これ!どう思います?

マスコミがあまり報道しない様な問題を、私なりに考えてみます。

中国の脅威とLNGタンカー

2020-06-20 10:29:37 | 中国
 中国の貯えた豊富な『金(外貨)』、『工業技術/経験』および『理工系の人材』、そして『専制国家』のメリットを本気で動員したら、他国の企業は全くなすすべが有りません。 今回は、その一例として『LNGタンカー』について書きます。

【韓国がLNGタンカーを100隻受注】
 2020年6月にカタールの国営会社(カタール・ペトロリアム)が、韓国の造船3社とLNGタンカー・100隻(約2兆600億円)発注する契約を結びました。

 カタールは2020年4月に中国の滬東中華造船に、LNGタンカー・16隻(オプション分8隻を含む)発注しました。 中国で現在、LNGタンカーが建造出来るのは滬東中華造船・一社だけで、カタールの追加発注分に超安い価格が提示出来なかったと思われます。 中国は、今回の韓国の受注にショックだった様です。

【世界のLNGタンカーのメーカー】
 1980年代には、日本はLNGタンカーの分野では強かったのです。日本はモス式でしたが、韓国はフランスから技術導入してメンブレン方式のLNGタンカーを建造し始めて、1990年代からは韓国が世界を制した状態になりました。 現在の主なLNGタンカーのメーカーを書いておきます。

① 韓国 :現代重工業、大宇造船海洋、サムスン重工業
② 中国 :滬東中華造船
③ 日本 :川崎重工業、今治造船と三菱重工のグループ

 韓国は国を挙げて、2004年から韓国式LNGタンカーの開発に取り組み、『KC-1』を開発して、国内から2隻受注しました。問題が発生して、まだ外国に売れる状態にはなっていない様です。

 中国は、滬東中華造船を移設/拡充する計画と、他の造船2社でもLNGタンカーが建造出来る様に検討中の様です。 人材を投入してLNGタンカーの改良設計に取り組む様です。何としても、LNGタンカーの分野における韓国の地位を奪ってやると決断したと思われます。 (中国がLNGタンカーを建造し始めた頃には、GTT社の基本特許は期限切れだったと思われます。GTT社の技術をベースにして、中国はLNGタンカーの設計をしたと思われます。従って、韓国の様にロイヤリティをGTT社に払う必要が有りません。)

 日本は、IHIがSPB(角型タンク)方式を開発し、ジャパン マリンユナイテッド(株)が2013年に国内から2隻受注しました。 川重は、LNGタンカーを国内で建造するのは断念した様で、今後は中国の大連中遠海運川崎船舶工程(DACKS)で建造する計画の様です。

【天然ガスの輸送】
 天然ガス(NG)とは、天然の炭化水素ガスのことで、メタン(CH4)やエタン(C2H6)が主成分です。常温ではガスの状態です。

 天然ガスの世界最大の輸出国であるロシアから、ヨーロッパ、トルコ、中国に太いパイプラインが数ルート開通しており、ガスの状態で輸送されています。(2018年)

 世界第二位の輸出国はカタールで、天然ガスを冷却→液化してLNGタンカーで日本、中国、韓国に運んでいます。 世界一位の輸入国は日本です。(2018年)

 天然ガスを液化して運ぶためには、輸出国は高価な液化設備が、輸入国では気化設備が必要です。 従って、トータル輸送コストはパイプライン方式の方が安価になると思われます。 「新しいパイプラインが多数設置されて、LNGタンカーの需要は減少する」と私は予想しています。

(ご参考) 世界一の生産国はアメリカで、二位はロシア、三位はイラン、四位がカタール、五位は中国です。 アメリカは殆どを自国で消費しており、近年は日本にLNG船で送ってきています。中国は大産出国ですが、国内消費量が多いいので、ロシアやカタールから輸入しています。

【LNGタンカーは難しい】
 種々の船が建造されていますが、LNGタンカーは技術的に非常に難しい船です。主成分がメタンですから、貯蔵タンクの温度をメタンの沸点(-161.5℃)以下に保つ工夫/技術が必要です。

 現在建造されているLNGタンカーは球形タンク方式とメンブレン方式の2種類です。球形タンクのLNGタンカーは、甲板上に球形タンクの一部が突出しているので直ぐに分かります。(私の家から時々見掛けます。) モス(MOSS)式と呼ばています。一時期、新造船の殆どはMOSS式でしたが、タンクに亀裂が発生する事故が有り、それ以来少なくなってきました。 (私の怪しい記憶ですが、「ノールウェーのMOSSと言う造船会社が考案した方式だった?」と思います。)

 韓国の造船会社が採用しているメンブレン方式の技術は、フランスのエンジニアリング会社で有るガストランスポート&テクニガス社(GTT社)から導入しています。販売価格の5%をロイヤリティとして支払う契約の様です。

【LNGタンカーの教訓】
 国民には余り知らされていませんが、日本は種々の国立研究所などを経由して民間企業に、チマチマ開発費の支援を行っています。それが、族議員の活躍の場になり、弊害も出ています。(族議員は絶滅させる必要が有ります。)

 日本の今後の競争相手は専制国家の中国です。 中国が”ある分野”に国を挙げて取り組んだら、世界一の大企業でも一社では対抗出来ません。 日本は工業製品を輸出して、食糧や燃料/原材料を輸入しなければならない国です。 重要な工業を守るためには、開発費の一部を国が支援し、民主主義諸国と協調して中国と向き合う必要が有ります。

 私はgooブログで「現在・既に第四次産業革命が始まっている」と何回も書き/警告しました。 資源の無い日本の政治家には、第四次産業革命の知識が不可欠です。 「日本の政治家が勉強して/目覚めてくれたら、第四次産業革命に乗り遅れる事は無い」と私は思います。

 与野党を問わず、日本の政治家には理工系の知識が不可欠になってきています。 コロナの問題で支援金を配布するのに、日本の政治家と官僚がIT(情報技術)に関する知識を持っていない事が明確になりました。日本の民間企業ではITを取り入れています。然し、中央官庁、地方公共団体のデジタル化は危機的状態ですから(非常に遅れているので)、真剣に、急いで取り組む必要が有ります。

