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MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

鐘ひとつと言えど…

2011-04-28 00:00:00 | その他の音楽記事

04/28


  演奏中の事故  (2) 鐘ひとつと言えど…



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 私が若かりし頃の、ある暑い夏のお話。 オーケストラの演奏
旅行中のことでした。

 場所は、さる東北地方の日本海側。 移動は列車で、当時は
もちろん在来線しかありません。 本数も、ごく僅か。



 "演奏旅行" と言うと聞こえはいいのですが、日程は強行軍
です。

 **市民会館での演奏会が夜に終わると、あくる朝、すぐ出発。
次の市へ到着するなり、すぐ会場練習をこなし、夜はまた本番。
そんな慌ただしいスケジュールでした。




 演奏曲目の中には、ラヴェルの編曲による組曲『展覧会
の絵』
がありました。 原曲はムーソルクスキィのピアノ曲
ですが、オーケストラ版の方が先に有名になったのは、よく
ご存じのとおりです。

 この曲、オケの編成はさほど大きくありません。 しかし
ハープや、数々の打楽器を散りばめた、大変色彩豊かな
名曲です。



 さて、会場練習を控え、ステージに楽器を並べていたときの
こと。 騒ぎが持ち上がりました。

 「楽器が足りない…」のです!

 「どうした、どうした!」 「何が無くなったの?」



 その "楽器" とは、鐘。 実際には、NHKののど自慢などでも
お馴染みの、チューブラーベルを使うのが普通です。 ただし、
この曲で用いる音程は一つだけなので、パイプが一本ぶら下が
っているだけの "楽器" です。

 とは言え、これが無くては困ります。 終曲の『キエフの大門』
の、それもクライマクスを迎える直前で聞かれるのです。

 原曲はピアノ曲なので、もちろん使われていません。 でも
延々と30回ほど規則的に鳴る、その "Mi♭" の音色は、鐘を
模しているとしか思えず、ラヴェル以外にも、ほとんどの編曲
者がこれを用いています。



 会場練習には、まだ多少時間はあります。 しかし、この
"紛失物"、首尾よく見つかるでしょうか?




 楽器の運搬と言えば、普通はトラックですね。 でも、これ、
実はアマチュアの大学オケの話だったのです。

 自分たちが乗って移動するのと、同じ列車に、しこたま楽器を
積み込み、運んでいました。 どれにもみな、持込み荷物用の
大きな荷札を着けて。 ティムパニ、コントラバス、ハープ…。
他の乗客がほとんど居ないのをいいことに、乗降口のデッキを
占領していたのです。



 そして、無くなったこの楽器ですが、"鐘" と言っても、一本の
金属棒なので、さほど目立ちません。 列車に積み忘れたのか、
あるいは昨晩の演奏会場の暗い片隅にでも、置き忘れたので
しょう。 今となっては一体どこにあるのか、誰にも解りません。

 たとえ前夜の市民会館へ戻って探そうにも、"汽車で何時間"
の距離です。 間に合わせるのは至難の技です。

 ひょっとして列車に乗ったまま? そうなればお手上げです。
今頃どこかを、一人で旅行していることでしょう。



 この楽器、無いと、どうしてもまずいのでしょうか?

 鐘以外に、楽譜のこの箇所で同じ音を同時に演奏しているのは
ホルン、ハープ、そしてヴィオラのピツィカートだけ。 どう考えても
補助に過ぎず、主役にはなり得ません。 必死に音量を上げても、
それではおそらく滑稽に見えるだけでしょう。



 かと言って、市内の楽器屋さんを当っても、チューブラーベル
なんて珍しいものが、果たして置いてあるでしょうか? そもそも
楽器屋さん自体、あるのかどうかも判りません。

 みんな、ただおろおろするだけです。

 「どうしよう…。」 「誰か、いい考え、無いのかよ…?」




 そこで颯爽と登場したのが、A君です!

 「誰か、TAXI、呼んでくれない?」



 そして自分は、館内の公衆電話コーナーへ向かいます。

 どこへ電話するのでしょうか? 我々は、ただゾロゾロと
後を追います。



 A君は、まず電話帳をめくり始めました。 この**市に、誰か
知人でもいるのでしょうか? それにしては、手にしていたのは
"職業別" 電話帳のようです。



 最初に繫がった相手とは、すぐに話が終わりました。

 誰と、何を話していたのか、私にはよく聞こえません。 さっそく
何重にも人の輪が出来たからです。 とにかくうまく行かなかった
のは確かでした。



 またダイヤルを回し始めたA君。 今度は話が纏まったようです。

 「うまく行きそうだよ。」

 そう言うなり、待たせてあったTAXIに飛び乗り、会館を後に
しました。



 「ほらほら、他の者は練習、練習…! 時間が無いぞ。」




 A君がどれほどして戻って来たのか、よく覚えていません。
会場練習に間に合ったかどうかも、今となっては私の記憶が
あやふやです。

 しかし演奏会の最後に置かれた、この『展覧会の絵』。 その
終曲の終わり近くの、練習番号114番で、鐘は立派に鳴り響き
ました。

 まるで何事も無かったかのように。




 そこで謎々です。



 A君はどうやって "楽器" を調達したのでしょうか??



