私は、40歳を過ぎてから定期的に歯のクリーニングをしてもらいに、
歯医者に行くようになりました。
歯医者さんは苦手ですが、
クリーニングは痛くも辛くも無いので昨日も軽い気持ちで行ってきました。
白い歯~輝く白い歯~になるために。
いつものように、やってくれるのは歯科衛生士のお姉さん。
「では、イスを倒しますね。」から始まります。
こちらも勝手知ったるわけで、口を開けて待ちます。
当然眼は閉じて。
お姉さんに要らぬプレッシャーはかけたくありませんから、決して瞼は開きません。
そこからは、真っ暗な世界でお姉さんと息を合わせます。
お水が出ますよ。」というお姉さんの言葉を合図にシューゴーという音の中、
推定2種類の器具が口内に入って来ました。
一つは歯石を取る器具、もう一つは水や唾液を吸う器具らしい。
しかし、ゴソゴソしている、唇と歯の間に器具を潜らせる事に手間取っているらしく、
こちらはベロンベロンと何度も唇をめくられているのに、
一向に歯石取りを始められないお姉さん、(新人さんか?ぶきっちょさんか?)。
そんな中、お姉さんがついに伝家の宝刀を出した。
水や唾液を吸う器具で、私の唇を吸った。
それごと、唇をめくりにかかった。
そして、唇がちぎれるかも知れないと思ってしまうほどめくれた、
(うん、ある意味合理的~!いやマジか)。
そうなれば、お姉さんは息を吹き返したように削り出します。
しかし水分を吸う器具は、唇を吸う器具と化していますから、
口内の水と唾液は吸ってはもらえません、
(まずい溺れる、溺れ死ぬかもしれない)。
しかし乗りに乗ったお姉さんは削りに集中しています、
(こぼれてきた、ビショビショ感がハンパない)。
乗りすぎて無になったお姉さんは、お構い無しに続けます、
(痛い、痛いぞ、歯茎削ってね?無になってねーか?やけ起こしたか?)。
しかし、その痛さによって、皮肉にも溺れる恐怖が和らぎました。
そのお陰で乗り切れました、約15分、地獄の約15分。
「お口をすすいでくださいね。」というお姉さんの声で終了しました。
戦でした。軽い気持ちでやって来たが、なぜかどこかで厳しい戦となっていました。
すすいで出した水は、真っ赤に染まっていました。
本当に戦でした。
私は、すっかり濡れた顔や髪を拭きながら、やり遂げた笑顔でお会計に向かいました。
お会計のお姉さんは、私を2度見してお釣りをくれました。
私は、2度見されるほど白い歯になったと、自分頑張ったと、
自信をつけて美容院に向かいました。
うめさんも、頑張っている。
傾きながら、頑張っている。
もう、いいのだよ。横になったらいいのだよ。
美容院で、「前下がりの、おかっぱ」とオーダーするはずが、
「右下がりの、おかっぱ」と言い間違えました。
美容師さんが、「斬新!」と冗談で返し、お互い鏡を見て笑いました。
そしてお互い鏡を2度見しました。
歯が、真っ赤に染まっていました。
その後、お互いそこには触れず、普通に会話をしました。
普通に、歯が見えないように、普通に、腹話術で会話をしました。
新人さんなら仕方ない、ぶきっちょさんなら責められない。
ならば、お会計さん、教えてよ~!
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