・・・・・≪ 思い出話し ≫・・・・・
【カタール】
 1975年頃に私が務めていた会社が、カタールから製鉄所一式を受注しました。当時、私はガスタービンの仕事をしていたのですが、「製鉄所が受注出来たら『非常用ガスタービン発電装置』を使ってやる」、「但し、製鉄所の見積作業を手伝え」と言われました。 砂漠の真ん中に工場を建設する計画でしたので、種々の新しい工夫が必要だったのです。

 先ず私が取り組んだのは『砂嵐』対策でした。現地に出張した社員に『砂漠の砂』を多量に持って帰ってもらって、砂の分析から始めました。 日本工業規格(JIS)に砂の規格が有ります。 鳥取砂丘の砂からは想像できない、細かな砂で、屋内を正圧(外より高い圧力)にしないと、アルミサッシを閉めても砂が侵入する事が分かりました。

 製鉄所の色々な所で空気が必要です。砂嵐が発生した時に、砂を除去する必要が有りますが、余りにも多量に砂が含まれているので、普通のフィルターでは直ぐに目詰まりしてしまいます。

 私は某社が製造していた『一次フィルター』を改良する事にしました。空気を100取り入れるとします。遠心分離の技術を応用して、空気10に砂の90%以上を含ませて大気に放出する様にしました。 残りの空気90を二次、三次フィルターに送って、砂をほぼ完全に除去しました。 大成功でしたが、実験は大変でした。 細かい砂が多量に舞う実験場で、データを採取したので、大変だったのです。

 屋外に設置する鉄構造物の塗装を検討する様に言われたのですが、これはギブアップしました。どんな塗装をしても、一回の砂嵐で風が当たる面の塗装は剥げてしまいます。 重要な機械の塗装をする前に、表面の錆等々を除去するために砂などを吹き付ける『サンドブラスト』を想像して見て下さい。

 屋外の力の掛からない物は樹脂製にする事になり、私は強力な直射日光に耐えられる樹脂の調査を命じられました。 「ビール瓶ケースに使用されている樹脂が良い」と聞いたので、ケースを山積みにした所に出張して調べました。 ケースに製造年月日が印刷されていたので、経年劣化の状態が確認出来ました。10年くらいでは、殆ど劣化していませんでした。

 「カタールの太陽は想像出来無いほど強烈だ」と言うので、「次の出張時に屋外に鉄板を置いて、卵焼きが出来るか試して」と依頼してみました。 卵焼きが出来たそうです。

 約束の通りガスタービン発電装置を使ってもらいました。私の最初の輸出案件でした。 現地での作業を最小限にする工夫を種々やりました。予算が少なかったので、私が一番信頼していた機械仕上工に電気/制御のポイントを教えて、一人で現地据付/調整/引き渡し検査をしてもらいました。(通常は、機械担当と制御担当の二人派遣していました。) 万一の場合に備えて私はパスポートを取得しました。

 結局問題は発生せず、私はカタールに出張出来無かったのです。 予定より10日ほど早く引き渡しが完了したので、機械仕上工は東南アジアで一週間ほど観光旅行を楽しみました。 「行方不明になった」と会社で大問題になって、私が大目玉を食らいました。 (彼は逆玉の輿だったので、自費で優雅な観光をしたのです。)

・・・・・≪ 豆知識 ≫・・・・・
【燃料ガスの種類】
 私達が燃料として使用しているガスには①都市ガスと②LPガスの二種類が有ります。都市ガスは『天然ガス』で、メタンガスが主成分です。

 家庭で使用されるLPG(LPガス)は、プロパン(C3H8)が主成分で、工業用はブタン(C4H10)が主成分です。 日本語では液化石油ガスで、石油精製で得られる製品の一つです。 LPGボンベの中では液体です。

(余談) 使い捨てライターには液体のプロパンが入っていると思われます。プロパンの沸点は『-40. 09℃』です。沸点とは液体が1気圧(1,013hPa)の時に沸騰する温度のことです。水が1気圧で沸騰する温度を『100℃』と定め、凍る温度(凝固点)を「0℃」と決められました。 液体を密閉容器に入れて加熱すると、内部の圧力が上昇します。使い捨てライターには「50℃以上は避けて下さい」との警告が書かれています。 50℃に加熱すると、ライターの内部の圧量は20kg/cm2(2MPa)程になります。

 国内を走っているタクシーの殆どは、ガソリン税が掛からないLPガスです。 タクシー会社の一部ではLPGのタンクを所有しています。個人タクシーなどはガソリンスタンドで補給しますが、全国でLPGを取り扱っているスタンドは1,900か所ほどしか無い様です。 (昔、姫路の近くから名古屋港まで重い測定機器を持って出張する時、二、三回タクシーを利用した事が有ります。 契約しているスタンド以外で補給すると赤字になると言って、何時も途中で降ろされ、別のタクシーに乗り換えさせられました。)

 メタンガスが主成分の都市ガスは空気より軽いので、ガス漏れすると部屋の上部に溜まります。プロパンもブタンも空気より重いので、LPガスが漏れると部屋の下(床)に溜まります、 ガス感知器はガスが溜まる位置に設ける必要が有ります。

(余談) 昔の都市ガス(6Bガス)は石炭から製造されました。成分は水素(H2:50%)、メタン(CH4:30%)と一酸化炭素(CO:8%)でした。毒性の非常に強い一酸化炭素が多量に含まれていたのです。 (6Bガスでは自殺出来ますが、現在の都市ガスでは出来ません。)

(余談) 豊洲市場は、昔の東京ガスの豊洲工場の跡地に建設されました。 6Bガスを製造する工場だったのです。 1980年頃に、私は機械を買って頂いたので十回ほど出張しました。 その10年前(1970年頃)に東京ガス・袖ヶ浦LNG基地が稼働していましたが、都心部は長く 6Bガスが使用され続きました。

ファーウェイの問題 (その12)

2019-04-06 11:56:14 | 中国
 中国に関する私の考え方を長々と書いて来ましたが、今回が最終稿です。『日本は、今後どんなに中国とお付き合いすべきか?』と何時も私は考えています。現時点の私の考え方を、纏めてみました。

【私の考えている日本の文化】
 縄文時代(約16,000年~2,300年前)には、文字は有りませんでしたが、独特の言語(大和言葉)は有りました。何よりも、素晴らしい独特の土器を作る技術(文明)が有ったのです。

 中国が前漢の時代(2,200年程前~2,000程前年)になると、日本は積極的に中国から学ぶ様になり、7世紀以降になると遣隋使や遣唐使を派遣したのです。中国から入って来た文化に、種々の改良加えて日本独自の文化にしていったのだと思います。

