かつて、一年半という時間をかけて中米と南米を旅したことがある。
中南米の広大な自然の中に、外国企業が所有する見渡す限りのバナナ農園やコーヒー農園が広がっていた。
そこでわずかな賃金で重労働を強いられる大勢の人々。
コロニアル式の美しい街並みには、職にあぶれた若者が泥棒やかっぱらいを働いていた。
コロンビアではまんまと両替詐欺に遭って40ドルを失った。
パナマでは、米軍が激しい戦闘のすえマヌエル・ノリエガ将軍を逮捕し、アメリカへ連れ去った。
街には米軍の新型車両ハンビィーがわがもの顔で徘徊していた。
国家元首を勝手に逮捕連行していいのか?
いいのだろう。アメリカの庭なのだから。
中南米は、どうしようもない貧困と独裁と搾取の中にあった。
それは固定され永遠に続くように見えた。
「対テロ戦争」の名の下に、世界がアメリカに翻弄される中、いまアメリカの庭先では異変が起こっている。キューバのカストロ議長の戦いはすでに半世紀におよぶが、21世紀になってベネズエラのチャベス大統領が現れた。そして、いま新たにもう一人加わった。昨年12月の民主的選挙で勝利したボリビアのモラレス大統領だ。
5月1日、モラレス大統領は、天然ガス資源を国有化する政令を発表。外資系企業の天然ガス関連施設56カ所を軍によって占拠した。モラレス政権は、企業の取り分を18%とし、残り82%をボリビア政府のものとする新契約を提示。6カ月以内に新契約を結ばなければ、外国企業は国外退去しなければならない。対象となるのは、米、英、仏、スペイン、ブラジル、アルゼンチンなどの企業。
続く12日に、天然ガス以外の鉱物や森林などの天然資源についても、国有化を目指すと宣言した。モラレス大統領は、外国による経済支配を拒絶し、天然資源の国有化によって、貧困撲滅に向けて歩みはじめた。また、モラレス大統領は、ブッシュ政権の世界政策を痛烈に批判している。ブッシュはテロリストで、イラク戦争は国家テロだ、と。
このようなモラレス大統領に対して、
アメリカにとって、南米でのこうした動きは許しがたいことに間違いない。しかも、南米諸国は独自の路線を歩みつつも、その結束は強固だ。
モラレス大統領の天然ガス国有化宣言に対して、ブラジル、アルゼンチン政府は、最初は強く反発した。しかし、この宣言から数日後に、モラレス大統領は、ブラジル、アルゼンチン、ベネズエラの大統領と首脳会談を持った。会談は紛糾することなく、4時間後には、「天然ガス事業の国営化という、ボリビア大統領の決定を尊重する」という共同声明が発表された(5月5日)。
また、モラレス大統領は、チャベス大統領、カストロ議長と貿易協定「米州ボリバル代替構想」に調印し、アメリカが進める自由貿易地域構想を拒否した。そのほか、IMFをしりぞけ、南米内での独自の通貨基金の構想もある。
「対テロ戦争」に世界が呑み込まれつつあるこの時代に、アメリカの庭先では荒波がおこっている。
搾取からの開放と貧困の撲滅だ。
アメリカ政府にとるべき策はあるだろうか。
もはや、パナマ作戦のようにはいかないだろう。
腐敗したノリエガ将軍は国民に見捨てられただけだ。
南米大陸は、本当に500年の支配から脱するのかもしれない。
フアン・エボ・モラレス・アイマ大統領略歴(ウィキペディア)
中南米の広大な自然の中に、外国企業が所有する見渡す限りのバナナ農園やコーヒー農園が広がっていた。
そこでわずかな賃金で重労働を強いられる大勢の人々。
コロニアル式の美しい街並みには、職にあぶれた若者が泥棒やかっぱらいを働いていた。
コロンビアではまんまと両替詐欺に遭って40ドルを失った。
パナマでは、米軍が激しい戦闘のすえマヌエル・ノリエガ将軍を逮捕し、アメリカへ連れ去った。
街には米軍の新型車両ハンビィーがわがもの顔で徘徊していた。
国家元首を勝手に逮捕連行していいのか?
