これ!どう思います?

マスコミがあまり報道しない様な問題を、私なりに考えてみます。

電気料金の問題 (その2)

2022-10-29 21:42:39 | 社会問題
【はじめに】
 今回は、電力自由化によって廃止された『総括原価方式』について書きます。 次回、安倍政権が採用した電力自由化の問題点について書く予定ですが、「『総括原価方式』のどこが問題だったのか?」ご理解頂く必要が有るので、過去になった話しを敢えて書きました。

【電気料金の請求書】
 ”何気なく”電気料金の請求書を見ておられる方が多いいと想像します。 関西電力の家庭用電力の請求書には、次の❶~❻の金額が記載されています。❶~❺に消費税分が含まれているので、❶~❺の合計が請求金額になります。❶の金額は毎月同じですが、❷~❺の金額は電気の使用量によって変わります。

 ❹の燃料費調整制度とは 、火力燃料(原油・LNG〔液化天然ガス〕・石炭)の価格変動を電気料金に迅速に反映させるため、その変動に応じて、毎月自動的に電気料金を調整する制度です。

 ❺の「再生可能エネルギー発電促進賦課金」とは、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」によって電力の買取りに要した費用を、電気を使用する顧客から、使用量に応じて負担させる制度です。 換言すると、太陽光発電や風力発電で作った(高価な)電気を電力会社が買い取った場合は、赤字にならない様に電気料金をアップして良いと言う制度です。

 東京電力では『基本料金』と呼ぶ様ですが、関西電力では❶『最低料金』と呼んでいます。東京電力は、7種類の契約アンペア(A)数で基本料金を決めています。(10A、15A、20A、・・・60A) 関西電力は契約電力が『15kWh』までを『従量電灯A』、それ以上を『従量電灯B』として『最低料金』を決めています。 但し、『従量電灯B』契約の場合は、『kWh』では無く、馴染みのない『皮相電力(kVA)』が使用されています。(多くの方は、「何のこっちゃ?」と思われるでしょうか!)

《豆知識 :皮相電力(kVA)》 発電機、変圧器、電線などの容量(能力)は皮相電力(kVA)で、原動機(ガスタービン、蒸気タービン、ディーゼルエンジンなど)は有効電力(kWh)で決めます。

 交流の場合は、横軸を時間、縦軸を電圧値と電流値のグラフを想像して見て下さい。電圧と電流は、サインカーブで変化します。 理想は、電圧と電流が『0』になる時刻が同じになる事です。然し、実際は、『0』になる時刻が同じにはなりません。

 負荷が電動機(モーター)だと仮定すると、モーターで実際に消費される電力『有効電力(P)』、発電機を流れる電力『皮相電力(S)』、 発電機→→負荷(モーター)→→発電機とグルグル回る電力『無効電力(Q)』は次の式になります。

 有効電力(P)=皮相電力(S)-無効電力(Q)

 原動機は有効電力(P)分のエネルギーを発生する必要が有ります。発電機や送電系統は、皮相電力(S)に相当する電圧と電流に対応出来なければならないのです。無効電力(Q)の大小は、顧客が使用する機器によって決まります。 関電の『従量電灯B』契約が、『皮相電力(S)』をベースにしているのは理にかなっていると思います。電気代を下げる為に、顧客は無効電力(Q)を小さくする工夫と努力が必要なのです。

 電気を熱源として使用する電熱器などの無効電力(Q)は『0』になります。『誘導』と言う接頭語の付いた電気機器の無効電力(Q)は『0』にはなりません。

・・・ 関西電力の請求書 ・・・
❶ 最低料金
❷ 一段料金
❸ 二段料金
❹ 燃料費調整額 :税金ではありません。
❺ 再エネ促進賦課金 :税金ではありません。
❻ 消費税 :10% ・・・再掲と記載されています。

【総括原価方式】
 生活や産業に必要不可欠な物(電気、ガス、水道)の値段は、市場経済方式(需要と供給で価格が決まる方式)にすると安定供給が出来ません。 (新型コロナが流行り始めると、直ぐにマスクが店頭から消えてしまいました。 電気、ガス、水道の供給が止まったら、マスクとは比べ物にならない程の社会問題になります。)

 先人達は、大災害が発生しても!燃料の国際価格が高騰しても!電気、ガス、水道を安定供給する事を最優先課題だと考え、(大きな問題を内在する事を承知の上で)総括原価方式を採用したのだと、私は想像しています。

❶ 電気 :電気事業法第19条
❷ ガス  :ガス事業法第17条
❸ 水道 :水道法第14条

 電力会社が発電して供給するのに掛かる費用の合計を『総括原価(A円)』と呼びます。国が認める『利益率』を『B%』として、電力の予想販売量を『CkWh』とします。総括原価方式での電気代の本体価格『D円/kWh』は、次の式で計算します。

 総括原価方式での電気代 :D円/kWh=A円✕{1∔B%/100}/CkWh ・・・(1式)

【総括原価方式での利益】
 総括原価方式が認められた電力会社の利益(E円)は、次の(2式)になります。(1式)と(2式)に用いる総括原価(A円)は、実績値では無く予想値です。総括原価(A円)の予想値を水増しして大きく見積もると利益(E円)が大きくなります。然し、余り大きく見積もり過ぎると、国がイチャモンを付ける恐れが有ります。

電力会社の利益 :(E円)=A円✕(B%/100) ・・・(2式)

電力の予想販売量を『CkWh』を少なく見積もると、(1式)から電気代(D円/kWh)が大きくなります。従って、鉛筆を適当になめて予想販売量を少な目にして、沢山売ったら電力会社は儲かるのです。

【総括原価方式の問題点】
 上記の3っつの法律を検討していた時、政治家の一部と官僚達は、総括原価方式には問題点が有る事に気が付いていたと想像します。然し、経済安全保障(安定供給の確保)を最優先課題とすると、他に妙案が浮かばなかったのでしょう?! 先週投稿した様に、日本の電気代が高いので1995年に(電力10社には総括原価方式の電気料金を認めたままで、)部分的な電力自由化を実施しました。

問題点❶ :総括原価方式で、電力会社が利益を大きくする為には、燃料をマスコミが問題にしない範囲で、出来るだけ高く買えば良いのです。→→「少し安くなるかも?知れないスポット契約では無く、メンドクサク無い長期契約を主に採用しました。」→→ウクライナ戦争で燃料の国際価格が高騰しましたが、電力会社の購入価格は(国際的には)比較的安価と言う事になりました。

問題点❷ :電力自由化の前は、古くて効率の悪い設備が、電力会社にとっては『お宝』でした。燃料が沢山必要になりますから、総括原価が増えます。そして、点検/修理費として多額の予算が組めます。→→電力自由化が始まると、効率の悪い設備は厄介な『屑(ぐず)』になりました。→→ドンドン廃棄しました。

