うめと愉快な仲間達

うめから始まった、我が家の猫模様。
犬好きな私は、チワワの夢を見ながら、
今日も癖が強めの猫達に振り回される。

タンポポを咲かせた猫

2024年03月01日 | チャー坊のこと

去年の今ごろは、

タンポポが咲いていたのに。

 

おはようございます。

今年はまだ、タンポポが咲かない。

それは、チャー坊がいないせいかもしれない。

去年の今頃は、今年より寒かった気がするが、

道端には、ちらほらとタンポポが咲いていた。

 

3月は、タンポポとチャー坊だ。

 

風が冷たすぎる日、

私とチャー坊は太陽の光が集まる場所を探し回った。

「ああ、ここならあったかいな、チャー坊?」

太陽の光が集まる場所には、いつだってタンポポが咲いていた。

野良暮らしが長いチャー坊は、そんなこと知っていたのだろう。

君は、数え切れないたくさんのことを知っていたのでしょう?

 

チャー坊には、

厳しさと苦しさと孤独を引き換えに得た、命を繋ぐ智慧が

ぱんぱんに詰まっていた。

体はボロボロだったくせに、智慧で生き抜いてきたチャー坊は、

私が出会った猫の中で、もっとも堂々と立っていた。

そして、それと同じだけ優しかった。

その強さと優しさは息を吐くたび広がり、辺りを清らかに癒した。

タンポポさえ、チャー坊が咲かせたのかもしれない。

そう思わせる猫だった。

 

そんな猫のくせに、チャー坊は私に何かを問うてきた。

まるで命がけの強い意志を感じた。

それが何かが、私には分からなくて、

だから私は、必死でそれを探していたんだ。

太陽が集まる場所がどこなのかさえ知らない私に、

君ほどの猫に、どんな答えを出せるのだろうか。

 

私は今でも、それを考えている。

私は、チャー坊の問いに答えられたのか分からない。

ただ、君の知らなかっただろうことを一つだけ、

伝えてやれたと思う。

チャー坊、抱っこする?

 


思い出振り返る。

2024年01月15日 | チャー坊のこと

来た!

来た来た来た!!

ポンまま作うちの子カレンダー。

今年は、愉快な仲間達ではなく、

チャー坊とたれ蔵のカレンダーを作って頂いた。

1月は、チャー坊だぁ。

 

私がチャー坊と出会ったのは、寒い2月だった。

彼は、枯れた草の上で寝ていた。

「チャー坊!」

名前を呼ぶと駆け寄ってくる彼は、まるで飼い猫みたいだった。

そのくせ、被毛は酷く汚れ、体中傷だらけだ。

さぞや危険な状況に置かれてきただろうに、

彼はいつだって悠然としていた。

そんな野良猫に、私は毎日、

「ねえ、チャー坊?

どこへも行かないで、お願いよ。また、明日!」

と縋るように約束をするようになった。

 

そして、私はついに、彼の家を会社の車庫内に作った。

車庫の奥に捨てられていた段ボール箱だ。

「こんな箱に入ってくれるだろうか?」

私は気後れしたが、彼はスルッと入り、嬉しそうに私を見た。

それなのに、私が立ち去ろうとすると、彼は急いで箱から出てきた。

「寒いんだから、中に入っておいで。また明日来るから。」

毎日、私が立ち去る度、彼は私を途中まで追いかけた。

私がくるっと車庫へ戻ると、彼は踊りながら箱へ誘った。

私と彼は毎日、何度も踊りながら箱へ戻った。

 

チャー坊は淋しいという感情を持っていた。

猫には淋しいという感情が無いと聞くが、

「そんなの嘘だ。」

彼は、私と共に生きることを望んでいた。

それを痛感しながらも、私は彼を車に乗せて連れ去ることを躊躇っていた。

「チャー坊、家の中ってね、

貴方が大好きな陽だまりの草むらも、爪を研ぐお気に入りの木もないのよ。

香しい風も、果てしない青空も、自由に歩く道も無いんだよ。

飼い猫になるってことは、そういうことなのよ。」

 

2023年、3月19日、この日は日曜日だった。

チャー坊は、車庫にはいなかった。

私は嫌な予感がした。

数日前から、彼は食欲を失っていた。

まさかと思い、私は大きな声で叫んだ。

「チャー坊!どこ?チャー坊!!」

彼は、車庫から逆の方向からゆっくり歩いてきた。

けれどこの時は、

悠然とではなく、必死に足を引きずるように歩いてきた。

もうご飯など食べられる状態ではなかった。

それでも彼は、「また、明日」の約束を守った。

「チャー坊、明日まで待って。準備するから。

いいかい、チャー坊?貴方の生活がガラッと変わっちゃうからね。」

 

次の日、

彼の生活は、本当に一変した。

 

テレビにビビりながら、

それでもやっぱり、「チャー坊!」と呼べば、

彼は籠城するソファーの下から出てきて、踊っってくれた。

これがなんと、飼い猫初日のことだった。

私は、まだまだチャー坊に驚かされていく。


サクッと大型連休

2023年12月29日 | チャー坊のこと

サクッと、入りました!

