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ヴェーバーが残してくれたヒントを基に (その8)

2021-11-06 06:15:33 | 民主主義
【はじめに】
 今回が本シリーズの最終稿です。 フィリピンのドゥテルテ大統領とベネズエラのチャベス大統領&マドゥロ大統領について書きます。 両国とも立憲共和国です。

 共通しているのは、両国とも長い間スペインの植民地だった点です。独立したのはベネズエラの方が百年以上前ですが、混乱が続いていて、特に10年程前から経済がドンドン悪化しています。

第17章 :フィリピン
【私とフィリピン人の青年】
 2003年頃に私は某大手重機械メーカー(K社)に出向していました。K社では海外から受注したジョブの図書は(社内の打ち合わせ用を除き)英文で作成していました。 フィリピンは昔アメリカの植民地だったので、英語が公用語の一つになっています。

 K社は、日本のCAD専門学校を卒業した、優秀なフィリピン人の男性を非正規社員として雇い、数年間・ミッチリ機械設計を教えました。独り立ち出来る様になると、その青年を帰国させて(資金援助して)設計事務所を設立させました。三、四カ月間隔で彼は来日して2週間程滞在していました。次の仕事の打ち合わせと、計画図を作成していたのです。

 彼と私はタバコを吸ったので、毎日・雑談しました。 彼は来日する時、必ず部下を一人連れて来て、K社が用意したマンスリーマンションで二人で自炊していました。お米(インディカ米)を持って来ていました。(米を会社に持ってきて見せてくれました。日本の炊飯器でも美味しく炊けると言っていました。) 「日本滞在中はK社が日本円で給料を支払ってくれるので、貯めて→炊飯器やカメラを買って→親戚に配ったり、売って儲けるのだ」、「何時も、二人で持ちきれない程買える」と嬉しそうに言っていました。

【フィリピンの基礎データ】
 正式国名はフィリピン共和国です。昔は漢字の『比』で表しました。 昔は銅などの鉱業産品を輸出していましたが、現在は軽工業(食品加工、製糖、製剤、繊維)が中心です。 40年間ほどアメリカの植民地だったので、英語の読み書きが出来る国民が多いいです。

★ 人口 :10,903万人(2020年)・・・人口爆発が続いています。
★ 面積 :29.9万km2
★ 1人当たりのGDP :8,449ドル(2020年)・・・PPP
★ 多民族国家 :タガログ族、ビサヤ族、モロ族、華人、混血人、その他の少数民族
★ 宗教 :キリスト教(ローマ・カトリック信者が多いい)
★ 公用語 :フィリピン語(人工語)、英語

【フィリピンの歴史】
 フィリピンは、16世紀から370年間ほどスペインの植民地でした。1898年にアメリカがスペインから買い取り、植民地にしました。第二次世界大戦中に日本が侵攻して独立させました。日本の敗戦で一旦はアメリカの支配下に入りましたが、翌年に独立が認められ『フィリピン共和国』になりました。

 その後、長く武装闘争が続きましたが、2019年に最後の武装勢力との停戦が成立しました。

 フィリピンに住む『華人』は明朝や清朝の時代に移住した人達の子孫です。数は少ないですが、金持ちが多いい様です。

★ 1529年 :スペインの植民地(サラゴサ条約)
★ 1571年 :スペインがマニラを植民地の主都とした。
★ 1898年 :アメリカの植民地(スペインから買い取った)
★ 1899年 :独立宣言→フィリピン第一共和国
★ 1899年~1902年 :米比戦争
★ 1901年 :フィリピン第一共和国を廃止→アメリカの統治
★ 1941年 :日本軍がマニラに侵攻した。
★ 1942年 :日本軍がフィリピン全土を占領した。
★ 1943年 :日本の承認によってフィリピン第二共和国が成立した。
★ 1946年 :独立→フィリピン共和国
★ 2016年 :ドゥテルテ大統領
★ 2019年 :モロ・イスラム解放戦線(MILF)の武装解除