問題点❸ :総括原価方式が適応されていた時代(電力自由化の前)は、国が認める範囲で発電所を増設したり、新発電所を建設しました。→→総括原価が増えて、利益が大きくなるからです。→→電力自由化が始まると、稼働率を高くすると利益が増えるので、発電所の新設は殆どやらなくなりました。

 電力自由化によって、電力会社10社は、古い旧式の発電所を破棄して、発電所を新設しなかったので、去年から夏季と冬季の電力不足を心配しなければならない事態になったのです。

問題点❹ :発電設備と配電設備にはメンテナンスが不可欠です。その費用も総括原価に含まれます。従って、イチャモンが付かない範囲で、メンテナンス費を水増しすると電力会社の利益は大きくなります。某電力会社ではメンテナンスを随意契約にして、(工事内容を決めないで)毎年1月頃に翌年度の発注金額を決めていました。 金額が決まっているので、工事会社は仕事が少ない方が儲かる仕組みです。

《水増しの手段の一例》 発電所の塗装工事を見学した事が有ります。現場にペンキの入った一斗缶を沢山置いていましたが、聞いたことの無い塗料メーカーのシールが貼られていました。塗装業者がメーカーのシールを剥がして、「高価な特殊な塗料を使用している」と偽装していたのです。(その後、その業者を訪問した時、シールの貼り替え作業をしていました。)

問題点❺ :発電所(特に原子力発電所)の周辺の市町村に、電力会社は種々の名目で『金』を配ります。この金も総括原価に含まれ、国はイチャモンを付けません。 関西電力と故・森山栄治氏の問題を覚えておられますか?

《故・森山栄治氏の問題》 森山氏が関電の歴代の重役達に多額の金品を渡した事件は、種々報道されました。然し、関電と森山氏の関係は大昔からですから、まだ報道されていないヤバイ話しが沢山有るのでは?と想像します。

 森山氏が柳田産業の相談役に就任した経緯を、某氏から2010年に聞きました。「柳田社長と森山氏はほぼ同じ年齢で、性格が『水と油』の様に相性が悪い。関電から強い要請が有ったので仕方なく相談役に迎えた。」、「出社は年に何回かしか無く、仕事は一切しない。」、「関電は、将来、森山氏の協力を必要とする問題が発生するかも知れないので、複数の会社から給与が貰える様にした。」、「関電の為に、原子力発電所関係の胡散臭い事を色々やってきた様なので、口封じの意味で一生森山氏が金を得られる様にしているのでは?」・・・と言っていました。

 森山氏は瑞宝双光章を貰い、秘密を全て封印して2019年に90歳で亡くなりました。問題が報道される様になったのは、死後のことです。

★ 1987年~?年 :吉田開発(建設会社)などの顧問や副社長に就任
★ 1987年~18年 :柳田産業相談役・・・関電の原子力発電所の工事会社
★ 1997年~18年 :オーイング取締役・・・関電の原子力発電所の警備会社
★ 1997年~18年 :関電プラントの顧問
★ 2003年 :瑞宝双光章
★ 2019年3月 :森山栄治氏死去(90歳)
★ 2019年9月頃から :関西電力と森山栄治氏の問題が報道される様になった。

(余談 :高給料亭の御節料理) 某電力会社の発電所に出入りしている、メンテナンス会社(Y社)は、毎年年末の31日に、10万円ほどする高給料亭の御節料理を発電所関係の課長職以上の社員・数十名の自宅に届けていました。勿論、この金も総括原価に含まれます。 (この話は10年程前に、御節料理を届ける役をやっていたY社の複数の社員から聞きました。今でも続けている可能性が有ります。)

 「受け取って貰えない方もいるでしょう?」と聞いたら、「皆さん、待ってくれていて、喜んでくれる!」と言っていました。

 複数の都道府県に跨がっていたので、二人一組のチームを沢山作って、自分達の車で配達していた様です。「特別手当が出るのか?」と聞いたら、「日ごろお世話になっている方達に届けるのだから、会社からは一銭も出ないけど、皆、喜んでやっている」と言っていました。


電気料金の問題 (その1)

2022-10-22 09:09:53 | 政治
【はじめに】
 日本の電力政策には重大な問題が有ります。❶電気料金が高い、❷夏季と冬季に電気が不足する恐れが有る、❸電気自動車(EV)が普及する様になると電気が不足する、❹古い火力発電所は廃棄されるが、新設は少ない、❺台風や地震の災害が発生した場合の対策など。

 これらの問題について、2回に分けて投稿します。 今回は、主要国の電気料金と発電量について書きます。

【電気料金の国際比較】
 先進6カ国の2019年の電気料金を以下に示します。出典は資源エネルギー庁のホームページ『日本のエネルギー 2021年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」』です。

 各国とも、家庭用よりも産業用の方が安く設定されています。アメリカの電気料金は非常に安いです。 (アメリカの電気料金に税金が掛かるのか?は不明です。)

 日本の電力会社が「発電/供給に必要だと主張するコスト(本体価格)」は、6カ国中で最も高いです。

 ウクライナ戦争が勃発して、原油や天然ガスの価格が大幅に上昇しているので、今年(2022年)から各国の電気料金は大幅にアップすると予想します。 2020年、フランスは原子力発電で67.4%の電力を得ていたので、ウクライナ戦争の影響は少ない様に思えますが、原子力発電所のメンテナンス費用がアップしてきたので、ウクライナ戦争以前からフランスでは電気料金が上昇しています。

・・・ 家庭用電気料金 ・・・2019年
★ 日本  :25.4米セント/kWh(内税金=8.7%)・・・本体価格=23.1米セント/kWh
★ アメリカ :13.0米セント/kWh(内税金=0%?)
★ イギリス :23.4米セント/kWh(内税金=4.7%)
★ フランス :19.9米セント/kWh(内税金=35.2%)
★ ドイツ  :33.4米セント/kWh(内税金=53.3%)・・・本体価格=15.6米セント/kWh
★ イタリア  :25.6米セント/kWh(内税金=27.3%)

・・・ 産業用電気料金 ・・・2019年
★ 日本  :16.4米セント/kWh(内税金=1.8%)・・・本体価格=16.1米セント/kWh
★ アメリカ :6.8米セント/kWh(内税金=0%?)
★ イギリス :14.7米セント/kWh(内税金=5.4%)
★ フランス :11.8米セント/kWh(内税金=20.3%)
★ ドイツ  :14.6米セント/kWh(内税金=50.7%)・・・本体価格=7.2米セント/kWh
★ イタリア  :18.5米セント/kWh(内税金=37.8%)