 

おはようございます。

毎年恒例の大型連休に入りました。

今日から10日間、私はいっさい家から出ません。

 

という訳にはいかない。

せっかくの大型連休中、私は毎日、出社することになる。

下手すると、朝晩2度の出社だ。

訳を知らない人に見つかったら、

「おまっ、どんだけ会社が好きなんだよ?!変態か?」

と思われちゃう。どうしよう・・・。

だからといって、その人に訳を言うのも憚る。

野良猫に餌をやりに行く訳だから、ちょっと言いづらい。

 

弊社の、あるドライバーが、ここ最近、

「あいつ、やっと馴れてきた。俺の帰りを待ってるし、

おい、ご飯食べるか?って言うと、にゃって返事するようになってきたもん。」

と浮かれていた。

あいつとは、この界隈で生きる生粋の野良猫だ。

ボランティア団体の中では周知の『ママちゃん』だ。

警戒心が非常に強く、日常の行動さえ把握が難しい雌猫がゆえ、

TNR(地域猫化する)の網に、どうやっても引っかからない。

そんなママちゃんに一目ぼれした、一人の男がいる。

それが、弊社のドライバーだ。

苦節1年で、ようやく、ご飯を差し出すことを

ママちゃんから許されたという訳だ。

 

けれど、大型連休に入る2週間前から、ドライバーは、

「連休中、あいつのこと、どうしよう。

でもさ、来てやらないと可哀想だよね?

てか、俺が気になって仕方ないし。通うか・・・来れん日どうしよ?」

と、いちいち私に聞こえる音量で呟くようになり、

1週間前から、

「おかっぱさんも気になるでしょ?気になっちゃうよね?」

と、言葉を投げかけるようになり、

最終日、

「さぁ、おかっぱさん?連休中、一緒に頑張ろう!

ちなみに明日は俺、ゴルフだから来れんじゃんね。」

と、言いやがった。

ちなみに、私とママちゃんの関係性は、いわゆる赤の他人だ。

ママちゃんからすれば、知らぬ人間のカテゴリーだろう。

ただ救いは、餌場が固定されている点だ。

弊社の車庫内に餌場を設けているから、

馴れない人間でも、こそっと置き餌してやればママちゃんは後で食べる。

 

ちょっと待って!

凄く切ない餌やりじゃん?

あたし、あの野郎の影武者かよ?!

 

という訳で、私は今日から毎日、出社することと相成った。

あんの野郎めが来る来ない関係なく、ママちゃんには餌を置いてやろう。

ああ、あのコンチクショウに言い忘れた。

「餌があっても、ちゃんと会いに来てやんなよ。

ママちゃん、あんたを待っているんだからさ。」

そう書いて、伝言板でも置いておこうか。

 

弊社の車庫は、チャー坊も住んでいた場所だ。

そして、実はチャー坊が弊社に住むようになったキッカケを作ったのは、

ママちゃんなのだ。

ママちゃんがチャー坊を連れてきた。

体にハンディのあるチャー坊は、ママちゃんと共にいることで、

生き延びていたのだと思う。

ママちゃんは、いわばチャー坊の恩人ならぬ恩猫なのだ。

 

そういえば、

私がチャー坊をさらった次の日、

畑を歩くママちゃんを偶然見つけて、私は叫んだ。

「ママちゃん、チャー坊、うちにいるから。大丈夫だからね。」と。

そして、チャー坊が逝った次の日も、

なかなか出くわさないはずのママちゃんと、また出くわし、

その時は、静かに声を掛けた。

「ママちゃん、チャー坊逝ったよ。」

 

この連休中、

ママちゃんとチャー坊の思い出話ができたらいいなぁ。

 


煙は掴めない

2023年09月25日 | チャー坊のこと

お彼岸になると、

彼岸花はちゃんと咲くんだから偉いもんだ。

 

おはようございます。

意地悪な防草シートの合間からだって、

いつの間にか咲いている。

 

チャー坊と別れて、2か月が過ぎた。

心に着いた焼き跡は、今だ燻り続け、煙が立ち込めているのに、

たった2か月前の感触が、煙のようにぼんやり消えていく。

私は、その煙を必死に探そうとして、空を見上げている。

あの苦しくて愛おしかったいチャー坊との日々を留めておきたくて、

今だに青空に乞うように泣く。

私は、せめて泣いていたいのだ。

もう逢えないのなら、せめて泣いていたい。

そんな気持ちになるのは、初めてかもしれない。

 

