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福島・二本松の青い空の活動を紹介しています。

不登校・引きこもりの家族が越える5つの関門④

2016-10-29 | 日記
第4関門 「子どもの進む道は一人ひとり違う」ことを受け入れる

第3関門の子どもの感情を大切にして、常に自分の気持ちや態度を振り返る」ことができるようになると、親子関係はびっくりするほど改善していきますが、次に第4関門が待ち受けています。
それが進路問題です。なんとかここまでこぎつけて子どもとの関係も安定してきたものの、特に中学後半になると高校進学をどうするかが迫ってきます。
ケースワークの原則の出発点は「受容」にありますが、不登校でそれが難しいという大きな要因は、親御さんの「できるだけみんなと同じようにしてほしい」という気持ちがあるからだと思います。先生も進路指導の責任感もあって、なんとか高校に入れたいと考えます。
確かに、高校進学率が98%ですから、「高校に行くのが当たり前で、そこからはずれたら2%に入り、人生はおしまい」のように考えてしまいがちですが、本当にそうなのでしょうか。
このような恐怖とプレッシャーから解放されて、「十五の春はどこかの高校に行くという必要はないんだ」と考えるようになると、不登校の子どもやご家族も元気になって、親子関係が回復していくという話が多いのです。現実問題として、現在の「六・三・三・四」の教育コースに乗ったほうが安心ですし、不登校はそのコースからはずれるとみられますが、これを「はずれる」と考えるか「いろんな道がある」と考えるかで、将来の見通しは全く違ってきます。

現在は不登校の子どもを受け入れる高校も増えましたし、高校に行かずに高校卒業認定試験に合格して大学や専門学校に進む人もいますし、進学しないで様々な体験をしながら自分の道を探してもよいわけで、まさに「いろんな道」があります。確かに現在の教育システムでは不登校のリスクはありますが、「何がなんでも高校に行かなければ」と考えて子どもを追いつめるリスクに比べれば、不登校のリスクのほうがはるかに小さいと思います。つまり、「将来の安心」のために子どもが「今必要としている安心」を犠牲にしてはならないということであり、「みんながそうだから」ではなく、「自分にとって今何が必要なのか」を真剣に考えるほうが大切ではないでしょうか。

引きこもりについても、「とにかく働いてほしい」といっても無理で、かえって家族関係が悪化したり、本人の引きこもり状態を長引かせたりする場合もあります。ですから、まず「働いて自立する」というこちらの側のゴール目標をいったん横に置いて、もう少しゆっくりエネルギー補給が必要な段階なのか、いきなり就労ではなく緩やかな社会参加の仕方を考えたほうがよいか、時間をかけて診断や治療につなげて福祉的な就労支援制度を利用したほうがよいのか、一人ひとり状況が違うので、そこを考えることが大切です。

つまり、「人間は一人ひとり違うので、その違いを尊重しよう。こちらの発想や常識や価値観で相手を見たり判断するのはやめよう」ということです。
親には親の願いがあり、そのことを子どもに伝えることは親として当然のことですが、往々にしてそれが「押しつけ」になっていないか、よくよく振り返ってみる必要があると思います。子どもには子どもなりに一人ひとり違った、いろいろな道や可能性があり、まさに「個別化」の原則です。

(つづく)

不登校・引きこもりの家族が越える5つの関門③

2016-10-26 | 日記
第3関門 「子どもの感情を大切に、自分の気持ちや態度を振り返る」

第2関門「非審判的態度で受容する」をクリアしても、次の第3関門が待ち受けています。
何とか子どもを受容して親子関係が安定してくると、子どもはだんだん元気になってきて、表情が明るくなり、ゲームにこうじたり、テレビや漫画を見て笑ったりできるようになります。
すると今度は、そのくらい元気になったら学校へ行けるのではないかとか、せめて家では教科書くらいは開いて少しは勉強できるのではないかと考えるようになり、そんな子どもの姿にだんだん不満を募らせます。親の会でも「テレビを見て笑っている子どもを見るとイラッとする」とか「ゲームやネットに夢中になっている姿を見ると腹が立ってくる」という話をされる方もいます。

ケースワークではクライアント(この場合は子ども)が自分の悩みや気持ちを思い切り吐き出せるように最大限の配慮をすることがとても大切で、そのことでクライアントは心が軽くなり、気持ちを整理して解決の手がかりを得ることができます。語ること自体に大きな治療的効果がありますが、親は子どもの感情表現をふさいでしまうことがよくあるので、クライアントに接する人は自分の感情を自覚し吟味するという態度に心がける必要があります。
つまり、いま自分がどのような気持ちで、感情で、態度で子どもに接しているのかを常に振り返り自覚することをしないと、口に出さなくても、子どもに対する否定的な気持ちや感情は子どもに伝わり、子どもの感情表現を大切にすることができなくなります。いろんな相談場面で親御さんから「無理して学校に行かなくていい」と言っているのに子どもはさっぱり元気にならない、という話を聞きます。しかし、詳しく話を聞くと、確かに口ではそう言っても「学校に行ってほしい」というオーラが出まくっていて、子どもはそれを敏感に感じ取るので元気になるはずもなく、逆に「言っていることとやっていることが違う」という親への反発を強めたりします。まさに「目は口ほどに物を言う」です。

