MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

味多後

2013-07-13 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

07/13 私の音楽仲間 (512) ~ 私の室内楽仲間たち (485)



                味多後


         これまでの 『私の室内楽仲間たち』



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                     味多後
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                 付点音符の尻尾
                  深刻な問題





 Beethoven弦楽四重奏曲 ヘ短調 Op.95、その
第Ⅳ楽章は、6/8拍子の歌。 “Allegretto agitato” と
書かれています。



 これに先立って、“Larghetto espressivo” の序奏が
7小節間。 ゆっくりな 2/4拍子です。

 演奏例の音源]は、その最初から。 [譜例]の前
には6小節あることになります。







 “agitato” とあるので、速いテンポを予想させる。 でも
指示は “Allegretto” です。 速すぎると歌えません。

 [譜例]のには、二つの16分音符から成る形がある。
これらから “息づかい” が伝われば、“agitato” は充分
表現できます。




 ちょっと待って! その前に大変な事が。 三人が私
を追い越してしまったのです。

 [譜例]の最後に ff がありますが、そこへ行くまでに。



 幸いにも、その後に “fermata” (止まれ!; 停留所) があり
ます。 お蔭で、みんな待ってくれました。

 それにしても、本来は “追い越し禁止” のはずですが…。

 “ensemble” は、“一緒に” の意味ですから。



 追い越しが始まったのは、数小節前の f の箇所から。
「16分音符は短い、速い!」という先入観が強すぎたの
かもしれません。

 しかし追い越されそうな予感は、その前からありました。
2小節前で cresc. が始まる、その辺りから。



 元はと言えば、私の “Allegretto agitato” が遅すぎたの
かも。 これは3回目に通したときの録音ですが、みんな
弾きにくそうでした。 最初からずっと。

 あまり名盤に親しみ、参考にされると、私などは本当に
困ります。




 でも原因は、ほかにもあるような気がする。 それ
は、この録音からも聞きとれますよ?

 フェルマータを過ぎた辺りで、カチャカチャいう音が
聞えませんか? もうすぐ休憩の時間なんです!



 これ、お世話係の Sa.さんが湯呑みを置いたり、お菓子
の袋を開いている音なんです。 私たちの至近距離で。

 緑茶、紅茶、コーヒー。 お煎餅にクッキー。 餡パンに
チョコレート。 時には、ケーキやお団子まで。

 いくら冷静に音楽に打ち込んでいるとはいえ、これでは
気になりますよね。



 「ねぇ、早く止めてさ、もうおやつにしようよ…。」

 だめだめ。 まだ楽章は始まったばかりでしょ。 もう少し
我慢しましょうね。 あと10分とかからないから。



 かくて全員の無言の願いは、私に無視されることに。

 ちなみに、この後も続きました。 追い越し違反が、頻繁に。



 “agitato” の元の意味には、“動揺した、取り乱した、不安な、
落ち着かない、興奮した、錯乱した”…などがあります。

 さてこの場合は、どの訳が最適か…?




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