自身が学生の時からずっとお世話になっている、ある意味古典のフィルム現像液です。もうかれこれ50年ほどお世話になっていて、フジフィルムさんのネオパンを使うときにはこれと言った感じでした。ほかの現像液もうすうす知ってはいたのですが、行きつけのカメラ屋さんではこれしか置いていなくて、ずっと使っていたという感じです。
名前の通り超微粒子現像剤で、昔は粗い銀塩粒子だったネオパンのフィルムでも、ものの見事に無粒子化と呼べるほどに粒子が見えなくなります。この現像剤と定着用のスーパーフジフィックス、そして停止用に富士酢酸という感じで鉄板の組み合わせになっていました。とにかく多少露出に自信がなくても、それなりにトーンが出てくる不思議な現像剤です。
同じ時期にコダックさんもD-76現像剤を出していて、手軽に使える現像剤として定評がありました。ある時気になって薬剤組成を調べてみたのですが、ミクロファインとD-76は同じ薬剤を使っているのですが、配合比率がほんの少し違うだけで、どちらも同じ特徴を持った現像剤という事が判りました。
早い話どちらの現像液を使ってもほぼ同じ結果が得られるわけで、選択肢が増えたと言っているうちにコダックさんの現像液は企業譲渡という感じで生産終了になってしまいました。ミクロファインはこの時も健在で、幾分ほっとした気持ちにさせてくれたという感じです。D-76を試してみようという気になっていたのですが、いきなり無くなってしまいましたので、多少寂しかったと言う所です。
ミクロファイン現像液は、使っているうちにボトルの内側に銀が析出してくるようになります。言ってみればこれが現像液の疲弊と結びついている様で、銀が析出してくる頃になると、仕上がりのトーンが面白くなかったり、現像むらが起きたりします。このサインを見ながら新しい液に交換を行うようにしていたという訳です。
銀が析出するとはいっても、元来不要な銀を溶かしだすのが定着液で、現像液は銀粒子を溶かさないと思っていました。そこで薬剤のレシピを見ると、銀の粒子を溶かす薬剤がわずかに含まれていて、この薬剤が銀塩粒子の角をとって滑らかな見た目にしていることが判りました。これはコダックさんのD-76も同じで、昔の銀塩粒子が良く見えるフィルムを、少しでも微粒子に見せようと添加されたものと分かります。
ヨーロッパ系の現像剤では、ロジナールに代表されるように銀塩粒子を溶かさないものがほとんどで、くっきりと見せるようになっています。最近はやりの微粒子フィルムに合わせるようにできている訳で、フィルム黎明期の頃からすでにその考え方で作られているのにびっくりという感じです。早速手に入れて現像してみると、粒子ははっきり見えるのですが、なんだかとても芸術的に仕上がります。
色々な現像剤という感じで、それぞれ特徴がありますから、被写体を一番よく表現してくれる現像剤とフィルムを使って、撮影行に出かけているという感じです。銀塩粒子の角を溶かして微粒子に見せてくれるのですが、反面少し柔らかな仕上がりになるので、スキャン後にコントラストとエッジを少し立ててくっきり見せることが必要です。
久しぶりにミクロファインの話を書いているうちに、ミクロファイン現像剤を使いたくなってきましたので、カメラにネオパンアクロスを詰め込んで撮影行に出かけます。もう梅雨に入る直前という感じだったのですが、晴れて暑くなりましたので夏の花でもと思いましたが、まだまだ絶賛準備中の感じです。もう来週は梅雨入りかと思いながら、ひと時の撮影と現像を愉しみました。
それでは、先月末に撮影した写真から掲載します。
Asahi Pentax ME SMC Pentax-M 100mmF2.8
撮影データ:1/125sec F5.6 Fujifilm Neopan100Acros(ISO100)
桜の季節に地味な花をつけていたエノキも、今では大きな実をつけています。涼しげな葉と実で、夏の間は木陰と涼しさを届けてくれる感じです。
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