今や自転車のフレームはカーボン一色である。たまに、素材の安さからエントリーモデルとして、アルミフレームもあるけど、上位モデルは皆、カーボンフレーム。
カーボンフレームのメリットはなんと言っても、軽いこと。軽い鉄フレームと比べても、ざっと半分ぐらいの重さかしら。
何故、カーボンフレームは軽いのか?
「鉄から樹脂(CFRP)に変わったんだから、軽くて当たり前でしょ?」
「比強度(重量あたりの強度)が10倍以上だから、軽く設計できるでしょ?」
一般的にはこう言われるけど、なんか、どっちも腑に落ちない。ちょっと、カーボン、いや炭素繊維強化樹脂として、考えてみました。
まず、一般論としてのCFRPの比重は鉄の1/4、比強度は10倍以上、比弾性率は7倍以上。
これは、「CFRPって、1/4の軽さで10倍以上の強度」ではなく、比強度は「同じ重量にした場合の話」。つまり、重さを1/4にしたら、強度は10/4=2.5倍にしかならない。
逆に、鉄と同じ強度を出すだけなら、1/10の重さにできる。あれ?今のカーボンフレームって、1/2ぐらいにしかなってないじゃん⁈
「いやいや、乗り味が大事。比弾性率で考えようよ」で考えても、1/7の重量にできるハズ。
「なんで?ひょっとして、カーボンフレームって、駄肉だらけなの?」と思うのはまだ早い。カーボンにはカーボンの事情があるんです。
実は、カーボンの糸レベルの話になると、この強度(引っ張り強度)と弾性率は両立できない。
だから、今のカーボンのグレードは、引っ張り強度に特化したグレードと、弾性率に特化したグレードと、バランスの良い(だけど、どっちもそこそこ)に分けられる。
こちらがそのカーボンの種類。↓

横軸が弾性率で、縦軸が引っ張り強度。
弾性率を上げると、引っ張り強度が下がり(UHM)、引っ張り強度を上げると、弾性率が下がる(IM)。
ここで、巷のフレーム屋の設計思想が分かれる。高強度カーボンか、高弾性カーボンか。
高強度カーボンを選んで設計する場合、素材が引っ張りには強いけど、フニャフニャ(中弾性。IM)なので、フレームの断面形状で剛性を得ようとする。
結果、太い断面のフレーム。つまり、リドリーノアやスペシャのヴェンジみたいな、マッチョな、だけど軽いフレームが完成するでしょう。
乗り味は、あまりパリッとはしてないけど、フレーム全体で剛性を出している感じ…とでも書かれるのでしょうか?
一方、高弾性カーボンを選んでフレームを設計する場合、断面形状はそんなに太くなくてもよい。
但し、引っ張りに対する強度確保は、肉厚で対応するしかない。つまり、高強度カーボンと比べると、ある程度重たいフレームになります。ピナレロドグマは高弾性カーボン(UHM)を使っていますが、トップモデルにも関わらず、あまり軽くはありませんよね。
乗り味は、パリッと乾いた感じで、硬いフレームとの印象になるのでないでしょうか?