 19世紀になって、日本よりも先に西洋諸国は中国に進出しましたが、西洋の進んだ技術を取り入れて経済を発展させようとしなかったのです。逆に日本は、明治維新の前から西洋文明を積極的に吸収しようと努力しました。

 日本人は、より進んだ文明を毛嫌いする事無く取り入れ、咀嚼/改良する柔軟な民族だったのだと、私は誇りに思っています。他国の方が優れている点が有れば、率直に認める事が出来る民族だったとも思います。

(余談) 小学5年生の時、尊敬していた先生が、「漢字は後漢(25年 - 220年)の頃に日本に伝わったので、漢の国の字、すなわち”漢字”と言い、その頃の中国の発音を”漢読み”と言う」と教えられ、長い間信じてきました。日本で漢字の読み書きが出来る様になったのは3世紀らしいです。遣唐使(630年~)以前の発音は”呉音"で、それ以降に入って来た発音が”漢音“です。

【中国の経済/技術は更に発展するでしょう!】
 中国が経済的に破綻して、共産党が排除されるのを期待している様な考えを持っている方がおられますが、そんな考え方には私は賛同出来ません。

 第四次産業革命の旗手になれるのは、アメリカか中国のどちらかだと思いますが、私は中国の方に投票します。 貴方はどちらに投票されますか?

 中国に優秀な若者を国費留学させて、(遣唐使の様に)政治/経済/技術等々を勉強・吸収してもらう事が必要な時代になっているのでは?と私は思います。明治維新以来貯えて来た、『工業技術の貯金』は、もう殆ど底を突きそうなっています。

【日本の国会と中国の全人代】
 中国は一院制です。全人代は年一度開催され、期間は約10日です。法律は常設の全人代常務委員会でも制定/改定が出来ます。(中国の政治家や官僚には、政策を考える時間的余裕が十分ある様に見えます。)

 日本は二院制で、法律は原則として両院の可決が必要です。国会の会期はなんと、2018年=230日、2017年=190日もありました。主要閣僚は、種々の委員会に主席されますが、何時・政務を処理され、勉強されるのでしょうか?

 日本の総理大臣は、国政について”じっくり”考える時間を持てるのでしょうか?本や論文を読む時間が有るのでしょうか?国会の有り方を見直して、閣僚の”働き方改革”が必要です。

(余談) 中国と真逆な例は、EU離脱を巡るイギリスの国会です。EU離脱の是非を決める国民投票は2016年6月23日でしたから、既に1,000日以上経過しています。共産党独裁体制は、政策をスピーディーに決断して、実行出来ますが、私は少し時間が掛かる”民主主義”の方が良いと考えます。イギリス病に感染しない様に、体調管理が必要ですが!

【国家予算の使い方】
 沢山卵を産む野鳥の話しです。親鳥が食べ物を運んでくると、雛鳥は一斉に大きな口を開けて食べ物をせがみます。口の開け方などから、どの雛に今回は食べさせるか親鳥は判断するそうです。食べ物の少ない年には、全ての雛に平等には与えず、巣立ちまで育てられる数の雛に食べ物を与え、与えられなかった雛は大きく成長した兄弟姉妹に巣から放り出されて死ぬと言う話を聞いた事が有ります。

 現在、国家予算が使いきれない程潤沢にある国は有りません。欲しい!欲しい!と要求する所に、少しづつ与えたら、未熟な雛ばかりになってしまいます。政治家の義務は、何かを犠牲にして、将来の経済発展に寄与すると思われる事に重点配分することです。(政治家は勉強する必要があります。) 国民の義務は、勉強している政治家を見極めることです。

 資源の乏しい民主主義国家が経済発展するためには、政治家も国民も前述の”義務”を果たすことが不可欠ですが、日本で可能だと思われますか?

 時々、予算委員会のTV中継を見ますが、予算に関する質疑は殆ど有りません。2019年4月4日にまだ森友問題を取り上げていました。第四次産業革命と言うレースに、日本がどう取り組むか?少しは議論して頂きたい。 (少なくともも、森友問題の様な議題は他の委員会で取り上げるべきです、予算委員会では絶対にだめです。)

 中国は、何時でも好きな時に法律の制定/改定が出来ます。そして、市中銀行の殆どは国有銀行ですから、法律に縛られる事無く、政府が重要と考える分野に重点的に金と人材を投入出来るのです。 この点からも、第四次産業革命と言う国際戦争で日本が中国とまともに戦うことは不可能です。

 ファーウェイは、まさに中国が第四次産業革命の主導権を握るために重点指向して育てた企業の一つです。トランプ大統領は、日本やEU諸国にファーウェイの排除を求めていますが、金の無い国は沢山ありますから、ファーウェイの安価な5Gのスマートフォンが世界的な標準になる可能性は高いと思われます。

(余談) コピー機は、現在では殆どの企業に普及して、一般家庭でも時々見られます。コピー機の基本特許はアメリカのゼロックス社が持っていました。1980年頃に基本特許が切れたで、日本では多くの会社が開発を進め、数社が上市しました。その後も種々の工夫/改良を加え、さらにコストダウンの努力を重ねて、この分野では世界を制したのです。今後、中国は5Gのスマートフォンだけで無く、新しい機械/装置/システムを開発して世界に輸出する様になると私は予想しています。日本は、中国の開発に参加するか、特許が切れるのを待つか、周辺機械/装置を開発するか、・・・何かする必要があります。

【選挙公約】
 中国の全人代に出席する人(議員?)は選挙公約を掲げて選ばれたわけでは有りません。国家主席が、全人代で発表する方針が公約なのです。去年と今年の公約が、大幅に違っても出席者が異議を唱える事は考えられません。

 日本の国政選挙では、各党が政権公約(マニフェスト)を発表し、各候補者は「当選したら○○の達成に努力します」と言います。少しでも多く票を獲得出来そうな事をやると主張します。「産業を発展させる為に、××に力をいれます!」と言う公約を、私は期待するのですが! (経済の発展が無ければ、福祉予算を増やす事は出来ません。)

【謝辞】
 私の浅薄な中国関する知識と、独自の(勝手な)意見を長々と書かせて頂きました。毎週200人程の方に読んで頂き、嬉しかったです。有難う御座いました。

ファーウェイの問題(その11)