 ズバリ、当ててください。




 解答は、文末をクリックすると見られます。

  ただし、場合によってはクリックしなくても目に入ってしまうことがある
 ので、「どうしても自分で考えたい」方は、以下に続く部分をお読みの際、
 ゆっくりスクロールしてください。 空白部分を10行ほど設けてあります。





                [音源




   解答

  















 A君が電話帳で探し出し、TAXIで向かった先は、水道工事店、
もしくはガス工事店でした。



 チューブラーベルと言えども、金属の管。 鉄管で間に合わせ
ればよかったわけです。

 問題は、その長さ。 短いと、音は高く、長いと低くなります。
正確に計算する必要がありました。




 音の高さ、つまり周波数 (f) と、波長 (λ)、音速 (v) の間には、
次の関係があります。

 音の高さ (f) × 波長 (λ) = 音速 (v)

 λ = v / f



 音速は、気温が高いほど速くなり、気温を 25℃ とすれば、
空気中の秒速346.5 [m/sec] になります。

 またここで振動し、鳴るのは金属管自身なので、波長その
ものが、鉄管の長さになります。

 問題は音の高さ、つまり周波数ですが、鳴るべき音は、E♭。
ピアノの "中央ハ" の、すぐ上の音です。

 A = 440.0 Hz とすると、このE♭311.1 Hz。



 これらから計算すると、管の長さは

 346.5 ÷ 311.1 = 1.11 [m]
 (音速)   (周波数)



 A君が工事店で切り売りしてもらい、TAXI で持ち帰ったのは、
1メートル少々の鉄管だったのです。




 このチューブラーベル。 買えば *万円はします。 それに
楽器屋さんに行っても、普段から在庫があるとは思えません。

 まして、「E♭の一本だけ、切り売りしてください」…と頼んでも、
断られるのは目に見えています。



 この日以来、A君の株が上がったのは、言うまでもありません。




 「ちぇっ。 実際に鳴ったのは、楽器のボクなのにな…。」



 まあまあ、鉄管クン…。 キミは "鐘ひとつ" に甘んじなさい。

 今後は箱入り息子だ。 "銅鑼" 息子じゃないものね。 大事に
しまっておいてあげるからさ…。



 そして、次回の出番までお蔵入りになり、埋もれた存在に
なってしまったそうです。




     ↓         ↓

  正解の方  不正解の方



深刻な組み紐

2011-01-04 00:00:00 | その他の音楽記事

01/04        深刻な組み紐




          これまでの 『その他の音楽記事』




 これまで何度かに亘って、翻訳の際に起こる珍現象を
ご覧いただきました。

 いずれも、ウチのまるチャンが書いてくれたものです。
まるチャン、ありがとう。



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            『変な挨拶だなー』
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 そこでは、幾つかの翻訳サイトが話題になりました。 中には
単語やフレーズだけでなく、サイト全体を翻訳してくれる便利な
ものもあります。

 しかし、こと音楽に関する限り、まだまだ信頼が置けません。



 誤訳が生じる主な原因には二つあると、今回は感じました。

 よく考えてみると、私たちも同じようなミスをしがちです。



            翻訳結果
          
(前回と同じものです。)




 ① 訳語の問題



 その一つが、単語の訳です。 英語を和訳する場合でも、
個々の単語には訳語がたくさんあることが多いものです。

 内容や文脈 (Context, Situation) に相応しい訳語を充てる
ことが大事ですが、もう一つは専門語の問題。 音楽の分野
でも、他の世界では用いられない、特殊な言葉がありますね。




 まるチャンが見つけた、「ひも四つ組」なる不思議な言葉。
これは "string quartet" の訳語。 もちろん弦楽四重奏曲
のことです。

 "String" は、「紐、列、弦、糸」。 "Quartet" は、「四つ
で一組のもの、四人組」のことですから、「ひも四つ組」は
確かに正しいのですが、何のことか全然解りませんね。

 学問や技術の世界では、それぞれは「文字列」、「四分子、
四分体、四重項、四重線」などを表わすそうで、私のような
門外漢には理解できなくなります。




 長調、短調を表わす "major"、"minor" は、音楽ファンならず
ともよくご存じの言葉。

 ところが今回だけでも、とんでもない訳語がたくさん出現しま
した。 それぞれ、「専攻学生、主、少佐」、「未成年」です。

 「"F minor" が "F Major" になる」という下りでは、「未成年の
"ヘ" が、学生の "へ" に」なってしまい、まるチャンが「一体どう
違うんだ~?」…と、不思議がっていました。




 面白いのは "Neapolitan"。 ここで指すのは "ナポリ六度と
呼ばれる三和音
" ですが、名前はともかく、クラシック音楽でも
古くから使われているものです。

 
これを Wikipedia で引くと、どれを見ていいかわからないほど
たくさん項目がある。 何だかスパゲティにしたくなりますね。




 イタリア語の "Allegro con brio" は、BEETHOVEN によく出て
きます。 これが「アレグロ 反対意見 生気」になってしまったの
で、まるチャンが以下のように言っていました。