【人口爆発】
 フィリピンの最大の問題は、20世紀の後半から人口爆発が続いていることです。1960年の人口に対し、60年後の2020年には4倍にもなってしまいました。

 こんなに急激に人口が増加したら、失業率がアップして、生活が貧しくなって、犯罪が増加し、反政府闘争が始まりそうに思えますが、今の所・フィリピンではそんな問題は発生していません。 何故なのか?研究してみる必要が有ります。 幾ら何でもこのまま人口増加が続いたら、私の危惧が現実化すると予想します。

★ 1960年 : 2,709万人 (100%)
★ 1980年 : 4,810万人  (178%)
★ 2005年 : 8,786万人 (324%)
★ 2010年 : 9,234万人 (341%)
★ 2015年 :10,098万人 (372%)
★ 2020年 :10,903万人 (402%)

【フィリピンの政治制度】
 立憲共和国で、大統領と副大統領は直接選挙で選ばれ、任期は6年です。 大統領と副大統領選挙は同時に行われ、別々に投票されます。 再選は出来ません。

 国会は2院制で、上院(元老院)は任期6年・定員24名・全て全国区制で選ばれます。日本の参議院議員の様に、3年毎に半数が選ばれます。 下院(代議員)は任期3年で(憲法では)定員250名、小選挙区制(80%)と全国区制(20%)です。

【ドゥテルテ大統領】
 2016年にドゥテルテ氏が大統領に就任した時、「トンデモナイ事になる」と思いました。 手荒な政策をドンドン実行しました。 例えば、麻薬関連の犯罪者は射殺したり、投獄したりしました。 町長になっていた麻薬王(カーウィン)を逮捕して、息子は射殺しました。 生ぬるい対策では、フィリピンの麻薬問題は解決しないと思います。

(注記) フィリピンは島国ですから、小型の船で麻薬を密輸するのは簡単だと思われます。 従って、麻薬を撲滅することは不可能でしょうが、日本程度になれば成功と言えます。麻薬が重大な問題になっているメキシコやコロンビアは、ドゥテルテ大統領の毒薬手法を参考にしない限り問題は解決しないと思います。

 フィリピンはキリスト教徒の多いい国ですが、イスラム教徒が武装して自治を求める闘争をしてきました。 ドゥテルテ大統領は、2019年にモロ・イスラム解放戦線(MILF)の武装解除に成功しました。

 人口爆発が起こっているフィリピンでは、治安を改善して西側諸国からの投資を増やして、工業を発展させ→仕事を増やす事が肝要だと思います。その面では、ドゥテルテ大統領の政策は正しかったと思います。

 経済成長率は6%~7%、失業率は5%台を維持してきましたが、コロナの影響で2020年からは悪化しています。コロナが収まったら、V字回復して欲しいと願っています。

【投資先としてのフィリピン】
 私は、フィリピンは投資先として優れた点が多いいと考えています。

❶ 英語の読み書きが出来る人が多いい。
❷ 労働年齢の国民が多いい。 (2021年の平均寿命は71歳ですが、平均年齢は24歳です。)
❸ 労働賃金が安い。一人当たりのGDPを市場交換レート(MER)と購買力平価(PPP)で以下に示します。 MERの一人当たりのGDPが非常に少ないのが魅力です。 2020年の平均年収は48万円でした。
 ★ フィリピン :3,323ドル(MER)、8,449ドル(PPP)・・・2020年
 ★ 日本 :40,089ドル(MER)、42,212ドル(PPP)・・・2020年
 ★ 中国 :10,511ドル(MER)、17,104ドル(PPP)・・・2020年
❹ 人口が多いいので、将来有望なマーケットとして期待できる。
❺ 既に工業技術が有る。 造船分野は現在世界第4位です。
❻ 中国に屈する国では無い。 南沙諸島の領有権問題が有り、中国が金をばら撒いてフィリピンを支配下に置くとは考えられない。 中国企業が進出する恐れは少ないです。

第18章 :ベネズエラ
【ベネズエラの基礎データ】
 ベネズエラの正式国名は『ベネズエラ・ボリバル共和国』です。多民族国家です。スペイン人が入植を開始して500年経過している為に、混血が進んでいます。

