Addicted To Who Or What?

引っ越しました~
by lotusruby

『光州 5・18』

2008-05-16 22:29:06 | K-Movie Notes


『光州 5・18』
原題:화려한 휴가 (華麗なる休暇)
監督:キム・ジフン
出演:キム・サンギョン、アン・ソンギ、イ・ヨウォン、イ・ジュンギ、パク・チョルミン


各所で拝読したレビューでは、感傷的という意見を見かけたので、泣かせる映画だろうとは思っていたけれど、私は見終わって、泣くというよりはまず 「怒り」 がこみあげてきた。これも一種の感傷か(笑)。

韓国だけでなく日本を含め多くの国で、かつて同じ国の人間同士が武器を手に取り殺し合う歴史を経験しており、今なお進行形の国もあると思うけれど、「権力」 や 「独裁」 に魂を奪われてしまった人間というのは、どうしようもなく愚かだということだ。

愚かであることがわかっていてもなお追随する人間の愚かさも罪深くて。
ともあれ、(自分を含む)愚かな人間に対する 「怒り」 がもし映画の狙いだとしたら、私はものの見事にツボにはまったことになる。

作品としてどうだったかというと、これがちょっと・・・

「はい、ここで泣いてください」 「はい、笑ってください」 というあざとさが見え見えで引いてしまった。

笑ってください という場面では、パク・チョルミンのお調子者キャラに、おそらく劇場内の観客のほとんどが引いていたのではないかと思う(推測)。誰一人笑うどころか、身動きひとつせず、しらーっとした空気だった。映画全体を振り返ると、重さ・暗さの中の和みを担当しているのは分かるのだけど。

泣いてください という場面は多すぎて、涙に含まれる悲哀の濃度がだんだん薄くなっていくような気がして、結局何が一番悲しかったのか、泣いたっけ?と実感がわかない。

個人的に一番良かったと思えた俳優は、主役のキム・サンギョン。できれば危ないことにまきこまれたくなくて平穏無事に暮らすことを望む一市民という役どころ。平凡で実直なキャラだし、演技も地味目。だからこそ、ごくごく普通の光州の市民像がそこに凝縮されていて、地味でも緻密な演技という感じがした

もっとも、助演陣が豪華で、それぞれキャラ立ちすぎてくれたのが幸いしたのかもしれない。キム・サンギョンの地味さを却って際立たせていたような・・・。アン・ソンギ先生を初めとする助演の皆さん、ステレオタイプな設定なのに強烈で・・・。これを面白いととるか、バランスが悪いととるかは、見る人によるかもしれません。

これまで正面から触れられることのなかった、誰も触れたがらなかった、国家の心の傷のようなテーマをあえて取り上げ、このテーマに関わったすべての人の想いを伝えることは到底無理だということをわかっていながら、苦心して描いたのだろうなということは、なんとなく伝わってくるのは確か。

ただ外国人の私には響いてこないものもあるに違いない

エンディングのシーンでは、死んでいった者はにこやかな笑顔なのに、生き残った者に笑顔はなく憂鬱な表情。この事件の傷跡を象徴しているのかしら。

音楽のクレジットに、チェコ・フィルとあったので、ふと 「プラハの春」 を連想してしまった。

 


ドラマリーディングって

2008-05-16 02:20:55 | Arsな時間


Director's Choice
パルコ劇場ドラマリーディング・シリーズ Vol.2
2nd  「見知らぬ女の手紙」
作:ステファン・ツヴァイク
翻訳: 池田信雄
演出: 行定 勲
出演: 中嶋朋子 西島千博

終演後~
"パルコ劇場 ドラマ・リーディング VOL.2" 開催記念

トークショー  行定 勲 × チャン・ジン
"ジャンル(映画、舞台)も国境も越えて"
映画、舞台に活躍する気鋭の演出家二人、大いに語る!


