安保法制の衆院特別委で意見陳述する宮崎礼壹・元内閣法制局長官

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安保法制の衆院特別委で意見陳述する阪田雅裕・元内閣法制局長官

6/23 集団的自衛権の行使容認を柱とする安全保障関連法案を審議する衆院特別委の参考人質疑に22日、元内閣法制局長官の阪田雅裕氏と宮崎礼壹氏が登場し、現長官が認める憲法解釈を「黒を白に変えるような主張」と批判した。国会での新旧の「法の番人」の発言を法制局に詳しい識者たちはどう見たのか。

「『黒衣(くろご)』に徹するのが美学の内閣法制局で、元長官が参考人に出てくるなんて、前代未聞。それだけ法治国家の『存立危機事態』だということでしょう」

15年以上、法制局を研究する明治大の西川伸一教授(53)は驚きを隠さない。現役時代は淡々と「金太郎あめのようにぶれない」答弁に徹し、退いたら多くを語らないはずなのに――。

「黙っていられないとの思いでしょう。2人は『政府』という言葉でオブラートに包んでいたが、言葉が後輩の横畠裕介長官に向けられているのは確かだ」

存立危機事態を巡って「私なりに善意に解釈すると」「論理的にまったく整合しないというものでもないと思います」と持って回った表現を使った阪田氏については「後輩の苦しい立場もおもんぱかりつつ、納得していないぞという態度を示していた」。宮崎氏については「できないものはできないと分かりやすかった」と評価した。

「法制局は法の番人であると同時に政府の法律顧問でもある。OBが野党と一緒に戦っているのを見ると隔世の感がある」と話す。

民主政権で法相を務めた元衆院議員、平岡秀夫弁護士(61)は「阪田さんは論理性を重んじ、宮崎さんは議論の経緯を重んじる。専門家の自負を持った人たちがあの場に出てきたのはよかったのではないか」と評した。平岡氏は内閣法制局出身で、阪田元長官の部下だったこともある。

維新の柿沢未途議員が質疑の中で、横畠長官について「政府の強弁を担う役割を果たすのは不誠実だと思うし、一方でお気の毒だなと感じている」と語ったことについて、平岡氏は「(横畠長官は)官僚、宮仕えの域を脱することができない人。政権には誠実だけど国民には不誠実。そういう意味で気の毒なのかもしれませんね」ととらえた。

横畠長官が19日の答弁で「フグ」や「毒キノコ」のたとえを持ち出したことについては「ウィットに富んでいるが、法理論を戦わせる場にはふさわしくない」と指摘した。

「法制局は政治との関わりから自立してきた役所なのに今は矜持(きょうじ)を失った」。平岡氏は古巣を嘆く。「違憲とされてきたことも押し通そうとする、何でもありの世界になってしまった」(以上、朝日新聞)