 ベネズエラは地下資源に恵まれています。特に石油と天然ガスの埋蔵量は世界第一位とか第二位だと言われています。 然し、❶超重質油の為に1バーレル当たりの生産コストが70~80ドルと非常に高く、❷石油公団に対する統制を強化した等が原因で、現在の生産量は少なくなっています。

★ 人口 :2,850万人(2019年)
★ 面積 :91.6万km2
★ 民族 :スペイン人の混血の国
★ 宗教 :ローマ・カトリック≒76%
★ 公用語 :スペイン語
★ 一人当たりのGDP :15,891ドル(年)・・・PPP
★ 石油と天然ガス :埋蔵量は非常に多いい
★ 鉱物資源 :ボーキサイト、鉄鉱石、ニッケル鉱、金、ダイヤモンド、リン

【ベネズエラの歴史】
 16世紀からスペイン人がベネズエラに入植を始めました。ベネズエラは、スペインの植民地の中では、独立したのが早い方です。アメリカとスペイン帝国が戦った米西戦争(1898年)よりも半世紀前には独立国家になっていました。

 独立後・200年程になりますが、内紛の絶えない国です。

 明治になって鎖国政策が破棄されたので、日本人が海外に移住する様になりました。アメリカ大陸に沢山渡りましたが、ベネズエラに行った人は少なかった様です。現在・日系ベネズエラ人は800人程しかいないそうです。

★ スペインの植民地化 :16世紀からスペインが植民地化を進めました。
★ ベネズエラ第一共和国 :1810年~12年
★ 独立戦争→1821年に独立
★ ボリビア共和国 :1824年
★ ベネズエラ・ボリバル共和国 :国名の変更 ;チャベス政権(1999年~2013年)・・・反米に転換
★ 2010年代以降は経済危機と政治の混乱が続いています。
★ マドゥロ政権 :2013年にチャベス死去→マドゥロが政権を引き継いだ。
★ 2015年の総選挙 :野党が圧勝(167議席中112議席)
★ 2018年 :不正選挙でマドゥロ氏が大統領になった。
★ 2019年 :グアイド国会議長が暫定大統領就任を宣誓・・・55ヶ国以上が支持
★ 2020年 :国会議員選挙・・・野党がボイコット

【ベネズエラのハイパーインフレ】
 ベネズエラはインフレ率が二桁の国でしたが、マドゥロ大統領になった頃から急激にインフレ率が高くなり始めました。2018年には通貨単位を5桁切り下げ、2021年に6桁切り下げるデノミを実施しました。《2回のデノミで11桁切り下げたので、2018年の1,000億ボリバル・ソベラノ (Bs.s)が2021年には1Bs.sの価値しかない事になります。その為に、現地での取引(買い物)はUSドルを使用している様です。》

・・・IMFによるインフレ率・・・
★ 2021年 :ベネズエラ≒2,700%、 日本≒―0.17%
★ 2020年 :ベネズエラ≒2,355%、 日本≒―0.03%
★ 2019年 :ベネズエラ≒19,906%、日本≒0.47%
★ 2018年 :ベネズエラ≒65,374%、日本≒0.99%
★ 2017年 :ベネズエラ≒ 483%、 日本≒0.49%
★ 2016年 :ベネズエラ≒ 255%、 日本≒―0.12%
★ 2015年 :ベネズエラ≒ 122%、 日本≒0.80%
★ 2014年 :ベネズエラ≒ 62%、 日本≒2.76%

【多量の難民流出】
 ハイパーインフレが始まった頃から(特に2019年から)約570万人も、コロンビア、ペルー、チリ等に難民が流出しています。 流出先の国は貧しいので、難民は苦しい生活をしている様です。 (日本は、既に50億円ほど難民支援金を出しています。)

