(Image source: nkino)
放置していたDVDのひとつ『かわいい(귀여워)』(2004年 監督:キム・スヒョン)
出演:チャン・ソヌ、キム・ソックン、チョン・ジェヨン、イェ・ジウォン
あちこち検索をかけたけれど、この作品に関しては、2005年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭に招待された際のレポートぐらいで、日本語で書かれたレビューとか感想というのがほとんどなく・・・問題作だったから、誰も見ていない?(笑)。
公開当時のCINE21のレビュー( link to)はかなり良くて、チョン・ジェヨンの演技なぞは「これまでで最高の演技」と絶賛されている。確かに難解(というべきか?)な作品の中で、明快なキャラをカッチリ押し出しているところはさっすがぁー(これはファンの欲目)。でも、ジェヨンに限らず出演者の皆さんは、オフビートでシュールなツボもしっかり押さえていたように思う。
それよりもこの作品全体に流れる異様な(笑)空気というか、テーマというか・・・
とにかくこの作品の印象は、「シュールな無国籍映画?」だったので、当時の韓国でのレビューなどを読むと、喧々諤々だったことがわかり、やっぱりねと思った。映画の途中で席を立って帰る観客も多かったとか。
だってシュールな上に、扇情的だし、オフビートで流しているけれど、その辺を笑いとばせないと腹立たしいだけだ。その上、価値観とか倫理観が、歪んでいるのか、純粋なのか、混沌としている。この家族が住む家自体、「混沌とした無国籍な」心象そのものを表しているように思える。
3人の腹違いの息子とムーダンの父(チャン・ソヌ)が、ある日次男が拾ってきた女性スニ(イェ・ジウォン)をめぐって繰り広げる話。父親も、長男(キム・ソックン)、次男(ソヌ)、三男(チョン・ジェヨン)もスニに何かしらを求めるのだけど、男と女にはなりきれず。純粋なのかバカなのかわからないスニの言動に振り回される。男たちが求めるものを知りながら、スニの反応はいつもいたって冷静・・・
お父さん役のチャン・ソヌ。この方、以前少し触れたけれど、『品行ゼロ』のチョ・グンシク監督の師匠でもあり、特に性の問題を世間に投げかける社会派・問題作を提供した監督で、この作品ではやっぱり弟子のキム監督に無理やり引っ張り出されて、演者として出演。
さて、三男役のジェヨン。冒頭いきなり、パンツ一丁でポンポコお腹丸出しで出てこられると、こちらはどこに目をやればよいのか(汗) なんだか、マンテク(『私の結婚遠征記』)とは別の意味でちっーともカッコよくないところがね ローカルなヤクザ役なのだけど、ソファに座ってバナナを食べている姿がキヨウォ。
「少年性」、「オトナになれないオトナ」、「家父長制度に対するカウンターイデオロギー」など男と女のあらゆる視点やら、キーワードでこの作品を紐解く clue はいろいろあるのだけど。結局、女1人をめぐる男たちには妄想の世界しかなくて哀れな気もするし、女は単に男たちの癒し的存在でしかない。男と女のリアリティがほとんど感じられない。
そして「かわいい」のは女でなくて、どうも男たちらしいというのは分かるようで、だんだん朦朧として分からなくなる(笑)。
ラストで、ジェヨンがひとり体当たり&頭つきで、古いアパートをなぎ倒して崩壊させるシーンがあり、「そんなバカなっ」て設定でもそれは理解できるのだけど、ガラガラガラと崩れたあとに残ったのは、女の笑顔だけって・・・うーん、それはよくわからない(笑)。
私の脳みそもドロドロと崩壊していくようで・・・
前評判は知っていたので、DVDを購入する気がなく、韓国文化院の視聴覚ルームでみました。なんとも不思議な作品です。出ている役者も個性派揃いだし。
私のお目当てはジェヨンの舎弟分で後半に○○をしでかすヤクザを演じたパクヒスンでした。「家族」同様、怖い役です(笑)。
>なんとも不思議な作品
そうですよね。不思議を通り越していたような(笑)。ジェヨンが出てなかったら見てないと思います。全体的に各人物設定が濃いので、キャスティングも必然的に濃かったようで、それはそれで面白いと思いました。キム・ソックンは演劇肌だなと思ったら、やはり数々の舞台を踏んでいた俳優さんだったのですね~。
パク・ヒスン目当てでしたか。スエちゃんの「ファミリー」未見なので今度チェックして見ます。