報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

被災地をあとに

2006年02月16日 19時39分27秒 | 軽い読み物
14日パキスタンを出ました。
ビザを延長して四週間ほどの滞在でした。
ただいまバンコクにいます。
フィルムの現像と写真の整理をして帰国します。

さて、いったい何から書き出せばいいのか迷います。
膨大な被災者を取り巻く環境はあまりにも複雑です。
被災者の窮状は、援助金や援助物資が増えれば解決するというものではありません。
援助金や援助物資が被災者に届くまでの過程も複雑で流れはスムーズではありません。
被災者には、一家族一律25000ルピー(約400ドル)の一時金が支給されることになっていますが、それを受け取っていない人は大勢います。
この四ヶ月間で被災者が受け取ったものは、驚くほど僅かなものです。
被災者同士が助け合って生きている、というのも現実の一面です。

もちろん、さまざまな国際機関や国内外のNGOなど諸団体が努力しています。
被災の範囲があまりにも広く、被災者の数も膨大なので、
隅々まで行き渡るには時間がかかるというのも現実だと思います。
しかし、すでに被災から四ヶ月が経っています。
被災の範囲と被災者の数だけが障壁だとは思えません。

巨額の資金が動く救援・援助はそれ自体が利権を生みます。
援助金や物資が被災者に向って流れるうちに、途中で地中深く吸い込まれていくのでしょう。
したがって援助金や援助物資がいくら増えても、被災者の実際の生活はほとんど変わらないと言えます。
こうした利権を生んでしまう環境こそが最大の障壁です。
しかし、その実態は誰にもわかりません。
また、誰も口にしません。

被災者は、ないよりはマシという援助物資を受け、互いに助け合いながら、今日を耐えて生きています。
しかし、被災者がもっとも望んでいるのは、おカネでも、物資でもありません。
未来に対する展望です。
その展望がどこにも見当たりません。








































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4 コメント

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お疲れ様でした (Mee)
2006-02-17 11:26:16
一ヶ月に渡る取材、お疲れ様でした。

寒い時期に被災地を訪れることはさぞかし体力を使うことだろうと想像します。



今、パキスタンの地震はニュースからすっかり消え去った感がします。



目の前で巨額のお金が動く以上、利権が生まれ援助金が消えるのは仕方のない現実なのかもしれませんが、本当に必要としている人々が未だに酷い状況にあるというのはやはりやりきれない気がします。
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Unknown (rei)
2006-02-17 16:53:20
お疲れ様です。被災地がそこまで酷いとは思ってもいませんでした。

人間は、たとえ豊かでなくても公平に生き、未来に希望をもてるならば強く生きていけます。

これ「以下」にはならないという「蓄積」が社会にとって一番大切なのですが今の日本を含め、社会から「蓄積」が無くなっています。

被災地のパキスタンがその究極を表しているのではないでしょうか。



未来に希望を持てない社会は逆にどんなに豊かでも滅びてしまいます。
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Meeさんへ (中司)
2006-02-17 20:10:21
現地に着いた当初は、事態が理解できませんでした。なぜこんなひどい状態なのかと。



そして後に、これは援助金額の問題ではないという結論にいたりました。

おカネが足りないのであれば、話しは簡単です。



この地上から飢餓や貧困がなくならないのと、同じ原理がここでも働いているということなのだと思います。
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reiさんへ (中司)
2006-02-17 20:25:07
被災者の多くの方が、子供の教育が途絶えるのではないかと心配しています。

食べるものも大切ですが、教育には社会の未来がかかっていますから。



現地の教員やユニセフは、たいへんな努力をしているように思います。

多くのテント学校があります。

それだけが唯一の救いのように思われました。

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