、同じく児童文学者の森下真理先生からは葉書での励ましの言葉をいただきました。
先日、亡くなられた二上洋一先生からは、日本出版美術研究会の会合の席上で
(私が知る限り、少年漫画の歴史については、この本が一番詳しく書かれている。)と評価していただけたことが思いだされます。
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