報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

通貨のもつ支配力②

2005年09月28日 22時31分46秒 | ■ドル・ユーロ・円
この前、ドルの話を書いたので、もう少しドルについて述べておきたい。
今回の主役は、IMF:国際通貨基金である。IMFは日本人にはあまり馴染みのない国際機関だが、実はとても問題の多い危険な組織である。この機会に心に留めていただければと思う。


IMF:International Monetary Fund:国際通貨基金
「IMFの主な目的は、加盟国の為替政策の監視(サーベイランス)や、国際収支が著しく悪化した加盟国に対して融資を実施することなどを通じて、(1)国際貿易の促進、(2)加盟国の高水準の雇用と国民所得の増大、(3)為替の安定、などに寄与することとなっています。」(日本銀行ホームページより)
これは、あくまで建前にすぎない。

<基軸通貨ドル>

そもそも、アメリカ・ドルがいつ世界の基軸通貨となったのか。
これは、1944年まで遡る。第二次大戦中の1944年7月にアメリカのブレトンウッズに連合国45カ国の代表が参加し、IMFと世界銀行の設立が協議された。このブレトンウッズ会議で、二つの取り決めがなされた。

戦後の世界では各国通貨の切り下げ競争が起こってはならない。
貿易に利用される商用通貨は金(Gold)と結びつかなくてはならない。

つまり、「通貨の固定相場制」と「ドル金本位制」だ。
戦後、世界の金(Gold)の72%がアメリカに集中していたため、商用通貨としての用件を満たしているのはドルだけだった。つまりドルを世界の基軸通貨にすると世界が認めたわけだ。

戦後の1946年にIMFと世界銀行が正式に設立され、「ブレトンウッズ体制」がはじまる。そしてこのたった二つの規約が、今日にいたるアメリカの繁栄を約束した。第二次大戦末期の疲弊した世界は、アメリカ政府が二つの規約にこめた真の意図をまったく読めなかった。

●「ドル金本位制」の意味
「ドル金本位制」とは、簡単に言えば、イギリス・ポンドとフランス・フランを貿易から締め出し、戦前のポンド経済圏とフラン経済圏の復活を阻止することにあった。それによってヨーロッパの戦後復興を抑え、世界をアメリカ・ドルの一極経済圏にすることができる。

もし、この規約がなければ、復興をはじめたイギリスやフランスは、かつての植民地と貿易をはじめることになる。そうすると戦後の世界はドル、ポンド、フランの三つの経済圏に分かれてしまう。アメリカは戦後の世界経済を完全に支配したかったのだ。

●「通貨の固定相場制」の意味
これも、その意図は同じだ。世界の通貨を、実態よりも高く設定し固定してしまう。そのことによって、あらかじめ将来の貿易競争力を奪ってしまう。

こうして、アメリカは基軸通貨ドルを好きなだけ刷り、世界の燃料や原料を買い、アメリカの製品と農業品を世界中に売りさばき、世界の経済を独り占めしてしまった。また、世界中にドルを貸し与え、巨大な債権国となり、今日の礎を築いた。その後、まだまだ紆余曲折があるのだが、それはまたのちほど。

IMF(国際通貨基金)の設立目的とは、アメリカが戦後の世界経済を支配するため以外の何ものでもなかった。いまでも、当然IMFは存在する。戦後、世界の復興と経済状況に合わせて、IMFの役割も変化してきたが、その目的はいまも変わらない。すべては、アメリカのために。

つづく


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4 コメント

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IMFの蟻地獄! (クオレ)
2005-09-29 13:09:57
 IMF(国際通貨基金)は、世界銀行とならんで戦後作られた国際的な金融機関です。

 その本拠も、ワシントンにIMFと世界銀行はならんで建っている。

 ・国際的な通貨協力による貿易拡大

 ・為替相場の安定

 ・為替制限の撤廃

の三つを大看板にして、その実は、累積債務国を食い物にしているのが、紛う事鳴き実態です。

 経済破綻を起した国に対して、緊急融資と引き換えに、国民犠牲の緊縮財政や規制緩和を押し付けて、国の経済主権を奪うようなことをやって来ました。

 例えば、1997年に、タイのバーツ下落の時、

 アジア通貨危機が起きた際、アメリカが主導するIMFは、タイに172億ドル、インドネシアに412億ドル、韓国に584億ドルを貸付、融資の条件として、過酷な「構造調整政策」を押し付けたのです。タイに対しては、付加価値税の7%から10%に引き上げ、電気・水道等の公共料金の値上げ、

 ノンバンク42社の営業停止をし、緊縮財政の

実現等の実現を約束させました。

 また、韓国には、輸入制限、インフレ抑制、金融機関のリストラ、輸入制限措置の廃止、外国投資枠の拡大などや、いっそう資本市場の自由化を強要し、更に、労働者解雇制度の導入、鉱物石油税・所得税・法人税の引き上げ、経常支出のカットまで約束させたのです。

 韓国民が反米になるのは当たり前です。



 こうしたIMF路線が、各国で実態経済を冷え込ませ、賃金切り下げ、企業倒産・金融機関の破綻、失業増大、増税、物価高、生活・副詞・教育予算の削減をもたらすなど、経済と国民生活に重大な打撃を与え、アメリカ主導のIMF路線は失敗しています。(その目的から見て)



 蟻地獄と云う言葉があります。

 ウスバカゲロウの幼虫が、乾燥した土をスリ鉢状に掘って巣を作り、底に潜んで、落ちてくる蟻を捕らえて食べる。当に、IMFとは蟻地獄に潜むウスバカゲロウ(薄馬鹿下郎とも云う)である。
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クオレさんへ (中司)
2005-09-29 13:39:54
コメントありがとうございます。

IMFや世界銀行について熟知しておられることが、この一文からわかります。ご見識にこころから敬意を表します。ただ最後のしめはせっかくの読み応えある内容の読後感に水を差してしまうのではと僕の個人的な文章趣味としては少し危惧いたします。
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中司 市へ (クオレ)
2005-09-29 16:37:07
 失礼致しました。

 ウスバカゲロウは、他に、あとじさり、すりばちむし。

とも云い。俳句の季語は夏。

 川柳で、「世の中に 薄馬鹿下郎 すごしけり」

 そんな一句が閃き、IMFの傍若無人な振る舞いとが、

 オーバーラップして、皮肉をこめた所以。

 不快な思いをさせましたらお許し下さい。

 なにせ、育ちが悪いので申し訳ありません。

 以後注意致します。

 「人間の真に人間らしい尊厳は、自己を軽蔑する能力

  である」(サンタヤナ)とか。

 ご忠告有難う御座いました。
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クオレさんへ (中司)
2005-09-29 19:00:21
こちらこそ失礼いたしました。

皮肉にもとても深い見識が込められていることに、

たじたじとなってしまいます。

これからも、よろしくお願いいたします。
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