【韓国との比較】
 韓国の電力会社は、半官半民の『韓国電力公社』一社しか有りません。(国が株式の51%を握っています。) 韓国の歴代政府は、昔から採算を度外視して、政策的に電気料金を安く設定してきました。その為に、韓国電力公社は巨額の累積赤字を抱えています。

 兎にも角にも、韓国の電気料金は日本よりも大幅に安いのです。 詳細は、次で検索してみて下さい。

 HANKYOREH(ハンギョレ):『韓国の電気料金、原発大国フランスの半額と安い理由は』・・・2021年12月15日

 最近、円安とウオン安が続いているので、両国の電気料金は上昇すると思われます。文政権では「脱原発」政策でしたが、尹大統領は原発を再稼働させる様です。

 日経新聞の2022年10月12日付け『韓国「安い電気」に転機 資源高・通貨安で17.9%上昇』のデーターで日本と韓国の電気料金を比較してみました。

★ 日本の家庭用 :25.5米セント/kWh
★ 韓国の家庭用 :10.5米セント/kWh

★ 日本の産業用 :16.3米セント/kWh
★ 韓国の産業用 : 9.4米セント/kWh

【発電量と用途別の国際比較】
 各国の発電量と用途の割合を比較すると、色々な事が分かると思います。

❶ 中国の発電量は、2015年の時点で既にアメリカの『1.29倍』になっています。 電力の用途で見ると、中国は異常に工業用が多く、逆にアメリカは少ないです。 従って、中国が多量の工業製品を製造している事が分かります。正に、『世界の工場』になっているのです。

・・・ アメリカと中国の工業で使用される電気 ・・・2015年
  アメリカ :(37,808億kWh)✕0.21≒ 9,940億kWh
  中国   :(48,768億kWh)✕0.66≒32,190億kWh

❷ 内需依存型の国(アメリカ、日本、フランス、イギリス)は電力消費の工業用の割合が低く、逆に外需依存型の国(中国、韓国、ドイツ)は工業用の割合が高くなっています。

・・・ 発電量と用途 ・・・2015年
★ 日本  :発電量≒ 9,492億kWh、家庭≒28%、工業≒32%、オフィス等≒40%
★ 韓国  ;発電量≒ 4,953億kWh、家庭≒13%、工業≒53%、オフィス等≒34%
★ アメリカ :発電量≒37,808億kWh、家庭≒37%、工業≒21%、オフィス等≒42%
★ カナダ  :発電量≒ 5,031億kWh、家庭≒34%、工業≒33%、オフィス等≒33%
★ イギリス  :発電量≒ 3,029億kWh、家庭≒36%、工業≒30%、オフィス等≒34%
★ フランス :発電量≒ 4,249億kWh、家庭≒36%、工業≒25%、オフィス等≒39%
★ ドイツ  :発電量≒ 5,147億kWh、家庭≒25%、工業≒44%、オフィス等≒31%
★ イタリア  :発電量≒ 2,875億kWh、家庭≒23%、工業≒39%、オフィス等≒38%
★ 中国  :発電量≒48,768億kWh、家庭≒15%、工業≒66%、オフィス等≒19%
★ インド   :発電量≒10,269億kWh、家庭≒24%、工業≒44%、オフィス等≒32%
★ ロシア  :発電量≒ 7,263億kWh、家庭≒20%、工業≒45%、オフィス等≒35%
出典 :一般社団法人・海外電力調査会;主要国の消費電力量の部門別構成(2015年)

(余談 :ロシアの工業力) ウクライナ戦争で、最近、「ロシアは新しい兵器を製造出来ないために、トンデモナク古い兵器を持ち出してきている」と言う報道が有りました。半導体や工作機械を国産しておらず、経済制裁で輸入が難しくなった事が主な原因の様です。 ロシアの発電量は、アメリカの『19%』日本の『77%』しか有りません。この点からも、ロシアは通常兵器で欧米諸国と戦争する国力が無いのは明らかです。

(余談 :原子力発電) 原子力発電は、『悪』だと言う考え方が多くの国に広がり、日本を含む欧米諸国では新設抑制、廃止の政策を進めてきました。 然し、ウクライナ戦争の勃発で各国は考え方を修正しています。 一方、中国は原子力発電の割合が非常に少なく、今後、原子力発電所を沢山新設すると予想します。日本政府も、より安全な原子力発電所の新設を真面目に検討すべきだと考えます。

マイナ保険証の問題点

2022-10-15 12:22:12 | 社会問題
【はじめに】
 政府は、ほぼ強制的に医療保険証と自動車免許証を、2024年中にマイナンバーカードに統合しようとしています。 まだ、マイナンバーカードを取得していない方は、ポイントが貰える内に手続きをされた方が良さそうです! 金融機関の口座番号も一緒に登録されると、15,000ポイント貰えます。

 私は、マイナンバーカードとマイナ保険証について、先月投稿しました。次で検索して、是非とも読んで下さい。

★ 『日本の活性化❺ :デジタル化(その2)』 :投稿日=2022年9月10日

【私とマイナ保険証】
 先日、妻が私のマイナンバーカードを区役所に持って行って、『マイナ保険証』の手続きをしてきました。事前に予約していたので、待たずに短時間で手続きが完了したそうです。「一人分で7,500ポイント貰えた」と喜んでいました。

【河野デジタル大臣】
 最近、河野大臣は「保険証を2024年の秋に廃止する」と言われました。 言い換えると、「2024年の秋以降は、マイナ保険証しか使えなくする」と言ったのです。

 マイナンバーカードは2016年から発行される様になり、既に6年経過しています。 政府は、マイナンバーカードの取得を、お願いベースで進めているので、現在の取得率は『50%以下』しか有りません。

 2024年にマイナ保険証に切り替える為には、今後2年間でマイナンバーカードの取得率を100%にする必要が有ります。 『お願いベース』では実現不可能なのは誰の目で見ても明らかです。 「新たに取得した方には、100万円支給します」と言ったら、役所の窓口に申請者が殺到すると思われます。然し、この方法では、70兆円程お金を用意する必要が有ります。

 河野大臣の考えは、「2024年の秋以降に、マイナ保険証を持参しないで医療機関を利用したら→→一旦・全額支払い→→役所に出頭して、手続きしたら→→自己負担分を指し引いた額を返却します」だと思われます。患者の手間が大変になりますから、マイナ保険証を申請せざるを得なくなると予想します。 従って、半強制的にマイナンバーカードを取得させる事になります。

 一時的には、患者と役所の窓口は混乱すると予想しますが、半年もしたら(2025年の春には)河野大臣の目論見は成功しそうに、私は思います。

【日本医師会の松本会長の発言】
 10月12日、日本医師会の松本会長が、「健康保険証の廃止を決定するのであれば、まずは国民に理解をしていただく、その時点(2024年秋)で、マイナンバーカードを取得していない人がいるのであれば、その対応が、非常に大きな問題だ」と発言されました。 松本氏の発言は、何が問題なのか?舌足らずで理解出来ません。