2019-03-30 17:27:55 | 中国
 今回は、『中国でバブルが崩壊するか?』、『経済は失速するか?』と言う問題について考えて見ました。先ず、日本のバブル崩壊についての私の考え方を書いてみます。

【日本のバブルと大手銀行の責任】
 親戚に不動産鑑定士(A氏)がいました。彼は、某大手銀行の依頼で融資先の不動産を鑑定するのが仕事でした。バブルが崩壊(1991年)する10年程前から、査定金額の水増し要求が銀行側から出る様になったとぼやいていました。A氏は、本当に真面目な人だったので悩んでいました。要求がエスカレートするので、A氏は1985年頃に不動産鑑定士を辞めてしまいました。

 銀行に金が沢山集まる様になり、担保の価値や返済計画云々より、如何にして借り手を増やすかが銀行員の使命になりました。担保にする土地の実勢価格が1億円だったとします。銀行は1億円以下しか貸せません。それで、A氏に担当者が、「鑑定額を(鉛筆を甞めて)1.5億円にして下さい」と”そっと囁く”のです。

 東京では土地の実際の取引価格が少しずつ高くなり、その上に出来たマンション価格も上昇していました。1985年頃に銀座の飲み屋で知り合いになった方が8千万円のローンを組んでマンションを買った様でした。彼は、外資系の超一流企業に勤務していたので借りられたのです。

 私は神戸で家を建てようと検討していたのですが、1980年に急に東京転勤になり検討は中断していました。1984年に神戸に帰って来たので、直ぐに土地探しを再開しました。神戸の土地は4年前と殆ど同じだったのです。翌年に家が完成しましたが、その後すぐに神戸も地価が上昇する様になり、私はラッキーだったのです。

 1989年に私の同僚(部下)が神戸で中古のマンションを買おうと、休日に不増産屋回りをしていました。数週間前に見た物件が一番良かったので、行ってみたら大幅に値上がりしていたそうです。他の不動産屋に当たっても全て値上がりで、結局焦って買いました。彼は、東京近辺に前に住んでいたマンションを所有していたので、そちらが高く売れて被害は少なかった様でした。

 日本のバブルは、銀行が地価をとんでもない価格に吊り上げた事が主な原因だったと私は思いました。 皮肉にも、大手銀行は不良債権を自分で作って、自ら行き詰まり、税金で助けてもらったのです。 銀行は予想以上に早く立ち直りましたが、日本は20年間も混乱して、大半の国民が被害を被りました。

(余談) 関西の某信用金庫は、賢明にもバブル期間中、古くからの顧客に、本業以外に手を出さない様に説得して回りました。それで、助かった中小企業の社長を知っています。

【日本のバブルは政治家の勉強不足が原因】
 資本主義経済では、発展の原動力の一つはインフレです。需要が大きくなるとインフレになり、企業は生産を増やすために設備投資をし、雇用を増やします。デフレになると、企業は逆に動きます。(厄介なのが、景気が悪くなっているのに、物価があがるスタグフレーションです。)

 日銀の役割の一つは、流通する紙幣の量(紙幣発行残高)を調節してインフレ率を適当な範囲にすることです。

 第1の手段 :日銀は、民間金融機関(銀行)に金を貸しています。日銀が貸す時の金利を”公定歩合”と呼びますが、公定歩合を上下させて紙幣発行残高を調節します。

 第2の手段 :国が発行する国債は、(国際ルールに従って、)民間の金融機関や個人に買ってもらいます。日銀は、経済状況を見ながら国債を買う(紙幣を発行する)か、又は、国債を売る(紙幣を回収する)かして、紙幣の流通量(紙幣発行残高)を調節しているのです。

 日銀は、「多くの企業や個人が銀行から借金したり、貯金を引き出して投機に走らない!」と言う前提に立っている様に思います。 日銀が予想していなかった”悪夢”(投機)が起こってしまったのです。政府は、この悪夢を抑える事は日銀では出来ない事に気付き、1989年の年末になって”土地基本法”を制定しました。

 なんと、土地基本法は「投機目的で土地を購入しない様にして下さい!」と呼び掛けています。多分、頭の良い役人達は知っていたと思いますが、問題の本筋は①土地などの不動産を担保にして銀行が融資する旧態依然とした制度で、②銀行が異常な値に吊り上げた地価をベースに金を貸した事です。

 日本のバブル期は1986年12月~1991年2月ですが、その頃に地価と株価が高騰したのです。(下に示すデータをざっと見て下さい。) 株価は景気に追随して乱高下する事を承知で"売り/買い”にしますが、土地は値下がりしないと言う”土地神話”を信じていた投資家が多数いました。中小企業の強欲な社長が、バブル期に銀行から金を下ろして、投機目的で庭付き一戸建て住宅を5軒も買いました。2005年頃まだ使用せずに、保有していました。彼は、まだ億単位の貯金をしていましたので、憐れむ必要は有りません。

◎84年 :6大都市の地価=100、株価=100、実質GDP=100
★85年 :6大都市の地価=114、株価=119、実質GDP=104、
     公定歩合=5.0、消費者物価指数=2.0、
★86年 :6大都市の地価=144、株価=155、実質GDP=107、
     公定歩合=3.7、消費者物価指数=0.7
★87年 :6大都市の地価=184、株価=219、実質GDP=112、
     公定歩合=2.6、消費者物価指数=0.1
★88年 :6大都市の地価=229、株価=255、実質GDP=119、
     公定歩合=2.5、消費者物価指数=0.7
★89年 :6大都市の地価=298、株価=322、実質GDP=125
     公定歩合=3.1、消費者物価指数=2.3
出典 :日本銀行金融研究所・『バブル期の金融政策とその反省』のデータをベースにしています。

(余談) バブルの末期から計画を進めて、バブルが弾けた後(1993年)に老朽化していた工場を新設した会社を知っています。 銀行の金利がまだ高く(7%程)、需要が大幅に少なくなていましたので、3年程は経営は非常に苦しかった様です。苦しい中で開発した省力化機械が時代のニーズにマッチして、ドンドン仕事が入る様になり、2001年には借金を完済し、さらに億単位の内部留保が有りました。(この社長は、自力でバブル後を乗り越えたのです。)

【中国のバブル】
 「中国で何時かはバブルが崩壊する」と予想するコメンテーターがいますが、私はこの意見には少し懐疑的です。

 第1の理由 :日本のバブル崩壊を譬えると、『政府君と役人君の横に有った巨大な風船が、急に勝手に膨れ出し、どうしようか悩んでいるうちに、破裂してしまいました。破裂後もどうしたらよいか?途方に暮れている間に20年が経過しました』。 習近平は、政府君と役人君の様に愚かだと思いますか?

