一応翻訳者のはしくれなので、字幕翻訳にもちょっと目を向けてみた。
映画のみならず、異なる言語を理解するには翻訳という作業が必要となる場合がある。
言語自体の成り立ちや言語構造からして、一方の言語から、他方の言語へ、全て完全に伝えることは不可能なことは、身をもってわかるし、誰だってそんなことはわかっている。
どれだけ原語に近い意味、ニュアンス、状況を正確に別の言語に訳すことができるかが、翻訳者の腕の見せ所になるわけだ。
しかし、字幕翻訳となると、さらに、字数制限という、とんでもない足枷をはめられる
人間が目でみて理解できる文字数は、1秒間に4文字。
1画面に表示する文字数は、1行13文字。
当然すべてのセリフを制限文字数内で訳すことなど不可能
それじゃ、たとえば英語のセリフ全体のどれぐらいの割合が、日本語に訳されているのかといえば・・・
なんと、約3分の1 残りの3分の2は、バッサリそぎ落とされていると考えていいみたい。
あるいは、訳された3分の1の中に、残りの3分の2の微妙なニュアンスや雰囲気を織り込むという、途方もない作業を字幕翻訳者は強いられているらしい。
例えば・・・
"I think that Mr. Lee Byung-hun is the best actor in Korea.” というセリフ。
直訳→ わたしは イ・ビョンホンさんが韓国で最高の俳優だと思うの
(26文字 スペースと中黒は字数に数えないのがキマリ)
もし、このセリフの制限文字数が 8 文字だったら
字幕→ イ・ビョンホン 最高!(8文字 感嘆詞は字数に数えないのがキマリ)
となったりする。
ひぇーっ 同じ翻訳でも、当方は実務翻訳で、こんな字数制限に縛られることなく、とっても幸せだと気づいた。
訳されるセリフの割合は英語→日本語の場合なので、韓国映画にもそのまま当てはまるかどうかわからないけど、おそらく似たようなものじゃないかな。ということは、残り3分の2の Brian のセリフは理解していないことになる。
うぇーん
映画には、たまにどうしても理解できないところがある。「甘い人生」を10回見たけど、どうしても、よくわからないところがあった。これって、残り3分の2に隠されているような気がした。
でも、それは字幕が悪いのでなく、原語を理解できない自分が悪いわけである。
だからって、やっぱりハングルに燃えちゃう? ちょっと、遅すぎるかぁぁ
翻訳ってホント奥が深い。