カツオくんはかもめ第三小学校5年3組&『まぐろ袋ブログ』

どうもこんにちは、富田林薫(とんだばやしかおる)です。
遠洋マグロ漁船乗りです(ぇ?

少年と海と月夜の夢!そして空!高く!高く!君は飛び立つ。

2004-07-01 13:50:53 | Weblog

月夜だった。
少年は見た。
マンタが空を飛ぶ姿を!
海面よりジャンプ!
そして、力強く胸ビレを羽ばたかせながら鳥の様に上昇していく姿を。

「夢だったのだろうか?でも、確かに見たと、、、、、思う、、。」



東京育ちの少年がこの島に来たのは理由があった。
母親の療養のためである、胸に病がある母親は空気のよいところで療養をする必要があった。
地方の空気の良い山の方でも良かったのだが、母親が海の近くが良いと言うので家族全員でこの島に引っ越してきたのである。
でも、少年は東京を離れたくなかった。
たくさんの刺激、仲間、あそび、ゲーム、テレビ、そんな環境から離れたくなかったのである。

だから、島に来て一ヶ月たつが、いまだに島の子供たちともあまり仲良くなれない、独りでいつも海を眺めてすごす日々であった。

刺激に慣れているのでこの島の生活は暇で暇でしょうがなかった。

しかし、あちこちブラブラしていると結構この小さい島も楽しみがあることに気がついた。
その一つが、海沿いの磯近くにある洞穴だった。
不思議な空間である、潮が満ちると隠れてしまい、引き潮の時にしか現れないのである。
そして、引き潮の後に中に入ってみると、海の忘れモンの宝庫であった。
ヤドカリ、ヒトデ、ウミウシ、昆布、そして、たまには潮溜まりの中に逃げ遅れた小さい魚達。
独りでそこに入り浸っては見たことも無い海の生物達におどろき、楽しみ、驚異したのであった。



ある暑い満月の夜、少年は暑苦しくて眠れなかった。
そして、ふと、あの洞窟に行ってみようと思い立った。
外に出ると、満月がほんわかとした辺りを照らす。
「夜は夜でまたなんか不思議な生き物がいないだろうかな?」などと考えながら歩を進めていった。

そして、洞窟、真っ暗で何も見えない、、。
「しまった、懐中電灯でも持ってくれば良かったんだ。失敗したなあ~、これじゃ何も見えないや。」
ぼやきながらも、目を凝らして何かいないかなと探す少年。
「あっ!キレイな貝だ!うん!これはいいもん拾った!きた甲斐があったね!」
そんな風に、よく見えないながら、あちこちと歩き回り探し回った。


そして、どれ位時間が経ったのだろう?


少年がふと気づくと、足元に海水が・・・。
「あれ?満ち潮??」
いつもは、満ち潮の時間をちゃんと考えてこの洞窟に入ってきている少年であった、が、今夜はそんな事考えないで長居してしまったようだ。
満ち潮は、あっという間にやってくる、すでに洞窟の入り口は海水で隠れ始めている。
「しまった、入り口が、、。入り口が、、。出られなくなっちゃう。」
と思うまもなく、激しい波が少年を呑み込む。
「あぅっ、、だれか~助けて~!!」
叫ぶのもつかの間、その声は波にかき消されてしまう。
「あぅっ、、息が、、息が、、できない、、。」
そして、ふっと、少年の意識が、遠ざかりそうになる、、、、。
、、、真っ暗、静寂、水、、、、。


と、その時であった。
もう既に海面下になってしまった洞窟の入口から巨大な黒い影が高速に近づいてきた。
既に意識を失いかけている少年を背中に乗せて出口へと急ぐ。
そして、静かに海面へと浮上する。