いいのだろう。アメリカの庭なのだから。
中南米は、どうしようもない貧困と独裁と搾取の中にあった。
それは固定され永遠に続くように見えた。
「対テロ戦争」の名の下に、世界がアメリカに翻弄される中、いまアメリカの庭先では異変が起こっている。キューバのカストロ議長の戦いはすでに半世紀におよぶが、21世紀になってベネズエラのチャベス大統領が現れた。そして、いま新たにもう一人加わった。昨年12月の民主的選挙で勝利したボリビアのモラレス大統領だ。
モラレス大統領、天然ガス以外の事業も国営化を検討とhttp://www.cnn.co.jp/business/CNN200605120034.html
2006.05.12- CNN/AP
「過去500年以上続いてきた搾取を、終わらせねばならない。我々が求めているのはパートナーで、我々の天然資源を搾取する主人じゃない」「かつて、ボリビアには人がいないと思われていたが、昔から生活を続けている我々の土地だ。我々の領土と天然資源を守ろうとしているのだ。我が国の天然資源を取り戻し、貧困と闘っていく」
5月1日、モラレス大統領は、天然ガス資源を国有化する政令を発表。外資系企業の天然ガス関連施設56カ所を軍によって占拠した。モラレス政権は、企業の取り分を18%とし、残り82%をボリビア政府のものとする新契約を提示。6カ月以内に新契約を結ばなければ、外国企業は国外退去しなければならない。対象となるのは、米、英、仏、スペイン、ブラジル、アルゼンチンなどの企業。
続く12日に、天然ガス以外の鉱物や森林などの天然資源についても、国有化を目指すと宣言した。モラレス大統領は、外国による経済支配を拒絶し、天然資源の国有化によって、貧困撲滅に向けて歩みはじめた。また、モラレス大統領は、ブッシュ政権の世界政策を痛烈に批判している。ブッシュはテロリストで、イラク戦争は国家テロだ、と。
このようなモラレス大統領に対して、
ブッシュ政権は、かねてからモラレスを「麻薬密売人」とののしっていたが、彼の(大統領選挙)勝利に対して嫌悪をあらわにしている。http://www.jca.apc.org/~kitazawa/undercurrent/2006/bolivian_new_president_2006.htm
12月20日付け(2005年)の『ニューヨーク・タイムズ』紙は、モラレス候補の勝利を「反帝国主義者がボリビア大統領に当選」というセンセーショナルな見出しで報じた。同紙は、これによってキューバのカストロ、ベネズエラのチャベスとともに西半球での反米トリオが結成される、と分析している。
同時にこれをもって、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、エクアドルなどと共に南米大陸3億6,500万の人口のうち3億人近くが左翼政権の下に住むことになった、と報じている。
アメリカにとって、南米でのこうした動きは許しがたいことに間違いない。しかも、南米諸国は独自の路線を歩みつつも、その結束は強固だ。
モラレス大統領の天然ガス国有化宣言に対して、ブラジル、アルゼンチン政府は、最初は強く反発した。しかし、この宣言から数日後に、モラレス大統領は、ブラジル、アルゼンチン、ベネズエラの大統領と首脳会談を持った。会談は紛糾することなく、4時間後には、「天然ガス事業の国営化という、ボリビア大統領の決定を尊重する」という共同声明が発表された(5月5日)。
また、モラレス大統領は、チャベス大統領、カストロ議長と貿易協定「米州ボリバル代替構想」に調印し、アメリカが進める自由貿易地域構想を拒否した。そのほか、IMFをしりぞけ、南米内での独自の通貨基金の構想もある。
「対テロ戦争」に世界が呑み込まれつつあるこの時代に、アメリカの庭先では荒波がおこっている。
搾取からの開放と貧困の撲滅だ。
アメリカ政府にとるべき策はあるだろうか。
もはや、パナマ作戦のようにはいかないだろう。
腐敗したノリエガ将軍は国民に見捨てられただけだ。
南米大陸は、本当に500年の支配から脱するのかもしれない。
フアン・エボ・モラレス・アイマ大統領略歴(ウィキペディア)