 第2の理由 :中国には民有の土地が無い為に、地価の異常な高騰は起こりません。土地を担保にして銀行が融資しているのではありません。 

 第3の理由 :国の借金(国債)が近年急激に増加していますが、その大半は中央銀行(中国人民銀行)が保有している様です。インフレ率が適当な値である限り、貨幣を発行し続けても問題は発生しません。換言しますと、異常なインフレになるまで国家は返済(国債を償還)する必要がありません。中央銀行が保有している国債には利息が付きません。

 第4の理由 :市中銀行が多量に不良債権を抱えたらバブルと言えるかも知れませんが、預かった金の利息を一部でも払えている間は、問題は顕在化しないでしょう。 そして、市中銀行の大半は国有銀行です。

 第5の理由 :民間企業の社長は地方政府から土地を借り、国有銀行から金を借りているわけですから、汚職に無関係では有り得ません。叩けば簡単に”ほこり”が出ます。彼を逮捕して財産を没収出来るのです。100億円の資産家を100人逮捕したら、1兆円が国庫に入ります。

 第6の理由 :民間企業や個人が銀行に預けた金の一部は、”徳政令”で”ゼロ”に出来ます。 共産国ですから、金持ちの資産を没収するのに抵抗は無いと思われます。 ただし、徳政令は最後の手段で、経済を減速させる恐れはあります。 外国企業の貯金に徳政令を適用しなかったら国際的な批判は余り受けないと思います。

(余談) 私が二十歳代の頃に、アメリカの独立戦争(1775年~83年)に関する本を何冊か読みました。内容は殆ど戦いの話しでしたが、(13州の)革命軍がそれぞれにポンドに代わる通貨を発行し、「我々は税金を取らない」と宣伝して支持を得たと言う話もありました。流通していたポンドの額に相当するまで、新通貨(紙幣=単なる紙切れ)を発行してもインフレにはなりません。2年間、税金を取らなかった地域(州)もあったと書いていました。その時、国家の借金は個人の借金とは違うと気付きました。 ちなみに、アメリカで統一通貨『ドル』が発行されたのは1791年頃です。

【中国の国債】
 近年、中国は国債を乱発する様になってきました。IMFのデータによると、2008年の国債発行残高は8.6兆元≒147兆円(対GDP比=27%)→2018年には44.4兆元≒754兆円(対GDP比=50%)で、10年で5倍以上も増加しています。 ちなみに、日本は2008年=955兆円(対GDP比=183%)→2018年=1,327兆円(対GDP比=238%)で、1.4倍程増加しました。

 中国政府は外国の投資機関が国債を買う事を規制をしてきましたが、緩和した為に、2017年から、外国の投資が急激に増え、2019年1月末時点では外国の投資機関の保有高は1.75兆元(≒30兆円)にもなっています。中国経済を楽観視している方が結構多いのです。

 各国の国債の利回りは『jp.investing.com/rates-bonds』で見る事が出来ます。中国国債の10年物の利回りは3%ほどで、異常な値では有りません。日本は“-0.1%”で、逆の意味で異常です。ロシアは“8.4%”程で、正に異常です。(ロシアの2018年の経済成長率は”1.7%”でした。)

【中国の経済成長率は?】
 中国の経済成長率が鈍化して来たと、問題視されています。共産党に対して国民の不満が爆発しそうな兆候が表れるまで、経済成長率が低下しても共産党政権は安泰だと私は思います。

 経済のグローバル化が進んでいますから、一国だけ高い経済成長率を維持する事は出来ません。2~3%程度になっても、異常とは言えません。2018年のGDP成長率は6.4%と公表されています。日本は1.1%程度でしたが、デモは起こっていません。

【中国の不良債権と不良資産】
 中国の四大市中銀行(国有銀行)が公表している不良債権率は1.5%~2.4%ですが、憶測で10倍ほど有るので近い将来”バブル崩壊”が起こると予想する経済専門家がおられます。私は、「中国政府が不良債権の実態を把握出来ないで、不良債権がドンドン増加した場合は、将来、経済が破綻する」と考えますが、中国政府が不良債権の増加を放置するでしょうか? 習近平は既にシャドウバンキングの圧縮政策を始めています。

 私は、利益を生まない投資が拡大している事に注目しています。不良資産が毎年増加しているのです。 例えば、中国鉄路総公司が毎年”兆円単位”の資金を投入して採算性を度外視した高速路線を敷設しています。運転費と整備維持費が毎年増加しています。 2018年末時点で、南沙諸島と西沙諸島に7つの人工島が建設されています。1島の建設に1兆円ほど掛かった?様だと言う報道が有りました。 軍事的な価値は有るかも知れませんが、経済的な利益は期待出来ないと思われます。むしろ、莫大な維持費/管理費が毎年必要になります。

ファーウェイの問題 (その9)

2019-03-23 12:00:36 | 中国
 今回は中国の高等教育についてです。 経済的に豊かになった中国が、どのような高等教育機関を整備していくのか? 「きっと欧米諸国とは一味違った独特の素晴らしいものにしていくのでは?」と期待してきました。今の所は期待外れです。

【中国からの国費留学】
 中国は、鄧小平が改革開放政策を始めた頃から、人材の育成に巨額の国費を投入して来ました。松下幸之助は、人材は”人財”であると言われたそうです。国や企業を発展させるには、”人財”が不可欠なのです。人数を揃えてもだめです。

 アメリカへの国費留学は、まだまだ貧しかった1978年から始まりました。 ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)に一人留学させると2,000万円/年、修士までだと”12,000万円/一人”も掛かります。

 留学を終えて帰国した人を、”海帰族”と呼びます。2005年までの”海帰族”は23万人にも達した様です。当時は、中国経済はどんどん発展していましたから、海帰族は”引っ張りだこ”だった様です。

