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米イージス艦は宿毛寄港をなぜ延期したか

2006年05月23日 13時50分34秒 | □イージス艦宿毛寄港
今日、23日に予定されていた米イージス艦ラッセルの宿毛(すくも)湾寄港が、明日24日に延期された。この一日の延期が意味するものは非常に大きい。

駐大阪・神戸米国総領事館フィリップ・カミングス領事は、
「運航上の問題で遅れている、とのことだった。あくまで船のことで、日本側の事情によるものではない」
「こうした入港遅れはままある」
と、コメントしている。
http://www.kochinews.co.jp/0605/060523headline01.htm#shimen1

年間約40兆円の軍事費を使う、世界一整備された軍隊には、それほど運行上の問題が起こるとは考えにくい。シンガポール~宿毛間の洋上は、悪天候でもなく、敵もいない。イージス艦ラッセルの宿毛寄港は、意図的に一日ずらされたと見るべきだろう。

宿毛市では、イージスを歓迎する声の方が多い。経済的に疲弊した地方としては、たとえ外国艦船であっても、少しでもおカネを落してくれるものはありがいたい。それほど地方の経済というのは疲弊し切っている。

しかし、イージス艦寄港の目的を懸念する人々も存在する。京都にいては、現地でどれほどの反対運動が展開されているのはわからない。しかし、現在宿毛入りしているカミングス領事は、反対運動は予想以上と認識しているのではないだろうか。状況を本国に報告した結果、ラッセルの寄港が一日延期されたに違いない。

一日ずらすのは反対運動に「肩透かし」を食らわすためだ。反対の声は、イージス艦寄港が発表された8日からすでに起こっている。その声は徐々に盛り上がり、そして23日に最高潮に達する。盛り上がった声の中に飛び込むのはあまり得策ではない。

そこで「ガス抜き」のために寄港をわざと一日ずらす。すこぶる単純な手法だが、実は非常に効果的だ。一度萎んだ気分をもう一度盛り上げるのはとても難しい。さらに一日延期すると、より効果的だ。そしてもう一日延期すると、ほぼ完璧だ。人間、待たされることほど、気分の萎えるものはない。

しかし逆に言えば、米国側は、宿毛の反対運動に少なからず脅威を感じていることを物語っている。たいした反対運動でなければ、ラッセルは予定通り、今日、宿毛湾にその姿を現しているはずだ。

もし米軍が宿毛の基地化を画策しているとしたら、すでに大きな後退を余儀なくされていることになる。
この一日の延期が意味するものは非常に大きい。


高知新聞電子版
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