MELANCOLICO∠メランコリコ!

ゆめと心理と占いのはなし
Por donde, amor, he de ir?
 Rosalia de Castro

母娘の深淵

2014-02-24 19:04:51 | PSYCHOLOGY2

1年ぶりくらいで、学生時代の友人が連絡をくれた。「仕事で近くまで来たんで時間あったら会おうよ」とのことだった。早朝に、自宅を出るときに、彼はぼくにメールをくれていたんだけど、寝坊なぼくはそれに気づかないままだった。クルマで彼のいる場所まで迎えに行き、一緒に少し離れたあるお店へ向かった。

彼は二つの仕事をしている。ある会社の嘱託と配偶者が社長をする小さな企業の社員だ。よく働き、配偶者の会社は彼の嘱託の収入でなんとか経営が成り立っている感じだ。何でそこまでして配偶者の会社を続けなくてはならないかという理由は、会社に巨額の借金を残して義父が亡くなり、その借金を返すためだという。破産した方が早いんだけど、彼の配偶者と配偶者の母親がその会社に強い思い入れがあって、「なくすことはできない」とのことだった。

父親が若かったころの会社は順調だったらしい。でも父親は家庭へお金は入れてもあまり時間は注がなかった。母と娘は身を寄せ合って暮らしてきて、お互い親離れも子離れも考えないままきた。そんな娘の初めての反抗は彼との結婚だった。詳細は省くとして、何しろ母親が望むタイプではなかったらしい。そして、娘を「奪った」負い目があったのか、彼は嫌悪の感情をぶつけられながら会社の経営を助けてきた。

悲惨なのは、その母親が彼をまだ受け入れないでいることと、母娘の癒着と確執が、その当事者たちを呪縛していること。子供が小さい時は、家族関係論的に一番弱いその子のところにひずみがきた。夫婦はずいぶんとお金と時間をかけて子供の治療に駆けずり回っていたのを知っている。

ただ、その子供は大きくなって家を出だけど、まだ母と娘はどうしようもない関係のままらしい。「よく喧嘩するようになって、いいことだと思うんだけど、その後お互い意地の張り合いになって、嫁がうつうつする時間が長くなった」と、自虐的な笑いをこぼした。

当然、二人には二人の理屈があるわけで、彼女たちから直接言い分を聞くまでは何とも言うべきでないだろう。ぼくの友人はもうその母親とは話ができない関係になっていて、「二人のことは二人に任せるしかない。ぼくは会社の借金を返していくだけ」と言う。「当事者だけにしたらどんどん泥沼に入っていくから、もう一度腹を割って母親と和解を試みては?」って言ったら、「あり得ない。やるだけはやった」ときっぱり。

理屈で整理できない深くて暗いものが横たわっている感じだ。心理学的にある一定の分析や分類はできるとしても、それで解決できるものなのかは疑問だ。すでに母親は70歳を超えた。万が一、母親が亡くなったとき、残された娘はどうなるのだろうか。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