加藤紘一 『劇場政治の誤算』 ( p.107 )
金融危機に対して、日本は ( 事前に ) 対応を検討していなかったが、中国は検討していた、と書かれています。
これを読むと、日本はどうなるのだろう、と思います。米国のバブル崩壊は事前に予測されていたのであり、「日本における政府の担当局長レベルの認識は、それほど危機感を持つ必要はないというものでした」 というところが、どうにもひっかかります。
また、加藤氏の 「ドルの信頼の確保は必要なことのように思います。そのときの協力について、どう考えますか?」 に対して、胡錦濤氏は即座に 「その通りです。国際金融の安定、世界マクロ経済の発展のために、我々中国は日本、アメリカ、その他の国を含めて共に協力をしていく覚悟があります」 と答えた、というのですが、
これをもって、中国は米ドルを支えるつもりである、と読んでよいのでしょうか?
普通に読めば、中国は米ドルを支えるつもりである、となりますが、そこまでは言っておらず、「国際金融の安定、世界マクロ経済の発展のために」 協力する、と言っているだけだとも受け取れます。
真相はどちらでしょうか?
ある民間エコノミストの試算によると、〇八年の世界金融危機を迎えるまで、世界の金融資産総額は、一九九〇年に四〇兆ドルだったのが、二〇〇〇年にはその二・五倍の九〇兆ドル、〇七年には一八七兆ドルと実体経済(名目GDP)の約三・六倍に膨れ上がっていました。どう考えても膨らみすぎでした。これだけの膨大なお金を、いったいどこから集めてきたのでしょうか。単純に考えて、世界にこれだけの金融資産があるということは、裏を返せば膨大な負債が発生していたということです。
こんな自由を許してはいけない、まやかしはいつか必ず化けの皮がはがれると、慧眼をもつ識者はとっくに予言していました。その一人であるエコノミストに、私もかれこれ一五年ほどご教授を願っていました。そしてその人の言うとおり〇八年九月、リーマン・ブラザーズが破綻したのです。
〇八年の夏頃、日本における政府の担当局長レベルの認識は、それほど危機感を持つ必要はないというものでしたが、私はそうではないと思っていました。リーマン破綻一週間前の〇八年九月七日、私が日中友好協会の会長として訪中した際に、胡錦濤国家主席と約一時間会談をする機会があったので、これは大変な好機だと思い、事前に「いずれアメリカから飛び出してくるかもしれないとんでもない金融危機にどう対応するつもりなのかお聞きしておきたい。ブリーフィングを上げておいてください」と、武大偉外務次官に申し入れました。すると武氏は即座に「それはまったく必要ありません。主席は時間があれば、予想される国際金融危機の対応策で専門家を集めて会議しています。思う存分問題提起してください」と言われました。このときすでに中国政府は、対策を検討し始めていたのです。
対談の席で私は約束どおり質問をしました。
「いずれ大変な国際金融危機がきたときに、アメリカを助けられるのは約二兆米ドルを持っている湾岸産油国と、中国の一・八兆円の外貨準備高、そして約一兆ドルの日本の金融力でしょう。それをもって支援することは国内政治にかなりのリスクがかかりますが、やはりドルの信頼の確保は必要なことのように思います。そのときの協力について、どう考えますか?」
すると胡錦濤氏は即座にこう答えました。
「その通りです。国際金融の安定、世界マクロ経済の発展のために、我々中国は日本、アメリカ、その他の国を含めて共に協力をしていく覚悟があります」
金融危機に対して、日本は ( 事前に ) 対応を検討していなかったが、中国は検討していた、と書かれています。
これを読むと、日本はどうなるのだろう、と思います。米国のバブル崩壊は事前に予測されていたのであり、「日本における政府の担当局長レベルの認識は、それほど危機感を持つ必要はないというものでした」 というところが、どうにもひっかかります。
また、加藤氏の 「ドルの信頼の確保は必要なことのように思います。そのときの協力について、どう考えますか?」 に対して、胡錦濤氏は即座に 「その通りです。国際金融の安定、世界マクロ経済の発展のために、我々中国は日本、アメリカ、その他の国を含めて共に協力をしていく覚悟があります」 と答えた、というのですが、
これをもって、中国は米ドルを支えるつもりである、と読んでよいのでしょうか?
普通に読めば、中国は米ドルを支えるつもりである、となりますが、そこまでは言っておらず、「国際金融の安定、世界マクロ経済の発展のために」 協力する、と言っているだけだとも受け取れます。
真相はどちらでしょうか?