とにかく強烈な作品
『パフューム』
“香り”に関わる仕事をしているせいで、
内容も知らずそのタイトルで惹かれてしまったけれど、
このサブタイトルがある通りとんでもない殺人の物語だった。
物語はある殺人者の死刑が発表されるシーンで始まる。
そのむごたらしい刑に何もそこまでしなくても・・・
とつい同情的な感情を持ってしまうけれど
彼が起こした殺人がいかにむごいかがわかると
全く見方も変わってくる。
まだフランス革命が起こる前のパリ。
この作品によると当時のパリはかなりの悪臭にまみれた街だったらしい。
この辺りの映像も、直接臭いを伝えられない分かなりグロテスク。
パリ市民がこんな劣悪な環境で暮らしている時に
ベルサイユでは貴族達がやりたい放題では
市民も革命を起こしたくなるだろうと、妙に感心。
とにかくそんな中で生まれた一人の男の子。
生まれてすぐに捨てられ、社会の底辺で生きる彼には
どんな臭いも嗅ぎ分ける特殊な能力が備わっていた。
ある時町で惹かれた一人の女性の香り。
この香りに魅せられてから、彼のとんでもない人生が始まってしまう。
とにかく香りと言う香り、匂いに貪欲。
けれどあの女性に出会ってしまったがために
香りは永遠ではない事を知る。
香りを逃がさない方法を求め師となる調香師の元でその方法を探り続ける。
この師というのが白塗りのダスティン・ホフマンだと分かった時には驚いた!
その目的のためには、手段を選ばない。
彼には物事の善悪も常識も無かった。
そしてついにその方法を見つけてしまった。
それが恐ろしい殺人の物語の始まり。
究極の香りを作り上げたクライマックスのシーン。
その香りが持つ信じられないパワーが見事に演出されているけれど
正直、かなり唖然。
よくもまぁ撮影したもんだと監督の技に参りました。
実はこの監督私の大好きな『ラン・ローラ・ラン』の監督でもあった。
なるほど、至る所にカメラワークの面白さと
映像では伝えられない香りを見事に表現していた。
全般かなりおどろおどろしいけれど
途中、香りに関する参考的なシーンもある。
バラの花びらから精油(エッセンシャルオイル)を抽出する
「水蒸気蒸留法」。
すでに当時から行われていたのかと妙に感心。
そしてついに知ってしまった「アンフラージュ法(冷浸法)」
無臭の動物の脂肪に香りを移す方法。
これがまさか、まさかの・・・
それに香水が生まれたゆえんについて。
学校で習ったのが、元はイタリアで革の加工をする時に
強烈な悪臭がするため、それを隠すために生まれたと聞いた。
それがフランスに伝わっていったのだと。
確かにこの作品中でも、
皮のなめしで相当な臭いを放っていそうな事がわかる。
この言われももっとものように思われる。
とにかく最初から最期まで強烈。
天才と狂人は紙一重。
まさにそれを実証するような映画です。