(余談 1) 1970年頃に私は大学4年になりました。ゼミの研究室では、(学習机の様な)本箱付きの机が各自に与えられました。私の隣の机は中国の留学生でしたが、2年前にアメリカの大学に短期留学するといって渡米したまま帰って来ていませんでした。優秀な学生だと指導教官は言っていましたので、会って見たかったのですが! この頃から、中国は国費留学制度を始めていたのでは?と思います。

(余談 2) 中国の成長はアメリカにとって”困った問題”ですが、中国の成長を支えている”人財”を教育したのは、皮肉にもアメリカです。現在でも、中国から留学生を多数受け入れて教育しています。

 国費留学生の数は減少して来ましたが、中国で金持ちが増加する様になって、私費留学生が大幅に増加しています。2017年に出国した、国費留学生は3万人程ですが、私費留学生は54万人にも及びました。 (中国への留学生も増加しており、2017に入国した留学生は48万人もいた様です。)

【日本からの海外留学】
 明治時代、日本は外貨が不足していましたが、政府は国費で優秀な人材を海外に留学させました。帰国後、彼らは種々の分野で活躍したので、国が豊かになっていったのです。森鷗外は1984年~88年にドイツへ、夏目漱石は1900年~02年までイギリスに留学しました。

 独立行政法人日本学生支援機構と言う天下り組織がありますが、日本が受け入れている留学生の数は2017年に約27万人と公表していましたが、日本からの留学生は余りにも少ないためか、1か月未満の留学を含めたりして実態が良く分からない数字を公表しています。

 2013年に、大学生の海外留学を2020年に倍の6万人にする方針がでましたが、達成出来るのでしょうか?優秀な学生を国費留学させる事は非常に重要だと思うのですが、そんな重要な仕事を”天下り組織”に任せて良いと思われますか?

(余談) 私の勤めていた会社には、優秀な理科系の社員をMITの修士課程に2年間留学させる制度が有りました。帰国しなかったり、他社に転職するケースが増えて、修士号を取得したあと数年以内に退職した場合は、留学費4,000万円を会社に返済させる規定を設けました。当時、会社の経営はどんどん苦しくなって来て、毎年給料が下がっていました。私の席の隣に、二十歳代の極めて優秀な社員がいて、上司からMITへの留学を勧められていましたが、断り続けていました。彼は、「今から留学したら三十歳過ぎまで、この会社に縛られるのは嫌だ!」と言っていました。 金で縛り付けるのでは無く、修士号を取った若者が、帰りたくなる様な会社にする努力が必要だったのです。

【中国の大学進学率】
 1949年の建国後、40年ほどたった1989年の天安門事件の頃の大学進学率は3%程度だった様ですが、その後、徐々に高くなり2002年には15.0%、2016年には42.7%(学生数は 3,700万人)にもなっています。

 一人っ子政策を始めたのは1979年です。その年に生まれた子供は、1997年頃に大学に進学した事になります。その後は、子供一人に親二人と祖父母4人もいるわけですから、大学進学率がドンドン高くなたのでは?と私は見ています。

 大学と専科大学への入学者数は、1998年=108万人、99年=155万人、2000年=221万人、01年=268万人、・・・05年=504万人と急激に増加しました。学生数の増加と同時に、大学や専科大学の数も急激に増やしましたが、教官の確保が追っつかなかったようです。

(余談) 「大学進学率が高くなるのは良いことだ」と言う方がおられますが、私は賛同しません。某中小企業に出向していた時、入社して15年以上の設計担当の社員がいました。指示された通りに図面は書けるのですが、自分で考えて工夫する能力は全く有りませんでした。顧客との打合せを任せて見ましたが、ダメでした。彼の履歴書には工業高校出身となっていましたが、○○大学を卒業している事がバレテしまいました。別の企業に出向した時、○○大学卒業の社員がいましたが、その社員もダメでした。多分、今でも○○大学に国は助成金を出していると思います。

【中国の大学】
 中国の有名な、北京大学、清華大学、南開大学は清朝の時代に設立されました。清朝~中華民国時代に設立された大学は全て国公立大学になり、共産中国になってからは国公立大学しか認めませんでした。

 私立大学が認められる様になったのは1980年です。私立大学は、個人、団体、企業からの金で運営されており、国や地方政府からの助成金は受け取っていません。私立大学に”独立学院”と呼ばれるのがあります。一流の公立大学(○○大学)から学校の運営ノーハウをもらう私立大学です。名前が○○大学△△学院となりますが、○○大学とはキャンパスも異なり、教育内容も違います。(”学院”は学部としても使用されます。○○大学外国語学院とは○○大学の外国語学部のことです。)

 日本の大学は文部省が所管していますが、中国では中央政府と地方政府(省など)が所管し、私立は全て地方政府の所管になっています。

 日本のセンター試験(2020年度からは大学入学共通テスト)の様な、大学受験の”足切り”の試験(普通高等学校招生全国統一考試)が中国にもあります。各省にある大学を、レベルの高い順に一本大学~三本大学に分けて、”足切り”点数を決めているのです。

★ 一本大学(第一批次本科) :難関大学
★ 二本大学(第二批次本科) :
★ 三本大学(第三批次本科) :
★ 専科大学 : 日本の短期大学に相当します。3年制

 大学の数はどんどん増えています。2012年に2,442校(内私立706)、2015年には2,879校(内私立735校)にもなっています。 (短期大学を除いた)2018年の日本の大学は768校(内私立589校)です。

(余談) 中国では偽物が横行している様ですが、認可を受けていない、実態が無い等々の”偽大学”が毎年、学生を募集しています。インターネット上に実名をあげて、注意を喚起している様です。

【中国の大学の学費】
 改革開放(1978年)の前は大学の学費は”ただ”でしたが、1985年には200元ほどになり、2017年には6,000元(≒10万円)以上の大学がある様です。(中国の平均給与は5,000元ほどです。)

 自宅から大学に通えない学生は、寮費や生活費が必要になりますが、一か月に1,400元ほど必要な様です。所得の少ない地方(農村戸籍)の子供は、大学に進学するのが難しくなって来ている様です。

(余談 :授業料) 私の大学4年間、国立大学の授業料は12,000円/年でした。(公立高校の授業料より安かったのです。)自宅から通学できる場合は、貧しい家庭の子供でも国立大学には進学出来ました。現在、国立大学の授業料は高いですね!私の様な貧乏学生だったら、今は進学出来なくなっています。

