フルート吹きの物思い

趣味のフルートと、それに関わるもろもろのこと。

トレジャリー

2005-09-11 | 吹奏楽、管弦楽&アンサンブル団体
数週間後に、オーケストラで弦のセクション練習がある。通称セク練。

弦のセク練の日は、管楽器の人はお休みというのがなぜか普通になっている私の楽団。多くのアマチュア管弦楽団がそうであると思うのだけれど、管楽器セクションに比べて弦楽器の方が「弾けない」場合が多い。人数もそろわないので初心者でもなんでも入ってきて欲しい。その救済のために、専門家による特別クリニックを設けている的な意味合いがあるのだと思う。

ところが、事務局であるトロンボーン氏が、今回は同時に管セクもやりたいと、管インペク(インスペクター。管楽器セクションのパートリーダーのようなもの?で、練習関係を仕切るはずの役職。吹奏楽ではあまり聞かない)の私に言ってきた。本番が近いから、管楽器奏者がサボる日を作りたくないのだそうだ。

管セクで何をやりたいのかというと、トレジャリー 注1)はどうかという。お互いの音を聞きあう練習をしたいと。

さすがはトロンボーン奏者である。トロンボーンは、木管楽器と違ってほとんどいつもチームワークで仕事をする。コラールを美しくびしっ!と決めることこそが生き甲斐な、協調性の高い人々が集まるパート。

それに比べて、木管楽器(除くFg)の人々は自分のソロをいかに気持ちよく吹くかしか考えていない、心の狭い人々の集まりだ。 (^_^;)
木管楽器のチームワークとは、和声や和音進行をキレイに決めることじゃあなくて、お互いの楽器間のメロディーの掛け合いをキレイにつなげていくこと。縦の重なりじゃあなくて、横のつながり。

このへんが吹奏楽と管弦楽の木管パートの、びみょーに意識の異なるところだろうと思う。

なので、和音の練習をするトレジャリーなんてかったるくてとんでもない! 心の狭い私はそう思ってしまう。
だって、トレジャリーのような練習って苦痛じゃない?? (効果的な指揮者であれば別)

そこで、なんで苦痛なのか考えてみた。(主に吹奏楽の場合)

・基本的にフルートのような弱小な楽器は音が消されてしまっている。他人の音は聞こえても自分の音は聞こえない。
・一つ一つの和音が合うまで次のコードには進まないというような練習方法をとられてしまうと、他の無神経な奏者にいつまでもつきあわされる。お互いの音をよく聞く練習なら、4人前後の少人数で練習した方が絶対いいと思う。
・音程が合わないからと、ハーモニーディレクター注2)で爆音を出されることが。前の方にいるフルートとしてはうるさくてしょうがない。
・金管楽器のウオーミングアップにつきあわされているだけ感がどうしてもぬぐえない。意味もなく長く吹かせる指揮者がいると、脳死状態になる。

むむぅ・・・・・・・・・・・・
ただ単に、私がそういう基礎練が嫌いなだけとも言う (>_<)

改めてトロンボーン事務局氏の、心の広さに感心したのであった。まじで。

   ・・・ 本文おわり ・・・


注1)トレジャリー
トレジャリーとはよく吹奏楽の合奏練習のウォーミングアップに用いられるもので、ほんとはトレジャリー・オブ・スケールズというらしい・・・・・・

トレジャリー・オブ・スケールズは、「正しい調性感を得ること」「耳を鍛える事-聴音の練習」「イントネーションを確立すること」という3つの目的のために試みられた、優れた音階教本です。全体は指導者用スコアと36の楽器別パートから構成され各々16小節から成る96の音階練習が収められていますが、これらには全て異なった和声付けがなされています。24の長調、短調の音階が全ての楽器を演奏できるよう、独特のグループ編成が考えられています。

・・・・・・・なのだそうだ。

似たようなものとして 3D というのもあり、私の吹奏楽ではよく使う。

・・・・・・
3-Dハンド・ブックは、楽曲練習に入る前の予備的な練習のための教材です。最も成果をあげることのできるアプローチの方法を3つの違った次元から提案します。全体は「チューン・アップとウオーム・アップ」「調の練習」「リズムの練習」の3つから成り、特に「チューン・アップ」と「ウオームアップ」は楽曲の練習をスムースに進めていく上で最も重要な部分です。また、この本の初めには、「調の練習」の<音階のテクニック>と<コラール>をより効果的に練習していただくため<ハーモニーの基礎練習>と<耳のトレーニング>とがあります。先生の説明をよく聞き、各部分を確実に身につけるようにすると、日々の成果が見違えるように向上し、しっかりとしたテクニックを持って楽曲練習に入る事ができるようになります。
・・・・・・


注2)ハーモニーディレクター
合奏で指揮者が使うために開発されたメトロノーム機能付きキーボード。こいつら音程悪いなーと思ったら、これを使って「正しい音」を奏者に指示することができる。単なるキーボードと違うのは、平均律だけではなくて、純正律で使えるところ。
例えばドミソの和音を最もキレイに響かせるためには、ミの音を平均律で定められた音程よりもやや低めにとる必要があるが、ハーモニーディレクターでは実際にこのやや低くとったミの音(=純正律のミ)を使って正しい和音を出すことができる。
このような機能を利用して、指揮者がいかに自分が音楽理論に通じているかを楽団員や生徒に対して誇示するために利用される。

音程と和音、テンポに特化した機械であるため、「音色」という大切な概念がずっぽりと抜け落ちている。爆音としかいいようのない無機質な音が練習会場内に鳴り響くのは、はっきり言って迷惑としかいいようがない。

楽器のレッスンについたことのある人ならわかると思うけど、この音を出しましょうと言って、いつもチューナーから出る無機質な音を聞かされてから吹くのと、先生の楽器から出る美しい音色と響きを聞いてから吹くのでは大違いである。きれいな音色の先生の門下生は、みんなきれいな音が出る。上手な生徒ほど、先生に似た演奏をする。この音程を聞けと言われて、音程だけを聞くことはできない。アタック、音色、響き、ブレス、その他サウンドの全てを聞くのである。ハーモニーディレクターが「乱用」されると、奏者の未来に大きな影響があることは疑う余地がない。特に、中高生に向かって凡庸な指導者が使用するなんてとんでもないと思う。
ハーモニーディレクターは、優秀な指導者によって使われれば、非常に練習を効率的に進められることも確か。使用には資格認定試験を実施したらどうかと思う。