 この "con" は、"pro" (賛成) に対する "contra" (対) じゃないぞ。
"Con brio" で、「元気よく」だもん。



 もっとひどい場合は、「Allegro 詐欺の brio」となっていました。

 不思議に思って調べてみると、なるほど! 「だます、ペテン
にかける、詐欺、横領
」という意味があります、英語の "con"
には。 恥ずかしながら、これまでまったく知りませんでした。

 イタリア語は音楽とは切り離せないので、英語サイトでは対応
しきれないのでしょうね。




 ② フレーズの区切り方



 もう一つは、"単語同士の結びつき方" の問題です。 文章の
中で、どこに切れ目があるか?

 "Allegretto ma non troppo"、これは「心もち速めのテンポで、
だがやり過ぎず」ですね。

 ところが今回は、「アレグレットの曲 ma non、余りに」とか、甚だ
しきは「非Allegretto ma の troppo」などになっていました。 これ
では何が何だか、さっぱり解りません。



 この程度なら、「単語が数個」の問題ですから、"被害の範囲"
は大したことがありません。 でも、もっと長い文章になり、段落
(paragraph)、章 (chapter) 全体を理解する必要がある場合には、
結果は致命的になってしまいます。




 以下は、前回まるチャンが挑戦したものの、立ち往生して
しまった箇所です。

 もちろん私にも、皆目見当が付きません。 結局、自分で
原文を当たってみるしかありませんでした。



 上記の①、②が "相乗効果" や "複合汚染" を引き起こして
いることが、よく解ります。




 『このカルテットのサイン原稿は記入された「1810年10月」です。
しかし、それが現われる論文は、ベートーヴェンがその時に使用
したと知られている種類と一致しません。 彼が数か月後にそれ
を終了したことはよりありそうです。』

 "論文"? "よりありそう"…? 何だ!? これ…。




 『この部分は1810年に全く文字が不足したでしょう:それは構成者
が後で一生のうち利用する構成の技術に関する実験です。 (より
短い開発、静寂の面白い使用、メートルの曖昧さ、外見は無関係
な爆発、および彼のソナタ形式中の調性を備えたより多くの自由
のような技術。)』

 "文字が不足"? ABCがか…? 1デカメートル=10メートルだぞ…。




 『この期間の歴史上の写真は、情況に部分を入れるのを支援
します。 ナポレオンはその年の初めのウィーンおよびこの混乱
したベートーヴェンに非常に侵入しました。 彼の貴族の友達は
すべてウィーンから逃げました。 しかし、ベートーヴェンはとどま
り、大きな爆撃について劇的に苦情を言いました。』

 ベントー弁に非常に侵入? 爆撃? ワ~ン、ボク、混乱…。




 このカルテットのサイン原稿記入された「1810年10月」です。 しかし、それ
が現われる論文は、ベートーヴェンがその時に使用したと知られている種類と
一致しません。 彼が数か月後にそれを終了したことはよりありそうです


 The autograph manuscript for this quartet is inscribed
"October 1810", but the paper on which it appears does
not match the variety Beethoven is known to have used
at that time. It is more likely that he finished it several
months later.

 この曲の (自筆) 手稿には、"1810年10月" と記されています。
しかし用いられている五線紙は、ベートーヴェンがその時点で
使用していた種類とは違うものです。 実際の脱稿は、さらに
数か月後であると考えた方が良さそうです



    (中略)



 この部分は1810年に全く文字が不足したでしょう:それは構成者後で一生
のうち
利用する構成の技術に関する実験です。 (より短い開発静寂の面白い
使用、メートルの曖昧さ、外見は無関係な爆発、および彼のソナタ形式中の
調性を備えたより多くの自由のような技術。)


 This piece would have been quite out of character in 1810:
it is an experiment on compositional techniques the com-
poser would draw on later in his life. (Techniques such as
shorter developments, interesting use of silences, metric
ambiguity, seemingly unrelated outbursts, and more free-
dom with tonality in his sonata form.)

 この小品は、1810年の頃の作品とは、まったく性格が異なって
いる
と言えましょう。 作曲家後になって用いる、様々な技法の
実験的試みだからです。 (展開部分は短く、休符、沈黙が目を
惹き、拍子は曖昧で、気分が突然暴発するように感じられ、また
ソナタ形式では、調性の用い方がさらに自由になっています。)




 この期間の歴史上の写真は、情況に部分を入れるのを支援します。 ナポレオン
はその年の初めのウィーンおよびこの混乱したベートーヴェンに非常に侵入しまし
た。 彼の貴族の友達はすべてウィーンから逃げました。 しかし、ベートーヴェンは
とどまり、大きな爆撃について劇的に苦情を言いました。


 The historical picture of this time period helps to put the
piece in context. Napoleon had invaded Vienna earlier that year,
and this upset Beethoven greatly. All of his aristocratic
friends had fled Vienna, but Beethoven stayed and dramatically
complained about the loud bombings.

