英語・ダイエット・その他徒然なるままに

趣味の英語学習(TOEIC 970点)やダイエットの成功談など、色々書いていきます。

ちゃんと読んでくれ

2015年06月14日 21時52分38秒 | 英語
誤訳シリーズはもう最後だと言いましたが、看過できない物があるのでいきます。同雑誌の、前回と同じ2013年3月号。

Questions 191-195

新入社員向けのオリエンテーションのタイムテーブルの予定が事前に各担当者に配られていて、それを読んだ一人の担当者が、まだ担当者が決まっていないセッションの担当者を早く決めてくれと言っている英文です。面倒なので一部略、改編してます。インデントのズレはご容赦ください。

9:00 Introduction // Jim Myers
10:00 Personnel paperwork/Registration // Michelle Shin
11:30 Salary/Vacations // HR dept. TBA
12:30 Lunch with employees
1:30 Video on Hospital Safety // Jenny Thompson
2:30 Health Code Regulations // Dr. Wilkins
3:30 Break
4:00 Q&A Period // Dr.Cho
5:00 Finish

以下の文章は、4時からのセッションを担当している Choさんが発しているものです。

I know the 11:30 session is going to be conducted by someone in the HR department, but it is listed on the schedule as "to be announced." I'd like to know who is going to be leading that discussion, in case we need to coordinate events, or if questions come up at that event that I will need to address in my 4:00 meeting with the new employees. If you haven't decided who will be leading that yet, let me know when you do.

赤字部分の訳ですが、解説では以下のようになっています。

「催しを調整する必要が生じたときや、私が取り組む必要がある4時からの新人職員との集まりで質問があったときのためにです。」

はっきり言って、ムチャクチャです。ここまで酷いと別に私なんかが解説しなくてもお分かりになる方々も多いと思います。決して難しい英文ではないですし。でも、どうしてだか知りませんが、こんな事になってる。

もし、この英文を正しく訳すことができない方が居るとしたら、厳しいようですが、英文解釈に関する基礎が全く出来ていないと申し上げておきます。デタラメな勉強モドキは今すぐやめて、基本からきちんとやり直しましょう。この英文のポイントは接続詞、指示代名詞、関係代名詞ですが、ごく基本的な使われ方しかされてません。正しい訳を載せておきます。

「イベント間での調整が必要になったとき、すなわち、その11時半からのセッションにおいて、私が担当する4時からの新入社員との会合の中で私が回答しなければいけないような質問が出た場合に備えて」

分かりますよね。接続詞orの解釈、指示代名詞を含む that event が指しているもの、そして、関係代名詞thatの先行詞の解釈。先の訳、これらを見事なくらい全部間違えています。

まず、この接続詞or は”または”ではなく、”すなわち”と訳すべきものだということを見抜けないといけません。Choさんが心配している事柄は二つではなくて、一つです。coordinate events という抽象的な言い方をした後に、それを詳しく説明するために "すなわち” と言い換えているのです。これくらいは見抜けないといけません。カンマの後に orが来た場合は”すなわち”となる場合が多いです(もちろん、必ずそうだというわけではない)。カンマ or を見た時にこういうことが頭を霞めない人は、経験不足。

ここで、or には”または”という意味と、”すなわち”という意味があるのだ、などと学生に教える英語教師は三流です。or はorでしかない。実体まで異なる別の物を並記する場合は”または”ということになるし、実体は同じで表現だけ別のものを並記する場合は”すなわち”と訳すのが適しているというだけです。実体 or 別の実体、となっているのか、あるいは、ある表現 or 別の表現(実体は同じ)となっているのか、ということが本質です。

あと、 that eventが指しているのは当然 11:30 からのeventのことだし、その後ろの関係代名詞 that の先行詞は当然 questions です。この辺はいいでしょう。間違え様がないと思うのですが。

なお、念のために付け加えておきますが、Choさんが言っている”イベント間の調整”って、何のことか分かりますか?一言で言えば”事前の根回し”です。11時半のセッションの中で万が一、4時から自分が回答しないといけない難しい質問が出た場合に、4時までに自分に教えるようにしてほしい(そうすれば事前に色々調べられるから)、そういう根回しをしておきたいから、”早く担当者を決定してくれ”と言っているのです。こういうのも、想像力・連想能力が無い人は、何を言っているのかさっぱり分からないという事になると思います。こういう常識的判断のできない人がいくら英語を詰め込んでも無駄です。



TOEICで問われているもの

2015年06月14日 00時02分17秒 | 英語
休みで時間もあるのでもう一丁いきます。あまり誤訳シリーズを続けても何ですので、多分これが最後になると思いますが同雑誌の2013年3月号から。今回の内容は初級から中級の方にとっては結構気づきが多い内容になると思います(もちろん上級者に取っては他愛も無い話です)。別に揚げ足を取っているのではなくて、皆さんの勉強や再発見になればと思い、注意すべき英文、勉強になる英文という意味で取り上げている(今までも)つもりです。

Questions 165-167

Regent Semiconductorsという(名前はどうでもいいですが)、アリゾナに拠点を置く半導体会社、最近では利益のほとんどをコンピュータのプロセッサ製造で賄っている会社が、製造コスト高を解消して競争力を確保するために、工場をアリゾナからメキシコに移すことを決めたという内容が書かれています。で、以下のように続きます。

A spokesman for the company said that it was the best option available to them. It is possible to manufacture the processors even more cheaply overseas, but Mexico is still cheaper than the US, and is not as far from Arizona. This offers a big plus for the company, one they hope will allow them to keep prices down for their customers.

