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ものづくりのための研究ノート028:STAP細胞とSTAP幹細胞とES細胞をもう一度整理したくなる事態に

2014-03-26 11:23:34 | ものづくりのための研究ノート
本日メディアが一斉に、若山先生のところにあったSTAP細胞(実際はSTAP幹細胞)の遺伝子解析の結果を報じた(以下参照*)。129由来のマウスから作成したはずのSTAP幹細胞が、実際はB6由来もしくはB6X129のF1マウス由来である。このことはSTAP細胞もしくはSTAP幹細胞の存在をダイレクトに否定するものではないが、限りなくSTAP幹細胞というものがES細胞なのではないかという疑念を抱かされる結果である(**)

疑問点としては次のようなものがあげられる。

1)若山先生のところにある129由来の「STAP幹細胞」(実際は違ったが)を作製した時に、B6もしくはB6X129由来のES細胞を彼らは持っていたのだろうか?

2)何をもってB6,B6X129由来と判断したのだろうか?B6=Oct4GFP遺伝子、B6X129=(CAGプロモーター)GFP遺伝子の存在であろうか?

3)実際にこれらのSTAP幹細胞=ES細胞であることをいうためには、コンタミしている可能性のあるES細胞の遺伝子解析(ポジコン)および全く関係のない細胞の解析(ネガコン)も同時に行って、二つが一致することを示さないといけない気がする。そこまでの解析はされているのだろうか?もしされていなければ、歩留まりに終わるかもしれない。(***)

4)昨日のブログでも述べたように、STAP幹細胞=ES細胞であることは、STAP細胞=ES細胞であるということ意味しない。Chip-seqのデーターからすると、B6X129由来のSTAP幹細胞はES細胞に近いが、STAP細胞はまた違った細胞の様である。これは彼らがNatureのレター論文で述べていることとも一致する。するとこのSTAP細胞はいったいなんだったのだろうか?CD45+細胞とES細胞が絶妙な配合比で混ざっているのということなのだろうか?

5)若山先生は以前「私はSTAPからSTAP-SCを複数回樹立しました。混入がその度に起こるなんてことは考えづらいです。さらに、私はSTAP-SCを129B6GFPマウスから樹立しました。その当時、我々はその系統のES細胞を持っていませんでした。」というコメントをされていた。これからすると若山先生は、B6X129由来のSTAP幹細胞も持っておられて、それが一番信頼性の高いサンプルではないかなと思う(その当時ES細胞がなかったので)。なぜそのB6X129由来のSTAP幹細胞を解析に出さず、129由来のよくわからないSTAP幹細胞を解析に出したのだろうか?

系統の違うマウスの実験が論文の中に、さりげなくちりばめられていて、怪しいということは指摘できても、完全に否定することはかなり難しい状況になっている。

今となっては限りなくSTAP細胞が実施にあるという可能性は低いと思うが、STAP細胞およびSTAP幹細胞という現象があるのか?ないのか?というところは、きちんと科学的に黒白つけてほしい(***)。ただ真実はなかなか見えてこない。

ちなみにB6X129のhybrid ES細胞ってあまりみないなとおもっていたけれども、MITのサイトによると、If you do not care about strain background for your mice, I strongly recommend using the 129/B6 F1 hybrid line called V6.5.とのべられているので、有用なES細胞株なんですね。tetraploid complimentationもこの系統でないとできないようです。不勉強でした。なんで、若山先生はB6X129の系統のES細胞を持っていなかったんだろうか?

(*)単純な間違いで、B6もしくはB6X129由来のSTAP幹細胞を渡していましたという逃げもできなくはないが、129系統のSTAP幹細胞はできなくて、B6もしくはB6X129由来のES細胞をつい渡してしまったのではないかと疑いたくなってしまう。ただ遺伝子解析だけでこの二つのどちらかの状況下いうのはかなり難しい気もする。

(**)大手メディアはどこも以下のような感じである。
もともと混乱する命名だったのだが、STAP細胞は長期培養できないので、解析に出したのは培養できるSTAP幹細胞である。このことは前からわかっているはずなのに、大手メディアは混同して伝えている。ちょっとわかっていたのはなぜかスポーツニッポンと毎日新聞。。
以下産経新聞と毎日新聞のサイトより引用。

保存細胞にも疑念 実験と別種のマウスと判明
2014.3.25 21:16 [先端技術](産経新聞より)

