「灰色」
『暴言騒動の森脇処分は灰色決着で良かったのか?
対象となるのは、14日のアルビレックス新潟戦(デンカビッグスワン)と20日の清水エスパルス戦(埼玉スタジアム)。処分の通達を受けて、レッズは公式ホームページに淵田敬三代表取締役社長と森脇の謝罪コメントを掲載。さいたま市内のクラブハウスでは森脇本人が取材に応じ、あらためて謝罪している。
問題の騒動が起こったのは、アントラーズの1点リードで迎えた後半33分過ぎだった。レッズ陣内の左コーナーフラッグ付近でボールをキープしようとするアントラーズのMF土居聖真に、レッズのDF槙野智章とFW興梠慎三が激しく体を寄せる。
松尾一主審が土居のファウルを宣告した直後に、興梠が土居を突き飛ばしたことで両チームの選手たちがエキサイト。アントラーズのMFレオ・シルバ、キャプテンのMF小笠原満男、FW金崎夢生、鈴木優磨が興梠に詰め寄るところへ、反対側の右サイドにいた森脇が遅れて駆けつけてきた。
その直後からレオ・シルバと小笠原が突然激昂。一触即発の状態となるなかで小笠原をレッズのGK西川周作が必死に制止し、森脇は味方のDF那須大亮から叱責されるように騒動の輪から引き離された。試合後の取材エリアで、小笠原は掴みかからんとばかりに激怒した理由をこう説明している。
「レッズの森脇選手がウチのレオ・シルバ選手に対して『くせえな、お前』という言葉を発したことが、どうしても許せなくて。立派な言葉の暴力だと思うし、差別ととらえられてもおかしくない」
続いて姿を現したレオ・シルバも「非常に悲しいこと」と神妙な表情を浮かべたが、森脇本人は差別的な言動は一切していないと全面否定する。もっとも、口論になった際に小笠原のツバが顔にかかったために、頭に血がのぼった末に「口が臭いんだよ」と言い放ったことは認めていた。
規律委員会は日本サッカー協会(JFA)の競技及び競技会における懲罰基準に照らして審議を重ね、最終的に森脇の行為が「他の競技者、その他の競技に立ち会っている人々に対する侮辱」に相当すると判断。今回の処分を決めたが、森脇に「臭い」とされた対象が小笠原、レオ・シルバのどちらなのかは特定できなかったという。
疑いをもたれる状況がそろっている以上は、たとえば那須や、試合後に小笠原に対して「彼(森脇)はいつも僕に対してそういうことを言う」と、昨シーズンまで4年間プレーしていたアルビレックス時代でも同様の言動が繰り返されていたと明かしたレオ・シルバにも、真相解明のためのヒアリングを実施すべきだったのではないだろうか。
国際サッカー連盟(FIFA)は2013年5月の総会で、「反人種差別・差別に関する戦い」を決議。加盟する各国協会に対してガイドラインを提示し、これを受けたJFAも同年11月に規定を整備。Jクラブをはじめとする加盟団体に対しても周知徹底させている。
翌2014年3月8日に埼玉スタジアムで行われたレッズ対サガン鳥栖で、レッズのサポーターグループの一部男性が『JAPANESE ONLY』と書かれた横断幕を、ホーム側のゴール裏スタンドのゲート入り口に、ピッチとは反対方向へ向けて掲出した。
Jリーグ側は横断幕が「日本人以外お断り」を想起させる、差別的な行為であると認定。けん責と現時点でもJリーグ史上で唯一となる、無観客試合の開催という制裁措置をレッズに課した。不適切な横断幕の掲出を把握しながら撤去できなかったレッズに対しても、村井満チェアマンは「クラブ側も差別的な行為に加担したことになる」と厳しい態度を取っている。
さらには、2010年5月15日のベガルタ仙台戦で、元北朝鮮代表のMF梁勇基に対して数人のサポーターが人種差別的な発言を行い、けん責と制裁金500万円が科されていることもさかのぼって問題視。こうした体質が改善されなければ勝ち点の減免やJ2への強制降格も視野に入る、とまで村井チェアマンは踏み込んで言及している。
だからこそ、過去の事例と照らし合わせても、今回の処分決定に至るプロセスには中途半端な思いを禁じえない。スタジアムからの差別撲滅を至上命題として掲げている以上は、騒動を引き起こした真相がわからないままの灰色決着は、日本サッカー界全体のイメージをもダウンさせかねない。』
※これはきっちりと答えを出さなければいけないこと。で、それをしないのは最低!