《日本医師会と厚労省の密約》 (私が某医者から聞いた話しで、正否の確認は出来ていません。) マイナ保険証制度を開始するに当たって、厚労省は日本医師会に対して次の約束をしたそうです。❶開業医にはマイナ保険証の読取機の設置を義務付けない。➋手書きのカルテは認める。

 後述の様に、読取機を設置しない医療機関では種々の問題が発生しそうです。 その対策として、政府は、「読取機を購入する医療機関に、購入金相当額を全額補助して、(実質タダになる様にして、)読取機の普及を図る」計画の様です。

 読取機は一式、約50万円もするそうです。 政府が一括購入して医療機関に配布した方が、安くて/早く届きそうに思います。日本医師会と❶の密約が本当に有ったとしたら、「読取機を医療機関が自主的に購入した事にしたいのだ」と思います。

(余談 :読取機) マイナ保険証の読取機がどんな装置か?知りたい方には、『(株)USEN-NEXT HOLDINGS』のホームページを推奨します。

《邪推》 読取機の開発/販売には、特定のメーカーが政府の協力を得て進めていると想像します。 東京オリンピックの汚職事件(高橋治之容疑者の絡んだ事件)の様な事になったら大変です。読取機を政府が一括購入したら、特捜部が動きそうです。桑原桑原! 「医療機関がメーカーを選定して→→購入した事にしたいのだ」と邪推しています。

【マイナ保険証の読取機】
 マイナ保険証の読取機は、駅の自動改札機の様なタッチ式だそうです。(マイナンバーカードには挿入の▶印が印刷されているので、挿入式の読取機でも良かったと思われます。) マイナ保険証には保険料率が記載されていません。 開業医や調剤薬局に読取機を置かなかったら、保険料率が分かりません。 河野デジタル大臣は、この点については何も言っていません。 患者が医療機関で、「私は3割です」などと自己申告にするのでしょうか?!

【資格の喪失】
 保険料を滞納すると資格が消滅してしまいます。読取機を置か無い医療機関では、資格の有無が分かりません。 (読取機で読み込んだら、クレジットカードの様に、資格が喪失しているか?分かるのでしょうか?!)

 紙の保健証の有効期間は『1年』でしたが、マイナ保険証は『5年』の様です。 悪い輩が、マイナ保険証を更新した後、直ぐに保険料を支払わ無くなっても、5年近く自己負担分だけ支払えば良い事になります。 日本人や長期滞在の外国人の場合はやらないと思いますが、3年とか4年間だけ滞在する予定の外国人の多くは、1ヶ月分だけ保険料を納入する様になる恐れが有ります。

 外国人が、保険料を何カ月か滞納したら、国外退去させる様な制度にする必要が有ると考えます。

【自己負担率の変更】
 下に示す様に、年齢と収入によって医療保険の自己負担率が変わります。現在の紙の保険証には自己負担率が記載されていますが、マイナ保険証には記載されていません。 読取機の無い医療機関では、高齢者の場合は、インターネットにマイナンバーを打ち込んで、毎回問い合わせる必要があります。

 河野デジタル大臣は、何か対策を考えているのでしょうか?!

・・・ 現在の自己負担率 ・・・
❶ 30% :現役世代(6歳~69歳)と現役並みの所得(年370万円以上)が有る方
❷ 20% :義務教育就学前の子供と70歳~74歳
❸ 10% :75歳以上で年収が370万円未満の方

【メリットとデメリット】
 厚労省のホームページに、『マイナンバーカードの健康保険証利用について』と言うページが有り、メリットを開設していますが、ポイントがずれている様に思います。

 『マイナ保険証 メリットとデメリット』で検索すると、沢山の意見が公開されていますので、本稿では省略します。

(余談 :理想の社会?!) 役所の個人に関する全ての書類がマイナンバーで連結されると、手続きが簡単になりますが、個人の情報の多くが国に管理/収得される事になります。 例えば、医者がカルテに『死亡』とインプットすると→→戸籍、住民票に『死亡』がインプットされ→→埋葬許可証をコンビニでアウトプット出来→→金融機関の口座が閉鎖され→→年金が停止される→→・・・。現在は、遺族が役場に行って、種々の手続きをする必要が有ります。 (夢物語では有りません、エストニアでは・ほぼ実現されています。)

 金持ちが相続税を不正に減らしたりするのが難しくなりそうです。私の様に遺産が残せない人間には、メリットの方が多いいと思います。心配なのは、悪い輩が、政府のシステムに不正に侵入して個人情報を引き出し、金儲けする恐れが有る点です。 政府は「心配無い!」と言っていますが、私は不正侵入対策を常に更新しないと、何時かキット大問題が発生すると予想しています。

【マイナ保険証のその他の問題点】
❶ 読取機の故障 :「診察時間中に読取機が故障したら大変だ!」と心配している方がおられました。 予備機を警察と消防署に保管して置き、パトカー、救急車、消防車で運んで貰ったら良いと考えます。大阪府警のパトカーの到着は遅いですが、消防署のレスキュー隊は早いです!

❷ オンライン診療(電話診療) :紙の保険証の場合は、スマホで保険証の写真を開業医に送信して、電話診療を受けられる様です。「マイナ保険証では出来なくなる!」と言う方がおられますが、マイナンバーで患者を特定出来ますから、医者の手間は増えるかも知れませんが、何とかなると思います。

❸ 検討使! :『エストニア』のマイナンバー制度を手本にして日本政府はやろうとしているのだと推察します。外国のマイナンバー制度の問題点を徹底的に勉強して、世界一の制度を構築すべきです。 然し、岸田『検討使』に期待するのは無理な話です!