 理化学研究所は25日、小保方晴子・研究ユニットリーダーがマウスから作製したとしていた新型万能細胞「STAP細胞」のうち、2株の遺伝子を共同研究者が調べたところ、実験に使用しなかったはずの別の種類のマウスの細胞だったことが分かったと明らかにした。実験途中に何らかの理由で細胞がすり替わった可能性も浮上してきた。

 マウスにはさまざまな種類や系統がある。理研によると、共同研究者の1人の若山照彦山梨大教授は、小保方氏に129系統という種類のマウスを渡してSTAP細胞の作製を依頼。小保方氏はこのマウスの細胞を弱酸性溶液で刺激し、STAP細胞の塊を2株作製できたとして若山教授に渡したという。

 若山教授はこの細胞塊を凍結保存していたが、論文の画像不正疑惑などの問題を受け、改めて遺伝子を調べたところ、129系統ではなく、実験には使わなかったはずのB6とF1という別種のマウスの細胞だったことが判明。理研は若山教授から連絡を受け調べている。B6、F1、129系統のマウスはいずれも万能細胞の一種である胚性幹細胞(ES細
胞)の作製に広く使用されている。


STAP幹細胞:別マウスの遺伝子検出 山梨大の保存分

毎日新聞 2014年03月25日 21時58分(最終更新 03月26日 00時30分)より

 STAP細胞論文の共著者の一人が保管するSTAP細胞から作った細胞を簡易的に解析した結果、STAP細胞を作るため使ったはずのマウスの遺伝子のタイプが確認されず、別の系統のマウスしか検出されなかったことが、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)の関係者への取材で明らかになった。この細胞は、英科学誌ネイチャーで発表した論文には使われていないが、CDBはSTAP細胞の真偽を確認するため、論文に使った細胞を独自に解析する検討を始めた。

 解析したのは、STAP細胞から変化させて作った「STAP幹細胞」。iPS細胞(人工多能性幹細胞)やES細胞(胚性幹細胞)のように増殖する性質があるとされる。一方、STAP細胞の再現実験が研究チーム以外で成功していないことなどからES細胞の混入も疑われている。
 解析した細胞は、当時CDBに所属していた若山照彦・山梨大教授が、小保方晴子・理研研究ユニットリーダーに「129」という系統のマウスでSTAP細胞を作製することを依頼し、小保方リーダーが作製した細胞を基に作った。若山教授が山梨大へ移籍後も冷凍保管していた。

 STAP幹細胞ではSTAP細胞から変化後も、元のマウスと同じ遺伝子のタイプが確認されるはずだが、CDB関係者によると、山梨大が保管していたSTAP幹細胞2株を解析した結果、「129」ではなく「B6」など別の2系統のマウスが検出された。この2系統のマウスはES細胞の作製によく使われるという。

 若山教授は、この細胞などを第三者機関に送り、詳細な解析を依頼している。【須田桃子、八田浩輔、斎藤広子】

(***)本当に最初からだますつもりだったならば、こんなに安易な作為を最初からするだろうか?一部本当のことを話すというのが有名な詐欺師の手口の一つであるが、どこかに本当な部分があるのではないだろうか?この問題にずっととらわれている所以である。

(追記)2016年3月1日追記。
個人的にはもはや興味を失っていたのだけれど、未だにこのブログのSTAP関連の項目を目にされている方が多い様なので、追記しておく。

2015年9月24日同様の趣旨からなる論文をNatureが掲載した。

1報目"Failure to replicate the STAP cell phenomenon"はボストンを中心とした幹細胞分野の大御所たちのチームによるもの
2報目"STAP cells are derived from ES cells"は理研のグループによるもの

の二つで、1はほぼ全てのSTAPのprotocolを検証し、作成できないことを示すとともに、バイオインフォマテッィクスを利用してSTAP細胞とされていたものに、ESが混ざっていることを証明したもの、2もバイオインフォマティックスを用いてESのまざりを証明したものである。

STAPの論文は途中から基本的に無理筋な感じを呈してきたが、これで完全に決着がついた。残念ながら、おそらく誰かがES細胞を混ぜて虚構の細胞を作ったことになる(結局それが誰かわからないのであるが。。)。ただこの一件で日本のサイエンスに大きな傷跡が残り、一人の偉大な科学者を失ったことは悔やまれる。