(余談 :生活費) 私は1967年に入学しましたが、(格安を探して)2食付四畳半の下宿代が10,000円でした。夏休みが終わった頃、下宿の小母さんが「11,000円にする」と言ったので、「12,000円払うから、卒業するまで値上げしないで」と言うと、了解してくれました。卒業時には15,000円ほどになっていました。

【御参考 :中国の初等/中等教育】
 改革開放を始めた頃から、初等/中等教育にも力を入れてきました。義務教育の無償化も進んでいます。

★ 幼稚園 :3年 共働き家庭が多いために入園率は75%以上
★ 小学校 :6年 義務教育 入学年齢は6-7歳
★ 初級中学 :3年 義務教育
★ 高級中学 :3年 日本の高等学校に相当

ファーウェイの問題 (その9)

2019-03-16 12:37:08 | 中国
 今回は中国の民間企業についてです。2015年に”中国製造2025"を打ち出しました。既に、”世界の工場”と呼ばれているのに、25年までに”世界の製造強国”になり、45年には”製造トップの国”になると言う目標を立てたのです。ノンビリ寝ている場合では有りません!

【中国の企業】
 日本では、”民間企業”と”民営企業”は全く違う意味で用いますが、中国では国の資本が入っていない企業を”民営企業”と呼んでいます。(民間人が立ち上げた企業でも、「今は君に経営を任せるけど、君の企業は国家のものだ」と言っている様に思えます。) なお、本稿では、日本の習慣に従って”民間企業”を用いる事にします。

 ”公司”は”会社”のことで、”○○股份有限公司"とは、日本の”○○株式会社”の事です。”××有限責任公司”は”××有限会社”に相当します。 (ちなみに、日本では、新たに有限会社を設立することは出来なく無くなっています。) (無限公司=合名会社、両合公司=合資会社)

 日本では、現在、資本金1円で株式会社を設立出来ますが、中国では股份有限公司は1,000万元(≒1.7億円)以上の資本金が必要です。そのため、中小規模の民間会社は有限責任公司になっているのです。

 ”△△公司”は国有企業の様ですが、国有企業でも株式を発行していると、”○○股份有限公司"となり、国有企業か?、民間企業か?、判断するのは難しいです。

 国有企業の分類に”国有独資公司”となっているのは、純粋な国有企業で、株主総会の様な物が存在しない企業です。

【中国の企業の種類】
 中国の企業の形態を以下に整理して置きます。外国からの投資、外国企業との合弁会社などに対する規制は、徐々に緩和されてきており、現在、中国には種々の形態の企業が存在しています。

① 個人企業 :従業員7人以下の自営業
② 個人独資企業 :従業員8人以上の自営業
③ 民間企業 :中国では”民営企業”と呼んでいます。
④ 民間/外資企業 :外資は50%以下
⑤ 独資企業 :外資が100%
⑥ 国有企業が株の一部を保有する民間企業
⑦ 国有企業と外資の合弁企業
⑧ 国有企業

 1986年から、先端技術が必要な分野に限り、外資が100%の企業(独資企業)が認められる様になり、その後規制が緩和されて、独資企業は増加しています。

 ①と②の個人企業は国に届けが必要で、中国人しか設立出来ません。外国人が投資する事も許されていません。

 外国の企業の支店は、金融機関だけが認められています。営業活動を行わない駐在員事務所は認められています。

(余談) 共産中国の建国以前から個人企業は多数存在していたと思われますが、「1949年の建国後にどの様になったのか?」私は非常に興味が有り調べていますが、未だによくわかりません。 規模がある程度以上の民間企業は、半国有企業にして、その後完全な国有企業にしました。多分、小規模な(①や②に相当する)個人企業はそのまま存続させた?と私は思っています。

(余談) 股東大会=株主総会、董事会(とうじかい)=取締役会、監事会=監査役会、董事長=会長、総経理=社長、 監事会(監査役会)には株主代表と従業員代表が参加します。

【中国の民間企業の成長】
 1978年まで、中国には民間企業は存在しなかったのです。”雨後の筍”では表せないスピードで数が増え、2011年には民間企業は900万社、自営業は3,600万軒にも達しました。

 民間企業は数が多いだけでなく、成長しています。 2016年の中国国家統計局のデータを以下に示しますが、僅か40年弱で国有企業と同じくらい重要な存在になっています。

★ 民間企業 :企業数=75.8%、売上=45.6%、雇用=46.7、純資産=31.4%
★ 外資企業 :企業数=17.5%、売上=27.8%、雇用=30.0、純資産=26.0%
★ 国有企業 :企業数=6.7%、売上=26.6%、雇用=23.3%、純資産=42.6%

 同業他社が多いいため、中国の経営者は”戦国大名”の様に生き残る術を、真剣に毎日考えている様に思われます。 中国の企業の経営戦略の決定スピード、成長スピード、開発/モデルチェンジのスピードに注目する必要があります。 安く作るのも重要な技術です、物作りの点では中国は世界最高のレベルに達したと考えた方が良いと思います。(決して、後進国では有りません。)

 白物家電などの家庭電気製品の分野では、すでに世界的な規模に成長した会社が数社有ります。各社、既に海外で販売しています。 サムスンでさえ、近い将来中国市場から撤退せざるを得なくなると、私は見ています。 美的集団、ハイアール、格力集団、TCL、長虹集団等々 (長虹は国有の軍需工場でした。)

【巨大マーケットの典型例=自動車産業】
 国を発展させるためには、自動車産業の育成が不可欠です。 然し、自動車の技術レベルは低く、資本が有りませんでした。中国は乗用車に25%、トラックに20%の関税を掛け、完成車の輸入を抑え、外国の自動車メーカに合弁企業を設立させて、国内で生産させる事にしました。

 現在、中国には自動車メーカが1,000社程有る様です。以下に、外国のメーカと合弁で乗用車を製造する企業を整理して置きます。

① 第一汽車 :国有企業;トヨタ、ダイハツ、マツダ、フォルクスワーゲン(VW)
② 上海汽車 :国有企業;ボルボ、GM、VW
③ 東風汽車 ::国有企業;日産、ホンダ、起亜、プジョー、シトロエン
④ 長安汽車 :民間企業;スズキ、三菱、フォード
⑤ 奇瑞汽車 :民間企業 (大手です)
⑥ 北京汽車製造廠:民間企業;現代、メルセデス
⑦ 広州汽車:国有企業;ホンダ、トヨタ、三菱、日野、フィアット
⑧ 浙江吉利控股集団:ベンツ
⑨ 華晨汽車:民間企業;トヨタ、三菱ふそう
⑩ 東南汽車:三菱
⑪ 華泰汽車:現代

