『悲情城市』
台湾 1989年
監督: ホウ・シャオシェン
出演: トニー・レオン、シン・シューフェン、リー・ティエンルー、チェン・ソンヨン
アジアシネマ通の友人から、<侯孝賢・李安 研ぎ澄まされる前の、豊潤なる才能>@シネマート六本木で上映されているから、是非観るべしと勧められた作品。
しかも、数あるトニさん作品の中でもこのトニさんは 「絶品」 とも言うし、そして、この作品をフィルムで見られる機会はもうあまりないかもとも言われ・・・。確かにもうフィルムがボロボロでした。
上映時間 2 時間 40 分。1989 年ベネツィア国際映画祭金獅子賞受賞。
長けりゃいいってもんでもないとか、冠がついた作品には裏切られたことが何度もあるので期待しちゃいけないとか、そんなことを思いながら、劇場へ足を運びました。平日夜の上映にもかかわらず、狭いシネマート六本木 Screen 2 は、ほぼ満席。
イビキかいて寝ていた人もいたけど、涙した人もいて。
これがですねー、私の好きなタイプの話でした。1945 年の終戦~日本統治からの開放~ニ・ニ八事件~国民政府による台北の臨時首都制定と、混乱の台湾の 4 年間が、ある家族を通して描かれています。
160 分間、タルいと思うことはありませんでした。歴史・社会的背景の基礎知識がないと分かりづらいのと、人間関係が少し複雑で(字幕には相関関係があまり反映されていない)ちょっとややこしく、時間軸も前後したりする場面もあるのですが、最後にはちゃんと筋が通ります。
さらに、台湾の民主化を先導した李総統の就任直後に、この映画が公開されていることを考えると、この作品にイデオロギー的な側面があることは否めず、そういう素材・要素は映画祭でのウケがよく、高く評価されることも承知しています。それでも、やっぱり人間を描いた作品って力強い と思いました。
価値観の変動や社会の騒乱は、登場する家族にも影響を及ぼし動揺させますが、わざとらしくドラマチックに盛り上げようとせず、常に冷静な視点が存在しています。
それは、たとえば、映像では、台湾の田舎の風景を定点でじっと見せたり、音をかき消して沈黙の場面があったりと、緩急、動静のメリハリがあるといいましょうか。また、これは、トニさんが耳の聞こえない青年という設定であることと関係あると思うのですが、耳の聞こえない、音のない世界に住む青年の目に映ったものが理解できるような気がしました。
見終わった後の心にじわじわと押し寄せてくるものがあるのですが、それは一体何なのか、分かったつもりでも分かっていないようで、言葉で表せません。
そして 20 年前のトニさん、美しいです(今も美しいですけど)。
何にそんなに感動したのか、ストーリーも実はもうよく覚えてないのですが、トニーレオンの表情とか、畳の部屋とか、病院の入り口のカットとか、いくつかのシーンをいまだに鮮明に覚えている不思議な映画です。
lotusrubyさんの記事をみて急に再見したくなりました。でもこれそんなに長尺の映画だったんですね。
>畳の部屋とか、病院の入り口のカットとか
よく覚えていらっしゃいますね~。全然派手なセットじゃないのに、何気なく描かれているようで、実に印象深いシーンだったりしますよね。
>そんなに長尺
はい、長いですけど、次から次へと様々な話が入り組んでいるせいか、時間の長さが感じられませんでした。お時間のある時にでも、是品再見なさってみてください。
やっぱいいんだ・・・。
聖地に行った時チラシもらってきて
「観たいなぁ~」って思っていたんだった。
ご紹介ありがとうです。
もう終わってたらDVDで観ます。
こういう社会派ジャンルに抵抗がなければOKかと。
私はこの作品に盛り込まれているドラマ自体が好きです。濃厚で重たい話と話の間に、気の利いたお口直しが挿入されている構成も好きです。
一昨年台湾に行ったけど、行く前に見ておけばよかったと思った作品でした。