中野剛志編による、自身と関岡英之・岩月浩二・東谷暁・村上正泰・施光恒・柴山桂太の七氏によるTPPについての批判的論考集。
2013年6月発行ということで、アメリカがTPPに加入することを前提として、アメリカ主導でTPPが強行されるという論調をとっているのは致し方ないところだろう。
しかし、トランプによってアメリカがTPPから撤退した今も、この書で展開される批判の眼目は古びていない。
つまり、TPPに代表される自由貿易の過剰なまでの推進は、つまるところ国家主権の切り売りにしかならないということである。
中でも重要なのはISD条項である。
岩月浩二氏が鋭く指摘するように、ISD条項は「憲法の根本原理である国民主権を外国投資家主権に変えてしまう」のだ。
氏はそれを「クーデター」と呼ぶ。
むべなるかな。
また、柴山桂太氏が
「事実、各国の通商政策の自由度が高く、国際的な資本移動の規制が強かった戦後のブレトン・ウッズ=GATT体制のほうが、国際経済は今よりも安定しており、経済成長率も高かった」
という指摘も銘記すべきであろう。
さて、では現在の視点から見ると、TPPとは誰が主導者なのだろうか?
これはよくわからない。
新自由主義者の国際的資本家といったところか。
(ディープステート? まさかね。そんな陰謀論)
アメリカが自国第一主義に舵を切り、早4年が経とうとしている。
イギリスはすでにEUを離脱した。
一見、日本は自由主義貿易を牽引しているように見えるが、果たしてこれはいいことなのだろうか?
今一度立ち止まって考えるのに、この一冊は一読の価値はあるだろう。