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「うつろ舟」(福武文庫)
澁澤龍彦の小説を読んだのは実はこれが初めてでありました。この前に書いた「ドラコニア綺譚」も、物語的な要素が入ってきており、どうやら後半生の澁澤はどうやら観念の世界をそのままストレートに書き連ねるのではなく、物語的な形式に乗せていく、そんな風に感じたのでありました。実際、澁澤は堀内誠一に宛てた手紙に、このままいくと小説でも書くより行き場がないのではないかといった内容のことを書いているそうです。
さて、この「うつろ舟」は全編に渡り通常ボクなどが思っている小説と一風変わったそれこそ変な風合いを持ったものになっていました。そこには登場人物の感情の軋轢はなく、話の展開も唐突に転んでゆき読んでいてとても不思議な感覚に陥ってくる。ややもすると単調な感じもしなくはないが何故か胸に染入ってくるものがあっりゃ、この感覚はなんだろう?おかしいなと思っていたのです。何故?と調べてみるとわかったのが、“澁澤の短編小説は、そのほとんどが日本の古典を題材にしている”ということで、もしかしたら、ボクの深層部分に訴えかけてきたのではないのかなと判断し得たのです。たとえばこの本のタイトルにもなっている短編小説「うつろ舟」は、
①滝沢馬琴の「兎園小説」にある「うつろの蛮女」と
②今昔物語の「天竺の天狗、海水の音を聞き、この朝に渡る語」の
2つから題材を得ているそうで、そのあたりについては先月の怒涛のような澁澤月間(と勝手に決めた)取り上げた「國文学」の澁澤特集号の中に古橋信孝という方の論文が掲載されており、それを読むとなるほどそうだったんだと頷くのでありました。
その論文には、うつろ舟が登場する部分について滝沢馬琴の原文と澁澤の小説が比較するために引用され、並置されているのですが、それはほとんど変わらずまるで現代語訳のようであるのです。強いて言えば、澁澤がうつろ舟をわかりやすく説明するために、その船の造形がまるでUFOのような形をしているという現代的な補足的な説明を付け加えていること。
全ての小説がそうではないにしても、部分的に澁澤の黒い眼鏡を通して引用していたのは、なんだとがっかりするのではなく、透明感あふるる形で甦らせていたことの新鮮さと感動をボクは憶えたのでありました。実際、澁澤のエッセイを読んでいると博覧強記ではあるものの、寺山修司のようにイメージが飛翔するということはないので、そのような形の方が澁澤らしく納得、という感じがします。
むしろ澁澤の知は西洋のみならず日本の古典にもおよび、しかもあまり知られていない(知らないのはボクのみか?許してください経済学部出身なので)題材をそれこそ摩訶不思議な、でも妙に胸に染み込む物語を起こしていたのが、ボクにとってはニッポン・チャチャチャという感じがして、とても良かったのですが・・・。
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澁澤龍彦の小説を読んだのは実はこれが初めてでありました。この前に書いた「ドラコニア綺譚」も、物語的な要素が入ってきており、どうやら後半生の澁澤はどうやら観念の世界をそのままストレートに書き連ねるのではなく、物語的な形式に乗せていく、そんな風に感じたのでありました。実際、澁澤は堀内誠一に宛てた手紙に、このままいくと小説でも書くより行き場がないのではないかといった内容のことを書いているそうです。
さて、この「うつろ舟」は全編に渡り通常ボクなどが思っている小説と一風変わったそれこそ変な風合いを持ったものになっていました。そこには登場人物の感情の軋轢はなく、話の展開も唐突に転んでゆき読んでいてとても不思議な感覚に陥ってくる。ややもすると単調な感じもしなくはないが何故か胸に染入ってくるものがあっりゃ、この感覚はなんだろう?おかしいなと思っていたのです。何故?と調べてみるとわかったのが、“澁澤の短編小説は、そのほとんどが日本の古典を題材にしている”ということで、もしかしたら、ボクの深層部分に訴えかけてきたのではないのかなと判断し得たのです。たとえばこの本のタイトルにもなっている短編小説「うつろ舟」は、
①滝沢馬琴の「兎園小説」にある「うつろの蛮女」と
②今昔物語の「天竺の天狗、海水の音を聞き、この朝に渡る語」の
2つから題材を得ているそうで、そのあたりについては先月の怒涛のような澁澤月間(と勝手に決めた)取り上げた「國文学」の澁澤特集号の中に古橋信孝という方の論文が掲載されており、それを読むとなるほどそうだったんだと頷くのでありました。
その論文には、うつろ舟が登場する部分について滝沢馬琴の原文と澁澤の小説が比較するために引用され、並置されているのですが、それはほとんど変わらずまるで現代語訳のようであるのです。強いて言えば、澁澤がうつろ舟をわかりやすく説明するために、その船の造形がまるでUFOのような形をしているという現代的な補足的な説明を付け加えていること。
全ての小説がそうではないにしても、部分的に澁澤の黒い眼鏡を通して引用していたのは、なんだとがっかりするのではなく、透明感あふるる形で甦らせていたことの新鮮さと感動をボクは憶えたのでありました。実際、澁澤のエッセイを読んでいると博覧強記ではあるものの、寺山修司のようにイメージが飛翔するということはないので、そのような形の方が澁澤らしく納得、という感じがします。
むしろ澁澤の知は西洋のみならず日本の古典にもおよび、しかもあまり知られていない(知らないのはボクのみか?許してください経済学部出身なので)題材をそれこそ摩訶不思議な、でも妙に胸に染み込む物語を起こしていたのが、ボクにとってはニッポン・チャチャチャという感じがして、とても良かったのですが・・・。
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TBありがとうございます。 旧石器人状態でブログを始めてしまって、まだTBをお返しできなくて・・・(泣)。 マスターした際には受け取ってやって下さいね!
澁澤氏のモノガタリと云うと、高丘親王航海記が何よりも好きです。作者自身と親王がオーヴァーラップされ、一言では云い切れない 好きさ加減です・・・。
TBぜひ返してくださいね。お待ちしています。
ところで澁澤の「高丘親王航海記」はまだ私は未読です。最後の最後に取っておこうと思っています。
またよろしければ見てやってください。