昨夜はさすがに暑くて、
クーラーをかけて寝ることにした。
目覚めると、待ちに待った土曜日が始まった。
「今日は確か、午前は歯医者だった。
でも本当は、美容院に行きたいんだよな~」
そう呟きながら、診察券を確認すべく老眼鏡をかけたら、
予約欄に、30日13時と書いてあった。
「そうだ、今回は予約を午後からにしたんだった。
美容院に朝イチで走れるじゃないか!」
私が通う美容院は、予約ができない。
その代わりに、若干お安いのだ。
それがゆえ、髪を切りたい人々によって、
開店前に先を争うレースが繰り広げられるのが慣例となっている。
とくに土日のレースは熱い。
少しでも早く散髪を済ませて、残りの休日を有意義に過ごしたい。
そう考えた選手たちの1位狙いのレースはし烈を極めるのだ。
「よっしゃ、いっちょ走りますか」
私はアキレス腱のストレッチをしながら、
今回のレースのイメージトレーニングをしていた。
そして、スタート!
このレースのスタートは、極めて静かでさりげない。
せっかちな選手の第1歩がスタートの合図だ。
駐車場に停められた車から、続々と選手たちが飛び出した。
そして、すでに車から降りていた私の作戦が功を奏し、
晴れて1位となったのだった。
髪型は、もちろん
「おかっぱにしてください」だ。
私は眼を閉じて、美容師に身をゆだねた。
どれ程の時間が経っただろうか。
うつらうつらしていると、
「お客様?」という声がして、目を開けてみたら、
鏡に映る、ジャンボ尾崎カットの私がいた。
頭部は角刈りで、うなじ部分はなぜか、切る前より伸びている。
すだれのように垂れる襟足の髪に、
私は思わず「涼しげやな~」と発してしまった。
その軽はずみな発言が、「OK」のサインとみなされ、
私は支払いを済ませて、店を出された。
なぜだ?
なぜ?
なぜなの?
おかあさーーーん!
私はきびすを返して店に戻った。
受付の店員は、
私の襟足のすだれに負けず劣らぬ涼しげな顔で
「今からですと、午後1時にお取りできますが」
と、のたまった。
ちょっと待って!
無理じゃん・・・
いや、諦めちゃだめだ。
こうなったら、別の美容院に飛び込もう。
そして、私は歯科医の近くにある、
1軒の美容院に飛び込んだ。
「助けてください。
お願い、たすけ・・・て・・・」
倒れこんだ私は、そのまま意識を失ったようで、
気が付けば鏡の前に座らされていた。
そして、後頭部のあたりから
「お客様?これでいかがですか?」という声がした。
あかんがな!
襟足のすがれに、パーマかかっとるがな!
お転婆な、マリーアントワネットか!
助けて~
誰か、助けて~
叫び続けていると、
「おかっぱちゃん?どうしましたか?」と
肩を揺する男の声がして、
私は、ようやく夢から醒めたのだった。
おはようございます。
今日は金曜日なんですね。
まず、その点にガッカリですが、
金曜日なんだから、会社へ行こうと思います。
よねさんや?
よね「いってらっしゃーい」
はい、いってきます。
うんこは?
うんこさん?
うんこ「らっしゃい」
おい、おたま!
おたま「・・・・い」
いい夢、みろよ。