 この前後の時期を歴史的に見れば作品の置かれた当時の
状況が理解しやすいでしょう。 この年になってからは、すでに
ナポレオンがウィーンに侵入しており、これにはベートーヴェンも
憤激しました
。 友人の貴族たちは、すべてウィーンから逃がれ
ていましたが、彼は留まり、砲撃の大音響に対して、声高に不満
ぶちまけたほどです。




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"Composer" は、音楽の話なので "作曲家" ですね。



 ちなみに、"artist" は確かに "芸術家" ですが、元来は
"画家" など、美術の世界と結びつくことが多いようです。

 これに対して私たちは "musician" (ミュージシャン)。 歴史
的に見ても、数段低い立場に置かれていました。



 ヨーロッパでも、音楽は芸術と見なされていなかった時代
があるからです。 音楽家は "楽師" と呼ばれて雇われ…。

 あるいは、今の日本も…? かつては "楽隊" でしたし。




 ところで今回の翻訳サイトには、以下のような訳文まで
見られました。 マーラーの編曲版について触れている
ところまではいいのですが…。




 「これはシューベルト's死および初回のカルテットに加えて、
カルテット作品のうちの1つです、ほとんどチェロのうちの
いくらかを2倍にすることにより、弦楽合奏団による使用の
グスタフ・マーラーが準備をしたことは、ダブルベース
手放します
。」



 This is one of the quartet works, along with Schubert's
Death and the Maiden quartet, that Gustav Mahler
arranged for use by a string orchestra, mostly by
doubling some of the cello parts with double basses.



 この Beethoven の作品には、Schubert の四重奏曲
『死と乙女』などと同様、Gustav Mahler による編曲
がある。 弦楽合奏のためのもので、チェロ パート
一部、コントラバスを重ねているのが主な手法だ。




          関連記事 『死と乙女

           ① 最後の曲は SCHUBERT
           ② 三連符の見え隠れ
           ③ 移ろいの背後の混沌
           ④ 苦悶の果ての長調
           ⑤ 揺れ動く転調
           ⑥ 切ない半音階
           ⑦ 叫ぶ乙女、棒読みの骸骨
           ⑧ 死神だけが生まれ変わる?
           ⑨ 束の間の小春日和
           ⑩ 死神と踊る?
           ⑪ 絶望感の表現 他




船は青銅の騎士の…

2010-08-29 00:00:00 | その他の音楽記事

08/29


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 オーケストラの名曲に、交響組曲『シェヘラザード
(シェヘラザーダ)
』があります。

 ひょっとして、貴方も大ファンですか?



 作曲者は、リームスキィ=コールサコフ。 管弦楽法
の大家として自ら著作を残したほか、他の作曲家の作品
まで改訂しています。




 この曲は、いわゆる "二管編成" ですが、それにピッコロと
コーラングレが加わります。 管楽器の人数は、切り詰め
ても木管9人、金管10人が必要です。 弦楽器は、プロの
オケだと50~60人といったところでしょうか。

 さらに問題なのは、"所 狭し" と居並ぶ打楽器の数々です。
もちろん小さいものもありますが、ティムパニ、トライアングル、
タムブリン、小太鼓、シムバル、大太鼓、銅鑼。 またハープ
という高価な特殊楽器も必要で、これがまた場所を取ります。

 演奏会場のステージが広ければ問題無いのですが、もし
狭いと、配置に大変苦労します。 数々の楽器本体、椅子、
譜面台、そして人間…。



 それに打楽器セクションでは、人間が動き回るスペースが
必要です。 大体どこでも人数が少なめなので、"かけ持ち"
で演奏するのが普通ですから。

 楽器にピッタリ寄り添う椅子の間を縫って、器用に移動し
なければならず、下手をすると譜面台を倒したり、また自分
が山台(雛壇) から落ちてしまいます。 演奏中に「楽譜から
落ちる」以前の問題です。




 私が昔、オーケストラで Viola を弾いていたときのことです。
大好きなこの曲が、プログラムの中にありました。



 ところがあいにく、舞台の上がとても狭いのです。 譜面台が
自分の体に近過ぎるので、遠くへ離そうとすると、前の人間の
頭部に触ってしまう。 その上、弦楽器はよく動くので、隣りの
人間の楽器や顔を、弓で傷つけてしまいそうです。

 脚で動き回る打楽器セクションでは、おそらくもっと苦労して
いることでしょう。




 演奏が始まりました。 曲は、

第Ⅰ楽章『海とシンドバッドの船』、

第Ⅱ楽章『カランダール王子の物語』、

第Ⅲ楽章『若き王子と王女

と、何事も無く進んでいきます。




 第Ⅳ楽章は題名が長く、

『バグダッドの祭り。 。 船は青銅の騎士のある
岩で難破。 終局。』

と記されています。

 ("終曲" と書かれているのを必ず目にしますが、"話の結末" なので
"終局" の方がいいでしょう。 "終曲" なら、楽章の冒頭にそう記されて
いるはずですが、"Finale" の文字は見られません。 手元のスコアには
"Conclusion" と英語であります。 「粗暴な王さまと賢い王妃の物語」
全体の結末と考えるべきでしょう。
)