「じゃあ、高強度と高弾性カーボンを、適材適所に使えば、軽いし強いフレームになるよね?」ってなるかと言うと、定性的にはそうだけど、現実はそんなに美しくない。
カーボン(CFRP)は強い異方性がある。つまり、繊維方向の縦には強いけど、繊維を横方向に割く力には弱いのが、高性能なカーボンの基本特性である。
例えば、BB周りでは、クランクを踏むだけで、「曲げ」と「捻じり」と「引っ張り」が同時に掛かる。
異方性があるので、それぞれの方向(縦、横、斜め)に、カーボンを数枚積層するしかない。
これを最適設計した例が、キャノンデールのスーパーシックスEVOで、今ある素材で軽さに主眼を置くなら、一つの解だとは思う。(だけど、何かに特化してる訳ではない)
一方、鉄には異方性は(殆ど)ないので、鉄板一枚で、縦横斜めに対応させる設計もできる。
だから、カーボンフレームの重さは、1/10、1/7とかにはならない、できない。思ったよりも、重たいフレームになっている。
しかし、「じゃあ、これから発売されるカーボンフレームって、ずっと、あんなもんなの?」との問いには、否である。
カーボン、いや炭素繊維強化樹脂は、欠陥の塊である(内部欠陥、表面欠陥)。まだ、理論値の5%以下しか引っ張り強度を出せていない。(弾性率は、65%を超えている)
繊維屋さんは、この改善に取り組んでおり、強度、弾性率とも改善されれば、より軽く、より強いカーボンフレームが完成します。
現に、ピナレロドグマは65ton(弾性率)のカーボンを使っていますが、既に90年代に、70tonのカーボンは開発されているので、使われるのは時間の問題でしょう。(DOGMA70.1かな?)
また、フレーム屋も今のカーボンを使う技術が、まだまだ下手くそだと、個人的には思っています。
なんてったって、鉄フレームの時代から、その形状、構造を変えていない。
例えば、BB回りなんて、「機能を一点に集約して、異方性のない鉄で合理的に強度を出す」なんて、あれは鉄ありきの構造ですよ。カーボンなら、機能を分散し、それぞれの方向にしか力が掛からない構造に変更すべきかと。(UCI規定との戦いもありますが)
ともかく、たかが50~60年の歴史のカーボン素材は進化しまくってます。これからも、5年単位でドラスティックな改善が起こると思います。
どんな素材が出るか、そのフレーム形状はどうなるのか?今から楽しみですよね。
今日はここまで
カーボンフレームのメリットはなんと言っても、軽いこと。軽い鉄フレームと比べても、ざっと半分ぐらいの重さかしら。
何故、カーボンフレームは軽いのか?
「鉄から樹脂(CFRP)に変わったんだから、軽くて当たり前でしょ?」
「比強度(重量あたりの強度)が10倍以上だから、軽く設計できるでしょ?」
一般的にはこう言われるけど、なんか、どっちも腑に落ちない。ちょっと、カーボン、いや炭素繊維強化樹脂として、考えてみました。
まず、一般論としてのCFRPの比重は鉄の1/4、比強度は10倍以上、比弾性率は7倍以上。
これは、「CFRPって、1/4の軽さで10倍以上の強度」ではなく、比強度は「同じ重量にした場合の話」。つまり、重さを1/4にしたら、強度は10/4=2.5倍にしかならない。
逆に、鉄と同じ強度を出すだけなら、1/10の重さにできる。あれ?今のカーボンフレームって、1/2ぐらいにしかなってないじゃん⁈
「いやいや、乗り味が大事。比弾性率で考えようよ」で考えても、1/7の重量にできるハズ。
「なんで?ひょっとして、カーボンフレームって、駄肉だらけなの?」と思うのはまだ早い。カーボンにはカーボンの事情があるんです。
実は、カーボンの糸レベルの話になると、この強度(引っ張り強度)と弾性率は両立できない。
だから、今のカーボンのグレードは、引っ張り強度に特化したグレードと、弾性率に特化したグレードと、バランスの良い(だけど、どっちもそこそこ)に分けられる。
こちらがそのカーボンの種類。↓

横軸が弾性率で、縦軸が引っ張り強度。
弾性率を上げると、引っ張り強度が下がり(UHM)、引っ張り強度を上げると、弾性率が下がる(IM)。
ここで、巷のフレーム屋の設計思想が分かれる。高強度カーボンか、高弾性カーボンか。
高強度カーボンを選んで設計する場合、素材が引っ張りには強いけど、フニャフニャ(中弾性。IM)なので、フレームの断面形状で剛性を得ようとする。
結果、太い断面のフレーム。つまり、リドリーノアやスペシャのヴェンジみたいな、マッチョな、だけど軽いフレームが完成するでしょう。
乗り味は、あまりパリッとはしてないけど、フレーム全体で剛性を出している感じ…とでも書かれるのでしょうか?
