くるりぴょん、くるりこぴょん

忘れっぽいわたしのための記録。何年か先に、振り返ることのできる思い出を貯めるために。

わたしも魔法にかかりたい

2020-09-09 23:48:00 | プール&スポーツクラブ
プールでのこと。

「くるりさん、この間言い忘れちゃったんですけど、9月になったら手の習始めます」

「9月っていつの9月?」

「今日の9月です!」

平泳ぎの手は去年の春くらいに1度習ったけれど、キックが駄目すぎなのかそれっきりだった。

コロナで休館もあったけれど、わたしはまあまあ真面目にレッスンは受けてきたし、週に4日、割と真面目に練習もしてきた。

にも関わらず。平泳ぎはキックが難しいとは聞くけれど、いくらなんでも時間がかかりすぎじゃなかろうかと、スポーツクラブがコロナ休館に入る前に、平泳ぎは年内で卒業したいとHくんにお願いしてあった。

センスのないわたし。クロールでさえ習得に2年かかっているから、平泳ぎにもっと時間がかかっても不思議じゃないけれど、彼も医学生。いつまで教えてもらえるかわからない。

任せてください!と安請け合いしたトレーナーは年末まで4ヶ月となりヤバいと慌てたのか、それともそろそろ次の段階に進める時期がやっと到来したのかはわからないが(多分、前者)まあまあ、とにかく、レッスンは始まった。

「くるりさん、前に少しやったの覚えてます?」

「なんとなく。手がハート」

「うんうん、手はハートです」

そこから手取り、足取りではなく、手取り、手取り。

1で肩幅より少し広めに手のひらでお水を掻き分ける

2で肘を立てお水を持ってくる、肩より肘を引かない

3で胸前で上腕を中心に腕全体でお水を挟む

4で腕を前に伸ばす

鈍いおばちゃん相手に、やって見せ、させてみせ、手取り手取りで修正。

「手繋いで練習するの嫌だ」

「なんでですかー?」

「小さい子みたいじゃん」

「キック練習で足持つのはいいんですか?同じですよ、軌道は大切です」

「・・・」

「はい、つべこべ言わずにやる!」

前に習った時にも思ったけれど、Hくんがお水を挟むと下から上にゴボッと、洗濯槽の水流のように水が上がる。その勢いで体が浮いて息継ぎが自然にできるというけれど、わたしのお水はふわーんとしていて、全く勢いはない。

Hくんが言うには、単純に腕の長さだというけれど。まあ、身長差が35センチあれば腕の長さもそれなり。それにしても。。。
何度やっても、ぎこちなくイマイチな出来。

「くるりさん、今日はかくかくしてますけど、完成形は滑らかな動きにしていきます」

と、だんだんHくんの声が小さくなって、いつの間にかHくんの立ち位置がいつもと違っていた。プールの広い方に背中を向けている。明らかに変だ。

「どうしたの?」

「僕、あの方ダメなんです」

「どの人?」

「白いキャップの、そんながっつり見ちゃだめです」

「気になるよ、見たい見たい、女性?」

「見ちゃだめですってば」

「わたし、知らないや。この時間にあんまり見かけない人だね」

「ですよね・・・」

「何したの?」

「してませんって」

聞けば。最近Hくんのパーソナルトレーニングを受け始めた女性だそうで、執拗に連絡先の交換を迫られているらしい。

「うわ、モテ男じゃーん、モテ期、到来?」

「そんなんじゃないんですよう」

「またまたぁ、モテモテトレーナーめ!このこのー!」

「くるりさん、しーっ!静かにしてください!」

調子に乗っていたら、2時の方向から視線を感じた。こ、こわっ。

昔はゲレンデやビーチで季節的な魔法にかかる女子が大勢いた。そんな大したことない会社の同期に魔法がかかった後輩女子もいた。今はスポーツクラブで、通年魔法にかかる女子がいるようだ。

目の前にキラキラの王子様?いない、いない。いるのは大型犬。白いキャップの女子は魔法にかかっちゃったんだ。どこにそんな粉がある?羨ましいぞ。

( ꈍᴗꈍ)
「ねえねえ、わたしも魔法にかかりたい」

「は?くるりさん、何言ってんですか、変なこと言ってないで練習しますよ。できないとずっと手、繋ぎますからね!芝生でもこれですよ!」

「やだやだ、練習するする」

目の前には大型犬が一匹。わたしに降る魔法の粉はないようだ。