ドラマリーディングの演目自体が私を引きつけたのではなく、その後のトークショーが目当てであることは、バレバレでしょう。最近、残業続きなのですが、水曜日は NO残業デー!ってことは、これは 「来てくれ」 ってことかしらんと勘違いしたまま、退社後いそいそとパルコ劇場へ

私の場合、そもそも、ドラマリーディングって何???というところから始まるのですが・・・。
恥ずかしながら、ドラマリーディングというものにこれまで参加したことがありませんでした。近所の文学館で開催される朗読会には参加したことがあります。わりと有名な俳優がやって来て、芥川龍之介の短編小説などを朗読してくれるのです。

まぁ、ドラマリーディングと言っても、朗読の延長のようなもので、出し物が小説から戯曲に変わり、出演俳優の数が増えるだけだろうと、単純に考えていたら完全に裏切られました。

終演後のトークショーでチャン・ジン監督もこの行定勲演出の 「見知らぬ女の手紙」 は、「ドラマリーディングというよりも舞台劇そのもの」 と評していましたが、まったくその通りでした。

「見知らぬ女の手紙」 は、ある女が名前も告げずに、ある男を長年慕い続けたその情念を手紙を通じて綴るという話で、モノローグ(独白)劇です。

中嶋朋子ひとりが 80 分間ほぼずっーと手紙を読むという形で語りかけるため、彼女の集中力に圧倒されるというか、見る方も同じぐらいの集中力と緊張感を強いられました(笑)。終演後、「お疲れさまでした」 との行定監督の第一声で、ようやく緊張感がとけた感じがしました。

行定監督いわく、もともと動きの少ないモノローグを、しかもリーディング形式にするのに、観客をどうやってずっとひきつけるかということに苦労したとのこと。

中嶋朋子の後ろでは、ダンサー西島千博がコンテンポラリーダンスのような動きを見せて、手紙の中で 「愛する方」 と呼ばれる相手の男の存在を寡黙に描き、メリハリをつけて演出されていたため、リーディングだけという単調さは免れていました。

モノローグって聞いただけで、敬遠しがちなのですが、意外と入り込めるものもあるようです。


さて、このドラマリーディング・シリーズは、PARCO 劇場の空いたスケジュールを利用したトライアウト企画。

PARCO とチャン・ジン監督とのつながりは、現在、ソウルで開催されている 「演劇熱戦 2」 のプログラムに、PARCO と縁の深い三谷幸喜作 「笑いの大学」 が組まれたことがきっかけとなり、今回、チャン・ジン作・演出によるドラマリーディング「不器用な人々」が上演されることになったそうです。


初夏だというのに 10℃台前半で寒かった水曜日。私は劇場で配布された毛布にくるまって座っていたのに、チャン・ジン監督は Gパン&Tシャツにキャップ&ピンクの派手なスニーカーで登場。思わず、若いっ と呟いてしまいましたが、気合が入っているせいでしょうか・・・

行定監督のドラマリーディングを 「まるで舞台劇」 と評した後、「こちらの方が有利だな」 と呟き、PARCO 劇場の担当者から 「勝ち負けじゃないんですから」 と突っ込まれ、負けず嫌いな性格をチラリとのぞかせていました

「不器用な人々」は 30 秒に 1 回笑える作品で、韓国の観客を笑わせる自信はあるけれど、日本では観客がどう反応するのか、緊張感と不安でいっぱいなのだそうです。「緊張」 と 「不安」 という言葉を繰り返して使っていました。

このドラマリーディング
で 「面白くない」 と言われたら、二度と日本で演劇をやることはないとキッパリ。ということは 、「面白い」 と言われたら、日本市場にも本格的に進出してくれるのかもしれません。ちなみに PARCO さんは今後もチャン・ジン監督とやる気満々でしたが・・・


そんなわけで、今週末は楽しみです。

「不器用な人々」
パルコ劇場ドラマリーディング・シリーズ Vol.2 
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*現時点(2008/05/16 02:00)で残席わずか