雨、14度、80%
福岡には昔から冬になると紅白の「酒まんじゅう」が出てきました。どちらがどちらか?粒あんとこしあんです。田舎からリヤカーを引いてくる野菜売りのおばさんの荷台にも紅白の「酒まんじゅう」がありました。和菓子屋さんでは蒸かしたてを買うこともできました。「酒まんじゅう」の美味しさはあの匂いです。麹の暖かな香り、大好きなおやつの一つです。
三十年も日本を留守にしていました。ちょくちょく帰ってはいたのですが、腰を据えて住み始めると日本の変化に気づきます。街中には「パン屋さん」が溢れています。「洋菓子屋さん」も小さな洒落たお店が多くなりました。ところが「和菓子屋さん」が姿を消しています。町の「和菓子屋さん」は急なお客様でお出しするものがない時、子供の私はよくお使いに出かけました。祝儀、不祝儀、頼めば大人数のお赤飯だって作ってくれました。季節季節の和菓子が並ぶ「和菓子屋さん」は朝早くから一年中、餡を炊く湯気が立っていました。何かとお世話になった街の「和菓子屋さん」が数少なくなりました。
コンビニに行けば、年中レジのそばに「酒まんじゅう」が置いてあります。福岡ですから紅白です。いつの頃からか「酒まんじゅう」を手に取ることすらなくなりました。おまんじゅう大好きです。薄皮の中から出てくる餡、蕎麦饅頭、破れまんじゅう。思い出せば亡くなった父がおまんじゅう好きでした。
先日、小さな小包を受け取りました。開けたら「酒まんじゅう」の匂いです。「おやつにどうぞ」と添え書きがありました。私がおまんじゅう好きだなんてどうして知っていたのかしら?どうも私の友人は洞察力の達人が揃っているようです。
いつものように「ありがとう。」の前に蒸し器を出してきました。一つだけ蒸しました。蒸してる間に「ありがとう、大好物よ。」とお礼を。
中は漉し餡がたっぷり、伏見の和菓子屋さんの「酒まんじゅう」です。温め直すと香りが一層たちます。その上、体も温まります。台湾の烏龍茶と一緒にいただきました。懐かしいお味でした。