報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

イスラエル・オルメルト首相包囲網 右派勢力の暗躍

2006年08月22日 21時55分24秒 | ■時事・評論
いま、イスラエル国内では、オルメルト首相に対する異例の抗議行動が行われている。数百人の軍人が首相と軍上層部に対する抗議文を地元紙に掲載した。日本のTVニュースでも、昨日頻繁に繰り返していた。

イスラエルの軍人集団が独自に現政権を批判するということは考えられない。軍人に行動を指示している勢力が背後にいるのだろう。オルメルト首相とその与党カディマ勢力の弱体化を目論んでいることは間違いない。首相の失脚も視野に入っているかもしれない。しかし、すでに現時点で右派勢力の目論みはほぼ完全に達成されていると言っていいだろう。ヨルダン川西岸からの撤収政策は完全に棚上げとなったのだから。


今回のイスラエルによるレバノン攻撃の不自然さは、その目的がヒズボラの弱体化ではなく、オルメルト政権の弱体化だったからだ。実際、イスラエル軍は本気でヒズボラを叩く気があるとは思えなかった。イスラエル軍機は執拗に住宅地区を爆撃したが、ヒズボラ弱体とは何の関係もないことは明らかだ。住宅地区爆撃は、レバノン住民とヒズボラの憎悪を掻き立てた。

住宅地区を爆撃され、老人や子供、女性を殺されて平気でいられる人間は少ない。憎悪は一気に沸点に達する。そうすれば、ヒズボラによるイスラエル国内に対する反撃が行われることは目に見えていた。それこそが、住宅地区爆撃、市民殺傷の目的だった。ヒズボラに反撃され、イスラエル国内に損害が出れば、オルメルト首相が責任を問われることになる。損害は大きければ大きいほど都合がよかった。

メディアは、イスラエル軍はヒズボラの戦闘能力を過小評価していたとか、ヒズボラの武装解除は誰にもできない、などとまことしやかに報じている。軍事専門家がテレビに登場して、ヒズボラの戦闘能力や近代武器について解説し、イスラエル軍は甘かった、ヒズボラは強力だ、などと言う。果たして本当だろうか?

おそらく、イスラエル軍は中東全域を敵に回しても戦えるだけの能力を備えているはずだ。僕は軍事には詳しくはないが、それでもそう言い切れる。なぜなら、そうでなければ、とっくにイスラエルという国は地上から消え失せているはずだからだ。

ヒズボラは、戦闘員1000、予備役8000とされている。民兵組織としては大きいかもしれないが、イスラエルの兵力は約17万(予備役40万)、国防費は約100億ドルだ。イスラエル軍がヒズボラを壊滅させようと思えばいつでもできる。

今回、ヒズボラのロケット攻撃が、イスラエル北部に多大な被害を与えたのは、ヒズボラの戦闘能力の高さではなく、イスラエル軍がわざとヒズボラの攻撃を防御しなかっただけだ。

多くのイスラエル軍兵士が憤懣を感じているのはそのためだ。イスラエル軍兵士は、作戦がちぐはぐで優柔不断だったと感じている。勝つ気のない作戦だったからだ。イスラエル軍自体にも100人近い戦死者が出ている。イスラエル軍は、首相や国防相の指示ではなく、おそらく右派勢力の影響下で、勝つ気のない作戦を展開していたのだ。

勝つ気のない作戦を行い、ヒズボラの攻撃を防御しなかったのは、ひとえにオルメルト首相とその撤退政策にダメージを与えるためだった。これはイスラエル政界の内紛だったのだ。オルメルト政権の閣僚のスキャンダルが目白押しなのも、これが政争であることを物語っている。オルメルト政権の支持率は70%台から40%台に急落している。

ハマスとヒズボラは、イスラエル国内の政争に利用されてしまったのだ。
イスラエル国内の政争のために、多くの命が無慈悲に奪われた。

オルメルト首相の政治生命はこれで終わり、縮小安定化政策も終わる。
イスラエルは、右派勢力による拡大政策に向い、中東和平は遥か彼方に遠のいていく。



「戦争は失敗だった」イスラエルで首相辞任求め抗議http://www.yomiuri.co.jp/feature/fe4800/news/20060822id24.htm
イスラエル 政権に国民の批判
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-08-21/2006082107_01_0.html
オルメルト政権に不祥事噴出
http://news.goo.ne.jp/news/asahi/kokusai/20060821/K2006082103830.html
Olmert 'suspends' withdrawal plan
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/5262334.stm


最新の画像もっと見る