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ものづくりのための研究ノート030:STAP幹細胞の遺伝子解析で理研プロトコール大丈夫?

2014-03-28 11:59:25 | ものづくりのための研究ノート
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2)何をもってB6,B6X129由来と判断したのだろうか?B6=Oct4GFP遺伝子、B6X129=(CAGプロモーター)GFP遺伝子の存在であろうか?

という疑問を投げかけた。

本日の日経バイオテクオンラインの宮田満さんのメルマガ(Wmの憂鬱、15年も続いたドラッグ・ラグを医師主導治験が打破する)で、ちらっと述べられていた情報でだいぶ謎が解けた。

なんでもSTAP幹細胞のゲノム解析の前の予備解析として行ったPCRで、GFPの入っている場所を特定し、マウスの系統が違うことがわかったらしい。つまりGFPのプロモーターの部分をターゲットに、ゲノミックDNAをPCRしたということのようだ(*)。

理研のSTAP細胞プロトコールによると C57BL/6 carrying Oct4-gfp(29 of 29), 129/Sv carrying Rosa26-gfp (2 of 2),and 129/Sv× C57BL/6 carrying cag-gfp(12 of 16)とある。 これからするとOct4, CAG,Rosa26配列をターゲットにPCRし、どのバンドがでるか見たのでしょうね(*)。Rosa26がでたなら129、Oct4ならB6、CAGならF1マウス由来というわけだ。この実験はすごく簡単なので(2日もあれば十分)、STAP幹細胞の存在が疑われた段階でこの実験はやっていてもおかしくはない。若山先生はあの記者会見をした段階で、すでやっておられたのではないだろうか?(**)

それはさておき 理研プロトコールの上記部分は、実際は

We tested the following three different genetic backgrounds of mice for STAP stem cell establishment from STAP cell clusters, and observed reproducible establishment: C57BL/6 carrying Oct4-gfp(29 of 29), 129/Sv carryingcc Rosa26-gfp(2 of 2), and 129/Sv×C57BL/6 carrying cag-gfp(12 of 16)

(我々は次のような異なる3系統の遺伝的バックグラウンドのマウスを利用しSTAP細胞塊からSTAP幹細胞が樹立できるかどうか検討し、再現性よい樹立が認められた:Oct-4-gfp遺伝子をもったB6(B57BL/6)(29分の29)、Rosa26-gfp遺伝子をもった129(129/Sv)(2分の2)、cag-gfpをもったF1(129/Sv×C57BL/6)(16分の12))

というSTAP幹細胞の樹立にかかわる部分の文章である。ここの129/Sv carryingcc Rosa26-gfp(2 of 2)でできたとされるSTAP幹細胞の2つが、実は今回のニュースでわかったB6とF1由来の細胞ということなのだろうか?もしそうなら、少なくともこのSTAP幹細胞の樹立効率に関する記述は訂正しないといけないんだろうな。。論文だけでなく、理研プロトールもどこまで大丈夫なんだろうか??理研プロトコールは出さない方がよかったというか、きちんとこのあたり検証してから出した方がよかったのではないか?

(*)inverse PCRでSQしたのかもしれないが、もっと簡単にFoward primerがOct4,Rosa26,CAGのC末付近、Reverse primerをGFPのN末付近で設定してPCRした?
この”Rosa-gfpマウス由来”のSTAP幹細胞でキメラマウスは作らなかったのだろうか?できてくるマウスの毛色をみればおかしいことが一目瞭然だと思うけれど。

ちなみに別系統だったということで、さらなる解析は不要と、もはやゲノム解析はされないのだろうか?個人的にはOct4-gfp&cag-gfpのES細胞と一緒にゲノム解析して、この怪しげな2種のSTAP幹細胞がES細胞なのか違うのかをはっきりさせてほしい。

(**)記者会見で若山先生の悲壮な顔が思い出される。それまで強気だったのに、急に主張を変えられたのは、こんな予備実験をされて、何らかの感触をつかんでおられたのではないだろうか?

(追記)2016年3月1日追記。
個人的にはもはや興味を失っていたのだけれど、未だにこのブログのSTAP関連の項目を目にされている方が多い様なので、追記しておく。

2015年9月24日同様の趣旨からなる論文をNatureが掲載した。

1報目"Failure to replicate the STAP cell phenomenon"はボストンを中心とした幹細胞分野の大御所たちのチームによるもの
2報目"STAP cells are derived from ES cells"は理研のグループによるもの

の二つで、1はほぼ全てのSTAPのprotocolを検証し、作成できないことを示すとともに、バイオインフォマテッィクスを利用してSTAP細胞とされていたものに、ESが混ざっていることを証明したもの、2もバイオインフォマティックスを用いてESのまざりを証明したものである。

STAPの論文は途中から基本的に無理筋な感じを呈してきたが、これで完全に決着がついた。残念ながら、おそらく誰かがES細胞を混ぜて虚構の細胞を作ったことになる(結局それが誰かわからないのであるが。。)。ただこの一件で日本のサイエンスに大きな傷跡が残り、一人の偉大な科学者を失ったことは悔やまれる。