 楽章の冒頭は、荒々しいシャリアール王と、これを巧みに
"なだめる" シェヘラザード。

 王妃が語り始めたのは、にぎやかな お祭りのお話です。
タムブリンが まず登場して、華やかさを演出します。

 そして途中で何度も現われるのは、第Ⅲ楽章の美しい
メロディー。 王子や王女も一緒に手を取り合い、お祭り
に興じているのでしょうか。




 祭りの音 (ね) が最高潮に達すると、目の前には大海原が。
第Ⅰ楽章と同じ、海とシンドバッドの音楽です。

 しかし今度は海が大荒れ。 は嵐に翻弄されています。



 ますます猛り狂う大波。 そして、これまでステージの上
で沈黙を保っていた銅鑼の響きとともに、船はとうとう沈没
し、海の藻屑と化してしまう…、…はずでした。




 ところが、ここで異変が! 銅鑼を叩くのは一回だけの
はずなのに、その後も何度か鳴っているのです!

 「まさか、出帆の合図じゃあるまいし…。」



 いや、異変というより、異音です。 だって銅鑼の音は、普通
"ボワ~~~ン" …ですよね。 でも、その後に続いて聞こえた
のは、"ガチコン、ガチコン" という音でした。



 「え…?? 一体、何が起こったんだろう…!」

 ステージの上手 (かみて) 側から、これを眺めた私の眼に
映ったのは、信じられない光景でした…。




 さて、お待たせしました。 謎々…、ではない、問題です!

 これは、私の創作でなく、実話なので…。




① それは、一体どんな光景だったのでしょうか?

 ヒントは、本文の中に書かれています。



② シャリアール王は、聴き終わって何と言ったでしょうか?

 これは創作ですが、洒落好きで、想像力の旺盛な貴方なら…。




 解答は、文末をクリックすると見られます。

  ただし、場合によってはクリックしなくても目に入ってしまうことがある
 ので、「どうしても自分で考えたい」方は、以下に続く部分をお読みの際、
 ゆっくりスクロールしてください。 空白部分を10行ほど設けてあります。





  [音源ページ

  [音源ページ




   解答

  















 銅鑼は、吊り下げてあるのが普通です。 叩かれたので
左右に大きく揺れ始めましたが、不幸なことに、すぐそばに
椅子が置いてありました。

 あのパイプ椅子。 脚や背もたれが鉄製や真鍮製の、よく
見かけるものです。 ステージが狭いし、当日の会場練習で
は、曲のこの部分を練習していなかったので、椅子の位置が
悪いことには誰も気付かなかったのです。 "終局" を迎える
まで…。



 銅鑼は、この椅子の金属部分に触れては離れ、離れては
触れながら揺れ続け、"ガチコン、ガチコン" と、沈没を何度
も拒否したのです。 慌てて止めようにも、船にはブレーキが
無いので、揺れはなかなか治まりません。

 しかし音楽はこの後 静まり、楽譜には "静寂" を思わせる
和音まで記されています。 "難破" は既成の事実なのです。



 この事態に遭遇した Violin ソロのシェヘラザードは、何事
も無かったかのように、平然と物語を締めくくったのでした。




 しかしシャリアール王は聴き終わると、

 「シャレにもならん…。 余は "シャレ アル" なるぞ!」
と、相変わらず激怒したものの、

 「まあよい、そちの話を聴き、余はナンパが嫌いになった…。
明日からはそなた、パイプ椅子に…、ではない、大船に乗った
つもりでな。 安心して寝るがよいぞ…。」

 と、王妃シェヘラザードをねぎらったのだそうです。



 めでたし、めでたし…。




 ああ、よかった。 血祭りに上げられないで…。




 「青銅の騎士のある岩で難破」は、きっと間違いだな…。

 「真鍮の椅子のある舞台でナンパを嫌がる」…とした方がいい。



 ドラ、作曲者に、改訂を進言に…。




 今回は、正解の方も不正解の方もクリックしてください。



 こんな音で沈没しました。」




牛に引かれて…

2010-04-18 00:00:00 | その他の音楽記事

04/18    まるチャンの「何だ、これ!?」 (54)

            牛に引かれて…




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 やあ、ボク、まるだよ、ワン!!




 maru たちの旅も三日目。 いよいよ最後の日だよ。



 この西表島 (イリオモテジマ) にはね、石垣島からフェリーに
乗って来たんだ。

 にはね、時計で言うと、5時の辺りに、大原港があるの。
またの名を仲間港って言うんだけど、それ、仲間川がそば
にあるからなんだ。

 河口は4時の位置にあってね、とても広いんだけど、上流
は細いの。 水辺にはね、ずっとマングローブが密生して
いて、その間をくぐったんだよ、ボートに乗って、8年前には。



 下の図の3時の方向には、小浜島 (こはまじま) があるよね?
これ、ちゅらさんの舞台にもなったの、知ってた? NHKで。

 "イヌ、あっち、いけー"…じゃないぞ…!