「君!君!大丈夫!しっかりして!」
黒い影が、、なんと!声を発し少年に話しかける。
「えっ?何?誰?僕に話し掛けてるのは?」少年が気が付く。
「俺だよ。君の下にいる。いや、君が乗ってるって言う方が正しいかな。」
「えっ!」
慌てて自分が捉まっている黒い影の正体を確認しょうとする少年。
「あっ!マンタ!」
「正解!そして君は俺が飛ぶ姿を見たはず。」
そう、少年を救ったのは、少年が夢か幻かと思っていた、あの空飛ぶマンタだったのである。
「あっ!あれって夢じや無かったんだ!」驚く少年。
「そうだよ、夢じゃないよ。」
「でも、でも、何で僕を助けてくれたの?それに、なぜ空が飛べるの?それに、なぜ言葉が話せるの?」
「あっはっは!そんなにいっぺんに質問しないでおくれよ、答えられないじゃないかあ~ぅ。」
「あっ、ごめん」

そして、少年が口を閉じ落ち着いたところを見計らって、マンタは話し始めた。

「じゃ、最初の質問から答えようか。実は俺は君を監視してたのさ。それは君が俺の飛ぶ姿を見たからね!君が、、誰かにその事を話したら、、俺こまるからね。今夜もそうだった。洞窟に向かったから外の海でまってりゃいいやと思ってね、外でフラフラ泳いでたのさ。もっと早く気が付くべきたったね、洞窟の入り口が満ち潮で塞がれるのが気が付かなかったんだよ!もう、こうやって助けるしかなかったのさ。」
「えっ?よく判らない?」
「ゆっくり説明するよ。次の質問、なぜ空が飛べるかって、、。俺たちマンタは全て空が飛べるんだ。なんでかって?、そう、実は俺たちはこの地球の生き物じゃないんだ!」
「えっ?何?何?じゃ宇宙人??」
突然の予想外の答えに、更に、どう?理解していいのか判らない少年であった。
「そう!その通り!宇宙人です、、。俺たちは地球から300万光年離れた、しし座星雲アプラット星系第4惑星ファラットから来たんだ。あっそんな事言っても判らないね、、。とにかく、その星はメタンの海の星だったんだ。そこで俺たちの先祖は文明を築き生活していた。メタンの海の中で飛びながら生活していたのっさ!でも、でもね、今から2億3千年前にね、、その星は大爆発してしまったんだ。俺たちの先祖はその星を飛び出しこの地球に流れてきたんだよ。そして、この海の中を新しい生活の場所にしたんだ。だから空も飛ぼうと思えば飛べるし、人類の言葉も話そうと思えば話せるのさ。でも、それらは当然だけど禁止されててね、でも、俺どうしても飛びたくてさ、、。誰も見てないと思ったんだけどね~。偶然、君がそれを見ていたって訳さ。」
と、詳しく説明されても、ますます??判らない少年ではあった。
「あの、え~、、でも、、ア~、、そうなの??・・でも、そんな大事な事、僕なんかにしゃべっちゃっていいの??」
「そうだね、、、、でも、ずーと君を観察していたらしゃべっちゃっても大丈夫かな?って思ったのかな?君はいい子だからね!それに、マンタが空飛んで、言葉も話すなんて事、、実際に目の前で見なきゃ誰も信じないよ!」
「そう、そうだね・・・・。あの~、、ほんとに空飛べるんだね?何処まで飛べるの?トビウオみたいに滑空するだけ?」
「うううん、そんなことはないよ、何処までも、空高く、宇宙まで飛べるよ!そうやって、俺たちの先祖はこの地球にたどり着いたのさ!」
「ホンと!じゃあさ!お願い!僕を乗せて飛んでよ!空高く!空高く!」
「う~ん、、こうして話しできるのも、最初で、最後になるかもしれないね~。だから、飛んであげるよ!しっかり捉まっていてね!」


そう言うとマンタはスピードを上げ、、海からジャンプした!!

そして、力強く胸ビレを羽ばたかせると空へと飛び立った!!

上昇、上昇、少年を背に乗せマンタは月の夜に飛び出していく!!


「すごい!!ほんとに飛んでる!島が、島が、あんなに小さく!」
「どうだい?マンタがほんとに飛んでる感想は?」
「うん!すごいよ!すごいよ!」
「さて、何処まで行こうかね??」
「そう!あの月まで~!!!」




満月の夜!

マンタが空飛ぶ南の島!




-完-

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