日本の活性化❺ :デジタル化(その5)

2022-10-08 06:54:58 | 会社の活性化
【はじめに】
 前回に引き続いて民間企業のデジタル化への取り組みについて書きます。多くの企業の努力によって、自動車、炊飯器、洗濯機などなど、ほとんどの家庭電器製品の中にはコンピューターが内蔵される様になりました。残念ながら多くの政治家の頭の中は空っぽで、半導体の『ハの字』も入っていいません。

【KS社の例】
 中規模の機械の設計製造会社(KS社)について書きます。KS社は、有る市場規模の小さい分野で日本でのシェアを50%以上を占めています。2005年頃にKS社が得意な分野の装置を一式注文しました。 その装置には、新しい工夫が必要でした。同業の複数の会社にも引き合いを出しましたが、私が指摘した技術的な問題点を軽く考えて、KS社よりも安い見積を出して来ました。

 KS社の技術者だけが、「経験の範囲外で難しいが、やってみたい!」と正直に言いました。最終ユーザーの担当者は、技術的に難しい事を把握されていて、十分な予算を取ってくれていました。それで、私はKS社に殆ど値引き要求をし無いで発注しました。

 KS社の工場に受取検査に行きました。長期戦を覚悟していたので、着替えを沢山バックに詰めていました。最悪の場合は2回は行く覚悟で出掛けました。予想通り、性能がなかなか出ませんでした。技術者達が必死になって、夜遅くまで頑張ってくれました。結局、三泊四日の出張になりましたが、何とか目標の性能を達成出来ました。

 私は愛煙者です。現場には時々しか行かないで、日中は工場の周辺の道路を、夜中は工場内を散歩しながら喫煙しました。 調整している機械の横に煩い人間がいたら、仕事がはかどりません。

《男女平等》 夜中に工場の中を女性が歩いていました。制御設計部の社員だとの説明でした。KS社は既納機が沢山有り、年に一回定期点検/修理をしていました。「定期点検は顧客の操業時間外の夜中に行うケースが殆どで、昔は機械担当と制御担当の男性社員を2名派遣していた」、「シーケンサー制御の時代になったので、制御設計部を四直三交代にして、機械担当者を1名だけ派遣する事にした」、「制御プログラムに問題が有ったり、顧客から変更要求が有った場合は→→工場で勤務している制御設計部員が直ぐに→→修正したプログラムを作成して→→E-メールに添付して送る」体制にしたのだそうです。

 定期点検の料金を大幅に下げたので、顧客には好評だったそうです。 女性社員は出張し無くて良い等の理由で、給与を安く設定していましたが、「私達も四直三交代にして、給与を男女平等にして欲しい!」と言う要求が有り、試しにやってみたらメリットが沢山有ったので、女性達の要求を呑む事にしたそうです。

 デジタル化を進めると、『同一労働同一賃金』に移行出来る職種が沢山有る様に思いました。

【S社のデジタル化】
 2005年頃に社員130名程の会社(S社)に出向しました。若手社員が数名PCを使用していました。出向して直ぐに事務職全員にディスクトップパソコンが支給され、「何月何日までにPCをマスターしないと、会社を辞めて貰う」と言い渡されました。

 命令を出した60歳程の社長もPCを使えませんでした。取扱説明書を全く読まないで、メモも取らないで若手社員に教えて貰うのです。 事務所内は大変な事になりました。若手社員達は数日で音を上げてしまいました。 結局、3人以外は期日までに、何とか使える様になりました。

 マスター出来なかった3人(S1氏、S2氏、S3氏)の内、S1氏とS2氏は65歳程の高齢で、S1氏は少し痴呆症が始まっていて、S2氏は配達用のトラックの運転手を兼務していました。S3氏は50歳代でしたが、いい加減な仕事をする社員でした。 多くの社員は、「これを機に、3人に退職して貰うべきだ」と言っていましたが、社長は有耶無耶にしてしまいました。

 社員の一部がPCを使用出来ないと、ややこしい事になってしまいます。S社には複数の会議室と複数の社用車が有りました。予約をPCでする事になりましたが、S1氏~S3氏は他の社員にインプットしてもらう必要が有りました。S1氏は痴呆症が始まっていたので、予約しないで使用するケースが多々有りました。

【Y社のデジタル化】
 2010年に社長が(80歳ほどの)超高齢の会社(Y社)に、高給を提示されたので入社しました。とんでもないブラック企業だったので、私は半年間ほどで退職しました。Y社は、社員数が120名ほどでの会社で、事務職は全員PCで仕事をしていました。

 男性社員は40歳代と50歳代が大半でしたが、女性社員は二十歳代~三十歳代前半でした。多分、女性社員達が男性社員にパソコンの操作を教えたのだと推察しました。

 PCとソフトは、女性も含め社員が自費で購入する事になっていました。 私は、入社条件としてCADのソフト(AutoCAD)だけ買って貰いました。 「退職する時、データーの入ったPC持って出る事になるから、PCは会社が支給すべきだ!」と何回か社長にアドバイスしましたが、『近欲』の社長は聞き入れませんでした。

【製造コスト】
 私が中小企業に出向して一番困った事は、殆どの会社が製造コスト(原価)を把握していなかった事です。 期末に入金と出金を計算して、今年が黒字だったのか?赤字だったのか?判断しているような状態でした。見積書を出す時、積算して金額を出す会社は一社しか有りませんでした。

 最初に出向したN社では、購入価格、外部委託した機械加工、溶接などの支払い、輸送費・・・を経理データーとしてエキセルで整理していました。そのデーターを貰って、見積積算プログラムを作成しました。

 私は、出向先が変わる度に、機械の仕様(スペック)をインプットすると、原価が算出出来る見積積算プログラムを作成しました。

(余談 :経理データを調べて分かった事) N社では、薄い鉄板を溶接して特殊なダクトを設計したいましたが、溶接工事は(町工場で作らせたら1/3程の価格で済むのに、)一部上場企業に発注していました。部長の一人が『金』を貰っていたのです。社長は気付いていましたが、この製品はN社しか出来ないケースが多く、非常に高く売れたので『目をつぶる』事にしていたのだと思いました。

(余談 :経理の女性社員) 私が最初に出向したN社には、十年ほど前に入社した・銀行OBの女性社員(FT氏)が経理を担当して、パソコンを使っていました。FT氏は私と同い年(50歳)で、『酸いも甘いも噛み分ける』立派な方で、皆から好かれていました。 FT氏の旦那さんは高校の教師で、二、三年後には定年になる年齢でした。FT氏は子供を授からなかった事も有って、退職を希望していました。社長が、「後継者を育てたら、退職して良い」と言ったので、二十歳代前半の経理経験者の独身の女性(NK氏)を採用して、教えていました。

 私が出向して直ぐに、NK氏が頻繁に休暇を取る様になりました。思いも寄らない事でしたが、NK氏はシングルマザーで、子供の体調が良く無かったので、休暇を取っていたのです。NK氏は暫くして辞めてしまいました。10年後に私がN社に入社した時、正真正銘の二十歳代の独身の女性(NM氏)にFT氏が経理の仕事を教えていました。一年ほどして、NM氏の父親が定年退職して、N社から電車で片道2時間以上も掛かる滋賀県の某市に一戸建ての家を買って、一家で引っ越しました。NM氏は、一年間ほど滋賀県から通勤していましたが、流石(さすが)に”しんどく”なって、辞めてしまいました。

 中小企業では、経理担当者を雇うのが難しいのです。経理担当者は会社の経営状態や社員の給与を知る事が出来るので、『口が堅い』事が要求されます。口の堅い人はなかなかいません!