 でもこの日の朝に行ったのはね、その間にある、とても
小さな島なんだ。 名前は由布島 (ゆぶじま) だよ?

 宇宙から見ると、「砂から出来た島ですよ」…っていうの
がよく解るよね、その形からしても。



 西表島との間は、もちろん陸続きじゃないんだ。 でも
浅すぎちゃって、舟じゃ行けないんだよ?

 じゃ、「何に乗るのか」って言うとね…。



     



 ほーら、見えてきたでしょ!

 でも、もちろんバスじゃないよ。 車は車だけど、
水牛に引かれて行くんだ。



 「maru に引かれて」じゃないぞ…。 ワオーン。



     




 これに乗って約15分。 バシャーン、バシャーン、…ってね、
ゆっくり引っ張って進むの。 水牛さんが。

 ときどき立ち止まってね、オシッコやウンチしながらだけど。
あれー…! でも、魚の餌になるから、ちょうどいいんだよ。




 もと来た方を振り返ると、あらー、こんなふうに見えるんだ!







 大変だなー、水牛さん。 重労働だよね? 疲れないのかな~。



 ねえねえ、キミ、ずいぶん大きいなー。 何キロぐらいあるの?







 「そうだのー、3歳のときは400㌔だったから、今は500㌔
ぐらいあるかな。 まるクンとは、一桁以上違うだろうね。」




 へぇー! だけど、お客さんがたくさん乗ると重くない?

 「ちゃんと訓練されてきたのさ。 でも、海水が膝の辺り
まで来ると、進むのは大変なんだよ。 大潮の満潮だと、
1㍍ぐらい深くなるんだ。」




 そうなの…。 働くのは、毎日毎日かな~? 疲れない?

 「いや! ほぼ週休二日制なんだ。 それに一日の仕事が
終わるとね、ビール、飲ましてもらえるの! 大好物さ!」



 あらー! maru のやつは貧乏暇無しで、しかも飲むのは
"第三のビール" なんだよ!? 負けてるなー…!

 でも、翌日の仕事には差し支え、無いの? 二日酔い、
しない?



 「体重が500㌔あるもん、なんてったってね。 ビール
一本なんて、ちょろいものさ。」

 …、…。




 「じゃ、もうひと働き、してくるからね。 バイバーイ!」








 さよなら…。 元気でね~…。



 ところで、行きの水牛車の中ではね、『安里屋ユンタ』を
歌ってもらったんだよ。 三線 (さんしん) を手にした方に。



 写真は水牛さんと、歌ってくれた方だよ。








 その歌の歌詞はね、車内にもちゃんと用意されてたの。







 でも小さくて見にくいから、ページの最後をクリックしてね?



 そのときの音も聞けるんだけど、あいにくマイクの位置が
悪いんだ。 歌声が小さくて、ごめんね?




  (続く)



    [安里屋ユンタ 歌詞と、三線の伴奏

 


 以下の内容は、[なつかしい童謡・唱歌・わらべ歌・寮歌・民謡・歌謡]、
および[マタハーリヌ チンダラ カヌシャマヨ!]から転載、参考にさせて
いただいたよ。

 ありがとうございました、ワン!





 歌詞だよ。



サァ 君は野中の茨の花か
サァユイユイ
暮れて帰れば ヤレホンニ 引き止める
マタ ハーリヌ チンダラ カヌシャマヨ

サァ 嬉し恥ずかし 浮名を立てて
サァユイユイ
主は白百合 ヤレホンニ ままならぬ
マタ ハーリヌ チンダラ カヌシャマヨ

サァ 田草取るなら 十六夜月よ
サァユイユイ
二人で気兼ねも ヤレホンニ 水いらず
マタ ハーリヌ チンダラ カヌシャマヨ

サァ 染めてあげましょ 紺地の小袖
サァユイユイ
掛けておくれよ 情の襷(たすき)
マタ ハーリヌ チンダラ カヌシャマヨ

サァ 由布島 良いとこ 一度はおいで
サァユイユイ
春夏秋冬 ヤレホンニ 花が咲く
マタ ハーリヌ チンダラ カヌシャマヨ




 以上は、星迷鳥作詞の『新安里屋ユンタ』だよ。 歌詞の
由来は最後に書いとくね?

 「サァ 由布島…」以下は、さらに追加されたみたいだね?
由布島のキャンペーンかな?



 歌詞の中の「マタハーリヌ チンダラ カヌシャマヨ」っていう
のはね、お囃子なんだって!

