セントラル愛知交響楽団第100回定期演奏会に掲載させていただいたコラムです。
『指揮者』
【あなたは指揮者になりたいですか?】
日曜日の「題名のない音楽会」、
人気企画のひとつに、一般の人が指揮者になって棒を振るのがある。
みなさんご覧になったことがあるでしょう?
子どもから大人まで、個性豊かな指揮ぶりを見るのはとても面白い。
素晴らしく上手な指揮に舌を巻いたり、
腹を抱えて笑ったり、ウルウルきてしまうときもある。
総じて音楽に対する愛情に感激するのだが・・・。
みなさんは「指揮してみたい!」と思われますか?
あるアンケートでは、
男性がなりたい職業の上位にランクされるというのを聞いたことがありますが、
内気で恥ずかしがりのぼくにはとても難しい。
あの指揮台に立つことを想像しただけで気持ちが落ち着かない。
【内気なオジサンの妄想】
100人もの人が、楽器を持ってぼくを取り囲んでこちらを見ている。
(もうそれだけで、緊張!)
それぞれの人生感とそれぞれの音楽感をもっていらっしゃる方々がズラ~リ。
気弱なぼくは、200個の眼の注視に絶えられないと思う。
「さあ、あなたの合図でわたしたちは演奏を始めます。
あなたの望み通りに音楽を作り上げていきます。どうぞ指示してください!」
(くわばらくわばら・・・笑)
「そうでしょうか?・・・・・・・う~ん、
そこはぼくの考えとはちょっと違いますね~!
まあ、解釈はいろいろあるとは思いますが・・・・。」
(ええ~っ?どうしよう~?)
「それがあなたの生き方ですか?
今までいろんな指揮者と演奏をさせていただいたので、
そこに立たれただけで、あなたの人生がみんな見えるのです・・・・」
(ヒェ~!おそろしや~!笑)
オーケストラのプレーヤーを納得させるだけの音楽性を持ち、
なおかつ人の上に立って人身を掌握する才覚が要求される、
とんでもなく大変な仕事ですよね~?
【苦い思い出その1】
ぼくは、指揮にたいして苦い思い出がある。
高校の時にクラス対抗合唱コンクールというのがあった。
みんなに選ばれて指揮をやらされた。
曲は確か『夏の思い出』だったと思うが、
何十人もの人がこちらを見ているのが恥ずかしくて、恥ずかしくて、
本番の間じゅう同級生の誰とも目を合わせることができず、
うつむいたまんま機械的に手を振るだけだった。
そんな指揮で音楽がウマくいくわけもなく、出来はボロボロ。
終わってから、みんなにこっぴどく叱られた。
【苦い思い出その2】
演奏もしながらアレンジの仕事をするようになった若い頃の話。
一般的に、アレンジャーは録音に立ち会うことが多い。
ある仕事をしたときに、
安いアレンジ料に指揮料を上乗せをしてくれようとしたやさしいレコード会社があった。
「松田さん!録音のときに指揮すると1時間の指揮料もお渡ししますよ!」
指揮など出来もしないクセに、この話に食いついたのが大間違い!
スタジオ録音といっても、
ストリングスなどはクラシック・オーケストラの団員が来ていることが多い。
どうせ素人指揮者であることは一目で見抜かれるし、
「ドンカマ(テンポをしめすクリック音)に合わせて演奏するのだから
形だけ振ってればいいのだ!」
と、指揮棒など持たずに、そこにあったボールペンを逆さに持って振り始めた。
録音は順調に進んでいたのだが、
エンディングに近づいたとき何だか
「カチャカチャッ!」
と雑音が入ってしまった。
何と・・・・・・!
ボールペンの先っぽにあるはずのキャップが飛び抜けて、
コロコロとヴィオラの人の足下まで転がっていったのだ。
全員大爆笑!
ぼくは平謝り!