【御参考 :デジタル化の歴史】
 戦後すぐに、アメリカのIBM社が大型コンピューターを開発し、1968年には富士通が半導体(IC)を採用した大型コンピューターの販売を開始しました。第二次世界大戦で大打撃を受けた日本の企業には『金』が有りませんでしたが、(無理して)当時として非常に高価だった大型コンピューターを買って、業務の効率化を進めてきました。

 1982年頃、(鈴木善幸首相/中曾根康弘首相の頃)大型コンピューターを導入してマイナンバー制度を始める計画を進めていましたが、何故か?社会党などの野党が反対して、実現出来ませんでした。この時、マイナンバー制度が導入出来ていたら、日本はデジタル化の先進国になっていました。2009年に蓮舫氏が、「「2位じゃダメなんでしょうか?」等と発言する事は無かったと思われます。 私は、「国鉄民営化は重要だった」と思いますが、「マイナンバー制度も重要だった」と思います。

 1995年頃から、中小企業でもパソコン(PC)を採用し始め→→2005年頃には、どの会社でも使用する様になりました。政府は重い腰を上げて、2015にマイナンバー制度を導入しました。デジタル化が進まないので、2021年にデジタル庁を設立しました。本来は、デジタル化を進める前に設けるべきだった『サイバー警察局』を2022年に設立しました。

 国と地方公共団体は、プログラマーを養成してこなかったので、役所のデジタル化は、(株)電通などに『負んぶに抱っこ』して貰わないと何も出来ない状態です。

★ 46年 :IBMが電子式コンピュータ(ENIAC)を完成させた。
★ 54年 :富士通がリレー式のコンピューター『FACOM100』を開発
★ 68年 :富士通が半導体(IC)を採用したコンピューター『ACOM230-60』を開発
★ 71年 :私が大学を卒業・・・会社はIBM製と富士通製の大型コンピューターを導入していた。
★ 72年 :ノルウェーの兵器廠が大型コンピューターを使用した、社内メールシステムを導入していた。

★ 72年 :ロッキード社が機械系CADソフト(CADAM)を発売開始・・・IBMの大型コンピューターが必要でした。
★ 77年 :アップル社・・・パソコン『Apple II』」を販売開始
★ 77年 :富士通がFACOM230-75AOU
★ 80年 :富士通がワープロ・オアシスを販売開始
★ 81年 :IBMがパーソナルコンピュータ(パソコン)「IBM PC」を販売開始
★ 81年 :NECがパソコン「PC-8800」を販売開始
★ 82年 :NECがパソコン「PC-9800」を販売開始
★ 82年頃 :政府がマイナンバー制度導入を計画・・・社会党等の反対で立ち消えになった。
★ 82年 :アメリカのオートデスク社がパソコンで使用出来る「AutoCAD」を発売開始
★ 90年頃 :私が勤務していた部署で、アップル社製パソコンを用いた社内メールシステムを導入した。
★ 95年 :マイクロソフトが「Windous 95」を販売開始
★ 06年 :私が中小企業に出向・・・この頃から中小企業でもデジタル化が始まりました。
★ 15年 :個人番号カード(マイナンバーカード)と法人番号カード(法人マイナンバーカード)制度がスタート
★ 21年 :デジタル庁
★ 22年 :サイバー警察局

【御参考 :私とコンピューター】
 私は入社以来、コンピューターを使用する点では、非常に恵まれた環境で仕事をして来ました。今から50年以上も前からキーボードを叩いてきました。

 入社して直ぐに1週間ほど科学技術計算に使用する『フォートラン(FORTRAN)』と言うプログラム言語を、新入社員研修の一環として教えて貰いました。 研修が終わった後、直ぐにフォートランが必要な仕事をやりました。

 昔、アメリカ政府は民間企業をバックアップする為に、企業に大金を出して科学技術計算ソフトの開発を委託しました。その結果はナショナルレポートとして公表されました。 どのレポートにも、❶理論の説明と使用している計算式、❷フォートランを使用したプログラム、❸インプット・データー、❹計算結果が入っていました。 然し、必ず数カ所以上、『わざと』間違っているのです。プログラムだけで無く、理論/計算式にも間違いが有るのです。

 30代半ばの係長、私の同期(O氏)と私、3人で、GE社(ゼネラル・エレクトリック)が開発した非常に特殊な熱交換器のシュミュレーション・プログラムのミス(罠)を見つける仕事をしました。係長は数学が全く駄目で、O氏は超有名な私大の機械工学科卒でしたが、「今更勉強したくない」と言う態度でした。二人は仕事をしている振りをして、毎日過ごしました。

 私は、専門書(伝熱工学、熱交換器)を数冊買って、GE社の報告書に記載されていた参考論文を取り寄せて猛勉強しました。3ヶ月ほど掛けて、GE社のミス(罠)を修正したプログラムを作成しました。富士通製の大型コンピューターで走らせたのですが、受け付けてくれませんでした。凄く落胆してしまったのですが、煙草を吸っていて、「富士通製とIBM製では、何処か違いが有るのでは?」と思いつきました。キーボードを比較すると、記号が一つか?二つ?違っていました。GE社のプログラムはIBM製大型コンピューターを前提にしていたのです。 GE社の報告書に添付されていた『計算結果』と全く同じ計算結果が出た時の嬉しさは、今でも忘れられません!

 それ以来→→リタイヤするまで、種々のプログラム言語などを勉強して、強度計算プログラム、シミュレーションプログラム等を作成しました。

・・・ 私が勉強したプログラム言語など ・・・
★ 1971年 :フォートラン
★ 1982年 :ベーシック
★ 1988年 :エキセル
★ 1995年 :ビジュアル・ベーシック(VB)
★ 1996年 :シーケンサー(PLC)の言語(ラダー言語)
★ 2000年~ :CAD・・・4種類のCAD
★ 2001年 :ANSYS(有限要素法)

日本の活性化❺ :デジタル化(その4)

2022-10-01 06:46:36 | 工業技術
【はじめに】
 民間企業では、「ドンナニしてデジタル化を進めたのか?」二回に分けて投稿します。「国や地方公共団体は民間企業の努力した歴史を参考にすべきだ!」と思うからです。

【大企業のデジタル化】
 (50年以上も前の)1971年に私はK社に入社したのですが、会社にはIBM製と富士通製の大型コンピューターが各1台導入されていて、デジタル化が始まっていました。本社・支店・工場などの殆どの部署に大型コンピューターに接続された端末機(表示機、キーボード、簡易プリンター等)が設置されていました。

【K社の製造管理プログラム】
 K社はプログラマーを養成して社内用の種々のソフトを開発していました。その一つが『製造管理プログラム』です。このソフトは非常に良く出来ていて、私は良く利用しました。既に、アクセス権が設定されていました。