 「マタハーリヌ」には意味がなく、「チンダラ カヌシャマヨ
は、「可愛い可愛いお前よ」っていう意味だよ。

 囃子言葉全体についてはね、「インドネシアの言葉に由来
しているという説や、色々な議論がある」んだって。




 ところで、この『安里屋ユンタ』だけど、読み方には二つ
あるよ。 "あさや" と、"あさや" と。

 沖縄島には "あさと" っていう駅もあるから、「元は多分
"あさ" じゃないかな。 でも後に "や" が加わると "あさ"
にした方が言い易いから、そうなったんだと思うよ」…なんて、
maru のやつが言ってたな。 外国語にもね、色々そういう例
が多いんだって。 "t" → "d"、"p" → "b" のようにね。



 "ユンタ" はね、"伝承の古い歌" のことなんだって。



 つまり、元々は沖縄に古くから伝わる "民謡" だから、
歌詞は、上にあるのとは違うものだったの。 でも、沖縄
以外の、 "外地" の人たちには、発音が難しいでしょ?
それで、星迷鳥っていう方が "共通語" で歌詞を付けた
んだって。




 元の歌詞は以下のようなものだよ。



サァ 安里屋(あさどや) ぬ くやまによ
サァユイユイ
あん美(ちゅ) らさ うん生(ま) りばしよ
マタ ハーリヌ チンダラ カヌシャマヨ

サァ 目差主(みざししゅ) ぬ 請(く) ゆだらよ
サァユイユイ
あたろ親(や) ぬ 望(ぬず) むたよ
マタ ハーリヌ チンダラ カヌシャマヨ

サァ 目差主や 我(ば) なんばよ
サァユイユイ
あたろ親(や) や 此(く) りゃおいすよ
マタ ハーリヌ チンダラ カヌシャマヨ




 以下は、沖縄に住んでいる方による解説だよ。




沖縄のkawamitsuさんから、安里屋ユンタについて、メールを頂きました。
ありがとうございます。(2005/06/30)


初めまして。
沖縄に住んでいるkawamitsuと申すものです。

じつは、この歌は八重山のある地域に伝わるいわゆる「玉の輿」
伝説の歌です。
おおよそのあらましは、

「安里屋のクヤマという女性に、役人が結婚の申し込みをしました。
その役人の上司も、クヤマを奥さんにしたいと申し出ました。
クヤマは、上司の申し出を受けました。
先に申し込んでいた役人は、別の女性と結婚しました。
二組は、幸せに暮らしました」

というカンジでしょうか。しかし、県外の方々に沖縄独特の発音が
難しくて、新たに作詞されたということだそうです。




 一緒に歌ってね? カラオケのつもりで、ワン!

         安里屋ユンタ

 

 


あと 199億秒

2009-10-22 00:04:10 | その他の音楽記事

10/22    まるチャンの「何だ、これ!?」 (28)

             あと 199億秒





          これまでの 『その他の音楽記事』




     今までの『ボクの出てきた記事』一覧だよ。




 やあ、ボク、まるだよ、ワン!

 みんな元気? ボクね、今、復習してるんだよ…?




 音楽には色々変わったのがあるってこと、解ったんだ。



 まず、えーと、演奏者は静かにしてるけど、周りで音が
鳴っちゃう音楽
でしょ。

 それから、楽器はやっぱり鳴らさないけど、歩いたり、水
飲んだりして、楽器以外の音をさせる音楽もあったよ。



 それに、840回繰り返すピアノ曲もあったな。 18時間
かかるんだって、ちゃんとやったら。 これ、きっと一番
長い曲だよね?

 「いつまでも無限に繰り返せ」なんていう、ずるい曲も
あるけどさ。 そういうのは除いちゃおうね。




 ようし、ボク、念のために調べてみようっと。 これより長い
曲があるかどうか、検索して。 多分無いと思うけどね。

 どれどれ、"演奏時間の長い曲" …と。 お、あったあった。




   「クラシック音楽ではオペラに長い作品が多く見られ…。」



 そりゃあそうだ。



   「ヴァーグナーの『ニーベルングの指環』は、
   四日四晩で15時間かかります。」



 なるほど、確かに真面目な作品らしいけど。

 でも、『ヴェクサシオン』の18時間には及ばないもんね。

 やった、やった!



   「シュトックハウゼンのオペラ『光』は、
   7部作で28時間かかります。 全曲が
   演奏されたことはまだありません。」



 なんだ、これ! うわぁ、こんなのがあるんだ…。 なるほど、
お金がかかったりするから演奏が無理なんだね。



 でもこれ以上長いのは、もう無いよ、きっと。




   「ジョン・ケージの…」


 お、出てきたよ。 "演奏しない" 曲、作ったおじさんだ。



   「… "ASLSP" はピアノ曲で、通常は20分、
   速くやれば数分または1分以内で…」



 何だ、これ。 そんな短い曲、お呼びじゃないもんね、今は。



   「…のちにオルガン用に編曲。
   80分以内でも演奏は可能。」



 だからもういいって言うのに。 今は長い曲、
探してるんだから…。



   「ケージ自身は、"可能な限り遅く" (as slow as possible)
    としか指定していない。」



 "可能な限り" って言ってもね…。 2倍か3倍でしょ、どうせ。




   「そこで作曲者の死後、あるオルガン奏者が
   確かな根拠から演奏時間を算出し、とある
   歴史的なオルガンに "ゆかり" のある場所で、
   電気と機械仕掛けによる演奏が始められた。」



 …、…、……!?



   「開始は2001年9月5日で、終了は2640年の予定。」




 えー! 何だ、これ! 何かの間違いじゃないの…?

