言語空間+備忘録

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カネ余りは加速する

2009-07-11 | 日記
竹森俊平 『資本主義は嫌いですか』 ( p.61 )

 一方で経常収支赤字(対外資本輸入)を持つ国があれば、他方には必ず経常収支黒字(資本輸出)を持つ国がいる。それでは、アメリカの経常収支赤字の増加に見合って、経常収支黒字を増やしている国はどこか。統計を見回すと、新興国、とくにアジアの新興国が大幅に経常収支黒字を増やしていることが判明する。
 新興国の経常収支黒字が増加したことによって、いま、「先進国」対「新興国および開発途上国」の経常収支のポジションを調べてみると、なんと「新興国および開発途上国」が「先進国」に対して経常収支黒字を持っているというのが現状である。つまり、アメリカの経常収支赤字がすぐに念頭に浮かぶ現在の「グローバル・インバランス」の背景には、新興国の経常収支黒字の拡大があるということである。バーナンキがこの現象を指摘したのは二〇〇五年だが、それ以降、二〇〇八年でもこの傾向は続いている。つまり、現代の世界経済は「貧しい国々」が「豊かな国々」に資本を貸しているという「いびつな構造」を抱えていることになる。
 この「いびつな構造」は、「豊かな国々」の側の事情によって、つまり豊かな国々が過剰な支出をして、それをファイナンスするために借り入れまで必要な状態に陥ったことによって発生したのか、それとも「貧しい国々」の側の事情によって、つまり貧しい国々が、国内投資をファイナンスしてもまだ余るほどの国内貯蓄をするようになったために、対外資本輸出を行っているのか。
 これがまさに問題の焦点だが、この点を確認するためには「世界金利」の変化を見ればよい、とバーナンキは言う。なぜなら、「豊かな国々」の借り入れの増加が、「グローバル・インバランス」の原因である場合には、国際資本市場で資金需給が逼迫するだろうから、それを反映して、世界金利は上昇するだろう。他方で「貧しい国々」の貸し出し上昇が、「グローバル・インバランス」の原因である場合には、国際資本市場で資金需給は緩慢になるだろうから、それを反映して、「世界金利」が低下するだろう。しかるに、近年の「世界金利」は低下傾向にある。これは新興国、開発途上国側の、「貯蓄過剰」が「グローバル・インバランス」の原因である事実を示唆する。そうバーナンキは指摘する。


 アジアの新興国は貯蓄過剰であり、世界中でカネ余り現象が発生している、と書かれています。



 世界のカネ余り現象がいつまで続くのかが、問題になると思います。短期的な現象なのか、長期間にわたって続く現象なのかによって、状況は、まったく異なってくるからです。

 それでは、どちらなのでしょうか。カネ余りの原因はアジアの 「貯蓄過剰」 にある、というのですから、どちらなのかは、「アジアの人々が今後、消費をどれだけ増やすか」 で決まるはずです。

 しかし、現在、「先進国」 の側の事情によって、お金が大量に発行されていると思います。したがって、「新興国および開発途上国」 だけでなく、「先進国」 においても、お金が ( どんどん ) 余る方向に向かっているのではないかと思います。

 とすると…、いまとなっては、「アジアの人々が今後、消費をどれだけ増やすか」 は、あまり重要ではないかもしれない。カネ余りは終わらない、カネ余りは加速しつつある、と考えておけば間違いないだろうと思います。