第二次大戦中、アメリカ政府はあることでひどく頭を痛めていた。
ゼロ戦やヒトラーの秘密兵器よりもこちらの方が大きな問題だった。
「完全雇用」だ。
戦後のアメリカでどのようにして「完全雇用」を確保するかについて、戦争中からアメリカの政府首脳は悩んでいた。
戦争が終われば、アメリカの生産規模は縮小せざるを得ない。そうなれば多量の失業者が出る。そこへ戦場から兵士も帰還してくる。アメリカ中に失業者があふれることになる。
たとえ戦争に勝っても、多量の失業者を出せば、アメリカ国内は社会不安におちいり、社会は左傾化に向う。アメリカ政府は、それをひどく恐れた。戦後も、生産規模や農業生産を縮小せず完全雇用を確保しなければならないと考えた。
つまり、戦後の世界を、アメリカの余剰生産物の市場としなければならなかったのだ。
戦前、ドル経済圏とポンド経済圏はしのぎを削っていた。戦争が終結し、イギリスが復興すれば、必然的にポンド経済圏は復活してしまう。このポンド経済圏を丸ごと奪う必要があった。アメリカはその方法を考えなければならなかった。
アメリカの結論は、戦後の貿易通貨をドルに限定すること、そして英ポンドから競争力を奪うことだった。
そのために考え出されたのが、IMF(国際通貨基金)と世界銀行の設立だった。(1944年ブレトンウッズで協議、1947年正式発足)
アメリカはIMFを使って、ドルを戦後の貿易通貨と決めた(ドル金本位制)。そして世界の通貨の為替レートを高めに固定し、他国の通貨の競争力をあらかじめ奪ってしまった(通貨の固定相場制)。
アメリカは、IMFによるドル金本位制と通貨の固定相場制を世界に承諾させるエサとして、世界銀行による経済援助を用意した。単純に言ってしまえば、たったこれだけのことで、アメリカはポンド経済圏を奪ってしまった。そして最終的にドルは世界を支配することになる。
「完全雇用」を国民に提供しなければならないというアメリカ政府の強迫観念が、今日のドル支配の構造の起源だ。1930年代のアメリカは大恐慌の影響で失業率が25%に達していた。しかし、第二次世界大戦が雇用状況を一気に改善した。アメリカ政府が、戦後もその雇用を維持したいと考えたのはごく自然なことかもしれない。
かたや戦争で廃墟と化したヨーロッパ諸国は、「完全雇用」どころの話しではなかった。アメリカの差し出したエサに見事に食らいついてしまった。ヨーロッパがほんの少し慎重であれば、戦後史は少し違ったものになっていただろう。
ゼロ戦やヒトラーの秘密兵器よりもこちらの方が大きな問題だった。
「完全雇用」だ。
戦後のアメリカでどのようにして「完全雇用」を確保するかについて、戦争中からアメリカの政府首脳は悩んでいた。
戦争が終われば、アメリカの生産規模は縮小せざるを得ない。そうなれば多量の失業者が出る。そこへ戦場から兵士も帰還してくる。アメリカ中に失業者があふれることになる。
たとえ戦争に勝っても、多量の失業者を出せば、アメリカ国内は社会不安におちいり、社会は左傾化に向う。アメリカ政府は、それをひどく恐れた。戦後も、生産規模や農業生産を縮小せず完全雇用を確保しなければならないと考えた。
つまり、戦後の世界を、アメリカの余剰生産物の市場としなければならなかったのだ。
戦前、ドル経済圏とポンド経済圏はしのぎを削っていた。戦争が終結し、イギリスが復興すれば、必然的にポンド経済圏は復活してしまう。このポンド経済圏を丸ごと奪う必要があった。アメリカはその方法を考えなければならなかった。
アメリカの結論は、戦後の貿易通貨をドルに限定すること、そして英ポンドから競争力を奪うことだった。
そのために考え出されたのが、IMF(国際通貨基金)と世界銀行の設立だった。(1944年ブレトンウッズで協議、1947年正式発足)
アメリカはIMFを使って、ドルを戦後の貿易通貨と決めた(ドル金本位制)。そして世界の通貨の為替レートを高めに固定し、他国の通貨の競争力をあらかじめ奪ってしまった(通貨の固定相場制)。
アメリカは、IMFによるドル金本位制と通貨の固定相場制を世界に承諾させるエサとして、世界銀行による経済援助を用意した。単純に言ってしまえば、たったこれだけのことで、アメリカはポンド経済圏を奪ってしまった。そして最終的にドルは世界を支配することになる。
「完全雇用」を国民に提供しなければならないというアメリカ政府の強迫観念が、今日のドル支配の構造の起源だ。1930年代のアメリカは大恐慌の影響で失業率が25%に達していた。しかし、第二次世界大戦が雇用状況を一気に改善した。アメリカ政府が、戦後もその雇用を維持したいと考えたのはごく自然なことかもしれない。
かたや戦争で廃墟と化したヨーロッパ諸国は、「完全雇用」どころの話しではなかった。アメリカの差し出したエサに見事に食らいついてしまった。ヨーロッパがほんの少し慎重であれば、戦後史は少し違ったものになっていただろう。
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専門の方が、こうしたテーマに取り組んでいただければ心強い限りです。直近の歴史でありながら、ほとんど一般に知られていない事柄です。アメリカの覇権獲得の歴史を知ることはとても重要に思います。
僕自身はけっして専門ではありませんので、至らぬところもあると思います。忌憚のないご意見をいただければとも思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
学生時代、近現代の国際問題を夢中で学びましたが、
私には問題があまりに多様で深刻で、卒業時にはボーゼンと、これらの問題に対して無気力になってしまいました。
中司さんの記事を読んで、また向き合えるきっかけになりそうな気がします。ありがとうございます。
ここで、とても皮肉なのですが、ドイツはアメリカから戦後賠償を免除され、イギリスよりもはるかに身軽になったということです。
戦勝国のイギリスが没落し、敗戦国のドイツが奇跡の復興を果たし、ヨーロッパで一番豊かになったのは実はこのためなんです。
ドイツがなぜ戦後賠償を免除されたかといえば、敗戦国を追い詰めると、また戦争に走ると考えたからです。日本の奇跡の復興もまったく同じ理由なんです。
本来、ドイツと日本はいくら働いても、すべて戦争賠償で消えていたはずなんです。
その後日本やドイツは十分過ぎるほど毟り取られてますから、結果は同じと言えば同じなんですが。
コメントは大歓迎でございます。
アメリカって、、。狡賢くて、自分本位で、
なんだかまんまと巧くやっちゃったのですね。
萎えます凹。
毎回単純な感想ばかりで恐縮です(´へ`)。