もちろん録音は、アタマから録り直し~~~~。フ~ッ。
【友人にリサーチ】
この原稿を書くにあたって、
某オーケストラでヴィオラを弾いている友人に指揮について聞いてみた。
「演奏中に棒はあまり見ないよ。
アインザッツ(セ~ノ~ッ的な音楽の開始の合図)は必要だけど・・・。
棒を見ながら合わせて演奏するというのではないよ。
何というか、体の各部分の動作、目の動き、ちょっとしたしぐさ、言葉など、
その指揮者全体からからにじみ出るものが僕たちを引っ張っていくのだと思うよ」(ウ~ン!なるほど~!)
「その人が練習場に入って来た瞬間からの立ち振る舞い、
いわば存在自体が指揮という行為と言っても過言じゃない。
もちろん曲をよくつかんでいるかどうか、
スコアーをよく把握しているかどうかというもの大切だけど、
それだけでなくその人の『人生』というか『年輪』が、ものを言うんだね」
(深イイ~話!)
「指揮者にもいろんなタイプがあるよ。
G氏の『春の祭典』などは、まるで猛獣!もの凄いエネルギーがあり、
われわれに伝える力が凄い!オケにふりかける魔法の粉を持っているみたいだよ。
H氏は、団員の中心人物と仲良くなるのが上手。また例えば、
チェロのトップに厳しい注文を出したりしてメンバーの中に緊張感を作り、
練習の集中力を高めるのがウマい。
Z氏は、棒は完璧。音楽も素晴らしいのだけど、
われわれオケの1人1人はがんじがらめにされているみたいで、
面白くないんだな~。
音楽って不思議だよ!
M氏はホントに細かく決まっている。
自分の思っていることと違うことをしたら、本番中でも叱ったりするよ。
いろんな指揮者がいるよね~!」
【ドラマ】
ウ~~~~ン!オーケストラの現場では、
我々が思いもかけぬ人生のドラマが繰り広げられてるのですね~。
さて今夜のステージでは、どんなドラマが展開されるのでしょうか?
『指揮者』
【あなたは指揮者になりたいですか?】
日曜日の「題名のない音楽会」、
人気企画のひとつに、一般の人が指揮者になって棒を振るのがある。
みなさんご覧になったことがあるでしょう?
子どもから大人まで、個性豊かな指揮ぶりを見るのはとても面白い。
素晴らしく上手な指揮に舌を巻いたり、
腹を抱えて笑ったり、ウルウルきてしまうときもある。
総じて音楽に対する愛情に感激するのだが・・・。
みなさんは「指揮してみたい!」と思われますか?
あるアンケートでは、
男性がなりたい職業の上位にランクされるというのを聞いたことがありますが、
内気で恥ずかしがりのぼくにはとても難しい。
あの指揮台に立つことを想像しただけで気持ちが落ち着かない。
【内気なオジサンの妄想】
100人もの人が、楽器を持ってぼくを取り囲んでこちらを見ている。
(もうそれだけで、緊張!)
それぞれの人生感とそれぞれの音楽感をもっていらっしゃる方々がズラ~リ。
気弱なぼくは、200個の眼の注視に絶えられないと思う。
「さあ、あなたの合図でわたしたちは演奏を始めます。
あなたの望み通りに音楽を作り上げていきます。どうぞ指示してください!」
(くわばらくわばら・・・笑)
「そうでしょうか?・・・・・・・う~ん、
そこはぼくの考えとはちょっと違いますね~!
まあ、解釈はいろいろあるとは思いますが・・・・。」
(ええ~っ?どうしよう~?)
「それがあなたの生き方ですか?
今までいろんな指揮者と演奏をさせていただいたので、
そこに立たれただけで、あなたの人生がみんな見えるのです・・・・」
(ヒェ~!おそろしや~!笑)
オーケストラのプレーヤーを納得させるだけの音楽性を持ち、
なおかつ人の上に立って人身を掌握する才覚が要求される、
とんでもなく大変な仕事ですよね~?