アクセス権の概要 :レベル1のアクセス権を認められると、その事業部の全ジョブ(仕事)の製造管理プログラムにアクセス出来ました。レベル2(ジョブの管理者)が認められると、彼が担当するジョブにだけアクセス出来、レベル3の社員はプログラムの限定した範囲にしかアクセス出来ない、・・・。

 営業部署の『A』が機械装置『B』を受注したとします。営業Aが近くの端末から製作命令書をインプットすると→→大型コンピューターシステムの中に『B』用の経理データ・ファイルが出来ます→→設計担当者が部品『C』を手配すると→→資材担当者が金額を決めて→→『D社』に発注し/インプットします→→受け入れ検査部署に部品Cが入荷すると→→「検査に合格して受け入れた」とインプットします→→経理部が資材担当者が決めた部品Cの代金をD社に支払い→→「支払済み」とインプットします。

 私が勤務していた会社(K社)では、部品点数が数千点にもなる大型の機械装置を製造していました。上記の様な作業を手書きでやっていたら、トンデモナイ人手と書類の山が出来てしまいます。どこかの部署が部品を1点でも手配するのを忘れたら、装置は完成出来ません。このシステムでは、発注したか?、予定通りに入荷するか?、予算内で発注されているか?・・・種々の情報を得られる様になっていました。

 入社した頃は、アルファベット、英数字、カタカナしか使用出来ませんでしたが、暫くして漢字、平仮名も使用出来る様になりました。その後、受け入れた部品の保管場所も登録される様になりました。

 その後、本格的な自動倉庫が導入されると、倉庫の何処に保管したか?何時/誰が倉庫から持ち出したか?・・・等の情報が製造管理プログラムで分かる様になりました。

(余談 :社内の抵抗/悲惨な結果) 万年黒字の工場が有りました。その工場で製造する装置は一式数千万円~数億円しました。社外から調達する部品は1点が数十万円~数百万円もしました。部品点数が少なく、手配と経理処理が簡単だったのです。 社外から物を調達する資材課の役割を兼ねた経理課が有りました。

 1988年に私が所属していた課が、(手掛けていた装置を持って、)その工場に転属になりました。工場長に呼ばれて、「君達の装置は部品点数が多いいから、君を設計課と経理課の兼務にする」と言われました。経理課に挨拶に行くと、課員全員が大きな声で私を罵倒し始めました。

 当時、定年は60歳に延長されていましたが、55歳になる前に殆どの社員は子会社か協力会社に出向するか、早期退職していました。経理課の担当者達は全員55歳以上でした。彼らの言い分は、「パソコン(PC)を使ったら、二人で十分仕事がこなせる→→そしたら、残りの人間は出向させられる→→もう直ぐ定年だから→→PCは断固拒否する」、「君達の装置の資材と経理の仕事はするから、手出しするな」でした。

 会社は、(その数か月前に、)気の弱い社員(E氏)を課長に昇格させて、経理課長に異動させていました。 E氏は色々な部署から連日の様に、『製造管理プログラム』を使えと言われ、課員からは無視され続けていました。私達が転勤して直ぐに、胃潰瘍になって入院してしまいました。二、三カ月ほどして退院したのですが、課員達はPCを拒否し続けたので、E氏は数カ月後に亡くなってしまいました。

【社内メール・システム】
 私は、1972年からノルウェーの兵器廠・コングスベルグ・ヴァペン・ファブリーク(現在:コングスベルグ・グルッペン)と技術提携してガスタービンを国産化するチームに参加しました。資料は全て英語で、連絡も英語でした。私は英語が苦ってだったので、課長が私を鍛える為に、コングスベルグ社への報告書/質問書の作成、コングスベルグ社から来たレターの翻訳等をほぼ100%やらされました。

 ノルウェーは冬季オリンピックで活躍するので、日本人の多くは国名は知っているのでは?と想像します。人口は、兵庫県とほぼ同じ540万人程の小さな国です。(現状は知りませんが)当時は優秀な若者達はアメリカの大学に進学していました。コングスベルグ社の上層部は殆どハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)を卒業していました。

 ビックリ!したのは、大型コンピューターを使用した社内メールシステムが既に有った事です。 報告書の上部に配布先欄が有り、数字が記載されていました。 『1』は社長、『2』は副社長、・・・『21』は”2”と言う部署のトップ・・・。配布先欄に数字を記入すると、自動的に発信した様でした。

 作成した報告書は、キーワードを付けて大型コンピューター・システムに記録されていました。私がテレックスで技術的な質問をすると→→担当の女性が受け取って→→過去に似た質問をしていたら→→彼女から「〇月✕日の報告書を見て下さい」と言うテレックスが送られて来ました。

 私が勤務していたK社で、アップルのパソコンとソフトを使用した社内メール・システムを導入し始めたのは1990年頃です。日本では早い方だったと思いますが、コングスベルグ社よりも20年以上遅れていたのです。 アット言う間に社員は社内メールを利用する様になりました。私のパソコンで作成した文章を、社内メール・システムで送って、遠くの営業所のプリンターで印刷出来る様にもなりました。

【中小企業のデジタル化】
 25年程前の1996年に私は中小企業に出向しました。私が出した出向条件は「パソコン(PC)を用意してくれること」でした。 会社の都合などで数社の中小企業で働きました。 正に、中小企業でPCの採用(デジタル化)が始まっていました。

 会社ではアップルのPCを使用していたのですが、出向する事が決まった時、若い社員達が「ウインドウズ(Windows)のPCが主流になって来る」とアドバイスしてくれたので、Windowsの入ったノートパソコンを買いました。出向した中小企業でアップルのPCを使用していた所は皆無でした。

 大企業と中小企業の違いは、大企業ではプログラマーを育てて、社内で使うソフトを作成していましたが、中小企業では市販のソフトを使うのが精一杯だった点です。

 旧帝大の機械工学科卒の社長の会社で、(母校の教授に依頼して作って貰った)ベーシックを使った技術計算プログラムを数点使用する会社が有りました。社長も含め誰もベーシックを勉強していなかったので、プログラムの内容を理解していませんでした。経験から、計算結果が少し可笑しい事は気付いていました。

 エキセル(Excel)には簡単な図を描く機能が有ります。私は、ベーシックのプログラムを、ポンチ絵付きで、解説付きのExcelプログラムに直しました。大学教授が作成したプログラムには、結構沢山間違いが有りました。(トンデモナイ間違いの有るプログラムも有りました。)

(余談 :工学の計算) 多くの中小企業では、強度計算や力学の計算等が出来る社員がいません。私は個人的に、中小企業から「何回も作り替えたりしたが、直ぐに破損してしまうので、原因を究明して欲しい」と依頼された事が複数回有りました。その一例を書きます。