 2018年の中国の自動車生産台数は2,780万台、販売台数は2,810万台で、巨大なマーケットになっています。ちなみに、アメリカの販売台数は1,730万台で、日本は527万台です。中国の人口は多いですから、5,000万台になっても不思議ではありません。

 トランプの要求により、習近平は自動車産業などの分野で外資参入規制緩和(現在は出資比率の上限=50:50)を撤廃すると宣言しました。 中国の自動車メーカが力を付けてきており、規制を緩和しても影響が少ないと判断したのだと思われます。

【民間企業の国有化】
 近年、国有企業が民間企業を買収したという報道が時々有ります。2002年頃から始まり、特に2018年から多くなっている様に思えます。(国進民退)

 中国には民間の報道機関は殆ど無く、共産党に都合の悪い報道は出来ませんから、個々の国有化の理由は外からでは類推する以外には有りません。日本では、かなり憶測を交えて国有化が報じられています。 例えば、アリババ集団の会長、馬雲(ジャック・マー)が「2019年9月に引退する」と公表したのは、「共産党がアリババ集団をコントロールしやすくするためだ」等々。

 2018年から国有銀行が民間企業に対し”貸し渋り”や”貸し剥がし”に出ている様です。 民間企業は、『ファーウェイ(7)』で述べました”P2P”から20%もの高利で資金を調達するか、銀行に、その企業の株式を買い取って貰う様になっています。銀行は、取得した株式を国有企業に売却しているため、民間企業が国有企業の傘下に入る事になります。

 「民間企業の国有化が進めば、効率が低下して中国経済は減速する」と予想するコメンテーターがおられますが、中国政府はデメリットを織り込み済みで、この政策を始めたと私は考えています。

 『外国の企業と競争出来る国有企業が多数成長してきたし、”富国強兵”もかなり達成出来たし、経済が多少減速しても共産党がコントロール出来る企業を増やす方が都合が良い。減速し過ぎたら手綱を緩めたら良い』と考えているのでは?

【民間/外資企業の運命】
 中国で殆ど製造されていない製品の分野で、海外のA社が中国のB社と合弁会社(C社)を設立したとします。 A社は技術移転を要求されていますから、当然、技術情報は漏れてしまいます。A社の種々の情報を集め、A社の社員を引き抜いて、純粋な中国の会社(D社)が設立され、同様の製品を製造し始めます。 マーケットがドンドン大きくなって、D社が成長して来ました。 中国政府がD社に膨大な助成金を投入して、D社の設備を増強し、安価な製品を販売させると、合弁会社C社は赤字に転落します。 A社は,中国から撤退せざるを得なくなります。

 合弁会社C社の工場は、国から借りた土地に立っています。 A社が中国に持っている資産はD社の株式だけです。 A社はB社に、安い値段で株を売って撤退せざるを得ません。 C社とD社がそのまま存続すれば、雇用を失うことが有りません。 これが、鄧小平が考えた”解放”のストーリーなのだと思います。

【ハイテク企業の優遇】
 1995年頃に、安川電機さんのロボット工場を見学させて貰った事があります。ロボットがロボットを組み立てるラインが有り、ラインが始まる所では組み立てられているロボットはわかりますが、ラインが進むに連れどちらが組み立てられているのか判別出来なくなるのです。最後にロボットがロボットを検査していました。このラインは無人で、SF映画を見ている様でした。

 私達は、第四次産業革命の真っただ中に生きているのです。明治維新の頃は、第一次産業革命が終わる頃で、明治になって、(直ぐに、)第二次産業革命が始まりました。1980年頃から、パソコンに代表される第三次産業革命が始まったのです。その後、急激に種々の分野で先端技術が開発され商品化される様になり、いつの間にか第四次産業革命の時代になりました。

 第三次産業革命が始まった頃に、中国は改革開放政策(1978年~)を始めました。その後の中国の経済発展は、携帯電話の普及が象徴しています。日本でポケットに入るくらいの携帯電話が出たのが1990年です。中国では、固定電話が各家庭に普及する前に携帯電話の時代になったのです。そして、2018年のスマートフォンは、世界の1/3を中国で製造される様になっています。

 明治維新を進めた人達と、改革開放を進めた中国の政治家は、同じ様な”気概”を持っていたのだと思います。明治5年(1872年)にお金が無いのに、富岡製糸場を設立しました。”ケチな”工場では無く、当時としては世界一の製糸工場を建設したのです。

 中国の企業に対する税率は25%ですが、ハイテク産業分野の企業には軽減税率(15%)が適用されています。資金調達の優遇、人材の投入、更には国家の機関が外国で合法/非合法に入手した情報を与える等々して、ハイテク産業を育成して来ました。その典型がファーウェイです。

【ファーウェイ】
 ファーウェイは1987年に商社としてスタートしました。 2010年からスマートフォンの製造を開始し、中国政府の強力なバックアップを得て急激に規模を拡大してきました。 2018年、スマートフォンの分野ではサムソンに次ぐ世界第2位の会社のなりました。

 ファーウェイのスマートフォンには、「中国が情報を引き出せるプログラムが入っているのでは?」と言うのが、アメリカの主張です。然し、AppleやGoogleで通信したらアメリカの情報機関に筒抜けだと、昔から言われています。

 第5世代移動通信システム(5G)の分野からファーウェイを排除したい理由は、第四次産業革命の主導権を中国に渡したく無いためだと私は思います。中国がアメリカから穀物等を多量に輸入して、一時的にアメリカの貿易赤字を減らしても、問題は解決しないでしょう。アメリカは研究/開発費を大幅に増やして、ハイテク産業分野の企業を資金的に支援しない限り、中国には勝てません。

 日本の政府は、第四次産業革命が進行中だと言う認識が無いように思います。研究/開発費を削減し、レベルの低い大学にも補助金を出し続けています。予算委員会のTV中継を見ていると、森友/加計/データ改竄問題やUSBについての質問をする野党にはうんざりします。第四次産業革命で、中国と「どう戦うか?」、「こう戦うべきだ!」と言った議論をして頂きたい。国会議員は、ハイテク技術について勉強する必要があります。