まだ2月だというのに、
まるで、すっかり春のただ中にいるようで、
それはそれで、困るのだ。
おはようございます。
私が勤める会社の横道では、
畑の菜の花達が満開だ。
菜の花の花言葉は、「豊かさ、財産」だそうで、
それはそれで、全身全霊をもって、あやかりたい訳だが、
先日、その菜の花畑の前で、ドキッとする経験をした。
昼休憩になり、私は熟女さんの運転でコンビニへ出かけた。
戻ってくると、細い道に1台の車が停車していて通れない。
なんなんだ?と思っていると、
初老の男が急いで車に戻って来た。
しかも、猫を抱いて車内に戻ったのだ。
「ねえ、あの人、猫を捨てようとしてたんじゃない?」
熟女さんが、そう言った時、私も同じことを思っていた。
捨てようとしたが、車が来たから、一旦諦めて車に戻ったのではないかと。
男の車は、横道へ逸れたので、熟女さんの車は、
会社へと戻ったのだが、どうにも気になる。
私は、買い物袋を持ったまま、車を飛び出し走った。
あいつ、ぜってー、おかしい。
ぜってー、あの猫を捨てようとしてる。
私は走りながら、様々な事を考えた。
まずは叱らねばならないが、連れて帰れとは言えない。
貰い受けるしかないだろう。
白黒の猫だったが、どんな性格の子だろうか?
オスか?メスか?
我が家に馴染めるか?いや、どうやって馴染ませていこうか?
よし、家を準備するまで、まず、うちのジジーとババーに預けちゃえ!
猫を貰ったら、今日はすぐ帰っちゃうぞ~。
社長~、社長様~、ごめ~んね!
菜の花畑に近づいてみると、やはり、あの車は戻ってきていた。
そして、同じ位置に停車していた。
私は物陰に隠れて、男の前に飛び出すタイミングを見計らっていた。
すると、男は、リードを付けられた白黒猫を抱いて出てきた。
行くか?
もう行ってもいいか?
男は、ついに、猫を菜の花畑の前に置き、
柵の杭にリードを引っ掛けた。
今だ!
一気に飛び出したと同時に、男は、ようやく言葉を発した。
「こっち見て~」
ん?と私は踏み込んだ右足を踏ん張り急ブレーキをかけた。
「可愛いよ~。こっち見て~。いい子だね~」
何してんの?
ああ、カメラ持ってるわ。
ああそうか・・・
ああそういうことね・・・
あぁぁぁ~右の膝、痛いーーー!
私は、急ブレーキをかけたせいで、
負荷がかかった右膝の痛みと、安堵とか、なんか色々な感情が相まって、
力が抜けて、崩れ落ちたのだった。
おじさん?可愛く撮ってあげてちょーらいな。
君たちは、浮かない顔ですな。
あの子はね、どうも撮影にも慣れてる感じだったよ。
よく、お父さんとお出かけして撮ってもらってんだね、きっと。
あぁぁ、良かった~。
白黒が3匹になったら、わし、もう判別つかなくなるからね。