 特殊な機械を設計/製造する中小企業(F社)が有りました。何方でもご存知の設備産業の大手(J社)から、F社が販売していた機械の能力の3倍程も超える大型機を受注していました。 私がチェックして見ると、強度不足で、手直しでは対応出来る状況では無く、再設計が必要でした。

 強度計算書を持参して、社長と設計部長に説明したのですが、二人とも内容を全く理解出来ませんでした。社長が、「こんな難しい仕様を要求したF社が悪い」と恰も(あたかも)私をF社の社員の様に食って掛かりました。結局、強度計算書は突き返されました。

(余談 :残念な話し) 工業高校の機械科を卒業した後→→歯科技工士の専門学校に進んで資格を取得したのですが→→歯科技工士は供給過剰ですから、就職先が無く→→アルバイトしていた男性を機械設計担当者として採用した事が有りました。CADを少し教えただけで使える様になりました。その頃、私が手掛けていた機械について、少し教えただけで、ほぼ任せられる様になりました。私は、沢山の若者に機械設計を教えましたが、彼ほど才能の有る若者はいませんでした。

 入社して数カ月後に、「友達が居酒屋を始めるので、辞めます」と言い出しました。「君ほど機械設計向きの人はいない、『天職だ』と思って頑張って欲しい」などと説得しました。「僕は、学校では何時も落ちこぼれだったので、そんな話しは信じられない」と言って、辞めてしまいました。今でも、残念に思っています。

【機械加工のデジタル化】
 私が入社した1971年に、会社では大型コンピューターを用いたCADで作成したデーターで、工作機械を動かす『CAD/CAMシステム』を取り入れた部署が有りました。 ズット後に、大手企業企業ではパソコン(PC)CADデーターを少し細工して『CAD/CAMシステム』を動かす様になりました。

 1990年代に電子メール(Eメール)が普及する様になると、注文企業がEメールにCADデーターを添付して発信し→→加工業者が図面をプリントアウトする様になりました。注文企業と受託企業間が数百キロメートル離れていても、超特急の場合は、Eメールした日から加工に着手出来る様になったのです。

 量産機械加工をする多くの中小企業で、1990年には数値制御工作機械(NC加工機)を導入して、四直三交代で24時間、土日も操業する様になりました。

 一番感心した工場は、広い工場の中にNC加工機を沢山配置して、中央にガラス張りの空調の効いた10畳ほどの部屋を設けて、女性のプログラマーを二、三人、四直三交代で勤務させて、プログラムに不備が有ると、夜中でもプログラムを修正出来る体制にしていました。NC加工機を操作する作業員の40%程は女性でした。

 残念ながら、この工場は10年程して閉鎖されました。顧客の多くが中国に生産拠点を移したので、注文が段々減少したのが原因だった様です。

【N社のデジタル化】
 1996年に私が最初に出向したN社は、社員30名程で、製紙機械を設計/製造していました。制御設計担当者2名だけがPCで作業していました。1年もしない内に、機械設計用の(余り売れていない国産)CADを導入しましたが、相変わらず手書きで図面を作成していました。 私は会社(K社)の都合で、4年後にN社から→→別の会社へ→→・・・→→また別の会社に出向させられ、60歳の定年を迎えました。

 10年後の2006年に、(定年になる直前に、)N社の社長から「高給を出すから来て欲しい」と言う電話を頂いたので、入社しました。 10名程の設計担当者は全員PCで仕事をして、CADを使っていました。 62歳になられていた社長もPCをマスターされていました。

 作成したデーターを各自が、自分用のCD-RW(Compact Disc ReWritable)に保存していました。 私は、「火災などでデーターが消失する恐れが有るので、全員のデジタルデーターを部として集めたCD-RWを作成して→→→コピーを火災の恐れの無い場所に保管すべきだ!」と提案しました。 誰も耳を貸してくれませんでした。

 社長の友人が経営する会社で火災が発生して→→事務所が全焼して→→PCが焼けてしまったそうです。 次の日に、社長は私の提案を採用してくれました。 各設計部員のデータを→→部のCD-RWに定期的に入れ→→定期的に2部コピーして→→1部は火の気の無い工場の倉庫→→1部は社長の自宅に保管する事になりました。

(余談 :若く見える女性の虐め) 2006年頃に、AutoCADとマイクロソフト社のオフィスに入っているソフトが使える女性を探す事になりました。私の知り合いの人材派遣社に、「見習期間が過ぎて、気に入ったら、2ヶ月分の給与相当額を渡すから、正社員にする」と言う条件を出しました。40歳過ぎの女性を紹介してくれました。

 彼女は、直ぐにN社が採用していたCADも使える様になり、AutoCADに変換した時の『化け』を修正出来る様になりました。 英語の知識も少し持っていたので、私が英文の見積書や取扱説明書を作成する時、手伝って貰いました。 仕事は早いし、ミスが殆ど無かったので、彼女を正社員しました。多分妬みが原因だったと推察しましたが、男性社員の一人(M氏)が彼女を虐める様になって、彼女は一年程して退職してしまいました。 虐めは犯罪です。特に男性が女性を虐めるのは見ていられません!

 私はM氏に、「彼女のどこが気に入らないのか?」と聞くと、「10歳以上若く見えるので、虫酸が走る!」と言いました。確かに彼女は小柄で可愛らしい顔をしていて、若く見えました。精神科の先生だったら、彼に良いアドバイス出来たかも知れませんが、私にはどうする事も出来ませんでした。

【CAD教室】
 2005年頃の話しです。某社の設計担当者だった資産家の男性(T氏)が神戸市の洒落たビルの広いスペースを借りて、機械設計のCAD教室を始めました。三次元CADを教えるのだったら、生徒が集まったと思いますが、T氏は二次元CADしか使え無かったのです。

 私の知る限りでは、工業高校の卒業生の場合は、PCの操作は出来ます。機械科卒だと、二次元CADは直ぐに使用出来る様になります。従って、CAD教室に入るのは、普通科卒が大半です。 普通科卒でも、三角法とAutoCADを教えて、企業に送り出せば十分です。然し、それでは、1~2カ月程でCAD教室は教える事が無くなってしまい、経営が成り立ちません。

 私はT氏に、「二次元CADを教え→→次に三次元CAD→→CAD/CAMを教える様にしたら、1年間は有意義な学習になる」とアドバイスしました。T氏は「機械工学の基礎を教えたい」、「ドンナ内容にしたら良いか?考えて欲しい」と言いました。

 1ヶ月ほど掛けて、報告書を作成し→→T氏に説明しようとしたのですが→→T氏は私が話し始める前に→→「生徒達の多くは、高校の勉強が好きで無かったと思われる。そんな子供を机に座らせて教えても身に付くはずがない!」と言い出しました。私も同感でした。 暫くして、T氏はCAD教室を止めた様でした。