 引き算すると…、639年だよ…! ギャワーン。




   「同プロジェクトの公式サイトです。 ページ
   右上のカウンターが、残り演奏時間(秒)。」
           (黒地白抜き数字)




 どれどれ、あと何秒になるのかな…? えーと、ずいぶん
多いな、桁数が。 1、2、3…、11桁もあるぞ。

 ということは、あと199億秒だって!



 1時間は3,600秒だよね。 24倍して1日は86,400秒。
365日として、1年は31,536,000秒。

 えーと、199億秒だから…。 本当だ、あと631年、残ってる…。

 うわあ、1億秒って、3年より長いんだ!

 2010年には、それでも198億秒台になるよ…。

 あっ、今2011年8月31日の夜だけど、まだ19,907,633,140秒も
残ってるぞ。 ボク、計算、間違えちゃった…。




 ワーン、調べたりなんか、しなけりゃよかったなぁ…。
いやになっちゃったよ。




 でも、これって、ケージさんが決めた長さじゃないよね?
639年っていうのは。 「可能な限り遅く」って、確かに書き
残してはいるけど。

 人間の一生をはるかに超えるような演奏時間を、ケージ
さんが生きていたら、本当に望んだかな…?




 ケージさんは、「沈黙をつくろうとしてもできない、自分の
死後も音は鳴りつづけるだろう」って、確かに言ってる。
それは本当なの。

 でも、機械にやらせてまで、「可能な限り長く」演奏して
欲しいって思ったのかな…? それ、∞ (無限大) っていう
意味だよね。



 ケージさんて、人がビックリするようなことをほかにも色々
やったけど、一人の人間として真剣に考えたからじゃない
かなーって、ボク、感じてたのに…。

 ただ「実験的なことをやりたかった」だけじゃなくて。 でも
ますます解んなくなってきたよ、ボク。




 まあいいや…。 イヌの一生は、もっとずっと短いから、
どっちみちボクには無理だよね? この曲。



 ボク、maru のやつ相手に、おウチで『4分33秒』やること
にしようっと、もう一度。 これなら273秒で終わるもん。

 それにこの曲、"初演のときの演奏時間" が題名になった
だけだから、4分33秒より短くてもいいんだよね? "楽章"
が三つありさえすれば。 ワン。



 みんなは、あと199億秒、がんばって数えてね…?



 じゃあ、またね、ワン…。




 参考サイト



  [トリビア 演奏時間が1秒しかない曲



  [演奏時間の長い曲
     ↓ この中には、こんなことが書いてあるよ…?? ↓

   ジョン・ケージの「HPSCHD」(1969年)の演奏時間は最低20分から
   無限大となっていて、これが最長と言うこともできる。 また同じく彼
   の「カートリッジ・ミュージック」や「アリア」・「4分33秒」・「ピアノのため
   の音楽21-36、37-52」等は演奏時間が不確定である。




  [演奏時間639年の音楽] (2006年1月6日の記事)



      ↓



2006年1月6日の記事

演奏時間639年の音楽、第二のコードが鳴らされる 独

【ASLSP】ドイツ東部、ハルバーシュタットのブキャルディ廃教会にて続けられる演奏予定時間639年の音楽がこのほど、開始5年目にしてようやく第二のコードへと進行したとのこと。このパフォーマンスで演奏されているのは、米作曲家のジョン・ケージ(1912-1992)が発表した"Organ2/ASLSP"(As SLow aS Possible = 出来る限りゆっくりと)という曲である。演奏は2639年の終曲を目指して2001年9月5日に始められ、全くの無音パートである最初の一年半を経て、2003年2月2日には最初のコード(ソ#,シ,ソ#)が鳴らされた。そして2004年7月には新たな重りが鍵盤に乗せられ、一オクターブ下のミが加えられた。その音(ミ)は今年5月5日まで続く予定であるという(写真は演奏が続けられるオルガン)。

そして今週木曜の午後5時(GMT16:00)、ようやく最初のコードから、今後数年鳴り響くことになる第二のコード(シ、ド、ファ#)へと進行したのである。

ジョン・ケージの"ASLSP"は1985年、もともと20分間のピアノ曲として発表され、1987年にオルガンの為に編曲されたものである。しかし今回の演奏を行うジョン・ケージ・オルガン・プロジェクトは、ケージが曲名に委ねた意志を汲み取り、オルガン編曲をもとに、演奏時間を639年まで引き延ばしたという。639年という時間は、同教会に初めてオルガンが設置された1361年から数えて、プロジェクトが開始された2001年までの時間を元に設定された。また今回のプロジェクトで使用されるオルガンは新しく特別に作られたもので、新たな音の必要に応じて、パイプを継ぎ足していく形で使われる。

ジョン・ケージは二十世紀の音楽に絶大な影響を与えた作曲家アルノルト・シェーンベルクの弟子の一人で、かの有名な完全無音の音楽「4:33」といった前衛的な作曲で知られている。

また運営者らは、このパフォーマンスの思想的背景として、”変化の早い現代社会における平静と緩慢な時の流れの再発見”といったコンセプトを語っているとのこと。