一方、高弾性カーボンを選んでフレームを設計する場合、断面形状はそんなに太くなくてもよい。
但し、引っ張りに対する強度確保は、肉厚で対応するしかない。つまり、高強度カーボンと比べると、ある程度重たいフレームになります。ピナレロドグマは高弾性カーボン(UHM)を使っていますが、トップモデルにも関わらず、あまり軽くはありませんよね。
乗り味は、パリッと乾いた感じで、硬いフレームとの印象になるのでないでしょうか?
「じゃあ、高強度と高弾性カーボンを、適材適所に使えば、軽いし強いフレームになるよね?」ってなるかと言うと、定性的にはそうだけど、現実はそんなに美しくない。
カーボン(CFRP)は強い異方性がある。つまり、繊維方向の縦には強いけど、繊維を横方向に割く力には弱いのが、高性能なカーボンの基本特性である。
例えば、BB周りでは、クランクを踏むだけで、「曲げ」と「捻じり」と「引っ張り」が同時に掛かる。
異方性があるので、それぞれの方向(縦、横、斜め)に、カーボンを数枚積層するしかない。
これを最適設計した例が、キャノンデールのスーパーシックスEVOで、今ある素材で軽さに主眼を置くなら、一つの解だとは思う。(だけど、何かに特化してる訳ではない)
一方、鉄には異方性は(殆ど)ないので、鉄板一枚で、縦横斜めに対応させる設計もできる。
だから、カーボンフレームの重さは、1/10、1/7とかにはならない、できない。思ったよりも、重たいフレームになっている。
しかし、「じゃあ、これから発売されるカーボンフレームって、ずっと、あんなもんなの?」との問いには、否である。
カーボン、いや炭素繊維強化樹脂は、欠陥の塊である(内部欠陥、表面欠陥)。まだ、理論値の5%以下しか引っ張り強度を出せていない。(弾性率は、65%を超えている)
繊維屋さんは、この改善に取り組んでおり、強度、弾性率とも改善されれば、より軽く、より強いカーボンフレームが完成します。
現に、ピナレロドグマは65ton(弾性率)のカーボンを使っていますが、既に90年代に、70tonのカーボンは開発されているので、使われるのは時間の問題でしょう。(DOGMA70.1かな?)
また、フレーム屋も今のカーボンを使う技術が、まだまだ下手くそだと、個人的には思っています。
なんてったって、鉄フレームの時代から、その形状、構造を変えていない。
例えば、BB回りなんて、「機能を一点に集約して、異方性のない鉄で合理的に強度を出す」なんて、あれは鉄ありきの構造ですよ。カーボンなら、機能を分散し、それぞれの方向にしか力が掛からない構造に変更すべきかと。(UCI規定との戦いもありますが)
ともかく、たかが50~60年の歴史のカーボン素材は進化しまくってます。これからも、5年単位でドラスティックな改善が起こると思います。
どんな素材が出るか、そのフレーム形状はどうなるのか?今から楽しみですよね。
今日はここまで
今のところ高弾性と高強度を両立できない材料で
かつ異方正であることから、鉄、アルミとかとは
異なる設計になるべき、というのが自然ですよね。
UCIのがんじがらめの規定の中ですが
まだまだ工夫の仕方はあると思います。
製造方法も変わっていくと思います。
今のような積層方法ではどうしても高コスト材料のままですし。
その辺からもブレークスルーがあると面白いのです。
数の問題も絡みますが一気に世界が変わると思うのですが
その辺は某台湾メーカーに期待するしかないのかも知れません。
街中に特化したカフェライド用の自転車なんて、どんなんなんでしょうね。
競技用も、UCI規定が古臭くなる今、新たな展開があって欲しいもんです。
競輪みたく、未だ鉄フレームなんて…。
では