引きこもりの交流会でも、親御さんは「決して働くことを強制しているわけではなく、仕事について良い情報があるので、子どもに伝えたが反発する」と話します。子どもや当事者にとっては「指示や命令」にしか聞こえないという場合が多いです。
子どもや当事者の気持ちに余裕ができて、いろんなことを前向きに考えることができるようになっていれば効果的ですが、受けとる側にそのような準備ができていないときは、親の意図とは裏腹になり、逆効果になることを親の側では押えておいてください。

(つづく)

不登校・引きこもりの家族が越える5つの関門②

2016-10-17 | 日記
第2関門  「非審判的態度で受容する」

不登校になってから、親は「今はともかく休ませるしかない」と考えますが、その気持ちを維持するのはさらに難しくて、次の関門にぶつかります。それは、「今はとりあえず仕方ないとしても、いつまでもこのままでは困る。不登校の原因が分かって、それを取り除けば学校に行けるようになるかもしれない。引きこもりの原因が分かって解決すれば動き出してくれるのではないか」と考えて、一生懸命「原因探し」に走ります。
不登校の場合、親御さんや先生からも「不登校の理由を聞いても言ってくれないから困る」という話が必ず出ます。しかし、それは「話したくても話せない」、本人も「うまく説明できない」のが現実だと思います。そもそも「私はかくかくしかじかの理由で学校に行くのがいやになったので不登校します」と説明できるくらいなら不登校になるでしょうか。不登校の子どもが、最初に腹痛や頭痛などの身体症状に訴えるのは、言葉では説明できないので「これ以上無理して学校に行ったら自分がダメになる」と身体が信号を出して自分を守っている状態です。
ですから、このような状態について批判や注釈を加えないで、まして叱りつけて無理に連れて行くことは絶対にやめて、まずそのまま丸ごと受け止めることから出発する必要があるわけです。非審判的態度ということが重要になるのですが、「原因探しに走る」ことは、これに反することになります。

もちろん、不登校の原因を冷静にじっくり考えることは大切で、不登校のきっかけは大きく次の4つがあると思います。
一つ目は、「いじめ」がきっかけで不登校になることがとても多く、親も学校も不登校を「いじめがあるかもしれない」というサインとして受け止め、深刻化する前に対応できるチャンスを子どもが与えてくれていると考えていただきたいです。
二つ目は、学校での体罰が怖くて行けなくなるというケースの多いのですが、これは学校だけの問題ではなく、残念ながら日本では「しつけには体罰が必要」と考えている親御さんもまだ多いので、学校での体罰も見過ごしてしまいがちです。「いじめ」や体罰は重大な人権侵害であり時には犯罪にもなるという認識が必要ですし、こうした「いじめ」や体罰が背景にある場合は、当然子どもの安全を確保し、人権を守るという取り組みが必要になってきます。
三つめは勉強が分からなくなって学校に行くのが嫌になる。四つ目は友達関係がうまくいかず出づらくなって行けなくなることもよくあります。これらについては、一時的な場合もありますが、学習障害や発達障害といった子ども自身に何らかのハンディがある場合もありますし、その場合はいくら子どもを責めたり強い指導をしても何も解決しません。かえって状態が悪化しますので、その子どもに合った個別の支援が必要になります。

しかし、現実にはいろんな要因やきっかけが重なり合って不登校になりますので、原因は特定できない場合が多いのです。人間は自分にとって良いことが起きている場合に、しつこく「どうして?」と尋ねるでしょうか。焦って「原因探しに走る」のは、いま起きていることを自分にとって「良くないこと」「困ったこと」と考えているからなので、直接口に出して不登校を非難しなくても、原因探しに走ればそのこと自体が子どもに対して「不登校は悪いこと」「親や先生を困らせていること」だという親の気持ちをぶつけ、受容していないことになってしまいます。そのことで子どもはさらに苦しみ、お互いの関係が悪くなっていくという悪循環にはまっていきますので、冷静に原因を考えることはとても大切ですが、焦って「原因探しに走る」ことはマイナスです。

子どもが何か辛そうだったり問題を抱えていそうなときは、受容という関わりを抜きに信頼関係を築くことはできませんので、学校に行かないことを責めたり叱ったり、まして無理やり学校に行かせようとしたり、学校に引っ張り出すようなことは絶対にしないでください。そういう関わりをして一時的に学校に戻ることができたとしても、後々大きな問題となってしっぺ返しを受ける例があまりに多いですから、まずは親が一呼吸おいて、ゆっくり子どもと関わることが大切であり、周りのそんな親を「子どもを甘やかしている」とか「そんなことでいいの?」などと決して責めないでほしいと思います。
  
(つづく)