abc

news

[外交] 安倍政権の歴史観、独りよがりでは日本は孤立する

2012-12-20 | Weblog

安倍政権と歴史問題

日本の右傾化が内外で話題となる中、その空気を体現するように党内右派の安倍晋三氏率いる自民党が総選挙で圧勝した。安倍新首相の外交における重要なポイントは、前回と同様、歴史問題をどう管理するかだと思われる。

 ◇国際的公共益を念頭に外交を

 右こそ右を抑えられるといわれるように、首相時代(2006年9月〜07年9月)、安倍氏は信念の靖国神社参拝を自制し、小泉純一郎政権下で悪化した中韓との関係改善を果たした。今回、領土問題で再び中韓、特に中国との関係が最悪に陥る中で再登板するめぐり合わせとなった。

 前回のように巧みにさばいてほしいが、衆議院で公明党と合わせ3分の2を超える議席を獲得し、独自色を打ち出すチャンスと安倍氏が捉える可能性もある。ここで歴史問題全般に触れる余裕はないので、私が一つの懸念材料とみている従軍慰安婦問題を取り上げる。

 ◇河野談話見直し表明した安倍氏

 安倍氏は、この問題で「おわびと反省」を述べた河野(洋平)官房長官談話(1993年)を見直す考えを明らかにしている。「狭義の強制(いやがる女性を無理やり連行したこと)はなかった」とし、「これを正さないと将来の日本の人々に申し訳ない」という趣旨のことを述べた。

 私は以前、オランダで従軍慰安婦問題をかなり深く取材した。日本軍がオランダの植民地だったインドネシアを占領した際、オランダ人女性を慰安婦にした問題だ。

 安倍氏は従軍慰安婦に対して不特定多数を相手にした公娼(こうしょう)所にいた女性のイメージを抱いていて、貧しさなどから働くようになった人もいて「狭義の強制はなかった」と言いたいのだろう。

 しかし、女性たち全員が公娼所のようなところにいたわけではない。河野談話に基づいて95年に設立されたアジア女性基金は、韓国、台湾、フィリピン、オランダを対象に従軍慰安婦への償い事業を行った。オランダでは女性75人を従軍慰安婦と認定したが、中には日本人将校の愛人にされた人妻や、13歳の時に日本人将校に愛人にされ、子供を産んだ女性もいる。

 また当時、日本兵のホモセクシュアルの相手をさせられたオランダ人少年4人がいた。アジア女性基金はこの4人も従軍慰安婦のカテゴリーに認定し、女性と同様に福祉・医療費支援を行った。つまり従軍慰安婦といってもさまざまで、少女や少年もいた状況にあって、狭義か広義かの区分は意味をなさない。

「愛人にされた女性は本来の従軍慰安婦ではない」との反論もあろう。しかし今日、欧米は従軍慰安婦問題をすぐれて女性の人権にかかわる問題として捉えている。強制連行があったかどうかに関係なく、女性を嫌悪すべき状況に置いたこと自体を人権違反と捉えている。

 ◇独りよがりでは日本は孤立する

 すでに07年、米下院本会議で日本に対し、慰安婦問題で謝罪を要求する決議案が採択された。オランダ、カナダ、欧州連合(EU)も続き、同種の決議が議会で採択された。領土問題で国際社会の支持とりつけに走り回っている日本外交にとって、この二の舞いは大きな打撃である。

 最近の右傾化の空気で私が危惧するのは、国際社会の共通認識や価値観と乖離(かいり)したところで、独りよがりともいえる議論が時折、目につくことだ。これは個人的な心情や倫理観を位相の異なる政治の場で扱おうとする態度にもつながっている。

 米国のある識者は「右傾化によって、日本は短絡的な見方しか持てなくなっているように感じる」と指摘した。反中感情があおられ、長期的ビジョンを練る余裕がなくなっているというのだ。

 戦争の惨禍をアジアに及ぼした日本は二度と排他的利益を求めず、国際的な公共益に沿ったところで自国の国益を追求していくことを課せられていると思う。ドイツが機会あるごとに「ドイツの欧州にはしない。欧州のドイツになる」と言うのと同じ脈絡だ。

 政府開発援助(ODA)や国連平和維持活動(PKO)はまさに国際的な公共益に貢献しつつ、日本の国益を広げてきた格好の政策である。国際社会が日本に抱く好印象と高い期待も、国際的公共益を常に念頭においてやってきたことの結果といえるだろう。

 先の従軍慰安婦問題も女性の人権という公共益の中に位置付け、日本が主導権をとる形で解決できるはずだ。アジア女性基金というノウハウも持っている。国際的な公共益に背を向けるような「狭義の強制はない」といった主張は、日本を孤立させかねない。MAINICHI

 

参照:ブログ「日本政治の行く末(12)」

 ドイツと日本は第二次世界大戦で同盟国として戦い、無条件降伏した。だが、戦後の再出発は両国で大いに異なっている。ドイツはポツダム会議で米・英・仏・ソの4つの占領地区に分割され、独立国家としての存在が一時断絶した。日本は連合軍下におかれたが、幸運にも国家体制は存続することができた。

 ・ ところがドイツは、国の断絶という重い試練を課せられながら、かつての敵対国と融和をはかることに成功している。戦後67年の歳月が経ったが、いまなお、アジア隣国との間で過去の問題をかかえている日本とはあまりにも対照的だ。

 ・ドイツでも、過去を悔いて謝罪することには保守層が強く抵抗した。だが、ドイツ国民は「戦後のドイツ政権」と、対外侵略やユダヤ人撲滅をはかった「ナチス・ドイツ政権」との間を線引きして、自分達もナチスの被害者であると定義した。2005年の戦後60周年記念式典で、当時の首相シュレーダーが、「連合国による勝利はドイツに対する勝利ではなく、ドイツのための勝利であった」と演説したことからもうかがいしれる。そして被害者の歴史認識に立って、ホロコーストや侵略を否定せず、過去の罪をきちんと認めている。

 :大阪市長橋下徹は、尖閣諸島や竹島の問題に絡み「中国韓国が何を怒っているのか、しっかり過去の戦争を総括すべきだ。恨みを持たれてもしょうがないこともある」と述べたうえで、「日本人はアジアの歴史をあまりにも知らな過ぎる。今の日本の体たらくが、竹島、尖閣の問題に結び付いている」と強調し、問題解決には過去の歴史の再検証が不可欠との認識を示している。

続きを読む➝(クリック日本政治の行く末(12)


post a comment