赤字の所の解説部分の訳は以下のようになっています。

「プロセッサーの生産は国外で安く済ませることも可能で、メキシコならば米国よりもコストが掛からず、アリゾナからそれほど遠くないからだ。」

一見よさげですね。でも一カ所、致命的なミスがあります。お分かりでしょうか?常識を働かせて下さい。米国からみて、メキシコを "overseas" と言うでしょうか?

ここを訳した人は文中のoverseasとMexicoが違う場所を指していることに気づいていないようです。少なくとも、はっきりそう表現されていない訳出になっているのでアウトです。そもそも、接続詞のbutをちゃんと反映した訳出になっていません。

この英文では、アリゾナに拠点を置くアメリカ合衆国の会社の話をしているのです。なので、当然アメリカ目線で英文を読む必要があります。で、メキシコです。アメリカから見てメキシコは、確かに国外ではありますが、”海の向こう”ではありませんよね。陸続きのお隣さんなんですから。そういう常識を働かせると、上記のoverseasはメキシコのことではない、ということはすぐに分かるはずです。正しい訳は以下のようになります。

「確かに海の向こうの地には、(メキシコよりも)もっと安くプロセッサーを作ることができる所はある。しかし、メキシコであれば、それでもまだアメリカで生産するよりは安く済むし、海の向こうの地ほどアリゾナからも遠くならなくて済む。」

いかがでしょう。アメリカとメキシコの位置関係に関する常識を働かせたり(大したことないよ)、日本人が苦手な比較表現を上手く処理しないといけないので、この英文の意味を一発で瞬時に取れた人は間違いなく上級者と言っていいと思います。多くの日本人英語学習者にとって簡単な英文ではないと思います。だから、学んでほしいのです。

日本人の感覚からすると、国外=海外、なので、overseasを国外とやりたくなる気持ちも分かりますが、純粋に英語的には文字通り”海の向こう”というのがそもそもの意味のはずです。だとすると、アメリカ合衆国からみてメキシコはあくまで陸続きの”国外”である以上、ここのoverseasはメキシコのことではないと解釈しなければいけません。そう、中国とか東南アジアとか、要するにメキシコよりももっともっと人件費が安い、アメリカからみて海の向こうの国々のことを引き合いに出しているのです。確かに費用のことだけ考えたら、今回決めたメキシコは決して最安ではない。しかし、それでもまだメキシコは今までどおりアメリカでやるよりは安く済むし、アリゾナからも海の向こうの地ほどには遠くはない。だから最適解なのだ、そう言っているのです。

even more cheaplyのevenの部分には、アメリカよりもmore cheaplyであるメキシコを比較対象として、more cheaplyなメキシコよりももっと安いという気持ちが込められているのです(evenを”比較級を強める”などという呪文のような理解の仕方をしている人には、この感覚は分からないでしょう)。また、stillの部分には、最安である海外の地は捨てたけれども、メキシコはそれでもまだアメリカよりは安い、という気持ちが込められているのです。何に対して”それでもまだ”と言っているのか、よく考えて読んで下さい。even とか stillに込められたこういうニュアンスを正確に汲み取ることができないと、この英文の意味は掴めないと思います。

なお、not as far from の所は、後ろに as overseasが省略されています。あまりにも当たり前の比較対象なので as as構文の後ろのas以降が省略されているのです。そう、当たり前だから省略されている。ということは、何が省略されているか分からない人は当たり前の内容が掴めていないということになります。

ちなみに、not as as は”~と同じではない”ではなく、”~ほど~ではない”と言う意味になります。これは、as as を”~と同じ”のように(間違った)理解をしている人には分からない理屈だと思いますが、as asは本当は”~と同じ”ではなく、”~と同じかそれ以上"という意味です。要するに、劣ることはないというのが、as as の本当の意味です(これが分かっていない人が多い)。not as as はそれの否定なので、”~ほど~ではない”、つまり劣るという意味になります。遠いという観点からは、海外の地ほどではないよ、ということです。

どうですか。アメリカとメキシコの位置関係という英語以前の常識、even とか stillというちょっとした単語が表現している正確なニュアンス、これらをちゃんと汲み取って”情報処理”がきちんとできるか、それが問われているのがTOEICなのです。英語の知識というよりは、英語を介した”総合的な情報処理能力”を身につけないといけないのです。だって、英語(圏)で生活できるかどうかを試している試験なんですから。単語帳や文法用語のクソ暗記みたいな事をやっててもダメだということがお分かりでしょう。