「チャー坊、またね。」

この約束を、君は一度も破らなかった。

一度くらい破ってくれたら、私は君を諦められるだろうに。

罪な男なのよ、君は。


そろそろ、終わり

2023年08月18日 | チャー坊のこと

「終わっちゃった。」

そう呟いたら、ひとりでに涙が零れ落ちた。

 

おはようございます。

それは大型連休のことじゃない。

もちろん来週の月曜日も、

「連休終わっちゃった。」と呟いてさめざめと泣くに違いないのだけれど。

泣こうが足掻こうが、何事も終わりはやって来る。

しみったれた記事を書くのも、そろそろ終わらせなければならない。

ただ、あくまで記録として書き残したいことがある。

昨日で、全て終わったということだ。

 

5月から借りていたアパートの一室を、管理会社へ返した。

手続きの書類に『退室する理由』という項目があり、

私がどう書こうか悩んでいた時、

部屋の状態をあちこち調べていた管理会社の社員が、

「ほとんど、使っておられなかったようですね。」

と声を掛けてきた。

私は書類から目を離して、

「本当は保護した猫と暮らすつもりでしたが、

その猫をここへ移す前に死んでしまったんです。」

と説明をした。

 

チャー坊との二人きりの暮らしは、夢のままで終わった。

私は、それでよかったと思っている。

チャー坊はどう思っていたか分からないけれど、

頑固ジジィの観察眼に見守られ、

どういう訳か、気の合うボケたババァとの暮らしは、

私からみれば、馴染んでいるように見えた。

チャー坊でなければ、ああはならなかったと思う。

 

頑固ジジィは結局、最後までチャー坊を触らなかったし、

チャー坊も触らせようとはしなかった。

ジジィは、

「俺はいつか、そうだなぁ・・・。

2年後には俺にべったりな、もうなんなら布団で一緒に寝るくらいの

関係にしてみせる!」

と野望を抱いていたが、チャー坊は、

「僕とジジィは、ライバルだから!」

と言いたげだった。

そのくせ、チャー坊は腹が空く時に限って、ジジィにご飯をねだるという、

かなりチャッカリした行動に出ていた。

いつも小皿に何某かを盛って差し出してくれるババァにではなく、

本当に何か食べたい時は、かならずジジィに向かう。

 

ババァは、自分が食べて美味いと思った時、チャー坊に、

「お前も食うか?」

と自分の食べ物を小皿に盛って差し出していたが、

豆菓子や煎餅、ホウレン草のお浸しは、チャー坊の好みでは無かったらしい。

それでもチャー坊は、ババァから差し出される小皿には口を付けないまま、

「うん、ババァありがとう。」

と言わんばかりに、ババァに自身の体を触らせてやっていた。

そんな時、ジジィは決まって、見ないふりをしていた。

背中を向け、ババァへの対抗心と野望をメラメラと燃やしていたのだろう。

 

クーラーの利いた涼しい部屋であっても、

チャー坊が

「外を見たい。」

と言えば、頑固なジジィでも、ボケたババァでも、

クーラーを掛けたまま、迷わず窓を開けてやっていた。

ババァは時々、網戸も開けてしまっていたが、

チャー坊は決して、外へ出ようとはしなかった。

そのくせ、よく玄関前に陣取っていた。

それを聞いた私は、

「外へ出ないように気を付けて欲しい。」

とジジィにお願いしたが、ジジィは大丈夫だと笑った。

「こいつは、お前を待っとるんだ。

とにかく、こいつはお前のことばっかり考えとる。

そりゃもう憎らしいくらい、お前のことばっかりだ。」

ジジィは、私に対しては負けを認めていたようだった。

野望は消えなかっただろうけれど。

 

だから、アパートを使わなかったのは、良かったと思える。

時々、様子を見に行っていただけの一室だから、

何の思い入れもなかった。

ただただ、家賃がドブに流れていくだけだったはずなのに、

それがようやく終わった途端、

「終わっちゃった。」

と呟いたら、どうしようもなく淋しくなった。

 

とっくに逝ってしまっているのに、

その時ようやく、チャー坊はもう居ないという事実に直面した気がした。

どれだけ泣いても、チャー坊に会えば、それが救いだった。

どれだけ病に苦しむチャー坊であっても、生きてさえいれば救われた。

けれど今、どれだけ泣いても、もう救いはない。

終わっちゃったんだ。

自分の涙は、いつか、自分で終わらせなければならない。

 

ただ、私は知っている。

泣けば泣くほど、どれほどの幸せを味わったかを思い知らされる。

この涙は、悲劇じゃない。

幸福の証なのだということを、私は知っている。

 

どうしようもなく愛しいと思えた時、

人間は涙を流す生き物なのだ。