MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

流用とは何事じゃ!

2014-05-16 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

 05/16 私の音楽仲間 (582) ~ 私の室内楽仲間たち (555)




             流用とは何事じゃ!


         これまでの 『私の室内楽仲間たち』



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                 流用とは何事じゃ!
                  お前は黙っておれ
                 お前は馬鹿じゃのう

 

 今回は、クイズもどきになってしまいました。 “曲名当て”
です。 そのつもりでお楽しみください。


 ドヴォジャークの 弦楽六重奏曲 イ長調 Op.48 の
第Ⅲ楽章は 3/4拍子。 “Presto”、“Trio”、“Presto”
の3部分で出来ています。

 [譜例 1]は Vn.Ⅰのパート譜で、“Trio” の最初の部分。
演奏例の音源]もここからスタートします。


 最初はニ長調で始まります…、

 

             

 二段目で転調していますね。 嬰へ長調という厄介な調で、
最初の音は Do# です。


 さて、ここで貴方が、ある別の曲を連想したとすれば…。
「素晴らしい! よくご存じですね。」…と申し上げるところ
です。 それは、同じ作曲家の管弦楽曲ですが。

 私の場合は、かつてオーケストラで Viola を弾いていた
ので、次の[譜例 2]が浮かんできます。 上の譜例と同じ
Do# の音から始まります (音域は2オクターヴ下)

    


 やはり嬰へ長調で、この曲ではイ長調から転調しました。
さて、何の曲でしょう?

 



 それでは、今度は[譜例 3]をご覧ください。 同じ管弦楽曲の
Vn.Ⅱパートで、そのイ長調に入る箇所です。

 これでお解りでしょうか? もし “まだ” でしたら、重要なヒントを
差し上げます。 それは、この2小節の形です!

              ↓ ↓  ↓  


 この管弦楽曲、曲名は最後にご覧いただくとして、どうやら
作曲時期も同じらしい。 1878年の5月、ドヴォジャーク
36歳の頃です。 今回の六重奏曲に比べたらはるかに有名
で、出世作と言ってもいいほど。

 出版と同時に、西欧の音楽界に大反響を巻き起こしました。
原曲は “四手ピアノ” 用で、家庭でも手軽に演奏できる形
です。 それがよかったのかもしれません。


 ドヴォジャーク先生! このテーマに関しては、原曲は
どちらなんですか? 六重奏曲と、四手ピアノ曲と。




 「そんな古いことは忘れたよ。」

 あ、さっそく登場しましたね! お待ちしておりました。


 「まあ、両方ともワシのオリジナルで、今はやりの
盗作などではないよ。 どっちでも同じさ。」

 それはそうなんですが、私の考えでは…。


 「どちらが先か、解ると言うのかな。」

 六重奏曲のほうではないですか?


 「なぜ、そう思うのかね? 作曲時期は重なっておるのだよ?」

 連弾のほうは、8曲からなる曲集で、作曲も大変だったはず。
手近な自作の一部を流用しても、許されるでしょう?


 「ほう…。 “流用” とは、また酷いことを言うな…。」

 それに私たち弦楽器奏者は、本当に迷惑してるんですよ。
この “管弦楽曲” では嬰へ長調が多いし、それも “曲芸”
ばかり! ピアノなら、まだ弾きやすい形なのに…。 先生
は、ご自分が Viola 奏者だったのに、楽器を弾かなくても
いい…となると、途端に演奏者を虐めるんだから…。


 「…作曲家と演奏家では、立場がまるで違うことぐらい、
よく解っておるだろう。 お前はな、ワシが書いたとおりに
音符を弾いていればいいのだ。」

 …それじゃ、まるで奴隷じゃないですか…。 解った!
だから “Slave 舞曲”…っていうんだ!


 「なんじゃと! 嫌なら、もう弾かんでいいぞ、ワシの作品は。」

 本当に!? ああ、よかった! Beethoven 先生にも、そう
言われたんです。 これでだいぶ楽になるぞ…。


 「嘆かわしいのう…。 それにな、“奴隷舞曲” ではない。
Slavonic Dances” じゃ。 学が無いねぇ、お前は…。」

 はい、学も楽もありません。 ちなみに、この作品46-1の
ハ長調。 私が Viola を持って最初に弾かされた、先生の
曲なんです。


 「…なるほど。 ガク生オーケストラで弾いておったのか。」

 …、………。
 


             音源ページ]

 


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