05/15 私の音楽仲間 (168) ~ 私の室内楽仲間たち (148)
Mozart の ハ短調 五重奏曲
この集いは、すでに何度かお読みいただいているグループです。
これまでの 『私の室内楽仲間たち』
私、OS.さんの Violin、Sa.さん、It.さんの Viola、N.さんの
チェロで始まった、五重奏の午後。
It.さんとSa.さんが、Ⅰ、Ⅱ番を交代して、2曲目は、Mozart
の『弦楽五重奏曲 ハ短調 K406』です。
この原曲が、『管楽器のためのセレナード第12番 ハ短調
K388(384a) "ナハトムジーク(Nachtmusique)" (1782年)』で
あることは、よく知られています。
Mozart には3曲の管楽セレナードがありますが、編成
は「6~13人」と、まちまちです。 この "ハ短調" の曲は、
オーボエ2、クラリネット2、ホルン2、ファゴット2からなる
八重奏曲です。
全曲は、以下の各楽章から成ります。
Ⅰ ハ短調 2/2拍子 Allegro
厳しく、また重々しい、ユニゾンのハ短調で始まります。
しかしこれに続くのは、長調の伸びやかな第二主題です。
全体に八分音符の、くっきりした "刻み" が印象的です。
Ⅱ 変ホ長調 3/8拍子 Andante
打って変わって平和な世界。 いかにも管楽器にふさわしい、
歌の楽章です。
Ⅲ ハ短調 3/4拍子 MENUETTO in Canone
「カノンのメヌエット」と書かれているとおり、同じテーマが
1小節遅れで現われ、絡み合います。 雰囲気は極めて
厳格です。 中間部はハ長調の "TRIO al Rovescio" で、
これは逆行カノンから出来ています。
Ⅳ ハ短調 2/4拍子 Allegro
基本的に「主題と変奏」の形から出来ており、ハ長調の
コーダで終わります。
Mozart 自身が5年後に編曲して出来た、この弦楽五重奏曲。
それは、作曲者26歳の年のことでした。
私は今回、「厳格さと歌心」などと、見出しに書きました。
管楽器はまさに "歌う楽器" ですから、"歌心" については
納得が行きます。 では "厳しさ" とは何でしょうか?
一つは、第Ⅰ楽章の八分音符の歯切れ良さでしょう。 有無
を言わせず曲を推進させる、抗い難い力。 冒頭のハ短調の短い
主題も、厳しい宣告のように聞こえます。
そしてもう一点は、通常は楽しげなメヌエットが短調で書かれ
ている上、厳格さを思わせるカノンから成っていることです。
リズムも、自然とは言い難い、ヘミオーレが混じっています。
少なくとも、"自由な雰囲気" はまったく感じられません。
ヘミオーラ (単数形) は、たとえば 3/4拍子×2小節 (四分音符が一拍) を、
実質的に3/2拍子×1小節 (二分音符が一拍) のように書き換えるような例
です。 そこではリズムが「強弱弱/強弱弱」から、「強弱/強弱/強弱」
のように変わります。
しかし、メヌエットに続く「ハ長調の TRIO」の、何と伸びやかな
ことでしょう! 音符ごとの "リズムの厳しさ" も消え、滑らかな
歌になっています。
"歌" と言えば、直前の第Ⅱ楽章は、「ほぼ全体が歌」でした。
また変奏曲の第Ⅳ楽章は、ここまでに現われた、「"厳しさ"
と "歌" の交代」そのものから成っていると言えます。
自分の好みで恐縮ですが、私は原曲の管楽八重奏版
の方が好きです。 弦楽器奏者のくせに…。
「各楽器の音色が際立っているので、カノンの楽章では
各声部が鮮やかに聴きとれるから?」 それも、もちろん
ありますが…。
この曲に感じられる "厳格さ" と "歌心"。 その対比は、
管楽器版の方が、より鮮明なように聞こえるからです。
楽器の特質の差から来るのでしょうか。
フレーズの長さ、抑揚、息づかい。 どれを取っても
やはり管楽器の魅力に溢れています。
ところで、Mozart は他にも弦楽五重奏曲を残していますね。
このハ短調の五重奏曲、私にとっては、実にほぼ40年ぶりの
再会でした。
まだ駆け出しの頃、先輩方を自宅に招いてアンサンブルをした
当時を思い出してしまいます。 今、みんなどうしているだろう…?
(続く)
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音源です。
管楽セレナーデ 第12番 ハ短調 K388
レジナルド・ケル指揮 ケル・チェンバー・プレーヤーズ
(1951年5月9日~11日録音)
[音源ぺ―ジ]
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バルヒェット四重奏団 (1950年代初めの録音)
[音源ぺ―ジ]