まつお文庫からのご案内

仙台市若林区中倉3-16-8にある家庭文庫です。水・土の3時~6時(第2土は休み)どなたでも利用できます(無料)。

新しく買った本 ’22.1月

2022-01-14 17:41:32 | 文庫のページ
《日・中・韓 平和絵本シリーズについて》
 日・中・韓の絵本作家12人が1冊ずつ絵本を作り、3か国共同出版(それぞれの国で、それぞれの言語で12冊の絵本を出版する)で、子どもに届けるという壮大な計画のもとにできあがったシリーズです。日本の絵本作家、田畑精一・田島征三・浜田桂子・和歌山静子の呼びかけで始まりました。
 中国南京で12人が集まり各自持参した絵本のダミーについて意見が交わされたのは2007年のことです。日本では2011年から童心社で出版が始まります。
 昨年12月、県の母親大会で浜田桂子さんの講演をお聞きしました。文庫には田畑さんの『さくら』(2013)しかありませんでしたので、今回4冊の絵本を購入しました。12冊のうち5冊が文庫にそろいました。
①『へいわってどんなこと?』 浜田桂子 童心社2011.4
 子どもの身近な生活とかかわらせながら平和についてすてきに語ってくれる絵本です。最初のページには見開きいっぱいに黒一色で空を飛ぶ飛行機が描かれ、中表紙に続く言葉として一言「せんそうをしない」と語られます。
 初め浜田さんはこの場面で「へいわってせんそうをするひこうきがとんでこないこと」と書いていました。韓国の作家たちと意見交換する中で、他国の人に苦しみを与えないという視点が足りなかったことに気づき、書き直しました。最後の言葉も感動的です。ひとりひとりの命が大事にされ、そのひとりひとりが手をつなぐこと、平和な世界はそこからしか生まれてこないという、未来を生きる子どもたちへの熱い思いが伝わってきます。
②『ぼくのこえがきこえますか』 田島征三 童心社2012.6
 大きな筆で勢いよく描かれた力強い絵に圧倒されます。戦死した人の悔しい思いが画面から飛び出してきそうです。絵も言葉もすごいです。「だれのためにころし、だれのためにころされるの?なんのためにしぬの?」——戦争がどんなに愚かで、どんなに人々を悲しませるものか、心に響く絵本です。
③『くつがいく』 和歌山静子 童心社2013.3
 戦場へ向かう兵隊たちの履く靴を主人公に戦争の悲惨さ愚かさを描いた絵本です。
 「ざっ ざっ ざっ ざっ」という靴音が描かれる最初の4ページは印象的です。たくさんの靴音が聴覚的にも視覚的にも飛び込んできます。靴は語ります。自分たちを履いた兵隊たちが戦場で何をしたか、隣の国の人々の命を奪い、ふみにじり、悲しみをもたらし、そして兵隊たちも命を落とし、自分たち靴もボロボロになってしまったと。
 表紙に描かれた女の子が最後に登場し、「わたしのみらいにせんそうはいらない」と語ります。みんなで声に出して共有したい言葉だと改めて思います。
④『花ばあば』 クォン・ユンドク 桑畑優香訳 ころから2018.4
 これは戦争中、日本軍「慰安婦」だったシム・ダリョンさんの証言をもとに韓国の絵本作家クォン・ユンドクさんが描いた絵本です。花ばあばが10代で体験した戦争中の忌まわしい出来事と、心も体もめちゃめちゃにされた花ばあばが戦後どう生きたか、一人の女性の物語です。
 花が大好きな花ばあばに寄り添うように花の絵がたくさん描かれ、優しい色合いの美しい絵本です。一方、軍隊や日本の帝国主義を軍服の黄土色と顔のない空っぽの服で象徴的に描き、見事です。中高生にも大人にもおすすめの絵本です。
 この絵本は2010年に韓国で出版されたのですが、日本側出版社から修正を要請されます。一部修正したものの8年経っても日本での刊行のめどは立たず、田島征三さんたちが多方面に働きかけ、やっと出版社が見つかります。しかし今度は資金面での問題にぶつかり、2018年1月、クラウド・ファンディングをスタートし、202人の方の支援によって、やっと2018年4月に刊行されました。
 ユンドクさんの絵本は『マンヒのいえ』『しろいはうさぎ』も、日本で出版されています。
 
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