【苦い思い出その1】
ぼくは、指揮にたいして苦い思い出がある。
高校の時にクラス対抗合唱コンクールというのがあった。
みんなに選ばれて指揮をやらされた。
曲は確か『夏の思い出』だったと思うが、
何十人もの人がこちらを見ているのが恥ずかしくて、恥ずかしくて、
本番の間じゅう同級生の誰とも目を合わせることができず、
うつむいたまんま機械的に手を振るだけだった。
そんな指揮で音楽がウマくいくわけもなく、出来はボロボロ。
終わってから、みんなにこっぴどく叱られた。
【苦い思い出その2】
演奏もしながらアレンジの仕事をするようになった若い頃の話。
一般的に、アレンジャーは録音に立ち会うことが多い。
ある仕事をしたときに、
安いアレンジ料に指揮料を上乗せをしてくれようとしたやさしいレコード会社があった。
「松田さん!録音のときに指揮すると1時間の指揮料もお渡ししますよ!」
指揮など出来もしないクセに、この話に食いついたのが大間違い!
スタジオ録音といっても、
ストリングスなどはクラシック・オーケストラの団員が来ていることが多い。
どうせ素人指揮者であることは一目で見抜かれるし、
「ドンカマ(テンポをしめすクリック音)に合わせて演奏するのだから
形だけ振ってればいいのだ!」
と、指揮棒など持たずに、そこにあったボールペンを逆さに持って振り始めた。
録音は順調に進んでいたのだが、
エンディングに近づいたとき何だか
「カチャカチャッ!」
と雑音が入ってしまった。
何と・・・・・・!
ボールペンの先っぽにあるはずのキャップが飛び抜けて、
コロコロとヴィオラの人の足下まで転がっていったのだ。
全員大爆笑!
ぼくは平謝り!
もちろん録音は、アタマから録り直し~~~~。フ~ッ。
【友人にリサーチ】
この原稿を書くにあたって、
某オーケストラでヴィオラを弾いている友人に指揮について聞いてみた。
「演奏中に棒はあまり見ないよ。
アインザッツ(セ~ノ~ッ的な音楽の開始の合図)は必要だけど・・・。
棒を見ながら合わせて演奏するというのではないよ。
何というか、体の各部分の動作、目の動き、ちょっとしたしぐさ、言葉など、
その指揮者全体からからにじみ出るものが僕たちを引っ張っていくのだと思うよ」(ウ~ン!なるほど~!)
「その人が練習場に入って来た瞬間からの立ち振る舞い、
いわば存在自体が指揮という行為と言っても過言じゃない。
もちろん曲をよくつかんでいるかどうか、
スコアーをよく把握しているかどうかというもの大切だけど、
それだけでなくその人の『人生』というか『年輪』が、ものを言うんだね」
(深イイ~話!)
「指揮者にもいろんなタイプがあるよ。
G氏の『春の祭典』などは、まるで猛獣!もの凄いエネルギーがあり、
われわれに伝える力が凄い!オケにふりかける魔法の粉を持っているみたいだよ。
H氏は、団員の中心人物と仲良くなるのが上手。また例えば、
チェロのトップに厳しい注文を出したりしてメンバーの中に緊張感を作り、
練習の集中力を高めるのがウマい。
Z氏は、棒は完璧。音楽も素晴らしいのだけど、
われわれオケの1人1人はがんじがらめにされているみたいで、
面白くないんだな~。
音楽って不思議だよ!
M氏はホントに細かく決まっている。
自分の思っていることと違うことをしたら、本番中でも叱ったりするよ。
いろんな指揮者がいるよね~!」
【ドラマ】
ウ~~~~ン!オーケストラの現場では、
我々が思いもかけぬ人生のドラマが繰り広げられてるのですね~。
さて今夜のステージでは、どんなドラマが展開されるのでしょうか?