【紙幣の印刷】
 ベネズエラは、紙幣の印刷をイギリスの民間企業に委託していましたが、印刷代が払えなくなってしまいました。マドゥロ大統領は2018年に暗号通貨(デジタル通貨)『ペトロ(Petro)』を発行して、公務員の給与をペトロで支払う事にしました。 民間ではペトロは殆ど流通していない様です。ベネズエラの財政は危機的状況なのです。

【ベネズエラの現状】
 2019年には大規模な停電が発生し、地下鉄が運行出来なくなる等の混乱が発生しました。 21年現在、国民の3/4が食糧不足に悩んでおり、医薬品も不足している様です。石油産出国ですが、ガソリンが不足しているので、通勤に支障が出ています。

【ベネズエラの政治制度】
 現在の憲法(2009年憲法)では、大統領は直接選挙で選ばれ、任期は6年で、再選が認められています。 国会は1院制(国民議会)で、任期は5年です。定員は165議席で、内3議席は先住民に与えられます。 普通選挙を採用しています。

 憲法で規定する政治制度には問題は有りませんが、マドゥロ大統領の強権政治の為に『立憲民主主義国家』とは言えない状況になっています。

【チャベス政権】
 チャベス氏は左翼思想(共産主義思想)を持った軍人でした。一度クーデターを企てましたが、失敗し投獄されました。釈放後は政治家になり、1999年の大統領選挙で勝ちました。

 チャベス氏は、貧困者の救済政策を始めました。❶無料診断制度、❷農地改革(農場主から土地を取り上げ→農民に与える)

 チャベス大統領の経済政策に問題が有ったので、経済が悪化していく様になりました。例えば、❶虎の子の石油公団 (PDVSA) への統制強化、❷統制価格の導入などなど。反米を打ち出した為に、2006年からアメリカは経済制裁を続けています。

【マドゥロ政権】
 2013年にチャベス大統領が病死した後を、副大統領だったマドゥロ氏が引き継ぎました。マドゥロ氏が引退するか、死亡しない限りベネズエラは民主化出来ないと予想します。

 2017年に行われた国会議員選挙(制憲議会選挙と呼ばれている)では、マドゥロ大統領を支持する労働組合や学生団体のメンバーには3票与える事にしました。その為、野党は選挙をボイコットしました。

 2018年の大統領選挙の時、反対派の有力者が選挙に出れ無くして実施しようとしました。反対派が選挙をボイコットしたので、マドゥロ氏が当選しました。反対派は選挙が無効だと主張して、グアイド国会議長を暫定大統領にしました。 55ヶ国以上が暫定大統領を、21ヶ国がマドゥロ大統領を支持しています。

 2020年に実施した国会議員選挙を、反対派がボイコットしたため与党が90%の議席を獲得しました。最高裁判所の判事は既に支持者で固めていたので、マドゥロ大統領は三権を掌握した独裁者になっています。

【ベネズエラの軍隊】
 チャベス政権が誕生してから、兵器はロシアと中国から輸入しています。 徴兵制を敷いていた様ですが、現在は廃止した様です。2021年の兵力は、陸軍63,000人、海軍25,500人、空軍11,500人、国家警備軍23,000人です。

 国内政治は大混乱状態ですが、反政府側は武力闘争はしていません。2013年以来、反米政権が続いていますが、北朝鮮の様にアメリカを刺激する様な動きは有りません。

【中国の目論見】
 中国がベネズエラに進出しようとしていますが、「地下資源を狙っている」との見方が大半です。然し、私は、「軍事基地の建設が目的では?」と疑っています。

 大昔・ソビエトのフルシチョフ第一書記がキューバに核ミサイルを持ち込もうとして失敗しました。習近平は賢いので、インフラ整備に金を貸して、沿岸の一部を租借して→海軍基地を作って→空軍基地を作ると予想しています。

 中国が、悪徳高利貸しの様な事をして港を手に入れた例は有ります。(中国は石油の前金として6,200億ドル貸して、現在2,000億ドル程残っている様です。) 他国の土地を租借する事は国際ルールに違反しませんから、アメリカは反対出来ません。 本格的な海軍基地を作ってしまえば、夜陰に乗じて秘密裏に核ミサイルを持ち込むでしょう!



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