MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

付点音符の尻尾

2014-05-06 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

05/06 私の音楽仲間 (576) ~ 私の室内楽仲間たち (549)



             付点音符の尻尾


         これまでの 『私の室内楽仲間たち』



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                  深刻な組み紐
                   これでもか
                演出家 Beethoven
               自然に生まれはしないよ
               解釈より優先する事情
                     味多後
                   引き戻されて
                 4分36秒の中味
                 付点音符の尻尾
                  深刻な問題





 [譜例]は、Beethoven弦楽四重奏曲 ヘ短調 Op.95
第Ⅱ楽章の冒頭。 以前もご覧いただいたものです。

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 貴方がチェロを弾くかたなら、まず気になるのが最初の数小節
でしょう。 八分音符には付点がついている。 もちろん、普通の
八分音符よりは長く弾かなければなりません。

 演奏例の音源]もここからスタートします。



 この付点音符は、以後頻繁に出て来ます。


 極端な場合は、四人が同時に異なる音を鳴らしているのに、
「Vn.Ⅱだけが」、あるいは「Viola だけが」付点音符…ということ
さえあります。 他のパートは、ただの “八分音符” ですが。

 もちろん、「その音程の音を目立たせる」必要があるのでしょう。

 


 さて、冒頭はチェロひとりですが、別の難しさがある。 それは、
「長く、長く」…と思うと、テンポが遅くなってしまうからです。

 “Allegretto ma non troppo” は、平たく言えば、“多少速めに、
でも、やりすぎず”…。 以前も記した意訳ですが


 3小節目の後半には、今度は “スタカート” の八分音符が
出て来ます。 これも、正確なテンポを妨げる要因になりうる。

 “危険が一杯” です。

 


 

 大事なのは、付点音符を「どう弾くか」…ではないでしょうか。


 「(この四分音符は、)“長さ” だけを問題にしても駄目。
砲弾型の音” を意識しなければならないようです。」

 やはり以前ご覧いただいた “お薦め” でした。 最後
まで同じ密度で弾いてしまうと、その先の音の立ち上がり
は、どうしても重くなりやすいのです。

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 これは “四分音符の頭打ち” の例で、今回とは異なります。
しかし、私のこれまでの経験では、「付点音符は最後を “軽く
演奏するとうまく行く場合が多い。 長さの問題ではありません。

 付点音符は、次の拍まで “食い込んでいる”。 したがって、
「復元が遅いとタイミングまで重くなる」…からではないでしょうか。

 ただし、レガートの場合はもちろん別です。


 音符には、音の密度までは書かれていない。 また “長さ”
さえ、厳密に書き表わすのは不可能なのです。 このことを
意識しないと、次のような疑問は解決しません。


(1) スタカートは、書かれている音符よりも本当に “短く”
弾かなければならないのか?

(2) 休符の書かれている時点では、音は “鳴っていては
いけない” のか? 先ほどの付点八分音符の後には、
十六分休符ありましたが、ここでは?



 その意味では、楽譜とはまことに不完全なものです。




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